対面営業・商談

「予算に合わせて」と言われたときの返し方|削る場所を相手と決める

「予算に合わせて」と言われたときの返し方|削る場所を相手と決めるのイメージイラスト

このシリーズの全体像 お金の話の伝え方|値段・値上げ・値引きを、関係を壊さずに伝える

「予算に合わせて」は「高い」の言い換えではない

見積を出して数日後、「予算に合わせてもらえますか」と言われたことはありませんか。その瞬間、頭に浮かぶのは「やっぱり高かったんだ」「自分の仕事に、この値段の値打ちはなかったんだ」という言葉かもしれません。

相手の発言を「評価」と誤解する場合と「質問」と正しく受け取る場合を対比する図

そこで値段を下げてしまうのは、気が弱いからでも、腕が足りないからでもありません。「予算に合わせて」と言われたときの返し方が、「値段を下げる」の一択しか手元にないからです。

「予算に合わせて」は評価ではなく、質問です。「この枠の中で何ができるか教えてほしい」と聞かれているだけで、答えるべきは金額ではなく中身です。

「高いと言われた」と聞こえる理由

相手は金額の話をしているのに、自分は自分の値打ちの話として受け取ってしまう。そうなると、返事は「じゃあ下げます」しか出てこなくなります。値段の話と、値打ちの話は別のものです。

相手が本当に聞いているのは「何ができるか」

相手にも、上司や家計、他の支出があります。使える枠はすでに決まっていて、その中で一番いい形を一緒に探してくれる人を探しています。値段だけすぐに下げる人がいると、相手は「じゃあ最初の値段は何だったのか」と、逆に不安になります。

値段が言えない型に近いかもしれません

金額を言うことが自分の値打ちを言うことになっていて、口に出せない――値段が言えない型かもしれません。「この金額ではここまでです」と線を引くことが、自分の値段を主張しているように感じて、言えなくなる型です。

この型のまま安く受け続けると、「あの人はいつも安くしてくれる」という扱いが少しずつ定着していきます。値段は、自分の価値の点数ではありません。仕事の条件です。削るのは自分の値打ちではなく、作業の範囲です。ここを分けて考えられると、金額の話がしやすくなります。

最初の一言は「いくらまで」を聞く。「下げます」とは言わない

「わかりました、○円でやります」と、中身はそのままで値下げして応じる。これがNG例その1です。相手はその場では喜びますが、次からその値段が基準になります。最初の見積の根拠も、いつの間にか消えてしまいます。

「それは難しいです」で終わらせるのもNGです。相手はそのまま、他の人を探しに行きます。断る前に、聞くことがあります。

最初の一言はこの2文です。「ありがとうございます。ご予算はどのくらいでしょうか。その枠の中で、中身をご一緒に決めさせてください」。値段を返す前に、枠と中身の話に切り替えます。

中身そのままで値下げすると起きること

  • 次も同じ値段を求められる。一度下げた値段は、相手の中で「この人の相場」になります
  • 自分だけ時間が足りなくなる。同じ作業量を、より短い期間や低い単価でこなすことになります
  • 「最初の値段は何だったのか」と、相手からの信用が減る。値段が動く理由が説明されないままだと、次の見積も信じてもらいにくくなります

予算の数字を聞く言い方

数字を聞くのが気が引ける場合は、相手のための質問として言うと伝わりやすくなります。「上限を教えていただけると、その中で一番いい形を組めます」「無理に合わせるより、優先順位を一緒に決めたいので」といった言い方です。

数字を教えてもらえないときの幅の聞き方

金額をはっきり言われないときは、幅で聞きます。「例えば、元の見積の7割くらいでしょうか、半分くらいでしょうか」。半分以下なら中身を大きく変える話、7〜8割なら削る場所を選ぶ話、と自分の中で分岐を持っておくと、その場で慌てません。

