対面営業・商談
お客様の質問に答えられないとき|その場での返し方と、あとで答える連絡
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
お客様の質問に答えられないときは、「いま分からない」と言って、いつ答えるかを約束すればいい
先に結論です。答えに詰まったら、いま正確には答えられないと伝えて、何を確かめるかと、いつ返すかを言います。それだけで、その場は終わります。
この記事では、その一文の言い方、詰まったときにやってしまいがちな埋め方、聞き返し方、あとで答える連絡の文面までを順番に渡します。想定しているのは、メーカーや協力先、専門家に確かめながら、一人で仕事をしている人です。「上司に確認します」が使えない場面を前提に書きます。
答えに詰まった瞬間、自分に言い渡していること
施術の途中で「これ、市販のものと何が違うんですか」と聞かれる。打ち合わせで「この素材、屋外でも大丈夫ですか」と聞かれる。用意してきた説明のどこにもない質問で、言葉が出なくなる。
このとき頭の中で、「その場で答えられなかったら、この人は分かっていないと思われる。答えられないのは、自分の腕が足りないからだ」と言い渡している人が多いと、私は見ています。プロじゃないとばれた、と受け取る人もいるはずです。
これは読者の方の本心を決めつける話ではありません。当てはまらない方は読み飛ばしてください。当てはまる方には、先に言っておきます。腕は本物のまま、答えに詰まることはいくらでも起きます。
詰まったのは、質問が用意した説明の外から来たから
私は、答えに詰まる理由を腕の不足とは見ていません。
用意してきた説明は、自分が話したい順番で作ったものです。一方で質問は、相手が気にしている順番で来ます。順番が違うので、説明の外から質問が飛んでくるのは当たり前です。
そのうえで私は、詰まるほどの質問は、相手が本当に気にしていることが出てきた合図だと見ています。気にしていないことは、わざわざ聞かれません。聞かれたということは、こちらの話を真剣に聞いてくれている可能性が高いです。
その場で言う一文の基本形
その場で言うことは3つです。
- いま、はっきり答えられないと伝える
- 何を確かめるかを言う
- いつ返すかを言う
つなげると、こうなります。
いま正確にお答えできないので、メーカーに確認して、明後日の夕方までにご連絡します。
施術の場面なら、こう言えます。
成分の違いは、いまここで言い切れません。お使いの製品の中身を確認して、明日のうちにお伝えします。
素材の質問なら、こうです。
屋外での使用は、いまは「大丈夫です」と言い切れません。仕入れ先に耐久性を確かめて、金曜の午前中までにお返事します。
ごまかして答えるより、期限をつけて「分からない」と言うほうが、信用は残ると私は考えています。分からないと言うこと自体より、分からないまま話を進めることのほうが、あとで困るからです。
仕事の取り方の全体の中で、質問への答え方をどこに置くかを知りたい方は、仕事の取り方の全体像もあわせて読んでみてください。
答えに詰まったとき、説明で埋めるほど話がずれていく
よくある埋め方と、相手からの見え方
詰まったときにやってしまいがちな埋め方は、だいたい3つです。それぞれ、相手の側からはこう見えると私は考えています。
- 知っている近い話を長々と話す 相手の側:質問には答えてもらえていない。聞きたいのは、その話ではない
- 「たぶん大丈夫だと思います」と言ってしまう 相手の側:大丈夫なのか分からない。この言葉を信じていいのか判断できない
