対面営業・商談

弁護士の集客|広告より先に、同業と士業から相談が回る関係を作る

このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

弁護士の集客は、広告より先に「相談が回ってくる関係」から始める

独立した弁護士の集客は、広告を出して問い合わせを待つことではありません。同業・隣接士業・以前の依頼者から相談が回ってくる関係を先に作ることです。広告はその後ろ盾として、後から使います。

独立して3か月。勤務時代の知人から2、3件の相談は来ました。ただ、その後が続きません。増えているのはポータルサイトと広告代理店からの営業電話ばかりです。同期からは「ホームページ経由で依頼が入っている」と聞いて焦ります。

相談が来ないのは、名前が知られていないからではありません。腕が足りないからでもありません。

紹介は腕への採点ではなく、「困った瞬間にその人の頭に浮かぶかどうか」で決まります。浮かぶための働きかけを、まだしていないだけです。

紹介待ち型かもしれません

紹介待ち型かもしれません。いい仕事をすれば紹介は出ると思っていて、思い出してもらう働きかけをしていない型です。仕事が減ったのではなく、思い出してもらえなくなった、というのが実際のところかもしれません。腕のせいではありません。

営業=頭を下げて仕事をもらうこと、ではない

弁護士が営業と聞いて身構えるのは、頭を下げて仕事をもらう絵が浮かぶからだと思います。ここでやるのは、頼むことではありません。相談の入口を開けておいて、返しを早くすることです。話し上手になる必要はありません。性格はそのままで大丈夫です。

問い合わせを待つ動きにも、理由はあります。営業電話を切りながら「そのうちホームページから来るはずだ」と思うのは自然なことです。ただ、待っている間に、同業や隣接士業の頭の中では「困ったときに振る相手」が別の誰かに決まっていきます。待つこと自体が悪いのではなく、待っている間に何もしていないことが、相談が来ない一番の理由です。

今日やる最小行動

独立してからまだ連絡していない同業と士業を、3人だけ名前で書き出してください。それ以上はやりません。連絡文はこの記事の後半に書きます。

弁護士だけの前提:紹介料が払えないので、関係はお金以外で作るしかない

他士業からの紹介に対価を払う形は、非弁提携の疑いを持たれる

東京弁護士会の広報誌の特集では、他士業との共同広告で他士業者が窓口になり、事案によって弁護士に依頼を回す際、他士業者が紹介料の趣旨の金員を取るように読める料金表があると、「堂々と非弁提携を表明しているに近く,広告の問題というより非弁提携の疑いが持たれる」とされています。「もちろん,広告に表示しなくても非弁提携をしてはならないのは当然である」とも書かれています。

弁護士職務基本規程や日弁連の広告指針の条文番号は、この記事では書きません。ここでは一般的な考え方として書いています。共同広告や紹介の形を具体的に検討するときは、所属弁護士会に確認してください。

紹介を買えないのは不利ではなく、全員が同じ条件

他の業種なら、紹介料や成果報酬で紹介網を作れます。弁護士はその道が最初から閉じています。だから「思い出してもらう働きかけ」の差が、そのまま紹介の差になります。ここは腕の差ではなく、動きの差です。

同期の弁護士が紹介で案件を積み上げているように見えても、それはお金を積んでいるからではありません。連絡の頻度と、返しの速さを積んでいるだけです。ここは全員が同じ条件で始められる場所なので、独立して日が浅くても追いつけます。

お金の代わりに渡せるもの3つ

  • 相談への返しの速さ。その日のうちに見立てを一言返す
  • 紹介元の顧客を、紹介元のものとして扱う姿勢
  • 相手が第三者に説明しやすい一言紹介。「相続でもめたときの弁護士」のように、分野を1つに絞る

一件ごとの謝礼を渡す形や、共同広告で他士業が窓口になり料金表に弁護士へ引き継ぐ費用が載っている形は避けてください。線引きに迷う形は自分で判断せず、所属弁護士会に確認してください。

相談が回ってくる相手は3種類。同業・隣接士業・以前の依頼者

相手弁護士を思い出す場面こちらから渡せるもの最初の一手
同業相手方の代理で受けられない、専門外の相談が来た、遠方で現地の弁護士が要る受けられない案件の逃がし先修習同期・前の事務所に連絡
隣接士業相続の申告中に遺産分割でもめる、登記の前に相続人同士の話がまとまらない小さい相談を断らない窓口業務で困る場面を聞きに行く
以前の依頼者前の事務所に電話しようとして、独立を知らない困ったときの連絡先が変わった事実挨拶状ではなく相談の入口の連絡

同業(別分野・別地域の弁護士)

