対面営業・商談
相見積もりで負けたとき|負けた理由の聞き方と、次の見積で変えるところ
このシリーズの全体像 お金の話の伝え方|値段・値上げ・値引きを、関係を壊さずに伝える
相見積もりで負けたのは、腕が足りなかったからとは限らない
先に答えを書きます。結果連絡には、その日のうちに5〜6行で返します。負けた理由は「決め手になった点を一つだけ」聞きます。返ってきた答えは、自分の点数ではなく、条件の話として受け取ります。
「負けた=自分の仕事が劣っていた」と受け取ってしまう理由
見積を出して数日後、「今回は別の会社にお願いすることになりました」と一行だけ届く。
ここで理由を聞かずに「承知しました。また機会があればよろしくお願いいたします」とだけ返し、そのまま閉じた経験がある人は多いと思います。返信を打ちながら、頭の中では「やっぱり自分の腕ではだめなんだ」という結論がもう出ている。そういう人が多い、と私は見ています。
でも、届いたのは結果の一行だけです。「腕が劣っていた」とは、どこにも書いてありません。結論を出したのは相手ではなく、自分です。
二回目が怖い型かもしれません
もう一度断られたら向いていないと確定してしまう気がして、次の連絡が出せなくなる。そういう型です。
理由を聞かないのは、礼儀を守っているからではないと思います。聞いて「腕の問題です」と言われるのを避けている。断られるのが怖いのではなく、断られた自分を見るのが嫌なんだと思います。これは仮説です。当てはまらなければ読み流してください。
もし当てはまるなら、手当ては「勇気を出す」ではありません。聞き方を変えることです。腕の点数を聞くのではなく、相手が何を比べたかという条件を聞く。それなら、聞くことが判決を受けに行くことにはなりません。
相見積もりの勝ち負けは、腕以外の条件で決まることが多い
相手が見積を並べて比べるとき、見ているのは腕の点数だけではありません。たとえば次のようなものです。

- 金額(予算の上限に入るか)
- 中身の分け方(何にいくらかかるのか、読んで分かるか)
- 届いた早さ(決める日に間に合ったか)
- 前からの付き合い(すでに頼んだことのある相手か)
- 予算の時期(今回は安い案で済ませたい事情があったか)
このうち、どれが効いたかは相手に聞かないと分かりません。だから聞きます。そして、聞く前に確認しておきたいことがあります。見積で選ばれなかったことは、仕事の価値が下がったことを意味しません。今回の条件と合わなかった、というだけです。
この記事で渡すのは1つだけ
この記事で渡すのは1つだけです。
結果連絡への返信で、理由を1つだけ聞く。
これをやると、次の見積で直す場所が分かります。相手とのつながりも切れません。金額の伝え方そのものを見直したい人は、お金の伝え方の全体像も合わせてどうぞ。
この記事の最後には、持ち帰れるものを3つ用意しています。当日返信の文例、理由ごとの対応表、記録欄です。
結果の連絡が来たら、その日のうちに返す一通
返信は当日中、長さは5〜6行でいい
返信は当日中に出します。長さは5〜6行で足ります。
日が空くほど「今さら何を」と思われそうで出しづらくなります。出しづらくなった連絡は、そのまま出ないで終わります。当日なら、結果連絡への返事として自然に出せます。これは一般的な礼儀というより、自分が出せなくなるのを防ぐための段取りです。
落ち込んだまま書くと長くなるので、型を先に決めておきます。順番は次の5つです。
- 結果を知らせてくれたお礼
- 検討してくれたことへのお礼
- 理由を1つだけ聞く一文
- 答えなくてもいいという逃げ道
- また機会があれば、という結び
そのまま使える返信文例
件名は、相手の結果連絡への返信にして変えません(「Re: ◯◯のお見積について」のまま)。

◯◯様
お世話になっております。◯◯の△△です。 結果をお知らせいただき、ありがとうございます。 今回は検討のお時間をいただき、ありがたく思っております。
今後の見積の参考にしたいので、もし差し支えなければ、決め手になった点を一つだけ教えていただけますか。 お返事がなくてもまったく問題ありません。
