対面営業・商談
提案書を1枚にまとめる|小さな仕事で、相手がその場で決められる書き方
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
提案書を1枚にまとめるには、相手の話から書き始める
結論から書きます。1枚に載せるのは、次の5つだけです。
- 相手の今の状況
- 困っていること
- こちらがやること
- 金額
- 次の一歩
自分の紹介や実績は、1枚の主役にしません。
提案書のファイルを開くと、まず会社紹介とこれまでの実績から書き始めてしまう。気づけば4〜5枚になっている。削ろうとしても「これを消したら良さが伝わらない」と手が止まる。そんな経験がある人もいると思います。
削れないのは、文章が下手だからとは限りません。書いているのが相手の話ではなく、自分がちゃんとしていることの証明になっていると、どれも大事に見えて消せなくなる。そういう人がいるのではないか、というのが私の見立てです。これは仮説で、全員に当てはまるとは言いません。
分かってもらおうと実績や情報を足し続けて、読む人が自分を重ねる場面がなくなっていく。この状態をここでは「実績並べ型」と呼びます。
腕は本物です。ただ、詰め込むほど、読む人は「これは自分の話だ」と思いにくくなります。1枚にするのは、仕事を小さく見せることではありません。相手が決めやすい形に整えることです。
「1枚にしたら、自分の仕事の良さが伝わらない気がする」。この引っかかりは自然なものです。この記事では、その気持ちを消すのではなく、残したまま判断できる基準を渡します。
営業の流れ全体の中で提案書がどこに当たるかは、フリーランスの営業の仕方で整理しています。話を聞いたあとの、お金の話から返事をもらうまでの場面で使う道具です。
そのまま使える1枚提案書の型(上から順に5つの欄)
A4縦1枚で、上から読めば話が通る順番にします。欄は5つ。上から埋めていくだけです。
欄1「いまの状況」
打ち合わせで相手が言った言葉を、そのまま1〜2行で書きます。自分の言葉に直さないのがコツです。
例(架空の文面です):
問い合わせフォームから月に数件しか連絡が来ない、と伺いました。写真は自分で撮っているが、文章に自信がなく、更新も止まっているとのことでした。
相手は最初の2行で「ちゃんと聞いてくれていた」かどうかを判断します。ここが自分の紹介から始まっていると、その判断材料がありません。
欄2「困っていること」と欄3「こちらがやること」
困りごとは1つに絞ります。打ち合わせで3つ出ていても、今回の提案で扱うのは1つ。残りは「次の段階」として別に置きます。
例:
困っていること:サイトを見た人が、何をすれば問い合わせできるのか分からない
やることは3つまで。箇条書きで「何を・いつまでに」を書きます。
例:
- トップページの問い合わせボタンを3か所に置き直す(着手から1週間)
- 問い合わせフォームの項目を7つから4つに減らす(着手から1週間)
- サービス紹介の文章を相手の言葉で書き直す(着手から2週間)
NG例はこれです。
デザイン・運用・集客まで幅広く対応可能です。
何をいつまでにやるのかが一つも分かりません。腕の幅を見せたい気持ちは分かりますが、相手は「で、今回は何をしてくれるのか」を探しています。
欄4「金額」と欄5「次の一歩」
金額は総額を書き、その下に内訳を3行程度で添えます。
例:
総額 ○○円 ・トップページの改修 ○○円 ・フォームの見直し ○○円 ・文章の書き直し ○○円
次の一歩は、日付で書きます。
例:
○日までにご返事いただければ、○日から着手できます。
「ご検討ください」で終えると、相手は何をすればいいのか分からず、後回しになりやすくなります。出したあとに相手が何をするのかまで、1枚の中に書いておきます。
各欄の行数の目安
目安であって、決まりではありません。
| 欄 | 書くこと | 行数の目安 |
|---|---|---|
| 1 いまの状況 | 相手が言った言葉 | 1〜2行 |
| 2 困っていること | 1つに絞る | 1〜2行 |
| 3 こちらがやること | 何を・いつまでに | 3項目まで |
| 4 金額 | 総額と内訳 | 4行ほど |
| 5 次の一歩 | 日付つきの行動 | 1〜2行 |
この表のとおりなら、A4縦1枚に余白を残して収まりやすくなります。収まらないときは、書きすぎているサインと考えてください。
書き直し前と後:小さな仕事の提案書を1枚にした例
ここからは架空の例です。個人のWebデザイナーが、地域の店舗にサイト改修を提案する場面を使います。実在の人物や数字ではありません。
書き直し前(4枚)
