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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

提案書の作り方は「相手から聞いた話を、相手が読む順に並べ直す」こと

初めて提案書を作るとき、白紙のスライドを前にして、まず自分の紹介と制作実績から書き始める人が少なくないようです。腕をちゃんと見せないと頼んでもらえない、と考えているからではないか、というのが私の見立てです。

ただ、提案書を受け取った相手が最初に確かめたいのは、自分の困りごとが伝わっているかどうかだと私は見ています。腕を確かめるのは、そのあとです。

だから、同じ中身でも入れる順番を変えるだけで、読まれ方が変わります。提案書は、新しく文章を考える作業というより、打ち合わせで聞いた話を相手が読む順に並べ直す作業に近いものです。

入れる順番は次の7つです。この記事では、この順に1つずつ書き方を説明します。

順番入れること一言でいうと
①相手の困りごと相手が言ったことを、そのままの言葉で
②今の状態今どうしているか
③やること何をするか(やらないことも)
④やったあとどうなるか相手の場面で、何が変わるか
⑤費用と内訳総額と、その中身
⑥進め方と日程相手がいつ何をする番かも
⑦自分について実績は相手に近い1件だけ

同じ内容でも、1ページ目で反応が変わる

ホームページ制作を提案する場面で、1ページ目だけを比べてみます。

版A版B
1ページ目「私の経歴と制作実績」「営業時間外の問い合わせを取りこぼしている、と伺いました」
相手の読み方自分に関係のある話を探して、ページをめくる1行目で「そうそう、それ」と思い、続きを読む
相手の頭の中この人は何ができるのかこの人は自分の話を聞いていた

版Aの中身が悪いわけではありません。実績が並んでいるのは事実で、腕もあるのだと思います。ただ、相手が探しているのは自分の話です。版Bは、同じ提案を相手の言葉から始めただけです。

この記事は、相手が社長本人か、小さな店や事務所の担当者という前提で書いています。ひとりで受ける仕事なら、提案書を読むのは、打ち合わせで顔を合わせたその人です。誰に向けて書くかが決まっているので、聞いた話をそのまま並べ直せます。

提案書は、営業の流れの一部です。知り合ってから仕事になるまでの流れの途中に置く1枚だと考えると、全部を1枚で決めようとして力む必要がなくなります。

書き始める前に、打ち合わせで聞いたことを1枚に書き出す

パソコンで提案書の枠を開く前に、紙1枚かメモ帳に「相手が言ったこと」を箇条書きで出します。最初の手順はこれだけです。

書き出す項目は次のとおりです。

  • 困っていること
  • いつまでに形にしたいか
  • 予算の感じ(はっきり聞けていなければ「聞けていない」と書く)
  • 気にしていること、外したくないこと
  • 過去にうまくいかなかったこと

書くときは、相手の言葉をそのまま残します。

NG(言い換えてしまう)OK(相手の言葉のまま)
集客の課題新しいお客さんが紹介でしか来ない
情報発信の不足新メニューを出しても、お客さんに知らせる方法がない
ブランディング初めて来た人に、何の店か分かってもらえない

提案書の1ページ目でこの言葉をそのまま使えると、相手は自分の話だと分かります。言い換えた言葉は、きれいに見える一方で、相手が自分の話として読みにくくなります。

空いた欄は、作る前に聞き直す

書き出してみて空いた欄があったら、提案書を作り始める前に聞き直します。聞き直すのは失礼ではありません。「ちゃんと聞いて作ろうとしている人だ」と伝わりやすくなります。そのまま使える文面を載せます。

先日はお時間をいただき、ありがとうございました。 提案をまとめる前に、2点だけ確認させてください。 ①いつ頃までに形にしたいとお考えでしょうか。 ②今回いちばん外したくない点は何でしょうか。 分かる範囲で、一言ずつで大丈夫です。

予算を聞きづらいときは、「ご予算の目安があれば教えてください。なければ、内容の幅を変えた案を2つ用意します」と書けば、答えにくさが下がります。

聞いていないまま作ると、提案書は長くなる

やたの見方として書きます。聞いていないまま作ると、空いたところは自分の商品の説明で埋まります。提案書が長くなるいちばんの原因は、これだと私は見ています。

ページ数が増えて「たくさん書いたのに、反応がない」と感じるときは、相手から聞けていないことが多いのかもしれません。作り込む前に、まず1枚の書き出しを見直してください。

最初のページに書くこと:相手の困りごとと、今どうなっているか

表紙の次のページが、「ごあいさつ」「私について」「サービスの特長」になっている提案書があります。相手は、自分に関係のある話を探してページをめくります。探しているうちに、読む気が薄れてしまいます。

