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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
プレゼンが苦手な人は、上手に話す練習より「見せて聞く」順番に変えるのが近道
「うまく話せない」と感じるのは、たいてい相手が黙ったあと

資料の3枚目あたりで、相手が黙る。焦って「補足しますと」と説明を足す。足してもまだ反応が薄く、さらに足す。終わってみると、打ち合わせの時間のほとんどを自分一人で話していた。相手の返事は「いったん検討します」。
帰り道に「やっぱり自分は人前で話すのが向いていない。そもそも提案に向いていないのかもしれない」と思う。この場面を、自分の適性の証拠として受け取ってしまう人は多いようです。
ただ、この場面で何が起きていたかを順に見ていくと、「話が下手だった」とは別のことが見えてきます。相手に一度も話してもらっていなかった。起きていたのは、それです。
苦手なのは話すことより、一人で話し続ける形のほう
一人で話し続ける形は、話す量が多くなります。話す量が多ければ、言い間違える場面も、言葉に詰まる場面も増えます。沈黙も長く感じます。苦手な場面が増えるのは、この形のせいという面が大きいと私は見ています。
話す量を減らせば、苦手な場面も減ります。1枚見せて1つ聞くなら、自分が話すのは1枚につき数文です。残りは相手の番になります。話し方を磨く前に、形を変える。順番としてはこちらが先です。
提案は発表ではなく、相手と一緒に確かめる時間
相手の側から見ると、提案は話を聞かされる時間ではありません。自分の事情に合う内容かどうかを確かめる時間です。確かめるには、相手自身が話す必要があります。
この記事で渡す方法は、次の1つだけです。
- 資料を1枚見せる
- 問いを1つ置く
- 相手が話すのを待つ
- 一言返して、次の1枚へ進む
この繰り返しにすれば、話がうまくなくても提案を進めやすくなります。性格を変える必要はありません。口数が少ない人は少ないまま、人見知りの人は人見知りのままで使える形です。
話し続けてしまうのは、説明から入って沈黙を埋めてしまうから
用意した資料を1枚目から最後まで読み上げる(NG例)

よくある流れは、次の順番です。
- 会社紹介
- これまでの実績
- サービス内容
- 料金
この順で15枚ほどを一気に話し、最後に「何か質問はありますか」で終わる。この流れには、相手の事情を聞く場面が一度もありません。
準備を丁寧にした人ほど、この形になりやすいと思います。ちゃんと伝えようとして、全部話してしまう。ところが相手が知りたいのは、自分の困りごとに関わる部分です。会社紹介の10分は、相手にとって待ち時間になっているかもしれません。
黙られるのが怖くて、説明で埋めてしまう
相手が資料を見て考えている。その沈黙が怖くて、「補足しますと」「つまり、こういうことでして」と話を足す。相手が「それって……」と言いかけたところに自分の説明が重なり、相手の言葉を取ってしまう。
沈黙を埋めるために話し、話すほど相手の出番がなくなる。私はこれを「しゃべりすぎ型」と呼んでいます。沈黙が怖くて自分の説明で埋め、相手の話を取ってしまう状態のことです。何を聞けばいいか、どこで待てばいいかを、まだ習っていないだけだと思います。
抜けるための最小の一歩は、問いを置いたあとに心の中で5つ数えることです。やり方は次の章で書きます。
相手が黙っているのは、断る準備とは限らない
相手が黙っているとき、頭の中で何が起きているかは、こちらからは分かりません。断る言葉を探していることもあるでしょう。ただ、自分の状況に当てはめて考えている途中、ということも十分ありえます。
待つことは失礼ではありません。相手に考える時間を渡す行為でもあります。黙られた瞬間に「失敗した」と決めず、まず待つ。それだけで、説明を足して相手の言葉を取る場面が減りやすくなります。
話し続けない提案の進め方は「見せる→聞く→待つ」の繰り返し
最初の5分は、前回聞いたことの確認だけにする

会社紹介から始めず、前回聞いた内容の確認から入ります。
「前回、◯◯で困っているとうかがいました。今もそこは変わっていませんか」
ここで相手が話し始めれば、場はもう温まっています。状況が変わっていた場合も、資料を出す前に分かります。ずれた提案を最後まで説明してしまう事態を避けられます。
