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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
入会率を上げるには、体験の最後に「決める時間」を取っておく
体験が終わって、相手が「楽しかったです」と言ってくれた。表情も明るい。ここで料金の話を出したら、せっかくの空気が壊れるかもしれない。そう思って、「よかったら、またいつでも来てください」と笑顔で見送る。
その日の夜、入会の連絡は来ません。翌週も来ません。
入会の話を出したら、楽しかった体験が売り込みに変わってしまう。そう感じて、最後まで切り出せない人がいます。私はこの感覚を、まちがいだとは思いません。相手を大事にしているから出てくる気持ちです。
先に答えを書きます。入会率を上げるいちばんの手は、勧め方をうまくすることではない、と私は考えています。体験の最後に、5分ほどの「決める時間」を最初から組み込んでおくことです。話し方の上手下手より、時間割の問題として考えたほうが、ずっと動きやすくなります。
「また今度」は断りとは限らない
「また今度」「考えてみます」と言われると、断られたように聞こえます。ただ、私は断りの言葉だけとは限らないと見ています。これは仮説です。
体験の直後に、相手が持っている材料を並べてみます。
- 楽しかった、続けてみたい気持ち
- 料金がどのくらいか、まだ聞いていない
- どうやって始めるのか、分からない
- 自分に合うコースがどれか、分からない
気持ちはあるのに、決めるための材料と、決める場面がない。その状態で帰っただけ、ということも十分ありえます。この場合の「また今度」は、「決められる形で話してもらえたら考えます」に近い言葉です。
勧めないのは遠慮のつもりでも、相手に「自分から言い出す」役を渡している
入会の話をしないのは、遠慮のつもりです。けれど相手の側から見ると、別の景色になります。
- 入りたいなら、自分から料金を聞かないといけない
- 聞いたら、入る流れになりそうで気まずい
- 忙しそうな相手に、申し込み方を聞くのも悪い
つまり、遠慮して黙ることで、「自分から言い出す」という少し勇気のいる役を相手に渡しています。体験で気持ちが動いた人ほど、その役を引き受けずに帰ってしまうことがあります。
最後のひと押しをしたら引かれる気がして、決める場面を作らないまま見送る
ここまでの流れには、名前を付けられます。最後のひと押しをしたら引かれる気がして、決める場面そのものを作らないまま見送る。私はこれを『引かれそう型』と呼んでいます。
- 引かれそうだと感じて、料金や始め方の話を後回しにする
- 相手が言い出すのを待つ
- 言い出されないまま、体験が終わる
営業のどこかを習った機会がないまま、体験や相談の場に立つことになった人にとっては、自然な流れです。性格の問題とは限りません。
押しの強い人に変わる必要は、まったくありません。性格はそのままでよく、変えるのは進め方の順番だけです。順番を決めておけば、その場の勢いや押しの強さに頼らなくて済みます。
仕事の取り方の全体の順番は、フリーランスの営業の進め方にまとめています。この記事は、その中の「体験や相談のあとで、返事をもらう」場面だけを詳しく書いたものです。
体験に来た人は、帰り道に何を考えているか
ここからは、体験を受けた側に立ってみます。数字や調査ではなく、場面として書きます。

「どう申し込めばいいのか」を聞きそびれたまま帰る
体験が終わったあと、受付で申し込み方を聞こうと思っていた。でも先生は次のレッスンの準備を始めていて、声をかけるタイミングがつかめない。着替えて、荷物を持って、「ありがとうございました」と頭を下げて出てしまった。
こういう場面は、体験した側にとってめずらしくないと私は思っています。やる気がないのではなく、聞くきっかけがなかっただけです。
料金をこちらから聞くのは気まずい
料金は、いちばん気になるのに、いちばん聞きにくい話です。聞いたら「入ります」と言う流れになりそうで、まだ心の準備ができていない。そういう人は、料金を聞かないまま帰ります。
