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支払いサイトの交渉の仕方|60日を30日にする言い方

支払いサイトの交渉の仕方|60日を30日にする言い方のイメージイラスト

このシリーズの全体像 お金の話の伝え方|値段・値上げ・値引きを、関係を壊さずに伝える

支払いサイトを言い出せないのは、お金に困っているからではない

契約書に「月末締め翌々月末払い」と書いてあった。読んだ瞬間、入金は2か月先だと分かった。それでも何も言わずにサインした。

納品が終わっても入金はない。カレンダーを見て、家賃の引き落とし日と見比べる。そんな経験がある人は多いはずです。取引先に悪気はなく、もともとそういう社内ルールで動いているだけなのに、こちらだけが日数を数え続けることになります。

支払いを早くしてほしいと言い出せないのは、資金繰りが苦しいからとは限りません。「早くしてほしい」と口にした瞬間、お金に困っている人だと思われるのでは、と感じてしまう人が多いようです。

これは値段が言えない型に近いかもしれません。金額を言うことが自分の値打ちを言うことになっていて、口に出せなくなる型です。支払条件にも同じ構造があります。条件を口にすることが、自分の懐具合を白状することのように感じてしまうのです。

でも、支払いサイトは相手の気持ちで決まっているわけではありません。相手の会社の「締め日と支払日のルール」で決まっているだけです。だから交渉は、頭を下げてお願いすることではありません。そのルールに例外の枠があるかどうかを聞くこと、に近い作業です。

支払い条件は仕事の条件であって、自分の事情の告白ではありません。着手金や分割払いは、会社の規模に関係なく使われることがある取引の形です。

検索意図に直球で答えると、使う文面は一文で足ります。

初めてのお取引ですので、当方では着手時に半分、納品時に残り半分のお支払いをお願いしています。

理由は「困っている」ではなく「当方の決まり」で言う。これが、この記事でいちばん伝えたいことです。

支払いサイトの読み方と、60日が「上限」になる取引

締め日+支払日で数える

納品日が月初か月末かで支払いまでの日数が30日〜60日に変わる比較図

「月末締め翌月末払い」という条件は、同じ文言でも待つ日数がまったく違います。納品日によって、実質の支払いサイトは30日から60日近くまで動きます。

納品日締め日支払日実質の待ち日数
4月1日4月末5月末約60日
4月28日4月末5月末約30日

同じ「翌月末払い」でも、月初に納品するか月末に納品するかで、待つ日数はほぼ倍になります。契約書の文言だけを見て「そういうものだ」と諦める前に、この数え方を知っておくと交渉の土台ができます。自分の納品日を月末側に寄せられるなら、条件を変えなくてもそれだけで待つ日数は縮みます。

下請法の対象になる取引では60日が法律の上限

取引先が下請法の対象になる場合、支払期日には法律上の上限があります。下請法(下請代金支払遅延等防止法)は2026年1月1日に法律名が「取適法」に変わりました。「親事業者」は「委託事業者」に、「下請事業者」は「中小受託事業者」という呼び方になっています。支払期日を受領した日から60日以内、かつできる限り短い期間内に定めるという基本の仕組みは、名称が変わった後の条文でも同じ言い回しで規定されています。ここでは分かりやすく「発注する側」「受注する側」と呼びます。

発注する側は、受注する側から給付を受け取った日から起算して60日の期間内、かつできる限り短い期間内に支払期日を定めなければなりません。検査をするかどうかは関係なく、受け取った日から数えます。役務提供の場合は、役務を提供した日から数えます。

ただし、これはすべての取引に当てはまるわけではありません。下請法が適用されるかどうかは、取引先と自分の資本金・従業員数の組み合わせや取引の内容によって決まります。自分の取引が対象になるかどうかは、専門家に相談することをおすすめします。

下請法の対象外でも、フリーランス新法という別の60日ルールがある

下請法の対象にならない取引でも、上限がすべて消えるわけではありません。フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、従業員を使わずに一人で仕事をする個人事業主が仕事を受けるとき、発注する側が従業員を使っている事業者であれば、資本金の大きさに関係なく、成果物を受け取った日から60日の期間内、かつできる限り短い期間内に支払期日を定めることを義務づけています。検査をするかどうかも関係ありません。