資料は1枚ずつ見せて、1枚ごとに問いを1つ置く
1枚あたりの流れは、次の表のとおりです。
| 手順 | 自分がすること | 一言の例 | 相手がすること |
|---|---|---|---|
| ① 見せる | 1枚だけ出して、読む時間をとる | 「1枚目です。どうぞご覧ください」 | 資料を読む |
| ② 問う | 問いを1つだけ置く | 「ここまでで、実際と違うところはありますか」 | 自分の状況と照らして考える |
| ③ 待つ | 5つ数える。資料を指さして顔を見る | (何も言わない) | 答えを探して話し始める |
| ④ 返す | 聞いたことを一言で返す | 「なるほど、◯◯なんですね。では次の1枚です」 | 続きを見る |
15枚あっても、相手が話し始めたらそこで止まってかまいません。全部見せることが目的ではなく、相手の事情を確かめることが目的だからです。
問いのあとは、心の中で5つ数えて待つ
問いを置いたら、すぐに口を開かず、心の中で5つ数えます。待つ間は、資料を指さしたまま相手の顔を見ます。目を泳がせたり資料をめくったりすると、「早く答えて」という圧になりやすいからです。
最初は5つが長く感じます。数えることに意識を向けると、焦りが少し落ち着きます。
どうしても間がもたないときは、一言だけ足していい言葉があります。
「考えながらで大丈夫です」
これは問いの言い換えではなく、待っていることを相手に伝える言葉です。補足の説明を足すのとは別のものです。
話さなくても伝わる資料は「1枚に1つのこと」で作る
相手から聞いた言葉を、そのまま資料に書く

「集客が不安」とまとめて書くのではなく、「春の閑散期に予約が埋まらない」のように、打ち合わせで相手が口にした言葉を使います。説明しなくても、相手が自分の話だと分かります。自分が話す量が減り、相手が読んで考える時間が増えます。
打ち合わせのメモは、要約せず相手の言葉のまま残しておくと、そのまま資料に使えます。
金額は中身ごとに分けて見せる
総額だけの1枚と、作業ごとに分けた1枚を比べます。
- NG:「制作一式 ◯◯万円」
- OK:「撮影 ◯万円/編集 ◯万円/修正対応 ◯万円/合計 ◯◯万円」
総額だけだと、相手が返せる言葉は「高い」か「安い」になりやすく、こちらは理由の説明に回ります。分けて見せておけば、「ここは削れますか」「この作業は自分たちでやれます」と、相手から話が出やすくなります。自分が説明し続けずに済みます。
最後の1枚は「次に決めること」にする
「ご検討ください」で終わらず、「◯日までに、範囲をAとBのどちらにするか決める」のように、次にやることを1行で書きます。話がうまくなくても、資料が話を締めてくれます。
1枚見せたあとに使える問いかけ例
ずれていないか確かめる問い
「ここまでで、実際と違うところはありますか」
避けたいのは「何か質問はありますか」です。質問は、相手がその場で考えて作らなければなりません。考える手がかりが少ないので、返事が出にくくなります。「違うところ」なら、目の前の資料と自分の状況を見比べるだけで答えられます。
相手に選んでもらう問い
「AとBなら、どちらが今の状況に近いですか」
選ぶだけなので、答えやすい問いです。選んでもらったら、「Bのほうが近いのは、どのあたりですか」と理由を聞きます。理由は相手の言葉で返ってくるので、そのまま次の提案の材料になります。
金額を見せたあとの問い
「この範囲で進めるとしたら、気になるところはどこですか」
高いか安いかではなく、気になる点を聞きます。値段だけの話で終わらず、範囲や進め方の話に移れます。
場面別にまとめると、次のとおりです。
| 場面 | 問いかけ | 避けたい言い方 |
|---|---|---|
| 最初の確認 | 「前回の◯◯のお困りごとは、今も変わっていませんか」 | 「まず私どもの会社についてご説明します」 |
| 内容のずれの確認 | 「ここまでで、実際と違うところはありますか」 | 「何か質問はありますか」 |
| 選んでもらう | 「AとBなら、どちらが今の状況に近いですか」 | 「どれがいいですか」(範囲が広くて答えにくい) |
| 金額のあと | 「この範囲で進めるとしたら、気になるところはどこですか」 | 「ご予算に合いますか」 |
| 最後の1枚 | 「次に決めるのは、範囲をAにするかBにするかの1点です。どちらが近いですか」 | 「ご検討ください」 |