また機会がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
聞いているのは1つだけです。「なぜ負けたのか」を全部説明してもらおうとはしていません。相手にとっては、一言で返せる重さです。
文例のポイントは、逃げ道の一文です。「お返事がなくてもまったく問題ありません」と書いてあると、相手は断る自由を持ったまま、答えてもいいかなと考えられます。この一文が、聞くことを失礼にしない役目を持っています。
NG例:言い訳・値下げの再提案・長文の未練
負けた直後は、巻き返したくなります。ただ、次のような返信は相手に「判断を責められている」と感じさせかねません。
| NG | なぜ避けるか | OKの言い換え |
|---|---|---|
| 「実はもう少しお安くできたのですが」 | 負けたあとに値下げを出すと、次から「言えば下がる人」と見られやすい | 値下げの話は出さず、お礼と理由の質問だけにする |
| 「弊社のほうが品質は〜」 | 相手の選択を否定する形になる | 「検討のお時間をいただき、ありがとうございます」 |
| 「ぜひ再検討をお願いしたく」 | すでに決まった話をひっくり返す圧になる | 「また機会がありましたら、お声がけください」 |
| 10行を超える長文で想いを書く | 読む側の負担になり、未練に見える | 5〜6行にして、聞くのは1つだけ |
迷ったときの判断基準は簡単です。返信を読んだ相手が、何か対応しなければならなくなる文は削る。 お礼、質問1つ、逃げ道、結び。これだけ残します。
負けた理由の聞き方|相手が答えやすい形に変える
「なぜですか」ではなく「どれが近いですか」で聞く
理由を相手に一から言葉にさせると、気を使わせます。「なぜですか」と聞かれた側は、傷つけない言い方を考えて、結果としてぼかした返事になりがちです。
選択肢を出すと、答えやすくなります。先ほどの文例の質問部分を、次のように変えることもできます。
今後の見積の参考にしたいのですが、「金額」「内容の分け方」「時期」「前からのお付き合い」のうち、どれが一番大きかったでしょうか。一言で構いません。
相手は単語を返すだけで済みます。「金額です」の一言でも、こちらには十分な情報です。
選択肢に「自分の腕」や「品質」を入れないのは、わざとです。相手が答えやすいのは条件の言葉です。腕の採点を頼むと、相手は言いにくくなります。
電話か対面で話せる相手なら、別の用事のついでに一言聞く
メールで聞きにくい相手もいます。普段から電話で話す相手、顔を合わせる機会のある相手です。その場合は、次に話す機会に別の用事のついでに聞きます。
そういえば、この前の件、参考までに、決め手になったのはどのあたりでしたか。
このくらいの軽さで十分です。わざわざ呼び出して聞くことはしません。理由を聞くためだけの場を作ると、相手は身構えますし、こちらも重くなります。
聞くのは一回だけです。曖昧な返事でも、深追いしません。「ありがとうございます、参考になります」で終えます。
返ってきた答えを「自分への点数」として読まない
ここが一番大事です。二回目が怖い型の人ほど、返ってきた答えを自分の点数として読んでしまいます。そうではなく、条件の言葉に置き換えて受け取ります。

| 相手の答え | 点数として読んだ場合(ありがち) | 条件として読んだ場合 |
|---|---|---|
| 「金額でした」 | 腕が安く見られた、と受け取る | 今回の予算と条件が合わなかった |
| 「他社のほうが早かった」 | 仕事が遅い人だと思われた | 出す日の段取りの話。腕ではない |
| 「前から付き合いのある所に」 | 自分は選ばれない人間だ | 最初から条件が違った。腕の問題ではない |
| 「内容が分かりにくかった」 | 説明が下手だと言われた | 見積書の書き方という、直せる部分の話 |
右の列に置き換えると、直せるものと直さなくていいものが分かれます。点数として読むと、全部が自分の欠点になって、何も直せなくなります。
