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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
聞き上手のコツは、うまく話すことより「次に何を聞くか」を手元に持っておくこと
初めての打ち合わせで、相手の話が途切れた。たった3秒ほどの間が気まずくて、つい自分の実績や制作の進め方を話し始める。気づけば、時間の大半は自分がしゃべっていた。帰り道に「また自分ばかり話してしまった」と落ち込む。これはたとえ話ですが、近い経験がある人は少なくないと思います。
黙っている間がこわくて自分の説明で埋めてしまい、相手が話すはずだった時間を取ってしまう。私はこれを「しゃべりすぎ型」と呼んでいます。
そのあと、こう結論を出してしまう人が多いです。「自分は口下手で人見知りだから、聞き上手にはなれない」。そう決めると、次の打ち合わせの前から気が重くなります。
でも私は、話しすぎてしまう原因は、次に何を聞けばいいかを持たないまま席に着いていることにあると見ています。聞くことが手元にないので、黙っている間を自分の説明で埋めるしかなくなる。何を聞けばいいかを習ってこなかった、というだけのことです。腕を磨いて独立した人の中には、聞き方を教わる機会がなかった人も多いのではないでしょうか。
話がうまい必要はありません。聞く順番があればいい。性格はそのままで大丈夫です。
この記事で渡すのは次の3つです。
- 沈黙を待つ
- 聞く順番を持つ
- 相手の言葉で返す
この中で柱にするのは②の「聞く順番」です。①と③は、順番が手元にあると自然にできるようになります。
沈黙は気まずい時間ではなく、相手が言葉を探している時間
沈黙を埋めたくなるのは、こちらが責任を背負いすぎているから

打ち合わせの場を回すのは自分の役目だ、と思い込んでいる人は多いです。そう思っていると、会話が止まった瞬間を「自分の失敗」と受け取ってしまいます。だから焦って何か言う。その何かが、たいてい自分の説明になります。
質問されたほうの立場で考えてみてください。「今のお仕事の進め方はどうですか」と聞かれて、すぐに整理して答えられる人はあまりいません。頭の中で言葉を探している最中です。その間は、相手が考えるための時間であって、こちらの失敗ではありません。
黙って待つ目安は、心の中で5つ数えること
質問をしたら、心の中で5つ数えるまで口を開かない。これを目安にしてください。統計から出した数字ではなく、実務で使いやすい長さとして置いています。
待っている間の目線にもコツがあります。ずっと目を合わせ続けると、相手は答えを急かされている気分になりやすいです。手元のメモか、相手の手元あたりを見ておくと、お互いに楽です。
メモを取るふりではなく、実際に書いてかまいません。書いている姿は「ちゃんと聞いている」という合図にもなります。
NG例:答えを先に差し出してしまう
沈黙に耐えられないとき、いちばんやりがちなのが選択肢を出すことです。
- ✗「たとえば集客とか、単価とかですかね?」
- ⭕「どのあたりが一番気になっていますか」(ここで止めて待つ)
選択肢を出すと、相手は選ぶだけになります。本当は「実は、前の制作会社との関係で…」と言いたかったとしても、出てきにくくなります。こちらが差し出した答えの中から選ばせてしまうからです。
私は、待ったあとの一言目に本音が出やすいと見ています。断定はしませんが、そこまで待った一言目は、聞き逃さないようにメモしておく価値があります。
話を聞く順番は4つ。今どうなっているか→困りごと→それで何が起きているか→どうなったらいいか
4つの順番と、そのまま使える質問

ここが、この記事の柱です。聞く順番は4つだけ。これをスマホのメモに書いて持っていってください。
| 順番 | 聞くこと | そのまま使える質問 |
|---|---|---|
| ① | 今どうなっているか | 「今はどんなふうに回していますか」 |
| ② | 困りごと | 「その中で、引っかかっているのはどのあたりですか」 |
| ③ | それで何が起きているか | 「それで、どんなときに困りますか」 |
| ④ | どうなったらいいか | 「それがどうなっていたら、ひと安心ですか」 |
①は答えやすい現状の話から入るので、相手の口がほぐれやすくなります。②で困りごとが出て、③でその困りごとが実際にどんな場面で起きているかを聞く。最後の④で、相手が目指している状態が出てきます。この④の言葉が、あとで提案するときの土台になります。
具体例:ホームページを作ってほしいと言われたウェブ制作者の場合
「ホームページを作ってほしい」と言われると、すぐに「ページ数は? 予算は?」と聞きたくなります。そこをこらえて、4つの順番で聞いてみます。以下は、流れをつかむための架空のやりとりです。