相手方の代理をしたことがあって受けられない、専門外の相談が来た、遠方で現地の弁護士が要る——この瞬間に「あの人に振ろう」と浮かぶ存在になっておきます。修習同期、前の事務所、同じ会派や委員会の顔見知りが最初のリストです。渡せるものは「受けられない案件の逃がし先」になることです。連絡は「受けられない相談があったら、遠慮なく振ってください」の一言で十分です。

隣接士業(税理士・司法書士・社労士・行政書士)

相続の申告中に遺産分割でもめる、登記の前に相続人同士の話がまとまらない、解雇でもめて労基署の話が出る——日常業務の中で法律の論点にぶつかる場面は多いはずです。困った瞬間に頭に浮かぶ弁護士は1人か2人しかいない、という前提で考えます。渡せるものは「小さい相談を断らない窓口」であることです。

以前の依頼者と勤務時代の関係者

一度頼んだ人は、次も同じ人に頼みたいと思うものです。ただし独立を知らなければ、前の事務所に電話してしまいます。独立の連絡を「挨拶状1通」で終わらせないでください。渡せるものは「困ったときの連絡先が変わったという事実」を、思い出せる形で残すことです。年賀状や開業案内の1通では、届いた日に読んで終わり、次に困ったときには忘れられています。半年後にもう一度、軽い形で思い出してもらう連絡が要ります。

3種類全員に同じ文面の挨拶状を一斉送付して終わり、というのはNGです。相手ごとに「思い出す場面」が違うのに、こちらの経歴だけ書いて送っている状態です。

紹介する側の目線:税理士が弁護士を紹介するとき、何を怖がっているか

紹介は「してもらう」ものではなく、相手が「この人に振っても大丈夫」と思える条件が揃ったときに起きます。その条件を、紹介する側の怖さから逆算して考えます。

怖さ1:顧問先を取られる、前の処理を否定される

顧問先の前でこれまでの申告や契約書を批判される、別の税理士を紹介される——これを怖がっています。長年かけて作った顧問先との関係を、一度の紹介で崩されたくないという気持ちです。手当ては、初回の面談で「顧問先の窓口は◯◯先生のままです」と口に出すことです。前任の処理に触れる必要があるときは、顧客より先に紹介元に伝えます。

怖さ2:小さい相談をしたら「それは弁護士に聞く話じゃない」と返される

一度その返しを受けた人は、二度と相談しません。税理士から見れば、顧問先に「弁護士に聞いてみます」と言った手前、断られると自分の顔が立たなくなります。手当ては、小さい相談ほど早く返すことです。「電話15分で見立てだけ返します」と最初に宣言しておきます。受任する案件になれば報酬は通常どおり出すと、これも最初に言っておきます。

怖さ3:紹介したのに、その後どうなったか分からない

紹介元は顧問先から「あの弁護士どうだった?」と聞かれる立場にいます。手当ては、依頼者の了解を取ったうえで「受任しました」「区切りがつきました」の2回だけ一報することです。中身は書きません。守秘との線引きに迷う形は所属弁護士会に確認してください。

紹介された顧問先に自分から顧問契約を持ちかける、相談メールに3日返さない、終わったことを紹介元に伝えない——このあたりはやらないでください。

関係の作り方:名刺交換の次に、自分から会う理由を作る

営業の全体の順番は、知り合う→話を聞く→お金の話→返事をもらう→断られたあと→また頼まれる、と続きます。この並び方は知り合ってから紹介にたどり着くまでの営業の型にまとめています。「断られたあと」のうち、相見積もりで負けたときの返し方は相見積もりで負けたとき|負けた理由の聞き方と、次の見積で変えるところで詳しく解説しています。この記事では「また頼まれる」の入口に絞って書きます。

手順1:独立の連絡を「相談の入口」の形で送る

挨拶状ではなく、相手の業務で困る場面を1つ書いた連絡にします。文面例です。

◯◯先生、独立しました。相続の申告中に遺産分割でもめて止まる場面があれば、報酬の話の前に一度ご相談ください。電話15分で見立てを返します。受任になれば費用はその時点で出します。

「何かあればよろしくお願いします」だけの連絡はNGです。交流会や会合で会った相手に送るお礼の連絡は、業種は違いますがイベント出店のお礼|主催者と、買ってくれたお客さんに送る文面の例文も参考になります。

手順2:最初は「紹介してください」と言わない

先に相手の困りごとを受けます。「税務と法務が絡んで困った場面を教えてほしい」と聞きに行きます。1回目は見立てだけ返します。これは無料奉仕ではなく入口で、受任になれば報酬は通常どおり出ます。相手が「振っても大丈夫」と体で分かるまで、こちらから紹介を頼みません。面談のあとに送るお礼の連絡は、業種は違いますが現地調査のあとのお礼メール|見積を出す前に送っておく一通の例文も参考になります。1回目の終わり方は、業種は違いますが体験レッスンのあとに、続けるかどうかをその場で話す話も参考になります。