- 話題を自分の得意な説明に戻す 相手の側:はぐらかされた。聞いてはいけないことを聞いたのかもしれない
どれも、悪気があってやっているわけではありません。その場をなんとかしたい、という気持ちから出てくる動きです。ただ、相手の側から見ると、質問が受け取られていない状態になります。
沈黙を自分の説明で埋めてしまう理由
黙っている時間が怖くて、相手の質問を、自分の話で上書きしてしまう。質問の途中から「それはですね」と話し始めてしまう。聞かれたことより、自分が言えることを優先してしまう。こういう動きに心当たりがある方は多いと思います。
私はこれを、口下手だからではなく、質問が来たときに何をどの順で返せばいいかを習っていないだけだと見ています。一人で仕事を始めた人は、そこを習わないまま現場に出ていることが多いはずです。
だから、話がうまい必要はありません。聞く順番でいい、というのがこの先の話です。次の一歩は小さくて大丈夫です。次に質問が来たら、答えを探す前に、一回だけ聞き返してみてください。次の章で、その言い方を渡します。
「たぶん」で答えたあとに起きること
「たぶん大丈夫だと思います」と言ってその場をやり過ごすと、あとで違うと分かったときに、訂正の連絡を入れる必要が出ます。
最初に「確認します」と言う気まずさと、「先日お伝えしたことは間違っていました」と言う気まずさは、重さが違います。前者は確認という仕事の予告で、後者は失点の報告だからです。
しかも訂正は、相手がすでにそれを前提に動いたあとに届くことがあります。見積もりや段取りがその答えをもとに進んでいたら、直す手間は相手にも及びます。
順番としては、最初に「確認します」と言うほうが、あとの負担がずっと軽いです。
答える前に、質問の中身を聞き返して確かめる
確かめる一言
答える前に、質問の中身を確かめます。使いやすい言い方は2つです。
それは、◯◯が気になっている、ということですか。
どんな場面で使う予定ですか。
聞き返すと、何を確認すればいいかがはっきりします。「屋外でも大丈夫ですか」と聞かれても、雨ざらしなのか、軒下なのか、年に数回の使用なのかで、確かめる内容が変わります。聞き返さずに調べ始めると、見当違いのことを調べて、またやり直しになります。
聞き返すと、答えるべきことが変わる場面
聞き返すと、表の質問と、本当の心配が別だと分かることがあります。次の2つは実在の事例ではなく、こういう場面がある、という想定の例です。
施術者の場面
「これって痛いですか」と聞かれる。聞き返してみると、前に通っていた店で痛い思いをしたことが、本当の心配だった。この場合、痛みの程度の説明より、「前に痛かったのは、どんなときでしたか」と聞いて、今回はそれを避けられると伝えるほうが話が進みます。
デザイナーの場面
「修正は何回までですか」と聞かれる。聞き返してみると、前の依頼先で修正の回数でもめた経験が、本当の心配だった。この場合、回数の上限を答えるだけでなく、「どこまでを1回と数えるかを、先に紙で決めておきましょう」と返せます。
表の質問に答えるだけでは、相手の心配は消えません。裏の心配に答えると、話が進みます。
聞き返しは、沈黙をもたせる
聞き返したあとに、黙って考える時間ができます。この時間は、相手には「ちゃんと考えてくれている」と伝わりやすいと私は見ています。沈黙そのものが悪いのではなく、沈黙を説明で埋めるから、話がずれていくのです。
聞き返しの一言があれば、その間は、相手が話す時間になります。自分が話さなくていい時間ができるので、説明で埋めなくて済みます。
その場での返し方|質問の種類別の言い方一覧
