対面営業・商談
個人事業主にホームページは必要か|作る前に決めておく、誰に何を見てもらうか
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
個人事業主にホームページは必要か:答えは「だれが見に来るか」で決まる
結論から書くと、必要かどうかは「名前を聞いたあとに、確かめに来る人がいるか」で決まります。サイトを作るかどうかの前に、見に来る人を具体的に思い浮かべられるか。ここを先に確かめるほうが、遠回りになりません。
この節では、作り方には入りません。まず「ホームページは何をする場所なのか」の見方を整えます。
「作れば問い合わせが来る」と考えてしまう理由
営業は苦手で、頭を下げて仕事をもらうのは気が重い。それなら、自分の代わりにホームページに仕事を取ってきてもらえないか。そう考えて「個人事業主 ホームページ 必要」と検索する人が多い、というのが私の見立てです。あくまで仮説ですが、この記事を開いた人の中にも「自分は営業が向いてないから、ホームページに仕事を取ってきてもらうしかない」と感じている人がいるかもしれません。
先に伝えておきます。営業が苦手に感じるのは、仕事の取り方を習う場がなかっただけ、ということが多いと私は見ています。性格を変える話ではありません。ホームページを「営業の代わり」に置くと期待が大きくなりすぎて、公開したあとにがっかりしやすい。なので、役割を正しく置き直すところから始めます。
実際に見に来るのは、もう名前を知っている人
小さな事業者のページを見に来る人を、場面で分けると次の3種類が中心になります。
- 紹介された人
- 名刺を受け取った人
- 見積を受け取った人
どれも、すでに名前や顔を知っている人です。知らない人が検索から偶然たどり着いて、そのまま依頼する。そういう流れは、小さな事業者のページでは期待しにくい。数字で示せる話ではありませんが、構造として考えると理由は分かります。検索結果には、同じ仕事をしている人が大手も含めて並びます。その中で、まだ何者か分からない個人のページが選ばれる理由が、初対面の時点では少ないからです。
一方、会ったあとの人は事情が違います。「この人はどんな人だろう」「頼んで大丈夫だろうか」と、すでに関心を持って見に来ます。ホームページが力を出すのは、こちらの場面です。
必要かどうかの判断基準
判断の物差しは1つです。
名前を聞いたあとに確かめに来る人が、いま月に何人くらいいるか。
正確な人数は分からなくて構いません。「先月、紹介してもらった人がいた」「名刺を渡した人が何人かいる」と、思い当たるかどうかで十分です。
- 思い当たる人がいる → 確かめる場所が要る。ホームページ(または1枚の紹介ページ)を作る価値がある
- 紹介も対面での出会いも、ほとんどない時期 → サイトを作り込むより、先に会う機会を増やすほうが早い
後者の場合、きれいなサイトを作っても、見に来る人がいません。順番は「会う → 確かめる場所がある」です。この記事の第3節から、作る前に決めることに入ります。
ホームページが見られるのは、会ったあとの3つの場面
ここでは、ホームページが実際に見られる3つの場面を具体的に見ます。3つとも共通しているのは、「会ったあと」「名前を知ったあと」ということです。

場面1 紹介されたあと、名前で検索される
「◯◯さんにお願いするといいよ」と誰かに言われた人は、連絡する前にまず確かめることがあります。検索窓に名前や屋号を入れて、何が出てくるかを見る。
このとき相手が見ているのは、たった一点です。
「この人に頼んで大丈夫か」
作品の数でも、デザインの凝り具合でもありません。何をしてくれる人で、どう進めて、問い合わせたら返事がもらえそうか。それが分かれば、安心して連絡できます。逆に、名前で検索しても何も出てこないと、紹介してくれた人の言葉だけが頼りになり、不安が残ります。紹介は、せっかく届いたのに、最後の一歩で止まることがあります。
場面2 名刺交換の帰りに開かれる
会ったその日の夜、名刺に書いたURLから見られることがあります。会話の熱が残っているうちに、「あの人は結局どんな仕事をしているんだっけ」と確かめる場面です。
ここで大事なのは、会話で話した内容と、ページの中身がずれていないことです。
NG例を挙げます。会って話したのは店舗の写真の仕事だったのに、トップに出ているのは結婚式の写真ばかり。相手は「あれ、別の人の話だったかな」と迷います。腕が悪いわけではなく、見せたいものが整理されていないだけです。でも、印象はぼやけます。
