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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
会社案内の作り方は「何を載せるか」より先に「受け取った人が何を思い出すか」を決める
ひとりや数人でやっている会社が会社案内を作ろうとすると、手が止まる場所は、私が見てきた範囲ではだいたい同じです。小さい会社だから、全部見せないと信用されない気がする。そこで実績を足し、資格を足し、取引先を足し、沿革を足していく。そういう人が多いと私は見ています。
「小さい会社は全部載せないと信用されない」と思って足していく
「うちみたいな小さい会社は、実績を全部見せないと相手にしてもらえない」。会社案内の相談で、こういう気持ちを持っている人は多いようです。仮説ですが、独立や起業のときに、大きい会社と並べて比べられる場面を想像しているのだと思います。
私が見てきた案内では、情報は足りています。足りないのは、受け取った人が「自分のあの困りごとのときに、この人に頼めばいい」と重ねられる場面です。
分かってもらおうとして実績や情報を足し続けるのに、読む人が自分を重ねる場面がない。私はこれを「実績並べ型」と呼んでいます。腕が足りないのではなく、見せる順番を習っていないだけです。順番が分かれば、足すより減らすほうが効くと私は考えています。
受け取った人は、3日後にどこを見返しているか
私は、会社案内は渡した場で隅から隅まで読まれるものではないと見ています。名刺と一緒に鞄に入り、数日後に机の上で「あの人、何をやってくれる人だっけ」と見返される。この流れを想定して作ります。見返したときに、ひとつ思い出せれば役目は果たしています。
作る順番は5つ:場面→困りごと→頼める仕事→実績→連絡先
「会社案内 作り方」の答えを先に書きます。順番はこの5つです。

- 渡す場面を決める
- 相手の困りごとを書く
- 頼める仕事を3つに絞る
- 実績は3つだけ選ぶ
- 連絡の入口を1つにする
このあとの見出しで、1つずつ文例つきで説明します。
作る前に決めること:いつ、誰に、何のために渡すか
渡す場面は3つ:名刺と一緒に/打ち合わせの最後に/会ったあとのメールで
同じ会社案内でも、渡す場面で相手が知りたいことと、読める量が変わります。

| 渡す場面 | 相手がそのとき知りたいこと | 載せる量の目安 |
|---|---|---|
| 初めて会って、名刺と一緒に渡す | この人は何をする人か | 最小限。1行目と仕事3つが見えれば足りる |
| 打ち合わせの最後に置いていく | さっきの話は、この人に頼めるのか | 進め方と、似たケースが分かる量 |
| 会ったあとにメールでPDFを送る | 社内の誰かに見せるとき、説明できるか | 進め方・料金の目安・連絡先まで |
どの場面にも使える1枚にしたくなりますが、最初は「名刺と一緒に渡す」場面を主役にして作ると、削る基準ができます。
「3日後に思い出してほしいこと」を一文で決める
載せる中身を考える前に、これだけ先に一文で決めます。3日後に机の上で見返した相手が、ひとつだけ思い出せるとしたら何か。
例(架空の例です。実績ではありません):
- 「ホームページを直したいときは、この人」
- 「相続の書類で困ったら、この事務所」
- 「社内で教える時間が取れないとき、この講師」
この一文が決まると、載せるものと載せないものが自然に分かれます。決まらないまま作り始めると、全部が大事に見えて、足し続けることになります。
誰にでも渡せる案内が、誰の手元にも残らない理由
誰にでも渡せるように書いた案内は、読む人の場面と結びつきません。たとえば次の言葉です。
- 幅広く対応します
- お客様第一で取り組みます
- 丁寧な仕事を心がけています
どれも嘘ではありません。ただ、どの会社の案内にも書けるので、読み終えても残るものが少ないと私は見ています。この記事では、相手は社長・店主・担当者本人という前提で書いています。社内の決裁の流れを気にする話は扱いません。目の前の1人に「これは自分のことだ」と思ってもらうほうを優先します。