最初のページには、①相手の困りごとと、②今の状態の2段だけを置きます。

カメラマンが飲食店に出す場合の例です。

いただいたご相談 メニューの写真がスマホで撮ったもので、新しい料理を出しても伝わりにくい、と伺いました。

現在の状態 今は、店頭の貼り紙とSNSで告知されています。新メニューは月に1〜2品ほど出されているとのことでした。

「困りごと→今の状態」の2段で、相手が打ち合わせで話したことが、そのまま並んでいます。相手が最初に確かめるのは、この部分です。

「そうそう、それ」と思ってもらう3つのコツ

  • 相手の言葉を使う。 書き出した1枚から、そのまま持ってくる。
  • 数を勝手に盛らない。 相手が言った数だけを書く。「月に1〜2品」と聞いたなら、そう書く。「多くの新メニュー」とは書かない。
  • 原因を決めつけない。 「〜が原因です」と書かず、「〜と伺いました」と書く。原因の判断は、相手の店のことを一番知っている相手に残す。

この部分は短くていい

ここは短くて大丈夫です。長く分析を書くと、分かっていない人に説明されている感じが出やすくなります。目安は、相手が10秒で読み終える量です(私の経験上の目安で、統計ではありません)。

分析は、打ち合わせの続きで話せば足ります。紙に残すのは、相手の言ったことだけです。

やることとその結果は、作業の一覧で終わらせない

作業名の一覧だけで終わっている提案書があります。相手は、その作業が自分にとって何を意味するのか、一覧からは読み取れません。作業名の隣に、相手にとっての変化を並べます。

やることやったあとの変化
トップページ制作初めて見た人が、何の店かすぐ分かる
問い合わせフォーム設置営業時間外でも、相談を受けられる
メニューページ制作新しい料理が出るたびに、写真つきで知らせられる

左の列だけになりやすいのは、作る側が自分の作業を一番よく知っているからです。右の列は、打ち合わせで聞いた「①困りごと」から引っぱってくると、自然に書けます。

結果の書き方のNG

「御社の売上アップに貢献します」のような、誰にでも言える結果は書かないでください。誰の提案書にも書けるので、読んでも何も伝わりません。何がどう変わるかを、相手の場面で書きます。

  • NG:「集客力が向上します」
  • OK:「夜に営業時間外のお客さんから届いた問い合わせに、翌朝すぐ返事ができるようになります」

やらないことも書く

手順として、やらないことも1行で書いておきます。

今回は写真の撮影は含みません。必要な場合は、別でご相談ください。

これだけで、あとからの食い違いを防ぎやすくなります。お互いに「それも入っていると思っていた」となるのが、いちばん気まずい場面です。

案を分けるかどうかの判断基準

  • 予算の話がまだ出ていない、または相手が迷っている様子 → 内容の幅を変えた案を2つか3つ並べる(例:写真5枚の案/10枚の案)
  • 予算がはっきりしている → 1案を深く書く

案を並べる場合も、「こちらがおすすめです」と1つ決めて添えると、相手が選びやすくなります。

費用は総額だけにせず、内訳と一緒に出す

総額だけを書くと、値段の話しかできなくなります。「高いですね」「そこをなんとか」というやりとりになりがちです。内訳があれば、「ここを削れば、この金額になります」と、相手と一緒に考えられます。

内訳表の例です(金額は「◯円」で置いています。実際の金額は、ご自身の条件で決めてください)。

項目内容金額
デザイントップページと下層ページ2枚のデザイン◯円
ページ制作上記3ページの作成◯円
修正2回まで対応(3回目以降は1回◯円)◯円
公開作業サーバー設定と公開◯円
合計◯円

安く書きすぎない、高めに書いておかない

値引きされる前提で上乗せして書くのも、断られたくなくて先に下げて書くのも、どちらも相手との話を短くしてしまいます。上乗せした金額は、削る前提で見られやすくなります。先に下げた金額は、あとで戻しにくくなります。

金額は、自分の仕事の条件として書きます。自分の価値の点数ではなく、この内容をこの期間でやるための条件です。そう考えると、書きやすくなります。

取り決めは書いておく

次の3つは、提案書の段階で書いておきます。

  • 支払いの時期(例:着手時に半金、公開後に残り)
  • 修正回数を超えたときの料金
  • 途中でやめることになったときの扱い

契約やお金の取り決めの細かい判断は、個別の状況で変わります。不安がある場合は、弁護士や行政書士などの専門家に相談してください。

実績と自己紹介は最後に、相手に近い1件だけ

分かってもらおうとして、実績や経歴を何ページも足していく人がいます。足せば足すほど、読む人が自分の店に重ねる場面はなくなっていきます。私はこれを『実績並べ型』と呼んでいます。

実力を見せようとして、相手の話をする場所がなくなっている。そういう状態です。

実績は、最後のページに、相手に近い1件だけ置きます。

1件の選び方

確認すること当てはまるか
① 相手と同じ業種か、近い業種か□
② 困りごとが似ているか□
③ やる前とやったあとが、言えるか□

3つのうち多く当てはまる1件を選びます。残りの実績は、相手に聞かれたときに口頭で出せば足ります。

書くときは、「どんな困りごとで、何をして、どうなったか」を3行ほどで書きます。ここでも、③の結果は、本当に言えることだけにします。

実績がまだ少ないとき

本当のことだけを書きます。

  • 会社員時代に担当した仕事(担当した範囲を正確に書く)
  • 知人の店で手伝った仕事
  • 自分のサイトや作品として作ったもの(そう分かるように書く)