会う相手が決まっているなら、その人との会話に出てくる仕事をいちばん上に置く。これだけで、帰り道に開かれたときの納得感が変わります。
場面3 見積を受け取ったあと、家族や共同経営者に見せる
見積を受け取った依頼者は、その場で決めるとは限りません。自分以外の人に「この人に頼もうと思う」と説明することがあります。社長なら共同経営者や経理の人、個人のお客さんなら家族です。
このとき見られるページは、自分に会ったことのない人が読みます。会話の文脈がありません。だから、だれが見ても「何をする人か」が一目で分かる必要があります。
- 一文で、何をだれにする人かが書いてある
- 頼んだあとどう進むかが分かる
- 料金の考え方が分かる
依頼者が「ここを見て」と人に渡せるページ。それが、この場面で役に立つホームページです。
3つの場面から分かること
3場面とも、ホームページは入口ではなく、確かめる場所です。知らない人を連れてくる場所ではなく、会った人が安心して頼めるように支える場所。この位置づけが決まると、何を載せるかも、作る順番も決まります。
作る前に決めておく「だれに・何を見てもらうか」
ここから、作る前の準備に入ります。パソコンを開く前に、紙1枚で終わる作業です。

見てもらう相手を1人に絞る
「中小企業の皆さま」「お困りの方」では、だれにも刺さりません。『地元で工務店を営む50代の社長』くらいまで具体にします。
手順は2つだけです。
- 直近で仕事をくれた人を3人書き出す
- その中で、いちばん続いてほしい相手を1人選ぶ
「いちばん稼げた人」ではなく「いちばん続いてほしい人」で選ぶのがコツです。続いてほしい相手は、一緒に仕事をしていて楽しい、無理がない、といった理由で思い浮かぶことが多いはずです。そういう人と似た人に、次も見てもらえるページにします。
選んだ1人は、固有の名前で呼べるくらいが目安です。「Aさんが検索したら何を見たいだろう」と考えられるかどうかが、ここでの基準になります。
その人が確かめたいことを3つ書く
見に来た人が確かめたいことは、突き詰めると3つだと私は考えています。
- 何をしてくれる人か
- 頼んだらどう進むか
- いくらくらいかかりそうか
この3つに答えるページを先に作ります。ほかの情報は、全部後回しで構いません。プロフィールの生い立ちも、趣味の話も、ブログも、この3つが終わってからです。初めて頼む人は「どう進むか」と「いくらか」が見えないと、連絡を出すのに勇気がいります。先に消しておくと、問い合わせのハードルが下がります。
実績は全部並べず、その人に近いものだけ選ぶ
ここで、実績を持っている人ほどつまずきやすくなります。
NG例: 作品を何十点も並べる。相手は、どれを見ればいいのか分からない。自分に関係があるのかも判断できない。詰め込むほど、読む人は自分を重ねる場面を失います。
OK例: 相手と同じ業種・同じ悩みの事例を2〜3件だけ選ぶ。そして、各事例に「どんな相談から始まったか」を1行添える。
- 例)「開店前に、メニュー表と看板をそろえたいという相談から始まりました」
この1行があると、見に来た人は「自分の相談と似ている」と感じられます。作品の出来より、相談の入口が重なることのほうが、連絡のきっかけになります。
今つくるべきか、後回しでいいかの判断表
「ホームページが必要かどうか」を、状況ごとに整理した表です。持ち帰って、自分に近い行を探してください。
| 状況 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 紹介が月に何件か来ている | 作る | 紹介された人が、名前で確かめに来ている |
| 名刺を渡す機会が毎週ある | 作る | 名刺のURLから、会った人が見に来る |
| 見積を出す前に「資料ありますか」と聞かれる | 作る | 確かめに来る人が、もういる |
| 独立したばかりで、会う相手がまだ少ない | 1枚で足りる | 見に来る人が少ないので、作り込む効果が小さい |
| 仕事の中身がまだ定まっていない | 1枚で足りる | 固まる前に作り込むと、直す手間が増える |
| 紹介も対面での出会いも、ほぼない | 先に会う | 見に来る人がいない。会う機会を増やすほうが早い |
| 作り込みに何か月もかけている | 先に会う | 直すほど、会いに行く日が後ろにずれる |
作ったほうがいい状況
次のどれかに当てはまるなら、確かめに来る人がもういます。