1枚に入れる中身:上から読む順番と分量の目安
載せる7つの項目と、上から読む順番
ひとり・数人の会社なら、A4で1枚(表だけ、または表と裏)が私の目安です。統計に基づく数字ではなく、私が見てきた範囲での感覚です。ページを増やすほど、「何を頼める人か」を探す手間が相手に回ります。

上から載せる順番はこうです。
- 1行目:「こんなときに呼んでください」
- 頼める仕事を3つ
- 進め方と期間の目安
- 実績を3つ
- 顔写真と、代表者のひと言
- 料金の目安、または「まずは相談から」の入口
- 連絡先(1つに絞る)
1行目は会社名ではなく「こんなときに呼んでください」
会社名や社名ロゴは、すでに名刺に載っています。案内の一番目立つ場所は、相手が自分の場面を重ねる一文に使います。
- NG:「株式会社〇〇は創業以来、地域に根ざした事業を展開してまいりました」
- OK:「ホームページを作ったけれど問い合わせが来ない、というときに呼んでください」
NGの文は、読み手が自分に関係あるかどうかを判断できません。OKの文は、思い当たる人だけが先を読みます。読む人を絞ることは、相手を減らすことではなく、思い出してもらう確率を上げることだと私は考えています。
沿革・理念・料金はどこまで載せるか
沿革・理念・組織図は、ひとりや数人の会社なら、裏面の下に小さく入れるか、載せなくてかまいません。受け取った人が最初に知りたいのは「何を頼めるか」だからです。
料金は、載せるかどうかで迷う人が多い項目です。判断の基準は次のとおりです。
- 決まった形の仕事なら、「〇万円から」と目安を載せる
- 案件ごとに大きく変わるなら、「最初の相談は無料です」など入口だけ載せる
金額が書いてあると、相手は「頼んだらいくらかかるか」を気にせず読めます。書けない場合も、相談の入口があれば、そこから話が始まります。
実績は3つまで:相手が自分を重ねられる書き方に直す
取引先の一覧と資格の羅列が、読まれずに終わる理由
次のような実績欄は、よく見かけます。
- 取引先の名前を何社も並べる
- 資格をすべて書く
- 「制作実績は多数」のように量だけ置く
書いた本人には努力の証拠ですが、読む人には、自分の場面と結びつくものがありません。取引先の名前は、その会社を知らない人には何も伝わりません。数字だけの実績は、どんな仕事なのかが見えません。
「困りごと→やったこと→どうなったか」で書き直す
実績は、「どんな相手が・何に困っていて・何をして・どうなったか」の4つで書き直します。

| どんな相手が | 何に困っていて | 何をして | どうなったか | |
|---|---|---|---|---|
| 書き直す前 | 〇〇商店様 | ロゴ制作 | ||
| 書き直した後 | 開店前の飲食店 | 看板と名刺を急いでそろえたかった | ロゴ・看板・名刺をまとめて用意した | 2週間で開店に間に合った |
上の「書き直した後」は、書き方を見せるための架空の例です。実績としてそのまま使わないでください。読む人は、「自分も急いでいるとき、この人は間に合わせてくれるのか」と重ねられます。
実績が少ないとき、独立したばかりのときの選び方
実績が少なくても、減らす必要はありません。会社員時代にやった仕事を、守秘に触れない範囲で「どんな困りごとを手伝ったか」に書き換えて使います。件数ではなく場面で見せます。やっていない仕事を書いたり、数を水増ししたりはしません。
3つの選び方は、これから増やしたい仕事に近いものを優先することです。全部載せると、頼まれたくない仕事まで頼まれます。
取引先の名前やロゴを載せるときは、相手の了解を取ります。契約で外に出せない場合もあるので、迷うものは名前を伏せて業種だけ書きます。契約上の個別の判断は、専門家に相談してください。
テンプレート:A4・1枚の会社案内の下書き(穴埋めで使える)
穴埋めテンプレート(コピーしてそのまま使える文面)
【こんなときに呼んでください】
____のとき
【頼める仕事】
1. ____
2. ____
3. ____