見せて聞く提案でよくある失敗と直し方
問いを重ねすぎて、取り調べのようになる
1枚に問いを3つ並べてしまう例です。聞き逃したくない気持ちから起こりますが、相手には質問攻めに感じられます。
直し方は、問いを1枚に1つにすること。答えを聞いたら、「なるほど、◯◯なんですね」と一言返してから次へ進みます。返事があると、相手は聞いてもらえたと感じやすくなり、次の問いにも答えやすくなります。
相手が話し始めたのに、次の資料へ進んでしまう
予定どおりに進めたくて、相手の話を切ってしまう例です。相手が自分から話し始めたのは、提案の中でいちばん大事な瞬間かもしれません。
直し方は、資料を最後まで見せなくていい、と決めておくこと。相手の話が大事なら、残りの資料は後日送ると伝えれば足ります。「続きは資料にまとめて、あとでお送りしますね」で十分です。
オンラインで画面共有したまま話し続ける
画面を共有している間は、相手の顔が小さくなり、反応が読めません。読めないと不安になり、説明を足したくなります。
直し方は、1枚ごとに共有を止めて、顔を見て聞くことです。「ここで一度共有を止めますね。ここまでで、違うところはありますか」と言ってから止めると、自然に切り替わります。
| 失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 1枚に問いを3つ置く | 取り調べのように感じられる | 問いは1枚に1つ。答えを聞いたら一言返して次へ |
| 相手が話し始めたのに次の資料へ進む | 相手の話を切ってしまう | 資料は全部見せなくていい。残りは後日送る |
| 画面共有したまま話し続ける | 相手の反応が読めず、説明を足したくなる | 1枚ごとに共有を止めて、顔を見て聞く |
次の提案の前にやる準備チェックリスト
資料の各ページに、問いを1つ書き込んでおく
前日にやることです。各ページの余白に、そのページで聞く問いを1つ書いておきます。問いが書けないページは、削る候補です。聞くことがないページは、相手に確かめたいことがないページでもあります。
自分が話す時間は全体の半分以下を目安にする
60分の打ち合わせなら、自分が話すのは30分までを目安にします。守れなくてもかまいません。意識するだけで、説明を足す回数は減りやすくなります。
話がうまい必要はありません。聞く順番が決まっていれば、提案を進めやすくなります。
終わったら、相手が一番話した場面を1つメモする
打ち合わせのあと、相手がいちばん話した場面を1つ書き留めます。その場面で使った問いが、次の提案でも使える問いになります。
仕事を取るまでの流れ全体は、フリーランスの営業の進め方にまとめています。提案はその中の一場面です。
チェックリストは、次の7項目です。
- □ 資料の各ページに、問いを1つ書いた
- □ 問いが書けないページは、削るか後日送りにするか決めた
- □ 最初の5分で使う、前回の確認の一言を用意した
- □ 金額のページを、中身ごとに分けた
- □ 最後のページに、次に決めることを1行で書いた
- □ 問いのあとに5つ数えて待つ、と決めた
- □ 終わったあとに、相手がいちばん話した場面をメモする時間をとった
よくある質問
人見知りでも営業の提案はできますか?
できます。上手に話す力より、聞く順番が決まっているかのほうが大事だと私は考えています。1枚見せて1つ聞く形なら、話す量は少なくて済みます。
提案中に緊張して頭が真っ白になったらどうすればいいですか?
資料の各ページに問いを書いておけば、それを読むだけで次に進めます。止まったら「ここまでで違うところはありますか」と相手に話してもらえばいいです。
プレゼンの練習はしたほうがいいですか?
通し練習より、各ページで何を聞くかを決めるほうが先です。台本を覚えるほど読み上げになりやすいので、覚えるのは問いだけでかまいません。
資料を作らず、口頭だけで提案してもいいですか?
小さな案件ならそれでもいいです。ただ、紙1枚でも見せるものがあると、自分が話さなくても相手がそれを見て考えてくれます。金額と次に決めることだけでも書いておくと進めやすくなります。
オンラインの提案でも同じやり方でいいですか?
同じやり方でいいです。ただし画面共有中は相手の顔が見えにくいので、1枚ごとに共有を止めて、顔を見て聞くようにします。
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