そして料金が分からないものは、決めにくいものです。決められないまま、「また今度」になります。
家に帰ると、体験中の「やってみたい」が日常に押されて薄れる
帰宅すると、夕飯、洗濯、明日の仕事の準備が待っています。体験中にあった「やってみたい」は、その中で少しずつ薄れていくことがあります。これは誰かが悪いわけではなく、日常はそういうふうに進むものです。
体験の直後は、相手の気持ちが動いている時間
体験の最中から直後は、相手の気持ちがいちばん前向きになっている時間だと、私は見ています。その場で決める材料を渡すのは、押しつけではありません。相手が後で調べたり、聞きに戻ったりする手間を減らすことです。
入会の案内がないほうが、相手には負担になる場面がある。この見方に立つと、最後の5分を取ることへの気後れは、少し軽くなるはずです。
体験の始めに「最後に入会の話を5分します」と言っておく
最後に急に入会の話を出すから、売り込みに感じられます。最初に予告しておけば、ただの予定どおりの話になります。

先に言っておけば、最後の話は「予定どおり」になる
映画館で、上映前に「このあと本編が始まります」と言われても、驚く人は少ないはずです。同じことです。体験の最初に、「最後に何をするか」を伝えておきます。
そのまま使える言い方です。
「今日は60分のうち、最後の5分だけ、続ける場合の料金と始め方をお話しします。合わなければ、そこで遠慮なく言ってください」
この一言で、相手の頭の中に「最後に案内がある」「合わなければ断ってよい」の2つが入ります。断ってよいと先に言っておくと、安心して体験に集中してもらいやすくなる、と私は考えています。
業種を変えた言い方も並べます。自分の場に合わせて言葉を変えてください。
- ジム:「今日は最後の5分で、通う場合の料金と、通い方の例をご紹介します。必要なければ聞くだけで大丈夫です」
- ヨガ教室:「終わったあとに5分いただいて、続ける場合の曜日と料金をお話しします。合わなければ、そう言ってください」
- 習い事:「最後にお時間を少しいただいて、始める場合の流れをご説明します。今日お決めにならなくても大丈夫です」
- 施術:「施術のあと、5分ほど、通う頻度の目安とお値段をお伝えします。ご負担に感じたら、遠慮なく教えてください」
始めに1つだけ聞いておく質問
予告のあと、もう一つだけ質問を入れます。
「今日どうなったら、来てよかったと思えますか」
この答えが、最後の5分のつなぎになります。たとえば「肩こりを何とかしたいんです」と返ってきたら、そのままメモしておきます。最後の話は、料金表の説明から入るのではなく、この言葉から入れます。
悪い例:予告なしで、帰り支度を始めたタイミングで料金表を出す
相手が上着を持って立ち上がったところで、「あ、よかったらこちらを」と料金表を出す。これは相手が身構えやすくなります。話の中身は同じでも、出すタイミングと前ぶれがないだけで、売り込みに見えます。
体験の終わり5分の進め方(3つの手順)
予告をしたら、最後の5分の中身です。手順は3つ、それぞれに言い方の例を添えます。

手順1 今日できたことを一緒に振り返る
最初にするのは、今日の体験でできたことを、見たままの事実で伝えることです。
「最初は片足で立つのがぐらついていましたが、最後は10秒もちましたね」
お世辞にならないよう、体験中に見たことを1つだけ覚えておきます。「センスがいいですね」のような評価の言葉より、「何がどう変わったか」のほうが、相手には自分の話として届きやすいと私は見ています。
手順2 最初に聞いた「来た理由」とつなげる
次に、体験の始めに聞いた言葉に戻ります。
「肩こりを何とかしたいとおっしゃっていましたよね。週1回なら、まずこの動きを続けるところからです」
続けるとどうなるかを、相手の言葉で言い直すところが大事です。ここで大げさにコースを売り込む必要はありません。来た理由と、続ける中身がつながっていれば十分です。
手順3 料金と始め方を紙1枚で見せて、選んでもらう
最後に、料金と始め方を紙1枚にまとめて見せます。そして、「入りますか?」とは聞きません。はい・いいえで聞くと、はいと言わなければ断ることになるからです。