制作者「今、お問い合わせはどこから来ていますか」(①今どうなっているか) 相手「ほとんど知り合い経由ですね」 制作者「そのあたりで、足りないと感じているのはどのあたりですか」(②困りごと) 相手「ホームページを見て連絡をくれる人がいないんです」 制作者「いないと、どんなときに困りますか」(③それで何が起きているか) 相手「紹介が途切れたら、仕事がなくなります」 制作者「半年後に、どうなっていたらひと安心ですか」(④どうなったらいいか) 相手「月に何件か、知らない人から相談が来てほしいです」
この4往復で、「ページ数」ではなく「知らない人から相談が来る入り口がほしい」という本題が見えました。ページ数や予算の話は、そのあとで十分間に合います。
順番を飛ばすと、また自分の説明に戻ってしまう
②の困りごとを聞かないまま④に行くと、相手は答えにくくなります。「どうなったらいいか」と聞かれても、今何が問題なのかを話していないので、言葉が出てきにくいのです。
すると沈黙が増えます。その沈黙を埋めようとして、こちらが説明を始める。最初の「しゃべりすぎ」に戻る道はこうして開きます。迷ったら、一つ前の質問に戻ってください。
4つの質問は、手帳やスマホのメモに書いて持っていってかまいません。私は、見ながら聞いても失礼にはならないと考えています。何を聞くかが手元にあるだけで、沈黙への怖さはかなり減ります。
相づちとオウム返しは、相手の言葉をそのまま使う
相づちは3種類を使い分ける

相づちが単調になるときは、「はい」だけになっていることが多いです。次の3種類を、場面で使い分けます。
| 種類 | 言い方の例 | 使う場面 |
|---|---|---|
| うなずき | 「はい」「ええ」 | 相手が話している途中。流れを止めたくないとき |
| 続きを促す | 「それで?」「といいますと?」 | 話が途中で止まったとき。もう少し聞きたいとき |
| 受け止める | 「それは大変でしたね」 | 相手が苦労や不満を話したとき |
「それで?」は、少し言い方がきつくなりやすいので、「といいますと?」や、やわらかい声の「それで、どうなりました?」に変えてもかまいません。
オウム返しは言い換えない
オウム返しは、相手の言葉の最後の部分をそのまま返すだけです。ここで気をつけたいのは、自分の言葉に直さないことです。
- 相手「問い合わせが来ても、値段だけ聞いて終わるんです」
- ⭕「値段だけ聞いて終わる…」
- ✗「つまり成約率が低いということですね」
言い換えると、相手の言葉が自分の言葉に置き換わります。「成約率」という言葉は、相手が使っていない言葉です。話が相手から離れてしまい、相手も「いや、そういう話ではなくて…」と説明し直すことになりかねません。
私は、相手の言葉のまま返すほうが「ちゃんと聞いてもらえている」と感じてもらいやすいと見ています。そして、そのあとに続きが出てきやすくなります。
NG例:自分の話にすり替える相づち
共感のつもりで、こう返す人がいます。
- ✗「わかります、僕も独立したときそうで…」
ここから自分の経験談が始まると、5分続いてしまうこともあります。相手が話そうとしていたことは、そこで止まります。
共感は一言で止めて、話を相手に返してください。
- ⭕「それは大変でしたね。そのときは、どうされたんですか」
また、私は「わかります」を何度も重ねると、軽く流している印象で受け取られやすいと見ています。わかったと伝えたいときほど、「わかります」と言うより、相手の言葉を返したほうが伝わります。
話を深める質問は「たとえば?」「いつ頃から?」「どうされたんですか」の3つで足りる
深める質問の手持ちを少なくする
質問をたくさん覚えると、次に何を聞くかを考えるうちに、相手の話が耳に入らなくなります。手持ちは少ないほうが、相手の話に集中できます。
深める質問は、この3つで回せます。
- 「たとえば、どんなときですか」
- 「それは、いつ頃からですか」
- 「それで、どうされたんですか」
4つの順番で聞いていて、相手の話がふわっとしたとき、この3つのどれかを足せば、具体的な場面が出てきやすくなります。「たとえば?」は事例を、「いつ頃から?」は経緯を、「どうされたんですか」は相手がすでに試したことを引き出します。
NG例:はい・いいえで終わる質問を続ける
次のように質問を並べると、取り調べのようになります。
- ✗「ホームページはありますか」「更新していますか」「SNSはやっていますか」
全部「はい」か「いいえ」で終わるので、会話が広がりません。相手も尋問されている気分になります。
- ⭕「今は、どこからお客さんが来ることが多いですか」
こう聞けば、ホームページがあるかどうかも、更新の状況も、SNSの使い方も、相手が自分の言葉で話してくれます。「はい・いいえ」で答えられる質問は、あとで確認するときだけ使います。
聞きにくいお金の話は、困りごとを聞いたあとにする