質問の種類によって、その場での言い方は変わります。迷ったときは、この表を見てください。
| 質問の種類 | その場での言い方 | 避けたい言い方 |
|---|---|---|
| ①調べれば分かる事実(素材・仕様・成分) | 「確認して、◯日までにお返事します」 | 「たぶん◯◯です」 |
| ②自分では判断できない(メーカーや協力先の範囲) | 「それは◯◯さん(メーカー・協力先)の範囲なので、確かめてお返事します」 | 「大丈夫だと思います」 |
| ③金額や日程がいま出せない | 「中身を確かめてから、きちんとした金額(日程)をお出しします。◯日までにお送りします」 | その場で安い金額や早い日を言う |
| ④専門外(法律・税金・医療に関わること) | 「私からはお答えできません。専門家に確認されるのが確実です」 | 自分の理解で言い切る |
| ⑤前例がなく本当に分からない | 「正直、これまで経験がありません。調べて、分かったことをお伝えします」 | 経験があるふりをする |
確認すれば分かる質問
素材、仕様、成分のように、確かめれば答えが出る質問です。「確認して◯日までにお返事します」と言います。ここで避けたいのは「たぶん〜です」です。たぶんは、確認の手間を惜しんだ言葉に聞こえます。
自分の範囲の外にある質問
メーカーや協力先の範囲の質問は、確かめる相手を相手に伝えます。「メーカーに確認します」「施工をお願いしている職人さんに聞きます」と、誰に聞くかまで言うと、相手は待つ理由が分かります。
法律・税金に関わる質問は、自分では答えません。「専門家に確認されるのが確実です」と返します。必要なら、税理士や弁護士など、相談先の種類を伝えます。この記事の内容も一般的な考え方の説明です。個別の判断は専門家に相談を。
お金と日程の質問
金額や日程を聞かれると、その場で安く言ったり、早い日を言ったりしたくなります。相手を安心させたいからです。でも、あとで守れなくなるのは、そのときに言った数字です。
「中身を確かめてから、きちんとした金額をお出しします。金曜までにお送りします」と言って、出す日を約束します。金額そのものを今すぐ言わなくても、出す日を言えば、相手は待てます。
あとで答える連絡の送り方|期限の決め方・文面・途中経過
期限は「自分が確実に守れる日」で言う
何日以内に返すべき、という決まった目安があるわけではありません。大事なのは、自分が確実に守れる日を言うことです。
焦って早い日を言うと、守れなかったときに信用を落とします。確かめる相手の返事が遅れる可能性があるなら、少し余裕のある日を言っておきます。早く返せたら、それは約束より良い結果になります。
迷ったときは、曜日と時間まで具体的に言います。「近いうちに」ではなく「明後日の夕方まで」。相手は、いつまで待てばいいかが分かります。
回答の連絡の文面例
回答の連絡は、次の順で書きます。
- 先日の質問をそのまま書く
- 答え
- 根拠(どこに確認したか)
- ほかに気になる点がないかの一言
メール版
件名:先日のご質問の件(屋外での使用について)
◯◯様
先日、「この素材は屋外でも大丈夫ですか」とご質問をいただいた件です。
仕入れ先に確認したところ、軒下であれば問題なく、雨が直接当たる場所では劣化が早まるとのことでした。
ほかに気になっている点があれば、お知らせください。
LINE版
先日の「屋外でも大丈夫か」のご質問、確認が取れました。軒下なら問題なし、雨が直接当たる場所は劣化が早まるそうです(仕入れ先に確認)。ほかに気になる点はありますか?