負けた理由ごとに、次の見積で変えるところ
持ち帰り用の対応表
相手の答えごとに、次の見積で変えることと、変えなくていいことを並べました。
| 相手の答え | 次の見積で変えること | 変えなくていいこと |
|---|---|---|
| 金額が高かった | 総額だけでなく内訳を分け、削れる項目と削れない項目を見せる | 仕事の中身そのもの、質の基準 |
| 中身が分かりにくかった | 項目名を相手の言葉に直す。「何をして、何が手元に残るか」を一行ずつ添える | 金額の水準 |
| 届くのが遅かった | 見積を出す日を、打ち合わせの場で先に伝える | 見積の中身 |
| 前から付き合いのある所に決めた | 何も変えない。次は付き合いを作る方(次の章)へ進む | 見積の中身、金額 |
| 理由は言えない・返事なし | 出し方を1か所だけ変える(後述) | それ以外のすべて |
一番下の行と、上から4行目が大事です。「変えなくていい」と決められると、全部を直す必要はないと分かります。全部を直そうとするほど、何が効いたのか分からなくなります。
「金額で負けた」ときに一番やってはいけないのは、次から最初に下げること
金額で負けたと分かると、次から最初に安い金額を出したくなります。ただ、聞かれる前に安くするのは、誠実さではなく、条件を崩しているだけだと私は考えます。下げた金額は、次の相手との話でも基準になりやすいからです。

代わりに、2つの案を並べます。
- 範囲を絞った案:必要なところだけに絞って、金額を抑えた形
- 全部入りの案:最初に想定した内容をすべて含んだ形
案A(範囲を絞った形):◯◯円 案B(全部入り):◯◯円 違いは、△△が含まれるかどうかです。
2つあると、相手は「高いか安いか」ではなく「どちらにするか」を考えます。断る・受けるの二択が、選ぶ話に変わります。値段を言うことが自分の値打ちを言うことになっている気がして苦しい人は、案を2つにすると、値段は点数ではなく仕事の条件だと見えやすくなります。
理由が分からなかったときは、見積の中身ではなく出し方を1つだけ見直す
返事が来なかった、理由は言えないと言われた、という場合もあります。ここで推測して全部変えるのは、やめておきます。
変えるのは1か所だけです。たとえば次のようなものです。
- 提出日を1日早める
- 内訳を3項目に分ける
- 見積書の一行目に、何をする仕事かの要約を入れる
一度に変えると、次に決まっても負けても、何が効いたのか分かりません。1か所なら、結果と結びつけて考えられます。
負けた相手との縁を、ここで切らない
負けた案件の相手は、次に声をかけやすい相手でもある
見積を頼んでくれた相手は、少なくとも、こちらを候補に入れてくれた人です。何も知らない相手に切り出すより、ずっと近い位置にいます。
決まった先で困りごとが出たとき、別の仕事が出たとき、思い出してもらえる位置にいる、ということです。これは数字で言える話ではなく、構造の話です。ここで関係を切ってしまうのが、一番もったいないところです。
次の接点は「売り込み」ではなく「近況」で作る
頼まずに近況を伝えるだけでも十分です。たとえば3か月後くらいに、こう送ります。
◯◯様 その後、お変わりありませんか。 最近、△△のお仕事をさせていただきました。 お近くにお越しの際は、お声がけください。
見積の話は出しません。お願いもしません。「こういう仕事をしている人が、まだここにいる」と思い出してもらうだけです。
何か月後が正解かは、相手と仕事によって違います。3か月は目安です。毎月の取引がある業種なら短く、年に一度の仕事なら長く取るなど、自分の仕事の流れに合わせて決めてください。
手帳かカレンダーに、次に連絡する日を今日入れる
「そのうち連絡する」は、出ないまま終わりがちです。
結果連絡に返信したその場で、日付を1つ決めて書き込みます。カレンダーに「◯◯様に近況を送る」と入れるだけです。内容は、その日に考えればいい。日付だけ先に決めます。
よくあるつまずき|理由を聞いたあとに気持ちが折れるとき
「他社のほうが提案がよかった」と言われたとき