削る場所を決める前に、見積を3つに分ける

見積を①ないと成り立たないもの(芯) ②あると仕上がりが上がるもの ③あとからでも足せるもの、の3つに分けます。この3区分があると「どこを削るか」の会話ができます。分けていないと、値段の話しかできません。

見積を芯・仕上がり・後回しの3層に分けた積み上げ構造図

3つの区分と、それぞれ削るとどうなるか

区分例削ったとき相手に起きること
①芯仕事の目的そのものにあたる部分仕事として成り立たなくなる
②仕上がりを上げるもの見え方・使いやすさを底上げする部分仕上がりが一段下がる
③あとから足せるもの今すぐでなくてもいい部分今は困らない

職種別の分け方の例

同じ「削る」でも、職種によって芯にあたる部分はまったく違います。自分の仕事に置き換えて、先に3つを書き出しておくと、当日の会話がぶれません。

職種①芯②仕上がりを上げるもの③あとから足せるもの
デザイナーロゴ本体名刺・封筒への展開SNS用の書き出し
ライター取材と執筆修正2回まで写真の手配
施術者・講師決めた回数・時間の本体分事前カウンセリングの時間追加の教材・記録
工務店工事範囲そのもの材料の等級付帯工事

総額でしか出していなかった場合の分け直し

後出しでも構いません。「内訳を整理してお持ちします」と言って、1〜2日もらいます。その場で答えないほうがいい理由は、その場で削ると芯まで削ってしまうからです。最初から3区分で出しておくと、この会話自体が短くなります。見積の分け方の全体はお金の伝え方にまとめています。

削る場所は自分で決めない。相手と一緒に選ぶ

同じ中身を削っても、自分が削ると相手には「勝手に薄くされた」に見え、相手が選ぶと「自分で選んだ形」になります。受け取り方が変わるのはここです。

自分で決めると起きるすれ違い

良かれと思って③と②の一部を外して出し直したら、相手が一番欲しかったのは②のほうだった、ということもあります。相手の優先順位は、聞かないと分かりません。自分の感覚で「ここは削っても平気だろう」と決めた時点で、すれ違いは始まっています。

一緒に決める進め方4手順

  1. 3区分の表を見せる
  2. 「芯は残したいです。②③のどれを後回しにするか、一緒に決めさせてください」と言う
  3. 相手に選んでもらう。外すたびに「ここを外すと、こういう状態でお渡しになります。それでも大丈夫ですか」と確認する
  4. 選んだ結果の金額を出す。金額は最後

「全部欲しいけど安く」と言われたときの返し

「全部やる形だと今の金額になります。今回は芯と②までにして、③は落ち着いたころに足す形はどうでしょう」。全部を安くではなく、今回と次回に分ける提案に置き換えます。その場で折れて、全部を安くやってしまうのはNGです。

値段を下げない削り方は3つある

①範囲を削る(やることを減らす) ②回数・量を減らす(修正回数・ページ数・時間) ③時期をずらす(今回と次回に分ける)。値引きは、この3つを試したあとです。

値下げ以外の3つの調整方法(範囲・回数・時期)を並べた比較カード図

範囲を削る

言い方は「今回は○○までで、△△は外す形にしましょうか」。向いている場面は、相手の目的がはっきりしているときです。目的がはっきりしているほど、外していい部分と外せない部分の線引きがしやすくなります。

回数・量を減らす

言い方は「修正は2回までにすると、この金額に収まります」「ページ数を8から5にすると」。数を先に言うと、相手が判断しやすくなります。向いている場面は、中身は全部欲しいと言われているときです。

時期をずらす

言い方は「今回は芯だけ先に納めて、②は来期に回す形もあります」。向いている場面は、予算の枠が今期だけの制約になっているときです。次の仕事の入口にもなります。

削ってはいけないものが2つあります。芯と品質です。芯を削ると、安くしたのに文句を言われるという、一番損な形になります。「今回だけ特別に」と言って、中身はそのままで値引きするのもNGです。「今回だけ」は相手に残らず、値段だけが残ります。

