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このシリーズの全体像 対面営業の作法・人脈術 完全ガイド
お客様の家を訪問するマナーは、玄関・靴・座る場所・帰りのひと言の4つで足ります
結論から書きます。仕事でお客様の自宅に上がるときに押さえる場面は、次の4つです。
- 玄関:呼び鈴を押す前にコートを脱ぎ、早く着いたら近くで待つ
- 靴:前を向いて上がり、膝をついて向きを変え、玄関の脇に寄せる
- 座る場所:勧められてから座る。示された場所がその家での正解
- 帰りのひと言:時間になったら自分から切り出し、お礼と次の約束を玄関で言う
そして、どの場面でも一番上に置くルールは一つです。家の人が案内してくれたら、その案内に従う。
見積の打ち合わせ、出張撮影の下見、相続や税の相談。仕事で初めてお客様の自宅に行くことが決まると、不安になる人は多いと思います。
この記事は、作法を暗記するためのものではありません。そのまま使える言い方と、迷ったときの判断の順番を渡すための記事です。会ってからの作法全体は、対面営業の作法の全体像で別にまとめています。
家に人を迎える側が気にしていること
家に人を迎える側が気にしているのは、靴の向きより、床や畳を汚されないか、予定より長居されないか、暮らしの中まで踏み込まれないか、ではないか、と私は見ています。これは公的な調査に基づく話ではなく、仮説です。
作法の多くは、こうした家の側の事情を先回りして減らすための動きだと考えると、覚える量がぐっと減ります。靴を脇に寄せるのは、出入りしやすいように。長居しないのは、予定を崩さないように。理由が分かれば、決まりを忘れても自分で組み立て直せます。
作法は家ごとに違う。迷ったら聞いていい
この記事に書く作法は、あくまで一般に言われている目安です。公的機関が決めた規則ではありません。家庭や地域によって違います。
- スリッパを出さない家がある
- 「靴はそのままで大丈夫ですよ」と言う家がある
- 座る場所を最初から決めている家がある
だから、迷ったら聞いていいです。「こちらで靴を脱いでよろしいでしょうか」と聞く人を、失礼だと感じる家の人は少ないと思います。知ったかぶりで違う動きをするより、聞くほうがずっと落ち着いて見えます。
当日の迷いは前日の確認で減る
作法は調べているのに、駐車場があるか、何人で迎えてくれるのか、どれくらいの時間を見ておけばいいのかは、お客様に聞いていない。初めて個人宅に行く人には、こういう状態がよくあると思います。玄関先で「車はどこに停めよう」「何人いるんだろう」と慌てるのは、会う前に確かめられることを確かめていないからです。
抜ける最小の行動は、前日にメッセージを1通送ることです。文面は次の章に置きました。
訪問の前日にやること|確認メッセージ1通と持ち物
前日に送る確認メッセージの文例

前の晩に「お客様 宅 訪問 マナー」で記事を何本も開くと、書いてある内容が少しずつ違っていて、かえって不安が増えます。会社で営業の流れを教わらないまま独立した人ほど、そうなりやすい、と私は見ています。作法を知らないことそのものより、失礼を指摘されたときに、それを自分の資質の証拠にしてしまうのが怖い、という人が多いと私は見ています。ただ、作法は暗記しなくていいです。分からなければ聞いていいですし、聞くのは仕事ができる人のやり方だと私は思います。
確かめる項目は、駐車場、会うのは何名か、かかる時間、作業で床が汚れるかどうかです。次の文面を、仕事に合わせて変えて使えます。
〇〇様
お世話になっております。△△です。明日14時に伺います。
念のため、3点確認させてください。 ・お車はどちらに停めればよいでしょうか。 ・当日お会いするのは、〇〇様お一人でしょうか。 ・お時間は1時間ほどを考えておりますが、ご都合はいかがでしょうか。
どうぞよろしくお願いいたします。
床が汚れる可能性のある仕事(リフォームの採寸、機材を運び込む撮影など)なら、1行足します。
作業で床や壁に触れることがありますので、養生をさせていただいてもよろしいでしょうか。
このメッセージは、作法の確認というより、家の人が当日の心づもりをするための連絡です。時間の目安が先に伝わるので、あとで切り上げるときも言いやすくなります(帰りの章で使います)。
持ち物チェック
個人宅に上がる日の持ち物は、次のとおりです。
- 替えの靴下(上がる前にはき替えられるように)
- 脱ぎはきしやすい靴
- 資料と筆記具
- 必要なら、床を保護する養生シートや、機材を置くための敷物
素足で上がるのは避けるのが一般的とされています。靴下は見落としがちです。穴のあいた靴下や、かかとが薄くなった靴下で上がるのは避けたほうがいいです。玄関で脱いだ足元は、思った以上に目に入ります。ひもを結ぶ靴や、ブーツのように脱ぐのに時間がかかる靴も、玄関で時間を取りやすいので、今回は避けたほうが無難です。