- 紹介が月に何件か来ている
- 名刺を渡す機会が毎週ある
- 見積を出す前に「資料ありますか」と聞かれる
当てはまる人は、後回しにするほど「確かめたけれど何も出てこなかった」人が増えます。最低限のページを先に整えるのが得です。
今は1枚の紹介ページで足りる状況
独立したばかりで会う相手がまだ少ない。仕事の中身がまだ定まっていない。この時期は、SNSのプロフィール欄や、無料で作れる1枚ページで十分です。前の節の「確かめたい3つ(何をしてくれる人か/どう進むか/いくらくらいか)」の答えだけを書けば足ります。
仕事の中身が固まっていない時期に、凝ったサイトを作っても、あとで全部書き直しになりがちです。1枚なら、書き直す手間も小さく済みます。
NG:作ることに何か月もかけて、その間だれにも会わない
いちばん避けたいのが、これです。デザインを直すほど、会いに行く日が後ろにずれます。
- 「もう少し整えてから、声をかけよう」
- 「サイトができたら、紹介をお願いしよう」
こう考えて、会う予定を後ろに送る。気持ちは分かりますが、ホームページは会った人のためのものです。会う人がいないまま磨いても、見に来る人はいません。迷ったら、1枚で出して、先に会う。それから直すほうが、結果として早くなります。
最低限ここだけ載せる:確かめに来た人のための5項目
ページの中身は、次の5項目があれば最低限伝わります。
チェックリスト
- ① 何を・だれに(一文で言う)
- ② 事例2〜3件(相手に近いもの)
- ③ 頼んだあとの流れ
- ④ 料金の目安の出し方
- ⑤ 問い合わせ方法(1つだけ)
事例はここまでで説明した通りなので、ほかを順に見ます。
一文で言う「何を・だれに」
肩書きだけで止めないのがポイントです。
- NG:「グラフィックデザイナーです」
- OK:「飲食店のメニュー表と看板を、店主と一緒に作るデザイナーです」
「グラフィックデザイナー」では、どんな相談をしていいのか、見た人には分かりません。「だれの、何を、どうする」まで入れると、相談する側が自分の悩みを重ねられます。自分の仕事に置き換えて、一文で言い切ってみてください。
頼んだあとの流れ
相談→打ち合わせ→見積→制作→納品、のように、4〜5段階で書きます。
初めて頼む人は、金額や出来より「どう進むか分からない」ことで不安になりやすい。流れを先に見せておくと、「自分でも頼めそうだ」と感じてもらえます。各段階に一言、「相談は無料です」「見積は打ち合わせの翌日までにお出しします」のように、自分が守れることだけを書き添えると安心感が増します。守れない約束は書かないでください。
料金の目安の出し方と問い合わせ口
料金は、総額を1つ置くだけにしません。「何に、どれくらいかかるか」の分け方を見せます。たとえば「打ち合わせ・制作・修正・納品」と項目を分けて、どこに手間がかかるのかを示す。具体的な金額はこの記事では示せないので、自分の価格表から書いてください。金額を全部出せない場合でも、「見積の出し方」だけ書くと、相談しやすくなります。
問い合わせ方法は、1つに絞ります。メール、電話、フォームが並んでいると、迷って止まる人がいます。さらに「まずは何を送ればいいか」まで書きます。
- 例)「まずは、お仕事の内容と希望の時期を、メールでひとこと送ってください」
最初の1通のハードルが下がります。
ホームページを「待つ場所」にしない使い方
ここまでで、ページの中身は決まりました。最後の仕上げは、公開したあとの使い方です。

よくある流れ
想像しやすい流れはこうです。ページを公開する。問い合わせフォームの通知を待つ。来ない。直す。また待つ。そのうち、自分から連絡する理由がなくなり、だれにも会わない週が続きます。
これは、問い合わせが来るのを待つのが前提で、自分から相手を探す時間を取っていない状態です。営業が苦手だと感じる人ほど、ホームページがその「待つ」を後押ししてしまうことがある、と私は見ています。待つこと自体は悪くありませんが、待つだけで終わると、見に来る人が増えません。
そこで、ホームページを「待つ場所」から「会ったあとに使う道具」に変えます。
会ったあとに送る一文にURLを入れる
いちばん手軽で効果が出やすいのは、お礼の連絡にURLを添えることです。
本日はありがとうございました。お話に出た店舗のメニュー表の事例を、こちらにまとめています。(URL)