予算の質問は、聞きにくいと感じる人もいます。コツは、先に困りごとを聞いておくことです。
困りごとの話が済んだあとなら、予算の質問は「その困りごとに、どれくらいかけられそうですか」という話になります。何もないところで「ご予算は?」と聞くより、聞くほうも答えるほうも楽です。
値段の決め方そのものは、この記事では扱いません。ここでは、お金の話に入る前の「聞く順番」だけ押さえておいてください。
自分の説明をしたくなったら、最後に相手の言葉を借りて短く話す
説明したい気持ちは、打ち合わせの最後に置く

自分のやり方や実績を伝えたい気持ちは、おさえなくてかまいません。説明をやめるのではなく、置く場所を後ろに移すだけです。
前半は聞く。後半の数分で話す。この配分にします。前半で相手の困りごとと目指す状態を聞いてあるので、後半の説明は「その話に合わせた説明」になります。
相手の言葉から説明を始める
説明を始めるときは、相手が使った言葉を借りてください。
- ⭕「先ほど『値段だけ聞いて終わる』とおっしゃっていたので、そこに絞ってお話しします」
こう始めると、相手は「自分のことを話してもらえている」と感じやすくなります。実績を並べるより、自分のことだと思って聞いてもらえる入り方です。
NG例:準備した資料を最初から全部見せる
作品集を1ページ目から順に説明していくと、相手が関係ありそうなページにたどり着く前に、時間が終わります。
見せるのは、聞いた困りごとに近い1〜2点だけにします。残りは「ほかにもあります。必要でしたらお送りします」と一言添えれば十分です。
聞いたあと、どう提案して返事をもらうかまでの全体の流れは、フリーランスの営業のしかたにまとめています。あわせて読むと、聞くところから返事をもらうところまでがつながります。
次の打ち合わせで使える、聞き方チェックリスト
会う前にやること
- 4つの順番の質問を、メモに書く
- 相手のホームページやSNSを見て、聞いてみたいことを1つだけ決める
- 自分が話す時間を「最後の数分だけ」と決めておく
打ち合わせ中に意識すること
- 質問したら、5つ数える
- オウム返しは、相手の言葉のまま
- 選択肢を先に出さない
- 自分の経験談は、一言で止める
終わったあとに振り返ること
- 自分が話していた時間は、どれくらいだったか
- 相手の言葉で一番印象に残ったのは何か(言えなければ、聞けていなかったサイン)
- 次に聞きたいことを1つメモする
前・中・後の表
印刷やスクショで持ち歩けるように、1枚にまとめます。
| タイミング | やること |
|---|---|
| 前 | 4つの質問をメモに書く/聞きたいことを1つ決める/自分が話すのは最後の数分と決める |
| 中 | 質問したら5つ数える/相手の言葉のまま返す/選択肢を先に出さない/経験談は一言で止める |
| 後 | 自分が話した時間を振り返る/相手の言葉で一番残ったものを書く/次に聞くことを1つメモする |
話しすぎてしまった日があっても、それは性格の問題ではなく、聞く順番を持っていなかっただけだと私は見ています。「しゃべりすぎ型」と呼んだ状態から抜けるために、まず話し方の練習を重ねる必要はないと考えています。次の1回で、4つの質問を書いたメモを1枚持っていく。今日やるのは、それだけです。
よくある質問
人見知りでも聞き上手になれますか?
なれると私は考えています。聞き上手に要るのは話のうまさではなく、次に何を聞くかの順番です。今どうなっているか、困りごと、それで何が起きているか、どうなったらいいか、の4つの質問をメモに書いて持っていけば、人見知りのままでも相手に話してもらいやすくなります。
会話中の沈黙が怖いときはどうすればいいですか?
質問したあとは、心の中で5つ数えるまで口を開かないようにします。沈黙は相手が言葉を探している時間です。選択肢を出して埋めてしまうと、相手の本当の答えが出てきにくくなります。
相づちが単調になってしまいます。どう変えればいいですか?
うなずき、続きを促す、受け止める、の3種類を使い分けてください。「わかります」の連発をやめて、相手の言葉をそのまま繰り返すオウム返しを混ぜると、聞いている印象が変わりやすくなります。
聞いているつもりが、つい自分の話をしてしまいます
説明をやめるのではなく、打ち合わせの最後に回します。話すときは「先ほど〜とおっしゃっていたので」と相手の言葉から始め、見せる資料は1〜2点に絞ってください。
打ち合わせで何を質問すればいいか分かりません
今どうなっているか、困っていること、それで何が起きているか、どうなったらいいか、の順に聞きます。順番を飛ばすと相手が答えにくくなり、沈黙が増えて、こちらが自分の説明を始めてしまいがちです。
本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。
