対面営業・商談
カフェの集客|SNSより先に、来てくれた人が友達を連れてくる形にする
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
カフェの集客で悩むのは、SNSが下手だからではない
開店して半年。オープン直後は友人や近所の人が代わる代わる来てくれて、忙しい日もありました。半年たった今、平日の午後は静かな時間が増えています。近所の店のInstagramを覗くと、投稿のたびに新しい客が来ているように見えて、焦りが募ります。
レジに立って、今日は何人来ただろうと数える日も増えました。忙しかった開店直後と、今の静かな午後。変わったのは味でも接客でもなく、来てくれた人へのその後の関わり方だと思います。開店祝いで来てくれた人たちは、もう一通り来てくれています。次に来るのは、その人たちから話を聞いた誰かのはずですが、その「誰か」がまだ現れていません。
「SNSを頑張っていないから」「うちは映える店じゃないから」ではありません。来てくれた人に、次に来る口実と、誰かを連れてくる理由を渡さないまま帰してもらっているからです。
これは紹介待ち型です。いい店にしていればまた来てくれる、人も連れてきてくれると思っていて、思い出してもらうための働きかけをしていない型です。客が減ったのではなく、思い出してもらえなくなった、というのが実際に起きていることだと思います。
味や店のせいではありません。腕は足りています。足りないのは、SNSを鳴らす前にやることの順番だけです。SNSは拡声器です。拡声器を先に鳴らしても、店の中に「人に言える一言」がなければ、届いた人も動きようがありません。
波が引いてから慌てて毎日投稿を始める店をよく見ます。「本日も営業中です」「新作ケーキできました」が並ぶだけで、見た人が友達を誘う理由にはなっていません。まず店の中で口実を作る。SNSはそのあとです。順番を逆にすると、投稿の手間だけが増えて数字は動きません。
友達を連れてくる客は「美味しい」だけでは動かない:口コミが起きる3条件
口コミは「美味しい」だけでは起きないと思っています。次の3つがそろったときに起きます。
- 話す口実がひとことで言える
- 連れて行く相手の顔が浮かぶ
- 連れて行っても恥をかかない確信がある
①一言で言える口実。「こだわりの自家焙煎と落ち着く空間」は人に伝えにくい言葉です。友達に話すときは「木曜だけカレーの日がある店」「全席に電源がある」「犬と入れる」「17時から一杯だけ飲める」のように、ひとことで言える形にします。
②顔が浮かぶ相手。「在宅で仕事してる人」「子連れの友達」「コーヒー好きの上司」のように、常連が頭の中で相手を1人指名できる特徴を店が持っているかどうかです。全員向けの店は、誰も連れてこられません。
実際、メニューも接客も評判のいい店ほど、この落とし穴にはまりやすいです。誰にでも合う店を目指した結果、常連の頭の中に「この人を連れていこう」という具体的な顔が浮かばなくなります。逆に、多少好みが分かれるくらい尖った特徴があるほうが、紹介は起きやすいということです。
③恥をかかない確信。4人で座れる席が1つでもあるか。混む時間を伝えているか。「今度〇人で行っていい?」と聞かれたときに即答できるか。ここが不安だと、常連は連れてきません。
3つがそろわないまま人気だけ出ている店もあります。味の評判はいいのに紹介が起きない店は、たいてい②か③が欠けています。「誰でも来られる店」で終わっていて、常連が誰の顔も思い浮かべられていないケースです。
自分の店に当てはめてみてください。
- 友達に一言で言える口実があるか
- 常連が誰を連れてくるか、想像できる特徴があるか
- 連れてきた人が恥をかかない準備ができているか
3つのうち欠けているものが、口コミが起きていない理由です。
来店から次の来店まで:カウンター越しでやる「営業」の順番
個人カフェの営業は、レジや接客の会話の中で起きます。売り込みではなく、来店の回数ごとに店側が打つ一手を決めておくだけです。
| 来店回数 | 店側の一手 |
|---|---|
| 初回 | 名前より「なぜ来たか」を1つ聞いてメモする |