「始めるなら、この2つのどちらかです。どちらが合いそうですか」
選べる形にしたうえで、逃げ道も言葉にして残します。
「もちろん、今日は決めないでも大丈夫です。この紙は持ち帰ってください」
選べる形で聞くことと、決めない選択肢を言葉にしておくことは、セットです。どちらかが欠けると、押しつけにも、ただの案内にも見えてしまいます。
体験中に説明しすぎて、最後の5分がなくなる失敗
ありがちなのが、体験の途中で楽しくなって、あれもこれも説明して、気づいたら終了時間になっているパターンです。最後の5分は、予告した時点で時間割に入れてしまいます。体験が残り10分になったら、一度時計を見る。これだけでも、最後の5分は確保しやすくなります。
「また今度」と言われたときの返し方
手順3まで踏んだのに、「ちょっと考えます」と言われることはあります。そのときは食い下がりません。追いかけるのではなく、迷っている中身を1つだけ確かめます。

迷っている中身を1つだけ聞く
「ありがとうございます。差し支えなければ、迷っているのは日程ですか、料金ですか、それとも続けられるかどうかですか」
三択にしておくと、相手は理由を作らなくても答えやすくなります。答えたくなければ、「いえ、特に」と言えば終わります。ここで理由を2つ3つ続けて聞くと、問い詰める形になります。聞くのは1つだけです。
答えに合わせて渡す材料を変える
返ってきた答えによって、渡すものを変えます。
- 日程:通える曜日と時間の例を、その場で2つ示す
- 料金:月あたりの考え方を伝える。たとえば「週1回なら、1回あたりはこのくらいになります」と、紙の数字を使って割り算を見せる
- 続くかどうか:最初の1か月の流れを伝える。「最初の1か月は、まずこの動きだけです」と、小さく始める形を見せる
材料を渡したあと、もう一度「どうでしょう」と詰めることはしません。渡して、待ちます。
「今日は決めない」を気持ちよく受け取る
「もちろんです。帰ってから思い出せるように、この紙はお持ちください」
ここで残念そうな顔をしない。これが大事です。気持ちよく受け取ってもらえた人は、あとから連絡しやすくなると私は考えています。
悪い例:その場の特典で急かす
「今日入会なら入会金なし」のように、その場の特典で決断を迫るのは、避けたほうがいいと私は考えています。決めきれない人をさらに迷わせ、来なくなる理由を作ることがあるからです。
期限を伝えること自体は悪くありません。「◯日までなら、◯月の枠が空いています」のように、こちらの都合として伝えるのは、急かすのとは別です。
悪い例:理由を2つ3つと続けて聞く
「日程ですか、それとも料金ですか。ほかには? 家族の反対とかですか?」と続けると、尋問になります。1つ聞いて、答えをもらったら、それで終わりです。
やってしまいがちな言い方と、言い換え一覧
持ち帰れる形に、表でまとめます。各行は、ここまでの節で出した言い方と同じ方向になっています。
体験中の言い方
| ついやる言い方・行動 | 相手にどう聞こえるか | 言い換え |
|---|---|---|
| 「無理にとは言いませんので」を何度も言う | 相手が気をつかう | 始めに1回だけ「合わなければ、そこで遠慮なく言ってください」と言う |
| 説明を続けて、最後の時間がなくなる | 結局、何をすればいいのか分からない | 残り10分で時計を見て、最後の5分を確保する |
最後の5分の言い方
| ついやる言い方・行動 | 相手にどう聞こえるか | 言い換え |
|---|---|---|
| 「よかったらまた考えてみてください」 | 特に勧めていない | 「始めるなら、この2つのどちらかです。どちらが合いそうですか」 |
| 料金表を渡して黙る | 自分で読んで判断してほしい | 1行ずつ指でさしながら説明する |
| 「入りますか?」とはい・いいえで聞く | はいと言わないと断ることになる | 選べる形で聞き、「今日は決めない」も選べると添える |
見送りの言い方
| ついやる言い方・行動 | 相手にどう聞こえるか | 言い換え |
