対面営業・商談
保守契約の提案書|ひとりで作れる1枚の中身と、出す時期
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
保守契約の提案書は、A4一枚・5項目。出すのは納品前
保守契約の提案書に要るのは、A4で1枚、中身は5項目です。
- 何を見るか
- どのくらいの頻度で見るか
- 何が起きたらどう動くか
- 月いくらか
- いつから・いつまでか
多いと感じるかもしれませんが、これで全部です。作り込む必要はありません。出すタイミングは納品の前です。理由は後半の章で詳しく説明します。まずは1項目ずつ、書き方の見本を次の章で出します。
話を切り出せない理由
保守契約の話を切り出せないまま、案件がそのまま終わっていませんか。欲張りに見えるのが怖いからとは限りません。納品を「仕事の区切り」だと決めていて、続きの話をする場所を自分で用意していないだけ、という人も多いようです。「納めたあとに保守の話を出すと、まだお金を取りたがっているように見えるかもしれない」と感じて、言い出せずにいるのかもしれません。相手が気にしているのは、実は金額よりもこの先の続きがあるかどうかであることが多いようです。心理的なハードルの外し方や声のかけ方は保守契約を切り出すタイミングと言い回しで扱っているので、ここでは1枚の中身と出す判断に絞ります。
今日できることは1つだけです。次に見積を出す1社に、「納品後の保守(別途ご相談)」の1行を足すこと。それだけで、続きの話をする場所ができます。
先方から見た保守の意味
保守契約は、先方にとって「何かあったら誰に連絡すればいいか」が決まっている安心を買う話です。腕を疑っているわけではありません。
むしろ逆で、保守の提案が一切ないほうが「このあと何かあったらどうすればいいのだろう」という不安を先方に残します。納めたものに自信がないから保守を提案しない、と受け取られることもあります。
保守を提案するのは、納めたものに責任を持ち続けるという宣言でいい。そう考えると、出す・出さないで悩む時間が減ります。
連絡先が分かっていて、月にいくら払えばそこを見てもらえるかまで分かっていれば、あとは日常の中で気にする必要がなくなります。保守契約は、先方の「気にしなくていい状態」を作る契約です。
1枚に入れる5項目と、書き方の見本
まず表で全体像を見てください。

| 項目 | 書く中身 | 書き方の例 | やりがちなNG |
|---|---|---|---|
| 何を見るか | 確認する範囲を具体的に書く | 月1回、表示崩れとリンク切れを確認 | サイトを守ります |
| どのくらいの頻度か | 回数か曜日で固定する | 毎月第1営業日に確認 | 随時対応します |
| 何が起きたらどう動くか | 発生時の連絡から着手までの流れ | 連絡から2営業日以内に一次対応 | すぐ対応します |
| 月いくらか | 金額を中身と並べて書く | 月額◯円(確認作業・小さな修正・相談窓口) | 月額◯円のみ |
| いつから・いつまでか | 開始日と更新の考え方 | 納品月の翌月開始、1年ごとに更新 | 特に決めない |
「サイトを守ります」「すぐ対応します」は、書いた本人は気持ちを込めたつもりでも、相手からは何をしてくれるのか分かりません。動詞と回数と対象を具体的に書くのがコツです。
含む・含まないを分けて書く
5項目を埋めたら、必ずもう1段落を足します。含むことと含まないことを分けて書く段落です。

例えば、文言の差し替えは月2回まで含む。新しいページの追加は別見積。写真の入れ替えは含むが、デザインの変更は別見積。このように具体的な作業名で線を引きます。
ここを書かないと、「保守契約なんだから全部やってくれるはず」と受け取られます。作業を始めてから「これは保守の範囲外です」と言うと、相手は約束を破られた気分になりかねません。揉める前に、最初の1枚で線を引いておきます。
線引きの言葉に迷ったら、「作業の名前」で分けると決めやすくなります。「差し替え」「修正」「確認」は保守の範囲、「追加」「新規作成」「設計変更」は別見積、という分け方です。動詞を見れば範囲が分かる形にしておくと、あとから相手に説明するときも一文で済みます。
金額は中身と並べて書く
総額だけをぽんと出すと、値段の話にしかなりません。月額◯円(確認作業・小さな修正・相談窓口)のように、金額の右側か下に、何にお金を払っているのかを書きます。