| 2回目 | 前回聞いたことを一言で伝える |
| 3回目 | 連れてきてほしい人を名指しで頼む |
初回は「今日はどちらから?」「お仕事の途中ですか?」のように1つだけ聞きます。答えを頭の中でも、レジ裏のメモでもいいので残しておきます。メニュー説明とスタンプカードの案内だけで会話が終わる店は、ここで機会を落としています。
2回目は「前回、在宅のお仕事とおっしゃってましたよね」と、覚えていたことを一言で伝えます。相手はここで「自分の店」だと感じ始めます。覚えていると伝えるだけで、割引よりも強く働きます。
3回目は、連れてきてほしい人を名指しで頼みます。「在宅の同業の方がいたら、平日の昼は空いているのでぜひ」「お子さん連れの友達がいたら、奥の席を空けます」のように、相手が想像しやすい人物と条件をセットで伝えます。
聞かれるのが苦手なお客さんもいます。無理に聞き出す必要はなく、「今日は暑いですね」程度の会話でも構いません。大事なのは質問の中身より、次に会ったときに何か一つ覚えている状態を作ることです。忙しい時間帯は一言も交わせない日もあります。そういう日は、次に来たときに「先週はバタバタしていてすみません」と一言添えるだけでも、関係は途切れません。
頼むのが気が引けて、毎回「よかったらまた来てくださいね」で終わらせる店もあります。それでは相手は何をすればいいか分からないまま帰ってしまいます。3回来てくれた人にまだ何も頼んでいないなら、次の来店で①〜③のどれかを試す番です。
「ありがとうございました」で終わらせない、帰り際のひと言
お礼のやりとりで区切りがついてしまうと、店側は次の一言を切り出せず、客側も次に来る理由を持たずに帰ります。帰り際は、口実を渡せる最後の場面です。
| お礼だけで終わる会話 | 次につながる会話 |
|---|---|
| 「ありがとうございました」 | 「来週から木曜カレー始めるので、よかったら」 |
| 「またお願いします」 | 「同じお仕事の方がいたら教えてください」 |
帰り際の一言は、3つの台本で持っておくと出しやすくなります。
- 次回の予告:「木曜からカレー始めます」
- 持ち帰るもの:ショップカードに手書きで「木曜カレー」の一言を添える
- 頼みごと:「同じ職種の方がいたら、昼はゆっくりできますよ」
頼むのが気が引ける人は、①の予告だけでも構いません。3つとも同じ日にやる必要はなく、相手や場面によって使い分けます。
「次回10%オフ」のような割引で終わらせると、値段の話しか残りません。連れてきた友達にも「安い店」として伝わります。渡すのは値引きではなく、口実です。
今日やることはひとつです。今日来た人のうち1人だけに、①〜③のどれかを言ってみてください。全員にやろうとしなくていいです。
今は回っているうちに、次の当てを作る:週1回30分の口コミ棚卸し
開店直後は、知り合いや近所の人で店が回ります。この時期に「今来ている人の店」にできるかどうかで、半年後の平日の午後が決まると思います。波が引いてから始めようとすると、口実を渡す相手そのものがいなくなっています。今、目の前に来ている人こそ、次の当てを作る一番の材料です。
半年後、同じ悩みで振り返りたくないなら、今日から1人ずつ手をつけるしかありません。棚卸しは特別な作業ではなく、日々のレジ打ちの延長線上にあります。特別な時間を新しく作るのではなく、今ある接客の中に、次につながる一言を1つ足すだけです。
持ち帰れる形として、口コミ棚卸しシートを紹介します。
| 来てくれた人 | 連れてきそうな人 | 渡した口実 | 次に来たとき言う一言 |
|---|---|---|---|
| 常連A(在宅勤務) | 同じく在宅の友達 | 平日昼は電源席が空いている | 同じ働き方の方がいたらぜひ |
週1回30分でできる手順です。
- 今週来た常連を5人書き出す
- その人が連れてきそうな人を1人ずつ想像する(職種・家族・趣味)
- 次回来たときに言う一言を決めて表に書く
- 翌週、実際に言えたかを〇×で埋める
毎日振り返るのは続きません。週1回、営業前後の30分だけと決めておくと、忙しい時期でも止まらずに回せます。常連が来るたびに「いつもありがとうございます」で終わり、その人が誰を連れてこられるかを考えたことがない店は多いと思います。腕の問題ではなく、考える時間を取っていないだけです。