服装と匂いの点検
玄関で靴を脱ぐ前提で、靴と靴下を選びます。業種によって服装の決まりは違うので、ここでは細かく触れません。見るのは、靴と靴下が清潔かどうかだけです。
もう一つは匂いです。たばこや強い香水の匂いは、家の中に残りやすいものです。訪問の前は吸わない、香りは控えめにする。この2つで足ります。
玄関でのふるまい|呼び鈴を押す前から靴を脱ぐまで
呼び鈴を押す前にやること

コートは、呼び鈴を押す前に外で脱ぐのが一般的とされています。汚れのついた外側が内側に来るように裏返して軽くたたみ、腕にかけておきます。理由は、外のほこりを家に持ち込まないため、玄関で家の人に手間を取らせないため、と言われます。
約束の時間より早く着いたときは、呼び鈴を押さずに、近くで時間を合わせるのが無難です。個人宅は、直前まで片づけや準備をしていることがあるからです。何分前がいいか、という決まった数字は、ここでは書きません。家ごとに違うからです。相手の準備を考えて、少し待つくらいがちょうどいいと思います。
靴の脱ぎ方の手順
一般に言われる手順は、次の3段です。
- 靴を脱いで、前を向いたまま上がる
- 上がったあと、膝をついて、靴の向きを変える(つま先を玄関のドアの方へ)
- 靴を玄関の脇(端)に寄せる
靴を後ろ向きに脱いで上がる、真ん中に脱ぎっぱなしにする、は避けたいところです。ほかの人の出入りの邪魔になるからです。
ここで大事なことが一つあります。家の人が「そのままで大丈夫ですよ」と言ったら、その言葉に従ってください。向きを直すのは、家の人に気を遣わせないための動きです。「直さなければ失礼になる」と考えて、勧められても直し続ける必要はありません。
スリッパと荷物
スリッパは、勧められたら履く。この程度に覚えておけば十分です。細かい作法は家ごとに違うので、書きません。出されなかったら、靴下のまま上がります。そのために、清潔な靴下と替えを用意しておきます。
荷物はカバンを床に置きます。気をつけたいのは、外で地面に置いたカバンの底を、ソファや机の上に乗せないことです。外の汚れがそのまま家具につきます。置き場所が分からないときは、「カバンはここに置いてもよろしいですか」と聞けば済みます。
部屋に通されたら|座る場所と荷物・資料の置き方
勧められてから座る
部屋に通されても、先に座らないでください。「どうぞ」と言われてから座ります。
座る場所の目安として、入口に近い側が下座とされています。これは一般論です。和室では、敷居や畳の縁を踏まないとされることもあります。ただ、家の人が「こちらへどうぞ」と示した場所が、その家での正解です。目安と違っても、示された場所に座ります。
先に座ってしまったときの立て直し
緊張していて、気づいたら先に座っていた。そういうこともあります。そのときは、固まらずにひと言で戻します。
失礼しました、こちらでよろしいでしょうか。
黙って固まるより、ひと言で戻すほうが、印象は崩れにくいと私は思います。相手は作法を細かく採点しているとは限らず、「この人は家の人の言葉を聞いてくれる人か」を見ているのではないか、と私は見ています。
資料・パソコン・道具を広げる前のひと言
座ったあと、いきなり資料やパソコンを広げないでください。家の机は、その家の暮らしの場所です。広げる前に聞きます。
テーブルをお借りしてもよろしいですか。 機材をここに置いても大丈夫でしょうか。
職人やカメラマンのように道具が多い仕事なら、なおさらです。三脚、ライト、工具箱、測定器。床や机に置く前に、置いてよい場所を聞きます。「どこに置けばいいですか」と聞かれて、嫌な気持ちになる家の人は少ないと思います。反対に、聞かずに置かれると気になる家の人は多いのではないか、と私は見ています。
家の中ならではの場面|家族・ペット・お手洗い・写真
家族やペットが入ってきたとき
打ち合わせの途中で、家族が入ってきたり、ペットが近づいてきたりすることがあります。そのときは、話をいったん止めて、会釈とあいさつをします。
お邪魔しております。〇〇と申します。
子どもやペットに触れるのは、家の人の様子を見てからです。触っていいかどうかは、家の人が決めることです。気づかないふりをして説明を続けると、家族を無視されたと感じる人もいるので、避けたほうがいいです。
お手洗いを借りたいとき、飲み物を出されたとき
お手洗いを借りたいときは、遠慮せずに聞いてください。
お手洗いをお借りしてもよろしいでしょうか。
我慢して集中できなくなるより、聞くほうがずっといいです。
飲み物を出されたら、勧められてからいただく、くらいに覚えておけば十分です。決まりとしては書きません。口をつけるかどうかも、家の人の様子と、その場の流れで決めればよいと思います。
家の中を見回さない、写真は撮る前に断る