下請法は発注する側と受注する側の資本金・従業員数の組み合わせで対象が決まりますが、フリーランス新法は「受注する側が従業員を使わない一人事業者で、かつ発注する側が従業員を使っている事業者かどうか」で対象が決まります。だから、発注する側が小さな会社であっても、そこに従業員がいて、あなたが従業員のいない一人事業者なら対象になることがあります。発注する側も従業員のいない一人事業者どうしの取引では、フリーランス新法の対象にはなりません。

それでも、すべての取引が自動的に守られるわけではありません。あなた自身が従業員を雇っている場合や、取引の形によっては、下請法・フリーランス新法のどちらも対象外になることがあります。自分の取引がどちらに当たるかは、専門家に相談してください。

法律の話を交渉の武器にする必要はありません。ただ、「上限がないから諦めるしかない」と思い込む必要もありません。60日という数字は、相手が最初に決めた初期値であって、相手が絶対に譲れない一線とは限らない場合も多いです。社内の慣例で決まっているだけで、変更した前例がないから聞かれたことがない、というだけのケースもあります。

NG例:「60日は下請法違反ですよ」から交渉を始めるのは避けてください。取引の形によっては下請法もフリーランス新法も対象外の場合があり、その場合は事実に反しますし、対象であっても関係を壊します。対象であっても、60日以内の支払いは適法で、違反になるのは60日を超えて支払期日を定めたときです。基準になるのは受領日で、締め日ではありません。だから「月末締め翌々月末払い」のように締め日基準で条件を言葉にしている取引は、納品日にかかわらず60日を超えるため、対象取引なら違反になります。法律は最後に確認する事項であって、切り出しの言葉ではありません。

いつ言うかで通りやすさが変わる|タイミング3段階

見積提出〜契約前が一番通る

契約前・進行中・請求後の3段階で交渉の通りやすさが変わることを示す図

条件がまだ何も決まっていない段階です。見積書の備考欄に「お支払条件:着手時に半分・納品時に半分」と一行書くだけで、口で切り出さなくても交渉が始まります。

相手はそれを見て「うちは月末締め翌月末なんですが」と返してくることが多く、そこから条件のすり合わせに入れます。何もない状態から言い出すより、はるかに気が楽です。書面で先に置いておくことで、対面で頭を下げる場面自体をなくせます。

請求書を出したあとは一番通らない

請求書を出した時点で、相手の経理はすでに支払日をルールどおりに処理し始めています。担当者一人の判断では変えられません。ここで支払いを早めてほしいと頼むのは、担当者に「例外処理の手間」をまるごと背負わせることになります。

ここで断られたとしても、頼み方が悪かったわけではありません。順番が遅かっただけです。

継続取引の途中で変えるなら「次の案件から」に乗せる

いま進んでいる案件の条件を途中で動かすのは無理があります。代わりに「次回からは着手金をいただく形にさせてください」と、区切りに合わせて伝えます。

見積の更新や年度替わり、単価改定のタイミングに乗せると、単独で切り出すより自然に通ります。

持ち帰り表

タイミング言い方通りやすさ今すぐの行動
契約前見積書の備考に条件を書く高い備考欄に一行足す
進行中「次回から」で切り出す中くらい次の見積更新まで待つ
請求後今回は動かさない低い次回の見積に先に書いておく

言い方を工夫するより先に、いつ言うかを決めてください。ここでほぼ勝負が決まります。

60日を30日にする言い方|そのまま使える文面と3段の落としどころ

理由は「困っている」ではなく「当方の決まり」で言う

第1案から第3案へ段階的に妥協点を下げる交渉の階段図

そのまま使える文面を2つ挙げます。

契約前に伝える場合。

初めてのお取引ですので、当方では着手時に半分、納品時に残り半分のお支払いをお願いしています。

メールで一文だけ送る場合。

お支払条件について、月末締め翌月末払いでご調整いただくことは可能でしょうか。難しい場合は着手金のみでも構いません。

どちらも、理由を自分の事情ではなく「当方の決まり」として置いています。相手の会社にとっても、社内で説明しやすい言い方になります。

落としどころを3段用意してから話す

ゼロか100かで交渉すると決裂しやすくなります。話す前に、引き下がる先を決めておきます。

案内容ねらい
第1案着手時に半分・納品時に半分待つ日数がほぼ半分になる
第2案月末締め翌月末払い(いわゆる30日サイト・実質30〜60日)一般的な条件に落ち着かせる
第3案初回だけ短縮、2回目以降は先方ルールまず取引を成立させる