- 1枚目:プロフィール。経歴、得意分野、大切にしている考え方
- 2枚目:制作実績10件。スクリーンショットと一言ずつ
- 3枚目:サービス一覧。デザイン、コーディング、運用、写真撮影、SEO対策
- 4枚目:やっと料金。「別途お見積り」の項目が並ぶ
打ち合わせで相手が話した困りごとは、4枚のどこにも1行も出てきません。相手から見ると、「この人は腕が良さそうだが、うちの話を聞いてくれたのかは分からない」という資料になります。
書き直し後(1枚)
- 欄1:打ち合わせで出た言葉を2行(「予約の電話ばかりで、サイトから申し込みが来ない」)
- 欄2:困りごとは「サイトから予約までの道が分かりにくい」の1つ
- 欄3:予約ボタンの置き直し、フォームの見直し、紹介文の書き直しの3つ。それぞれに期間
- 欄3の横:同じ飲食系の店舗サイトを改修した1件を、一言だけ添える
- 欄4:総額と内訳3行
- 欄5:「○日までにご返事いただければ、○日から着手できます」
実績10件は1件になりました。それでも、相手の業種に近い1件のほうが、10件より「自分の店でもやってもらえそうだ」と想像しやすいと私は見ています。
何を削り、どこへ移したか
削ったものは捨てません。「聞かれたら出す資料」として手元に置きます。
- プロフィール:聞かれたら出す。サイトのリンクを1本、1枚の下に小さく置く
- 実績9件:一覧ページのリンク1本にまとめる
- サービス一覧:今回やらないものは載せない。次の段階の話になったら出す
- 経歴や考え方:打ち合わせの雑談で話せば足りる
もう一つ、打ち合わせで出たのに入れなかったものがあります。相手が「そのうち写真も撮り直したい」と軽く言っていた件です。相手が提案を求めていない要望を足すと、1枚が膨らみ、金額も上がります。「次の段階の話」として、口頭で触れるだけにしておきます。
削るもの・残すものの判断基準
迷ったときのために、持ち帰れる表を置きます。
| 項目 | 残す・削る・別に置く | 判断の理由 |
|---|---|---|
| 会社紹介 | 別に置く | 聞かれたら出す。決めるのに必須ではない |
| プロフィール | 別に置く | 信頼は打ち合わせで足りていることが多い |
| 実績 | 1件だけ残す | 相手の業種や規模に近いもの |
| サービス一覧 | 削る | 今回の提案に関係ない分は選択肢を増やすだけ |
| 作業工程の詳細 | 別に置く | 質問が出たら答える |
| 金額の内訳 | 残す | 予算の調整を一緒に話せる |
| 納期 | 残す | やることの横に期間として書く |
| 支払い条件 | 残す | 後出しにしない。1行で足りる |
| 次の一歩 | 残す | 日付つきで書く |
判断の問いは1つ「相手が今日決めるのに、これが要るか」
要るなら残す。要らないが、聞かれたら答えたいものは「別に置く」。要らず、聞かれる見込みも薄いものは削る。この3択で足ります。
「別に置く」があるから、削ることへの抵抗が下がります。消すのではなく、置き場所を変えるだけだからです。
実績は1つだけ残す
残すのは、相手の業種や規模に近いもの。件数で信用を取ろうとしないでください。10件並べると、読む人は「すごい」と思う一方で、どれが自分に関係あるのか選ぶ作業が増えます。
1件なら、一言で足ります。「同じ飲食店のサイトで、予約フォームを4項目に減らしました」。それだけで、欄3のやることと実績がつながります。
「何でもできます」は削る
選べる幅を見せるほど、相手は自分に何が要るのか決めにくくなります。腕の幅は本物でも、1枚の上では相手の迷いを増やします。
NG例:
ご要望に応じて柔軟に対応いたします。
丁寧な言い方ですが、決める材料が何もありません。柔軟さは、打ち合わせでの受け答えで見せるほうが伝わります。
相手がその場で決められる書き方
1枚にまとめても、決めにくい書き方は残ります。ここでは決めやすくするための3点を書きます。
金額は内訳を添えて1か所に
最終ページに隠さず、やることのすぐ下に置きます。内訳があると、「どこを削れば予算に合うか」を相手と一緒に話せます。
内訳がなく総額だけだと、相手に残る選択は「高い」「安い」の二択になりがちです。内訳があれば、「この項目は今回はなしにしましょう」という会話が生まれます。値引きではなく、範囲の調整として話ができます。
選択肢は2つまで
例:
- A:3項目すべて
- B:急ぎの1項目だけ
3つ以上並べると、比べる手間が増えます。迷って、持ち帰って、そのまま止まる。そういう流れになりやすいと私は考えています。2つなら、「どちらか」と聞けます。
Bは「安いほう」ではなく「最初の1歩」として書きます。Bから始めて、あとでAに足す道も残せます。