腕を否定された言葉に聞こえます。ただ、中身は「相手が何を重視していたか」の情報です。提案がよかったというのは、相手が欲しかった形に、他社のほうが近かったという意味です。
次の打ち合わせで、質問を1つ足します。
今回のお仕事で、一番大事にしたいのはどのあたりでしょうか。
これを最初に聞くと、提案の向きが合います。NGは、落ち込んで、以後その業種に見積を出さなくなることです。1回の結果で、相手の範囲ごと諦めてしまうのは、もったいないです。
何度か続けて負けたとき
3回続けて負けると、「向いていないのかもしれない」と結論を出したくなります。その前に、負けた理由を横に並べます。
- 同じ理由が続いているなら、直す場所は1つです
- 理由がバラバラなら、腕ではなく、相手や時期の違いの可能性があります
並べる用の記録欄を置いておきます。そのままコピーして使ってください。
| 日付 | 相手 | 金額 | 相手の答え | 次に変えること |
|---|---|---|---|---|
| 例)10/3 | ◯◯社 | ◯◯万円 | 時期が合わなかった | 変えない |
「次に変えること」には、1か所だけ書きます。何も変えない、と書いてもかまいません。記録を残すと、頭の中で膨らんでいた「全部だめだった」が、「この1件はこの理由だった」という事実に戻ります。
聞いても返事がなかったとき
返事がないのは、失礼でも拒否でもなく、単に忙しいだけのこともあります。二度目の催促はしません。
記録欄の「相手の答え」に「理由不明」と書きます。それから、次の見積で1か所だけ変える方へ進みます。聞いたこと自体が、もう出せた一歩です。返事が来なかったことで、その一歩が無駄になったわけではありません。
まとめ|今日やれること
相見積もりで負けたとき、多くの人が閉じてしまうところから、先に進める方法を書きました。
- 結果連絡が来たら、その日のうちに5〜6行で返す(お礼+理由を1つだけ選択肢で聞く+答えなくていいという逃げ道)
- 返ってきた答えは、自分の点数ではなく、条件の言葉として受け取る
- 対応表で、次の見積で変えるのは1か所だけ選ぶ
- 記録欄に書き、カレンダーに次に連絡する日を入れる
個別の契約や値引きの判断が絡む場合は、取引の内容に応じて、専門家にも相談してください。
負けた見積が、次の仕事の手がかりに変わります。まずは今日、返信の下書きを1本だけ書いてみてください。
よくある質問
相見積もりで負けたとき、理由を聞くのは失礼ですか?
結果連絡へのお礼と一緒に、答えなくてもいいと添えて1つだけ聞くなら、失礼にはなりにくいです。「なぜ」ではなく選択肢で聞くと、相手も答えやすくなります。何度も聞かない、言い訳や値下げを添えない、が条件です。
相見積もりで断られたときの返信メールはどう書けばいいですか?
当日中に5〜6行で返します。①知らせてくれたお礼 ②検討してくれたお礼 ③差し支えなければ決め手を1つ教えてほしい ④返事は不要でもよい ⑤また機会があれば、の順です。本文の文例をそのまま使えます。
金額で負けたと言われたら、次から安く出したほうがいいですか?
最初から下げるのはおすすめしません。総額だけでなく内訳を分け、範囲を絞った案と全部入りの案を並べて、相手に選んでもらう形にします。金額の出し方はピラー記事(お金の伝え方)も参照してください。
相見積もりの結果連絡が来ないときは、こちらから聞いてもいいですか?
相手が伝えていた返事の時期を過ぎていれば、状況を尋ねる短い連絡を一度入れてかまいません。催促ではなく「その後いかがでしょうか」と確認する形にします。返事がなければ二度目は送らず、次の見積で1か所だけ変える方へ進みます。
相見積もりで負けた会社に、また営業してもいいですか?
一度候補に入れてくれた相手なので、近況を伝える形なら自然です。見積の話は出さず、しばらく空けて「最近こういう仕事をしました」と短く送ります。間隔は相手と仕事によるので、目安として考えてください。
本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。