会った人が見に来る理由を、こちらから作ります。「あとで見ておいてください」という押しつけではなく、「話に出た内容がここにあります」という案内です。相手にとっては、会話の続きを確かめる材料になります。
このとき、ページの上にはその人との会話に出た事例を置いておく。前の節で触れた「会話とページのずれ」を、ここで防げます。
紹介を頼むときの道具にする
もう1つの使い方は、紹介を頼むときです。
もし合いそうな方がいたら、このページを渡してもらえたら助かります。
こう言えると、紹介してくれる人の手間が減ります。自分の仕事を口で説明する必要がなく、URLを送るだけで済むからです。紹介を頼むのは気が引ける、という人も多いと思います。けれど、「頼む」というより「渡しやすい道具を預ける」と考えると、言い出しやすくなります。
最小行動:今週会った人のうち1人に、URLつきのお礼を送る。 これだけです。
会う・話す・頼まれるまでの全体の順番は、フリーランスの営業の進め方にまとめています。ホームページは、その順番のうちの「確かめる」場面を支える1つの道具です。
今日やること:作る前に答える5つの質問
作り始める前に、次の5つに答えてみてください。紙に書き出すだけで構いません。
5問チェックリスト
- このページを見に来るのは、だれか(1人の名前で言えるか)
- その人は、どの場面で見に来るか(紹介後/名刺交換後/見積後)
- その人が確かめたい3つは何か(何をする人か/どう進むか/いくらくらいか)
- 近い事例を2〜3件選べるか
- 見たあと何をしてほしいか(連絡方法は1つか)
答えられなかった質問があるときの次の一手
答えに詰まったところが、いまやることです。
| 答えられなかった質問 | 次の一手 |
|---|---|
| ①②(だれが、どの場面で見るか) | まだ作らない。先に会う予定を1つ入れる |
| ③④(確かめたいこと、事例) | 直近の依頼者に「なぜ頼んでくれたか」を聞く |
| ⑤(してほしいこと) | 問い合わせ口を1つに減らす |
③④が答えられないときの「なぜ頼んでくれたか」は、自分では分からない強みが見える質問です。自分では当たり前だと思っていた対応が、相手には決め手だった、ということもあります。聞く相手がいない場合は、直近の仕事で相手から言われた一言を思い出してみてください。
最後に
ホームページは営業の代わりではありません。会った人が安心して頼むための場所です。性格を変えて売り込む必要はなく、会ったあとにURLを1本添えるところから始めればいい。それで、ページは「待つ場所」から「会話の続きを置く場所」に変わります。
よくある質問
個人事業主はホームページなしでも仕事は取れますか?
取れます。紹介や対面の出会いが中心なら、名刺とSNSのプロフィール、1枚の紹介ページで足りる時期もあります。ただ、紹介された人が名前で調べたときに何も出てこないと、確かめようがなく不安が残ります。最低限「何を・だれに・どう頼めばいいか」が分かるページは用意しておくとよいです。
ホームページとSNS、どちらを先に作ればいいですか?
どちらが先かより、「だれが、どの場面で見に来るか」で決めます。会った人にあとから送る場所が要るなら、まず1枚の紹介ページ。日々の仕事ぶりを見てもらいたい相手がいるならSNSです。両方を一度に整えようとして、人に会う時間が減るのは避けてください。
ホームページは自分で作るべきですか、外注すべきですか?
先に「だれに何を見てもらうか」と載せる5項目を、自分で決めてから判断します。中身が決まっていないまま外注すると、見た目は整っても、確かめに来た人の疑問に答えないページになりやすいです。中身が決まっていれば、無料のページ作成サービスで自作しても、最低限は伝わります。
ホームページに料金は載せたほうがいいですか?
確かめに来る人は「いくらくらいか」を知りたがっていることが多いです。総額を1つ載せるより、何にどれくらいかかるかの分け方や、見積の出し方を示すと相談しやすくなります。金額をどこまで出すかは、自分の仕事の幅に合わせて決めて構いません。
ホームページを作ったのに問い合わせが来ません。どうすればいいですか?
ページの直しより先に、見に来る人を増やす動きを確認します。会った人へのお礼にURLを添える、紹介を頼むときに「このページを渡してください」と伝える、など、自分から見に来る理由を作ります。公開して待つだけだと、名前を知らない人には見つけてもらいにくいです。
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