第1案が通らなくても、第2案、第3案と降りていけばいいのです。これは負けではなく、交渉そのものです。3段を先に決めておくと、その場で焦って妥協点を考える必要がなくなり、一つ断られただけで話を終わらせずに済みます。

言ってはいけない3つ

  • 「資金繰りが厳しくて」— 相手が心配する側に回り、次の発注に影響することがあります
  • 「ほかのお客様は皆さん30日なので」— 相手を他社と比べる言い方は反発を生みやすいです
  • 「法律で60日以内と決まっています」から入る — 下請法とフリーランス新法のどちらに当たるかは、資本金・従業員数の組み合わせや従業員の有無で決まります。確かめずに言うと事実に反することがありますし、当たっていたとしても最初に法律を持ち出すと関係を壊します

相手が「うちは翌々月末しか無理で」と言ったとき

一度で決まらなくても構いません。返し方の例を挙げます。

承知しました。では着手金だけお願いできますか。

では次回のお取引から翌月末でご検討ください。

どちらの返しも、相手のルールを否定せずに、自分の条件だけを一段小さくしています。

発注側の担当者は何に困っているのか|受け手目線で通し方を組む

担当者が困るのは要求の中身ではなく、社内での説明の手間

担当者は自分でお金を出すわけではありません。「なぜこの人だけ支払いが早いのか」を、経理や上司に説明する役を引き受けることになります。

だから、相手が社内でそのまま使える理由を渡すと通りやすくなります。オリジナルの理由より、聞き慣れた理由のほうが説明しやすいのです。

社内で通しやすい理由の型を渡す

次のような言い方は、担当者が「よくある形」として社内で説明しやすい言葉です。

  • 個人事業主との取引は着手金あり
  • 初回取引は前払い
  • 制作物は納品分割で請求も分割

自分だけの特別な理由を作るより、ありふれた型に乗せたほうが通りやすくなります。担当者からすれば、前例のある理由のほうが上司への説明が一言で済みます。

断られても関係は壊れない

担当者は、要求されたこと自体を悪く思っていないことが多いです。断られたときに「無理を言ってすみません」と謝りすぎると、次に言い出しにくくなります。

「承知しました。次回また相談させてください」で区切っておけば、関係は続きます。

交渉の相手は「担当者の気持ち」ではなく、「相手の会社の支払いルールの例外枠」です。担当者を説得するというより、担当者が社内で使える言葉を一緒に作る、という捉え方をすると気が楽になります。

交渉が通らなかったときの手当て|入金が2か月先でも回る組み方

着手金だけでも取る

設計・制作・納品の工程ごとに請求を分けて入金時期を早める図

支払いサイトそのものが動かなくても、着手時にいくらか受け取れれば、待つ期間の重さが変わります。

見積を出す時点で、必ず一行入れておきます。

着手金として◯円を先にご請求してよろしいでしょうか。

金額は総額の半分を目安に、自分の決まりとして提示します。相場の数字ではなく、自分の見積のルールとして持っておくものです。全額を前払いにしてもらう必要はなく、いくらかでも先に入れば待つ間の不安は変わります。

納品を分けて請求も分ける

ある程度まとまった金額の案件で、納品後60日待ちという条件があったとします。これを、設計・制作・納品のように工程ごとに分けて請求する方法があります。

相手の支払いルール自体は変えずに、自分の入金の間隔を縮める方法です。工程ごとの検収の区切りは、あらかじめ見積に書いておきます。最初の入金が早まるだけでも、資金繰りの見通しは大きく変わります。

今回は飲んで、次回の見積書に書く

通らなかった条件は、忘れずに次回の見積書の備考欄に先に書いておきます。毎回いちから交渉するのではなく、自分の見積テンプレートに支払条件の行を固定してしまう方法です。