予算が芯の金額より低いときは、無理に合わせない

判断基準は、予算が芯(ないと成り立たない部分)の金額を下回っているかどうかです。下回っていれば、合わせても赤字か品質低下のどちらかになり、結局は相手も自分も損をします。

合わせると起きること

芯まで削って受けた結果、仕上がりに納得してもらえず、追加も頼まれず、紹介にもつながらない。安くしたことが、次につながらないという構造です。無理に合わせた仕事ほど、あとから「あの値段でこれか」と言われやすくなります。

断らずに小さく始める提案

言い方は「その予算だと、お約束できる仕上がりにならないので、今回は○○だけを先にやる形はどうでしょう」。範囲を小さく始める、時期を分ける、の2つの出し方があります。

それでも合わないときの断り方

「今回はお力になれませんが、予算が動いたときや、○○だけ必要になったときはお声がけください」。断ることは、関係を切ることではありません。断れずに受けるより、断って次の入口を残すほうがいいと私は思います。

決めた内容を文字にして送る。口約束で終わらせない

削ったはずの作業を、あとで「当然入ってると思ってた」と言われることがあります。話し合いで決めた直後に、文字にして送るだけで防げます。

確認メールに入れる3項目(やること・やらないこと・追加の目安)を示す文書構造図

送る文面の型

件名: お見積りの内容について(ご確認)

本文には次の3項目を入れます。

  • 今回やること
  • 今回やらないこと(後回しにしたもの)
  • 後から足す場合の目安金額

例文です。

「本日はお時間をいただきありがとうございました。ご相談した内容を下記の通りまとめます。【今回やること】○○・△△【今回やらないこと】□□(今回は含みません)【後から追加する場合の目安金額】□□を追加する場合、○円程度。ご確認のほど、よろしくお願いいたします」

「入ってると思ってた」を防ぐ書き方

やらないことは「含みません」と明記します。「基本的に」「必要に応じて」といった曖昧な書き方はしません。後から足すときの金額を先に書いておくと、追加の話が切り出しやすくなります。

次の見積で使うチェックリスト

  • □ 予算を聞く一言を決めてある
  • □ 見積を3区分で出している
  • □ 削る候補を相手に見せる形にしてある
  • □ 芯の金額を自分で把握している
  • □ 決めた内容を書いて送っている

今日やる最小行動は、手元の見積を1本、3区分に分け直してみることです。「予算に合わせて」は高いという評価ではなく、中身を一緒に決めてほしいという質問です。そう受け取れると、次に同じ言葉を聞いたときの動き方が変わります。

よくある質問

「予算に合わせて」と言われたら、値引きするしかないですか?

値引きは最後。先に予算の枠を聞き、見積を3つに分けて、削る場所を相手と一緒に決める。範囲を削る・回数を減らす・時期をずらすの3つを試してから

相手の予算を聞くのは失礼になりませんか?

失礼ではない。「上限を教えていただけると、その中で一番いい形を組めます」と、相手のための質問として言えばいい。教えてもらえないときは「7割くらいか、半分くらいか」と幅で聞く

予算が低すぎて合わせられないときはどうすればいいですか?

芯の金額を下回るなら無理に合わせない。範囲を小さく始める、時期を分ける、の2つを提案する。それでも合わなければ「予算が動いたときはお声がけください」と次の入口を残して断る

予算に合わせた見積は何案出せばいいですか?

案を3つ作るより、1つの見積を3区分(芯・仕上がりを上げるもの・あとから足せるもの)に分けて見せ、相手に外す場所を選んでもらう方が早く、相手も選びやすい

一度予算に合わせて安くしたら、次も同じ値段になりますか?

中身そのままで下げるとそうなる。中身を削って合わせれば、次回は「前回外した分を足す」話ができる。決めた内容を「今回やらないこと」まで書いて送っておくのが大事

本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。

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