数字や事例を盛らないでください。盛った実績は、聞かれたときに答えられなくなります。相手の許可がない実績名は、名前を出さず「飲食店のサイト制作」のように書きます。

実績の量より、相手の困りごとをどれだけ正確に書けているかのほうが、先に読まれると私は考えています。

進め方と日程、出したあとの一手まで書いておく

提案書は、渡して終わりではありません。進め方と日程が書いてあると、相手は頼んだあとのことを想像できます。週単位の表にして、相手が何をする番かも書きます。

週こちらの作業相手にお願いすること
1週目打ち合わせ、構成案の作成構成案の確認
2週目デザインの下書きこの週に、写真を3枚ご用意ください
3週目修正対応修正点のご連絡
4週目公開作業公開前の最終確認

相手がやることを書いておくと、「いつまでに何を出せばいいのか」が分かり、遅れを減らしやすくなります。

返事の期限を書くのは、急かすことではない

期限を書くのは、相手が決めやすくなるからです。期限がないと、相手は決めるきっかけがないまま日が過ぎます。

◯日までにお返事をいただければ、◯月中の公開に間に合います。

このように、理由とセットで書けば、急かしているようには読まれにくいはずです。

送るメールと、数日後の確認の連絡

送るときの文面です。

お世話になっております。先日の打ち合わせを踏まえて、提案書をまとめました。 ご相談いただいた「新しいお客さんが紹介でしか来ない」という点を、1ページ目に書いています。 ご不明な点があれば、15分ほどお電話で補足しますので、お声がけください。 ◯日までにお返事をいただければ、◯月中の公開に間に合います。

数日後の確認の連絡です。

先日お送りした提案書について、気になる点はありませんでしたか。 費用の内訳の部分など、補足が必要でしたら、15分ほどお電話でお話しします。

「ご検討いかがでしょうか」だけで終わらせず、「15分ほどお電話で補足します」のように、次の場面を用意します。相手は、断るか受けるかを決める前に、聞きたいことを聞けます。

できれば会って渡す

このメディアの立場として、できれば会って渡す、または画面を見せながら説明することをすすめます。送りっぱなしより、相手の顔を見て質問を受けられます。相手が引っかかったページがあれば、その場で気づけます。

会う時間が取れないときは、短い電話やオンラインで10分だけ画面を見せる形でも構いません。

出す前に見直すチェックリスト

提案書を出す前に、次の12項目を確認してください。次の提案書でも、そのまま使えます。

区分確認することチェック
相手目線1ページ目に、相手の言葉が入っているか□
相手目線相手の名前や店名が、正しく書かれているか□
相手目線自分の紹介が、前半に来ていないか□
中身やることと結果が、対になっているか□
中身やらないことを書いたか□
中身費用に内訳があるか□
中身支払いの時期と、追加料金の条件があるか□
中身実績は、相手に近い1件に絞ったか□
体裁PDFで送る形にしたか□
体裁スマホで開いても読めるか□
体裁日付と有効期限が入っているか□
体裁返事の期限を書いたか□

全部にチェックが付いたら、あとは出すだけです。完璧にしようとして出すのが遅れるより、相手の熱が残っているうちに出すほうが、話が前に進みます。

全項目を満たさなくても、1ページ目に相手の言葉が入っているだけで、提案書の読まれ方は変わります。まずはそこから直してみてください。

よくある質問

提案書は何枚くらいにすればいいですか?

枚数の決まりはありません。相手が一度で読み切れる量を目安にし、枚数より「1ページ目に相手の話があるか」を優先してください。足したくなったら、実績や説明から削ります。

提案書と見積書は何が違いますか?

見積書は金額と内訳を示す書類です。提案書は、相手の困りごとに対して何をするか、その結果どうなるかまで書いた書類です。提案書の中に費用の内訳を入れて、見積書を別に添える形でも構いません。

提案書はWord・PowerPoint・Googleスライドのどれで作ればいいですか?

どれでも構いません。相手が開ける形にすることが大事なので、送るときはPDFにします。スマホで開かれることもあるので、文字を小さくしすぎないでください。

実績が少ないときは提案書に何を書けばいいですか?

本当にやったことだけを書きます。会社員時代の担当や手伝った仕事でも構いませんが、盛らないでください。相手の許可がない名前は出しません。実績の量より、相手の困りごとをどれだけ正確に書けているかのほうが先に読まれると私は考えています。

提案書のテンプレートを使ってもいいですか?

使って構いません。ただし、テンプレートの多くは会社紹介から始まる並びです。順番を「相手の困りごと」から始まる形に入れ替えてから使ってください。

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