書いてあれば、あらためて「言い出す」必要がなくなります。

NG例: 通らなかったからといって、以後すべての取引で条件を言わなくなるのは避けてください。1社で通らなかったことと、自分の条件を出し続けることは、別の話です。

今日やること|見積書に一行足すところから

まずは、次の5つを順番に進めてください。

  • 見積書のテンプレートに「お支払条件」の行を追加する(着手時に半分・納品時に半分を初期値にする)
  • いま抱えている取引を「契約前/進行中/請求済み」の3つに分ける
  • 契約前の案件だけ、備考欄に条件を書いて出す
  • 進行中の案件は、次の見積時に「次回から」で切り出すと決めておく
  • 請求済みの案件は今回は動かさない、と決めて気にしない

文面はどれか1つだけ選んでコピーすれば十分です。

契約前用。

初めてのお取引ですので、当方では着手時に半分、納品時に残り半分のお支払いをお願いしています。

メール用。

お支払条件について、月末締め翌月末払いでご調整いただくことは可能でしょうか。難しい場合は着手金のみでも構いません。

断られたとき用。

承知しました。では着手金だけお願いできますか。

支払い条件を出すことは、腕を疑われることでも、お金に困っていると思われることでもありません。取引の条件を決める、当たり前の一行を書くだけです。性格を変える必要はなく、見積書の書式を一行変えれば済みます。お金の伝え方の基本も、同じ考え方から出発しています。

最後に、支払期日の扱いをもう一度書いておきます。取引先が下請法(2026年1月に取適法へと名称が変わりました)の対象になる場合や、あなたが従業員を使わない個人事業主としてフリーランス新法の対象になる場合(発注する側が従業員を使っている場合)は、支払期日は受領した日から60日以内が上限です。どちらに当てはまるかは取引先と自分の資本金・従業員数の組み合わせや従業員の有無によって取引ごとに違います。迷ったら専門家に相談してください。

よくある質問

支払いサイトとは何ですか?

納品(または締め日)から入金までの期間のことです。「月末締め翌月末払い」なら、納品日によって約30日から60日ほど待つことになります。締め日と支払日の組み合わせで決まるので、契約書はこの2つを確認します。

支払いサイト60日は違法ですか?

取引先が下請法(2026年1月に取適法へと名称が変わりました)の対象になる場合や、発注する側が従業員を使っている事業者で、あなたが従業員を使わない個人事業主としてフリーランス新法の対象になる場合は、受領した日から60日以内で、できる限り短い期間内に支払期日を定めることになっています。どちらに当たるかは、取引先と自分の資本金・従業員数の組み合わせや、従業員を使っているかどうかで決まります。個別の判断は専門家に相談してください。

フリーランスが着手金を求めるのは失礼になりますか?

失礼ではなく、取引条件の提示です。「初回のお取引は着手時に半分」を当方の決まりとして見積書の備考に書けば、口で頼み込む必要もありません。理由を「困っている」にしないことが大事です。

支払いサイトの交渉はメールでもいいですか?

契約前なら見積書の備考欄に書くのが一番自然です。メールなら「お支払条件について、月末締め翌月末払いでご調整いただくことは可能でしょうか。難しい場合は着手金のみでも構いません」の一文で足ります。請求書を出したあとの交渉は通りにくいので、次回に回します。

一度合意した支払いサイトを途中で変えられますか?

進行中の案件は動かさず、「次回のお取引から」と区切りに合わせて切り出します。見積の更新や単価改定と同じタイミングに乗せると通りやすくなります。次回の見積書には最初から条件を書いておきます。

参照した情報源

  1. 下請代金支払遅延等防止法(第2条の2 下請代金の支払期日)(公正取引委員会)・確認日 2026-09-12
  2. 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号)第4条 報酬の支払期日等(日本法令外国語訳データベースシステム(法務省・デジタル庁))・確認日 2026-09-12
  3. トリテキ法の確認ポイントー代金編ー(令和8年1月1日から「下請法」は「取適法」に変わります)(公正取引委員会)・確認日 2026-09-12
  4. 2026年1月施行の改正下請法(取適法)でこう変わる、中小企業の委託取引と支払(辻・本郷 税理士法人)・確認日 2026-09-12

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