|---|---|---|
| 帰りぎわに「また連絡します」 | いつ来るのか分からない | 「明日の夜に、今日の内容をまとめて送ります」 |
| 「また来てくださいね」だけで見送る | 社交辞令 | 「この紙を持ち帰ってください。分からないことは、いつでも聞いてください」 |
表の言い換えは、全部を一度に変えなくて大丈夫です。まず「よかったらまた考えてみてください」を、「始めるならこの2つのどちらかです」に置き換える。それだけで、最後の5分はだいぶ変わります。
帰ったあとの連絡は一回、期限をつけて送る
その場で決まらなかった人への連絡は、出しそびれやすいものです。いつ、何を送るかを先に決めておきます。
当日か翌日に送る短い連絡
長い文面は必要ありません。3〜4行で足ります。
今日はありがとうございました。 最後は片足で10秒立てていましたね。 肩こりのことは、週1回の通い方から始めるのが合いそうです。 始め方は、先ほどの紙の2つのどちらかです。分からないことがあれば、このまま返信してください。
構成は、今日の振り返り1行、最初の悩みへの一言、始め方の案内の3つです。感想を長く書く必要はありません。
期限の伝え方
期限はつけます。ただし煽る言い方にはしません。こちらの都合として伝えます。
「◯日までにお返事いただければ、◯月の枠をお取りできます」
枠や日程は、本当にこちらの事情です。「今日中に」「あと少しで終わります」のような、相手を急かす書き方はしません。期限があると、相手も返事をしやすくなると私は考えています。
それでも返事がなければ、追いかけを止めていい
一回送ったら、こちらの役目は果たしています。返事がなかったことで、自分の営業が悪かったと考える必要はありません。相手の生活の事情かもしれませんし、時期が合わなかっただけかもしれません。追いかけを止めてよいと、私は考えています。
悪い例
- 返事がないまま、3日おきに連絡する
- 逆に、気まずくて一度も送らない
どちらも、相手に「決めるのは自分だけ」という重さを残します。一回、期限をつけて送る。それで終わりにする。この形なら、続けやすいはずです。
チェックリスト
そのまま印刷して使えます。
体験前
- 予告の一言を決めた
- 「来た理由」を聞く質問を決めた
体験中
- 相手ができたことを1つメモした
最後の5分
- 料金と始め方の紙を用意した
- 「選べる聞き方」にした(はい・いいえで聞かない)
- 「今日は決めない」も選べると言葉にした
帰ったあと
- 翌日までに一回送った
- 期限を、こちらの都合として書いた
全部をいっぺんに変える必要はありません。次の体験で、予告の一言だけ言ってみる。そこからで十分です。
よくある質問
体験のあと、その場で入会を勧めるのは失礼ですか?
最初に「最後の5分で料金と始め方を話します」と予告しておけば、予定どおりの案内になります。決めない選択肢も一緒に示せば、押しつけに見えにくくなります。
「考えます」「また今度」と言われたら、どう返せばいいですか?
食い下がらず、迷っている中身(日程・料金・続けられるか)を1つだけ聞き、それに合う材料を渡します。今日は決めないことも気持ちよく受け取り、案内の紙を持ち帰ってもらいます。
体験に来た人へのフォロー連絡は、いつ・何回送ればいいですか?
当日か翌日に一回、今日の振り返りと始め方を短く送り、返事の期限を枠や日程の都合として添えます。返事がなければ追いかけを止めてかまいません。
押しが弱い性格でも、入会率は上げられますか?
性格を変える必要はありません。予告する、振り返る、選べる形で聞く、という順番を決めておけば、押しの強さに頼らずに決める場面を作りやすくなります。
入会特典で「今日決めたら割引」とするのは効果がありますか?
その場で急かす形になり、迷っている人をさらに迷わせることがあると私は見ています。期限を伝えるなら、枠や開始日などこちらの都合として伝えるほうが受け取られやすいです。効果の数字は業種ごとに違うため、この記事では扱いません。
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