手順3:月1回、相手の顧客に起きそうな場面で思い出してもらう

判例解説ではなく、「◯月は相続の申告が集中する時期なので、遺産分割でもめる相談が増えます。こういう兆しがあれば早めに」のように、相手の顧客の場面で書きます。送る相手は3〜5人でいいです。全員に同じ文面を送らないでください。

相手リストは各3名、相談の返しはその日のうち、一報は2回、思い出してもらう連絡は月1回。この記事ではこの数字で固定します。多いと感じるかもしれませんが、相手の側から見れば「月に1回、自分の顧客が困りそうな場面を教えてくれる弁護士」は、そう何人もいません。回数より、続けることのほうが効きます。

ホームページと広告は、紹介の後ろ盾として使う

順番は、関係→ページ→広告です。逆にすると、誰から来るか選べない問い合わせを待つ動きに戻ります。

紹介された人が名前で検索したときに見るページを先に整える

置くものは3つです。顔写真と経歴、扱う分野を1〜2つに絞った説明、相談の流れ(初回の連絡→面談→費用の出し方)。紹介元が「このページを見ておいて」と顧客に送れる形にしておきます。分野を絞る、というのは他の分野を断るという意味ではありません。最初に名乗る看板を1つに決めておくと、紹介元が説明しやすくなるという話です。

広告は来た人を選べない

広告経由は分野も地域も相手の状況もばらつきます。受けられない相談を断る手間が増え、紹介の関係に割く時間が削られます。出すなら分野と地域を絞り、紹介の関係が回り始めてからにします。

共同広告は同じルールが効く

他士業と共同で広告を出す場合も同じです。他士業者が窓口になって弁護士に回す形で、料金表が紹介料の趣旨に読めると、非弁提携の疑いを持たれます。広告に書かなくても、非弁提携をしてはならないのは変わりません。共同広告を検討する形は、所属弁護士会に確認してください。

ページに取扱分野を10個並べるのはNGです。紹介元が「何の弁護士か」を一言で説明できなくなり、紹介が止まります。

持ち帰り:独立1年目の「相談が回る関係」チェックリスト

相手リストを書く

  • 同業3名
  • 隣接士業3名
  • 以前の依頼者と勤務時代の関係者3名

名前がすぐ出ないなら、修習同期・前の事務所・出身大学の名簿から拾います。

今月やること4つ

  1. 独立の連絡を「相談の入口」の文面で3通送る
  2. 相談の返しは「その日のうちに一言」を自分の基準にする
  3. 受任と区切りの一報の型を1つ作っておく
  4. 名前で検索されたときのページに、顔・分野・相談の流れを置く

やらないこと4つ

  1. 紹介の対価と読める金銭のやりとり
  2. 紹介元の顧問先に自分から顧問契約を持ちかける
  3. 独立の挨拶状を送って終わり
  4. 広告を先に出して待つ

話し上手になる必要も、営業マンらしくなる必要もありません。困った瞬間に頭に浮かぶ弁護士でいる、それだけです。「まだ紹介してもらえるほどではない」のではなく、「まだ思い出してもらう働きかけをしていない」だけかもしれません。腕のせいではありません。

よくある質問

弁護士が独立した直後、最初の依頼はどこから来ますか?

この記事の考え方では、勤務時代の関係者・同業・隣接士業に独立を「相談の入口」の形で知らせるところから始めます。広告は名前で検索されたときの後ろ盾として、後で整えます

弁護士は税理士や司法書士に紹介料を払ってもいいですか?

他士業からの紹介に対価を払う形は非弁提携の疑いを持たれます。広告に書かなくても同じです。お金ではなく、返しの速さと紹介元の顧客を守る姿勢で関係を作ります。個別の形は所属弁護士会に確認してください

弁護士の集客にホームページや広告は必要ですか?

必要ですが、順番が後です。紹介された人が名前で検索して見るページ(顔・分野・相談の流れ)を先に整え、広告は分野と地域を絞って、紹介の関係が回り始めてから出します

士業の交流会に出ても仕事につながりません。何が足りないのですか?

名刺交換の後に、自分から会う理由を作っていないことが多いです。「税務と法務が絡んで困った場面を教えてほしい」と聞きに行き、小さい相談を先に受けます。紹介を頼むのはその後です

紹介してもらった案件で気をつけることは?

紹介元の顧問先は、紹介元の窓口のままにしておきます。前の処理に触れるときは紹介元に先に伝えます。依頼者の了解を取り、受任と区切りの2回だけ一報し、中身は書きません

参照した情報源

  1. 特集 弁護士の業務広告の現状と課題(東京弁護士会(広報誌LIBRA Vol.14 No.3 2014/3))・確認日 2026-09-18

本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。

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