施工や撮影で、写真が必要になることがあります。そのときは、撮る前に断ります。
この部分を撮らせていただいてもよろしいですか。
目的と関係のない部屋や棚は、じろじろ見ないでください。家の人にとって、見られたくないものが映り込むのは落ち着かないことだと思います。目的に必要なものだけを見る。これが、受け手の目線で見たときの基本です。
帰るときのひと言と、玄関での引き際
切り上げは自分から言う

前日のメッセージで「1時間ほど」と伝えてあれば、その時間になったとき、こちらから切り出せます。
お時間になりましたので、今日はこのあたりで失礼いたします。
相手から「そろそろ……」と言わせてしまうのは、避けたいところです。言いにくいことを家の人に言わせてしまうからです。話が盛り上がっていても、続きは次回の約束にします。
玄関でのひと言の文例
玄関では、お礼と次の約束をひと続きで言います。
今日はご自宅にお邪魔させていただき、ありがとうございました。見積は〇日までにお送りします。
ここで話が戻って長引く、というのは避けたいところです。玄関で立ち話になると、家の人が立ったままになってしまいます。言いたいことは、帰ったあとのメッセージに回します。
コートは、外に出てから着る、とよく言われます。ただ、寒い日に「どうぞ中でお召しください」と勧められたら、中で着てもかまいません。ここでも、家の人の案内に従えば足ります。
帰ったあと当日中に送るお礼
帰ったあとは、当日中に短いお礼を送ります。お礼だけで終わらせずに、次に連絡する日を入れてください。
〇〇様
本日はお忙しい中、ご自宅にお招きいただきありがとうございました。 本日うかがった内容をもとに、見積を〇日までにお送りします。 どうぞよろしくお願いいたします。
次の連絡日が書いてあると、家の人は「いつ届くのか」を待たずに済みます。こちらも、その日までにやることがはっきりします。
逆に、お礼を言って終わりになる形を、教科書では「お礼だけ型」と呼んでいます(お礼のやりとりで区切りがつき、そこから自分で次のひと言を切り出せない)。玄関で次の約束を言い、当日中に次の連絡日を送るのは、この形に止まらないための動きです。
持ち帰り用|お客様の家を訪ねるときの確認チェックリスト
| 場面 | やること | 迷ったときの判断 |
|---|---|---|
| 前日 | 確認メッセージを送る(駐車場・会う人数・時間・床の汚れ) | 聞きにくいことほど前日に聞く |
| 到着前 | 替えの靴下を持つ。コートは呼び鈴の前に脱ぐ。早く着いたら近くで待つ | 家の人は直前まで準備していると考える |
| 玄関 | 前を向いて上がり、靴は脇に寄せる。スリッパは勧められたら履く | 「そのままで」と言われたら従う |
| 部屋 | 勧められてから座る。道具を置く前に聞く | 示された場所が正解 |
| 家の中の出来事 | 家族やペットにあいさつ。お手洗いは聞いてから。写真は撮る前に断る | 触れる、見る、撮る前に聞く |
| 帰り | 時間になったら自分から切り出す。玄関でお礼と次の約束を言う | 玄関で話を戻さない |
| 当日中 | お礼と次の連絡日を送る | 連絡日を書いておく |
前日〜到着まで
- 確認メッセージを送った
- 駐車場を確かめた
- 替えの靴下を持った
- コートは呼び鈴の前に脱いだ
- 早く着いたら、呼び鈴を押さず近くで待つ
玄関〜部屋
- 前を向いて上がり、靴は脇に寄せた
- 勧められてから座った
- 道具を置く前に聞いた
帰り〜当日中
- 時間になったら自分から切り出した
- 玄関でお礼と次の約束を言った
- 当日中にお礼と次の連絡日を送った
迷ったときは、相手の案内に従えば足ります。
よくある質問
お客様の家を訪ねるとき、手土産は必要ですか?
決まった正解はありません。打ち合わせが目的なら、相手との関係で決めればよいです。迷ったら、持たずに、言葉のお礼を丁寧にするほうを選んでもかまいません。
スリッパを出されなかったらどうすればいいですか?
出されなければ、靴下のまま上がります。そのために、清潔な靴下と替えを用意しておきます。自分からスリッパを求めなくてかまいません。
「靴はそのままでいいですよ」と言われたら、揃え直さないと失礼ですか?
相手の案内に従ってかまいません。この記事の作法は一般に言われる目安で、家ごとの決まりが優先されます。
約束の時間より早く着いてしまったら?
呼び鈴は押さず、近くで時間を合わせるのが無難です。個人宅は直前まで準備をしていることがあるからです。
帰り際に話が盛り上がって長引きそうなときは?
事前に伝えた時間を目安に、自分から「今日はこのあたりで」と切り出します。続きは次回の約束として、玄関で日程を決めます。
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