どちらも短く、そのまま使える形にしています。長くする必要はありません。
間に合わないときは、期限の前に途中経過を送る
確かめる相手の返事が遅れて、期限に間に合いそうにないことがあります。そのときは、期限の前に途中経過を送ります。
◯◯の件、いまメーカーの返事待ちです。金曜までにはお知らせします。
黙って期限を過ぎるのが、いちばん信用を落とすと私は見ています。答えが出ていなくても、途中経過を送れば、約束は続いています。
調べても分からなかったときの伝え方
調べても答えが分からないこともあります。そのときは、分からなかったことと、そのかわりに分かったこと・代わりの案を、セットで返します。
調べましたが、この組み合わせでの使用実績は、メーカーでも確認できませんでした。そのかわり、近い条件での使用例は確認できました。念のため、小さな範囲で試してから進める案はいかがでしょうか。
分からなかった事実を隠さず、次の一手を添えると、行き止まりになりません。
あとで答える連絡は、もう一度話すきっかけになる
答えられなかった質問は、次に連絡する正当な理由になる
用もないのに連絡するのは、気が引けるものです。「どうですか」と聞くだけの連絡は、相手の時間を取る気がして出せない。そう感じている人は多いと思います。
答えられなかった質問があると、状況が変わります。「先日のご質問の件で」と書けば、自然に連絡できます。用事があるからです。
この記事でいちばん伝えたいのは、ここです。答えに詰まったことを失点として終わらせず、次の接点として見直す。詰まった質問が、もう一度話すきっかけになります。
回答に一言添えて、会話を続ける
回答を送るときに、一言添えると会話が続きます。
ほかにも気になっている点はありますか。
実物を見ながらのほうが分かりやすければ、次にお会いするときにお見せします。
後者は、対面で答え直す選択肢を出す言い方です。文字では伝わりにくい内容ほど、会って見せたほうが早いことがあります。そのまま次に会う約束につながります。
避けたいNG例
- 答えだけ送って終わる:会話がそこで止まります
- 長い資料を添付して読ませる:相手が知りたかったのは、1点だけだったはずです
質問をした側の気持ちを思い出してください。聞いたのは、その1点です。答えは短く、必要なら資料は「ご希望でしたらお送りします」と添える程度で十分です。
今日からできる準備|答えられない質問を減らすチェックリスト
接客が終わったらすぐ書き留める3つ
接客や打ち合わせが終わったら、すぐに次の3つをメモします。スマホのメモで十分です。
- 聞かれた言葉そのまま
- その場で何と答えたか
- いつまでに返すと約束したか
聞かれた言葉をそのまま残すのがコツです。言い換えてしまうと、次に同じ質問が来たときに、同じ形で思い出せません。
「その場の一文」を手元に置いておく
基本形の一文を、メモに入れておきます。
いま正確にお答えできないので、◯◯に確認して、◯◯までにご連絡します。
詰まったときに、そのまま言えるようにしておくだけで、頭が真っ白になる場面が減ります。
チェックリスト(持ち帰り用)
- □ 分からないと、先に言えたか
- □ 質問の中身を聞き返したか
- □ 何を確かめるかを伝えたか
- □ いつ返すかを具体的に言ったか
- □ 期限の前に返したか(間に合わなければ途中経過を送ったか)
- □ 回答に「ほかに気になる点は」を添えたか
- □ 質問をメモに残したか
全部できなくても大丈夫です。まずは最初の1つ、「分からないと先に言う」だけで、その場の空気は変わります。
よく聞かれる質問がたまってきたら、答えを先に用意しておけば、次は同じところで詰まらなくなります。メモを見返して、同じ質問が2回出てきたら、それが最初に用意する答えです。
よくある質問
お客様に「分かりません」と言うと信用を失いませんか?
信用を落としやすいのは「分からない」ことより、たぶんで答えてあとで訂正することや、黙って期限を過ぎることだと私は見ています。何を確かめて、いつ返すかまで言えば、きちんと対応する人として受け取られやすいです。
確認してから回答するまで、何日以内に連絡すればいいですか?
決まった日数の目安はありません。自分が確実に守れる日を、曜日や時間まで具体的に言い、その日を守ることが大事です。間に合わなそうなときは、期限の前に途中経過を送ります。
調べても答えが分からなかったときはどう伝えればいいですか?
分からなかったことを正直に伝え、そのかわりに分かったことや代わりの案、確かめられる相手(メーカー・専門家など)をセットで返します。
その場で答えたあとに、間違いに気づいたらどうすればいいですか?
気づいた時点ですぐ訂正の連絡を入れます。何が違ったか、正しい内容、相手への影響があるかを短く伝えます。次からは、迷ったら「確認します」と言うようにします。
法律や税金のことを聞かれて答えられないときは?
自分で判断して答えず、「専門家に確認されるのが確実です」と返します。必要なら相談先の種類(税理士・弁護士など)を伝えます。個別の判断は専門家に相談を、と添えてください。
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