具体的な金額は案件ごと、地域ごと、業界ごとに違うので、ここでは数字を示しません。普段の見積もり単価をもとに、枠に当てはめてください。
職種別の例
保守の中身は職種によって変わります。
- Web制作: 更新作業と不具合対応
- デザイナー: 販促物の季節ごとの差し替え
- エンジニア: 障害発生時の一次対応
- 施術者・講師: 定期フォロー枠に置き換える(月1回の様子見連絡など)
自分の仕事に近いものを選び、5項目の書き方をそのまま当てはめてください。
どの職種でも共通しているのは、「見る対象」と「動く条件」を具体的な言葉にすることです。抽象的な安心感を売るのではなく、決まった動作を売る、と考えると項目が埋めやすくなります。
出す時期は「納品の前」。納めたあとでは遅い理由
NG例:納品後に出しそびれる

よくある失敗は、納品してお礼を言われた瞬間に区切りがついてしまい、保守の話を出しそびれることです。1か月後に思い出して切り出すと、「今さら」という空気になり、さらに出しづらくなります。時間が経つほど、切り出すハードルは上がっていきます。
いちばん出しやすいタイミング
出しやすいのは、最初の見積を出すときか、納品の1〜2週間前の打ち合わせです。まだ「終わった」という区切りがついていないので、続きの話を自然に置けます。
納品前に出す理由はもう1つあります。納品前は、まだ「これから続く関係」という空気が残っています。納品した瞬間にその空気は「終わった関係」に切り替わります。同じ1枚の提案書でも、空気が変わる前に渡すか後に渡すかで、相手の受け取り方はまるで違います。
言い回しは別記事にまとめています
見積の一文から納品日の確認まで、段階ごとの言い回しは保守契約を切り出すタイミングと言い回しで詳しく扱っています。ここから先は、断られたあとの動き方と、契約書にする際の注意点に絞って説明します。
すでに時間が経った相手にも
納品から時間が経ってしまった相手にも、切り出し方はあります。近況を尋ねる一言と、気になった点を1つだけ添えると、いきなりの営業には聞こえにくくなります。
「気になった点」は、あら探しをする必要はありません。表示速度が少し遅く感じた、更新が止まっているように見えた、程度で十分です。専門家として見て気づいたことを1つ伝える、という姿勢のほうが、相手にも自然に届きます。
毎回いちから作らないための「自分用ひな型」の残し方
差し替えられる形で保存する

1社目で作った1枚を、社名・金額・対象だけ差し替えられる形で保存しておきます。変える欄(社名・金額・対象・開始日)と、変えない欄(何を見るか・頻度の考え方・含む含まないの基本方針)を色分けしておくと、2社目からは数分で埋め終わります。
質問を先に書き足していく
提案書を渡したあとに相手から出た質問は、そのまま次回のひな型に書き足しておきます。「休日は対応しますか」と聞かれたら、対応時間の欄を追加する。「途中で解約できますか」と聞かれたら、更新・解約の欄に一文足す。
これを繰り返すと、2社目、3社目と質問される回数が減っていきます。相手から見ても、最初から疑問に先回りして答えてある提案書のほうが安心できます。
ひな型を育てるという発想を持っておくと、負担の感じ方が変わります。1枚を完璧に作ろうとせず、まず出す。出したあとに聞かれたことを書き足す。この繰り返しで、1年経つころには、誰に渡してもほとんど質問が出ない1枚に育っています。
提案の状況を一覧で残す
提案書を出しっぱなしにすると、誰にいつ渡したか、返事を待っているのか忘れます。表で管理します。
| 相手名 | 納品日 | 提案日 | 返事 | 次に連絡する日 |
|---|---|---|---|---|
| A社 | 4/10 | 4/3 | 検討中 | 4/24 |
| B社 | 5/2 | 4/25 | 契約 | - |
| C社 | 5/20 | (未提案) | - | 5/18までに渡す |
「次に連絡する日」の列を必ず埋めておくと、連絡しそびれる型から抜けやすくなります。
提案が通ったあとの契約書で見落としやすいこと
提案書と契約書は別物
提案書は「この内容でどうか」を伝える紙で、契約書はお互いが守る約束を残す紙です。役割が違います。提案書に書いた「何を見るか」「含む・含まない」「期間」は、そのまま契約書にも写します。提案書と契約書で内容がずれていると、あとで「言った・言わない」の原因になります。