SNSを始めるのは、店内の口実ができてから:投稿の一行目の作り方
順番はこうです。店内で口実を作る→常連が友達に言っている言葉を聞く→その言葉を投稿の一行目にする。SNSは店主の言葉ではなく、常連の言葉を拡声する道具だと考えています。
常連が友達を連れてきたときに「なんて言って誘ったんですか?」と聞いてみてください。「木曜カレーの店って言った」という答えが返ってきたら、それがそのまま投稿の一行目になります。店主が考えた紹介文より、人に伝わります。
「本日も営業しております」「新作ケーキできました」という投稿は、見た人が友達を誘う口実になりません。写真がきれいでも、誰と来るかが浮かばなければ動きません。
誘う口実になる投稿はこういう形です。
- 「木曜カレー、在宅仲間と来る人が増えてます」
- 「奥の4人席、子連れで来てくれた方の写真」
誰が誰と来ているかが分かる投稿は、見た人が自分と重ねる相手を想像しやすくなります。
来店した人が投稿しやすくする一手も、店内でできます。写真を撮りやすい場所を1か所決める。店名タグをレジ横に書いておく。「投稿してください」と頼まなくても、口実がある人は自分から載せてくれます。
聞いた答えがそのまま使えないこともあります。そのときは「もう一歩具体的に言うと?」と聞き返してみてください。二言三言のやり取りの中に、投稿に使える言葉が隠れていることが多いです。店主が頭で考えた言葉より、お客さんの口から出た言葉のほうが、結局は多くの人に届きます。
やりがちな3つの失敗と、今日やる1つ
失敗①:割引やクーポンで新規を集め続け、常連が育たない。安い店として広まり、値段の話しか残りません。
失敗②:全員に同じ対応をして、誰にも口実が渡らない。丁寧な接客と、次につながる一言は別物です。
失敗③:SNSを先に始めて、来た人に渡す口実が店内にない。投稿で来た人が一回きりで終わり、「SNSも効かない」と結論を出してしまいます。
3つの失敗に共通しているのは、来た人を「今日のお客さん」で終わらせていることです。次に会う前提で今日の接客をすると、聞くことも話すことも自然と変わってきます。
今日やることは1つだけです。今日来る人の中で1人だけ、帰り際に次の予告か、連れてきてほしい人を言ってみてください。うまく言えなくてもいいです。言った事実を、棚卸しシートに書いておきます。
作る側だった人が独立して、仕事の取り方だけ習っていないのは、カフェの店主も同じです。知り合う、また頼まれる、仕事を切らさない。この順番は職業を問わず共通しています。案件をまたいだ営業の全体の流れは、フリーランスの営業のやり方にまとめています。
よくある質問
個人カフェの集客はSNSから始めるべきですか?
順番が逆になりやすい。先に、来てくれた人に「次に来る口実」と「連れてきてほしい人」を渡す。SNSの投稿は、常連が友達に言っている言葉をそのまま一行目にすると、見た人が誰かを誘う理由になる
常連さんに「友達を連れてきて」と頼むのは図々しくないですか?
「連れてきて」ではなく「〇〇な方がいたら、平日昼は空いています」と相手と条件を具体的に言うと頼みごとにならない。気が引けるなら「来週から〇〇始めます」という予告だけでもいい
スタンプカードや割引券は効果がありますか?
渡すこと自体は悪くないが、値段の話しか残らず友達に言える一言にならない。使うなら、カードに「木曜カレー」のように手書きで一言添え、口実を渡す道具にする
口コミで人が増えるまで、どれくらいかかりますか?
期間は言えない。目安にするのは日数ではなく「3回以上来た人が1人でも誰かを連れてきたか」。それが起きたら仕組みが回り始めた合図で、あとは棚卸しシートで人数を増やす
立地が悪いカフェでも口コミで集客できますか?
通りがかりで入る店ではないぶん、「連れてくる」形のほうが効く。行く理由が要る店ほど、友達に一言で言える口実と、連れてくる相手が浮かぶ特徴が必要になる
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