次の一歩を日付で書く
「ご検討ください」で終えない。私はこれが一番効くと見ています。
NG例:
ご不明点があればお気軽にお問い合わせください。
これだけで終わると、相手は動く理由がありません。
OK例:
○日にお電話で、AかBかを伺ってもよろしいでしょうか。
日付と、聞かれることが決まっています。相手は、その日までにどちらかを考えておけば足ります。
決める場面を作るのは、急かすことではありません。相手が迷う時間を減らすことです。急かしたくない気持ちが強い人ほど、日付を書かないまま終わりがちですが、日付がないほうが相手は困りやすいと考えています。
打ち合わせで1枚をどう使うか
先に送るか、その場で出すか
小さな仕事なら、話を聞いたうえで、その場か翌日までに出すほうが、相手の熱が残っていると私は見ています。日が空きそうなら、先に1行だけ連絡を入れておきます。
例:
本日はありがとうございました。いただいたお話をもとに、1枚にまとめます。○日までにお送りします。
この1行があるだけで、「待たされている」感じが減ります。
読ませるのではなく一緒に見る
渡したら、まず欄1を指して聞きます。
この理解で合っていますか。
ずれていたら、その場で書き直します。ここで直せるのが、1枚の強みです。4枚の資料を作り込んだあとでは、直すのも大ごとになります。
説明しすぎない
1枚の上から順に話し、相手が質問したところだけ深く話します。資料を全部読み上げるのはNGです。相手は自分で読めます。こちらが話すのは、読んだだけでは分からない部分だけで足ります。
沈黙が怖くて説明で埋めたくなる気持ちは分かります。ただ、相手が紙を見て黙っているときは、考えている時間です。そこは待ちます。
相手の言葉を余白に書き込む
打ち合わせ中に出た言葉は、余白に書き込みます。そのうえで、清書版をあとで送ります。
本日のお話を反映して、清書しました。
この一通で、次のやりとりが自然に続きます。清書版を送ること自体が、返事をもらうきっかけになります。
出す前の5分チェックリスト
送る前に、次の8項目を見てください。
- □ 1行目が相手の状況から始まっている
- □ 相手が言った言葉が1つ以上入っている
- □ 困りごとは1つに絞った
- □ やることは3つまで
- □ 実績は相手に近い1件だけ
- □ 金額の内訳がある
- □ 次の一歩に日付がある
- □ 「何でもできます」系の言葉がない
全部にチェックが付かなくても、出して構いません。ただ、付かなかった項目が、相手が迷う場所になりやすいと考えてください。
今日やれること
直近で出した提案書を1つ開いてください。見るのは、1枚目の最初の3行だけです。それが自分の話か、相手の話かを確かめます。
自分の話なら、その3行を、打ち合わせで相手が言った言葉に置き換えます。全部を作り直す必要はありません。最初の3行を変えるだけでも、読み手の受け取り方は変わりやすくなります。
毎回いちから作らない
上の5欄の型を、手元に保存してください。次の提案からは、欄1の聞き取りから埋めます。打ち合わせの時点で「この言葉は欄1に入れよう」と思いながら聞けるようになると、書く時間も短くなります。
うまくいった提案書は、そのまま次の見本になります。削ったものを置いた場所も、一緒に覚えておけば、次に聞かれたときにすぐ出せます。
性格を変える必要はありません。自分をよく見せたい気持ちも、そのままでいい。変えるのは、書く順番だけです。
よくある質問
提案書は1枚だと情報が足りず、手を抜いたと思われませんか?
相手が今日決めるのに要る5つ(状況・困りごと・やること・金額・次の一歩)がそろっていれば足ります。補足は「別に置く資料」として手元に用意し、聞かれたら出せば十分です。
提案書を1枚にするとき、実績はどこに書けばいいですか?
相手の業種や規模に近い1件だけを、「やること」の横に一言で添えます。一覧はリンクや別紙にまとめ、聞かれたときに出します。
1枚の提案書にテンプレートはありますか?
本文の5欄の型をそのまま使えます。A4縦1枚で、上から相手の言葉、困りごと、やること、金額と内訳、日付入りの次の一歩の順に書きます。
金額は提案書の最後に書くべきですか?
最後に隠さず、やることのすぐ下に内訳つきで置きます。内訳があると、予算の調整を相手と一緒に話せます。
大きな案件でも1枚にまとめるべきですか?
この記事は小さな仕事が対象です。大きな案件でも、最初の1枚を「要点の1枚」にして、詳しい資料は後ろに付ける形が使えます。
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