提案書の段階では口頭のやりとりで多少ぼかしていた部分があっても、契約書にする段階では言葉を揃え直します。「だいたい月1回」と話していたなら、「毎月第1営業日」のように、数え方が1通りに決まる書き方に直します。曖昧な言葉のまま契約書に写すと、あとで「思っていた頻度と違う」というすれ違いが起きやすくなります。
印紙税がかかる場合がある
特定の相手と継続的に生じる取引の基本となる契約書は、一定の条件を満たす場合に印紙税の対象になり得て、税額は1通につき4,000円です。ただし、契約書に記載された契約期間が3か月以内であり、かつ更新の定めのないものは除かれます。
保守契約で更新の定めを入れる場合は、この対象に当たるかどうか(契約の内容によっては別の種類の文書に当たることもあります)を一度確認しておくと安心です。自分の契約がこれに当たるかどうかの個別の判断は、税務署や税理士に相談してください。
更新とやめ方を決めておく
自動更新にするのか、毎年内容を見直すのかを、最初に決めて契約書に書いておきます。やめるときにいつまでに連絡すればよいかという期限も書いておきます。ここを書いていないと、実際にやめたいと言われたときに、いつから止めればいいのか分からず気まずくなります。
契約書を作るのが初めての場合は、いきなり自分で全部組み立てようとしなくて構いません。提案書に書いた5項目と、更新・解約の条件をリストにして、契約書のひな型を持っている人(税理士や、詳しい知人)に見てもらう形で十分です。自分の仕事は、何を約束するかを決めることで、契約書の言葉を整えることではありません。
断られても終わりにしない。保守の代わりに残せるもの
スポット対応の料金表を渡す
「今は保守までは要らない」と言われることもあります。そのときは、スポット対応(単発でお願いしたときの料金表)だけ渡しておきます。契約は結ばなくても、困ったときにどこに連絡すればいいかは相手の手元に残ります。
3か月後に様子を聞く
納品から3か月後に、1回だけ様子を聞く連絡を入れる日を、その場でカレンダーに入れておきます。
「その後、サイトの調子はいかがですか。何か気になる点があれば、遠慮なくご連絡ください。」
この一文だけで十分です。売り込みではなく、様子伺いとして届きます。
断られたことは腕の評価ではない
保守を断られたことは、腕の評価ではありません。予算を決める時期でなかったり、社内で稟議を通す手間を避けたかったりと、先方の事情で決まっている場合も多いです。断られた直後に自分の実力を疑う必要はありません。
断られた提案書も、捨てずに残しておきます。半年後、先方の担当が変わったり、別のタイミングで同じような案件が発生したりすることもあります。そのときにもう一度渡せるよう、提案の状況を管理する表に「今は不要」とだけ書いて残しておくと、思い出したときにすぐ動けます。
単発の案件を次につなげていく流れ全体は、フリーランスの営業の仕方でまとめています。保守契約は、その中の1つの場面にすぎません。
よくある質問
保守契約の提案書はいつ出すのがいいですか?
納品の前がいちばん出しやすい。最初の見積に1行入れておき、納品前の打ち合わせで1枚を渡す。納品後だと区切りがついて切り出しづらくなる
保守契約の提案書には何を書けばいいですか?
何を見るか・頻度・何か起きたときの動き・月額・期間の5項目。含む作業と含まない作業を必ず分けて書く
保守契約書に印紙は必要ですか?
継続的な取引の基本となる契約書に当たる場合、一定の条件を満たすと1通4,000円の印紙税がかかる。契約期間3か月以内で更新の定めがないものは除かれる。個別の判断は税務署や税理士に相談を
納品したあとに保守を提案しても失礼になりませんか?
失礼にはならない。近況確認と気になった点を1つ伝える形で切り出すと、売り込みに聞こえにくい
保守契約を断られたらどうすればいいですか?
スポット対応の料金表を渡し、3か月後に様子を聞く日を決めておく。断られたことは腕の評価ではない
参照した情報源
- No.7104 継続的取引の基本となる契約書(国税庁)・確認日 2026-09-30
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