【進め方】
ご相談 → ____ → ____(目安 ____ 週間)
【これまでの仕事】
・困っていたこと:____ / やったこと:____ / どうなったか:____
・困っていたこと:____ / やったこと:____ / どうなったか:____
・困っていたこと:____ / やったこと:____ / どうなったか:____
【代表から】
____
【料金の目安】
____ から / 初回のご相談は ____
【連絡先】
____(1つだけ)
顔写真は【代表から】の横に置きます。数日後に見返したとき、顔があると誰だったか思い出しやすいと考えているからです。
職種別「こんなときに呼んでください」の1行目の例
例として示すもので、実績ではありません。自分の場面に置き換えて使ってください。
| 職種 | 1行目の例 |
|---|---|
| デザイナー | 名刺やチラシを作ったのに、見た人に伝わっていない気がするときに呼んでください |
| エンジニア | 手作業のまま続けている入力や集計を、仕組みにしたいときに呼んでください |
| ライター | 伝えたいことはあるのに、文章にまとまらないときに呼んでください |
| カメラマン | ホームページや採用ページに使える写真が手元にないときに呼んでください |
| 士業 | 書類の手続きで、何から手をつければいいか分からないときに呼んでください |
| 施術者 | 肩や腰の重さが続いて、仕事や家事に響いてきたときに呼んでください |
| 講師 | 社内で教える人が足りず、新しく入った人に教える時間が取れないときに呼んでください |
| 職人 | 既製品では合わず、寸法や仕様から相談したいときに呼んでください |
紙で刷るか、PDFで送るか
中身は同じでかまいません。違いは渡し方です。紙は打ち合わせの机に残ります。PDFはメールで送れて、相手が社内で回しやすい。
私の目安は、最初はPDFで作り、紙は10〜20部だけ刷る、です。反応を見て直すことが多いので、最初から大量に刷ると直せなくなります。
デザインの道具の話も一つだけ。見た目の型紙は、無料のものでも足りることが多いと私は考えています。ただし、中身の順番は道具を開く前に決めておきます。道具の機能や料金は変わるので、ここでは断定しません。
会社案内は渡したあとに働く:渡すときのひと言と、その後の連絡
渡すときは説明しない。添えるひと言だけ決めておく
会社案内は、渡すときの扱いで働きが変わると私は見ています。添えるひと言は、これで十分です。
「全部読んでいただかなくて大丈夫です。〇〇で困ったときに思い出してもらえたら十分です」
NGは、会社案内を開いて上から読み上げることです。相手の話を聞く時間がなくなります。説明は、相手が指さして質問したときだけ。それまでは、相手の話を聞くことに時間を使います。
翌日に送るメールでPDFと「相手の話」をつなげる
渡した翌日、PDFを添えてメールを送ります。ポイントは、相手が昨日話したことに一つだけつなげることです。
件名:昨日はありがとうございました(〇〇)
〇〇様
昨日はお時間をいただき、ありがとうございました。
会社案内をPDFで添付します。
昨日お話にあった〇〇の件と近いケースを、
裏面の2つ目に載せています。
気になるところがあれば、お気軽にご連絡ください。
〇〇
お礼は1行、添付は1行、つなぎは1行です。長くしないほうが返信しやすいと私は考えています。売り込みの文を足さなくても、案内がその役目を持っています。
5人に渡したら直す:質問された場所と、素通りされた場所
渡した相手が指さして質問した箇所と、何も聞かれなかった箇所をメモしておきます。5人に渡したら、一度直す。5人は私の目安です。質問が出た場所は、足りない情報か、もっと前に出すべき情報です。聞かれなかった場所は、削る候補です。
会社案内は営業の入口の1つで、全体の順番は別の話になります。会う前から会ったあと、また頼まれるまでの流れは、フリーランスの営業の仕方で順番にまとめています。会社案内は、その中の「会ったあとに思い出してもらう」部分を受け持つ1枚です。
刷る前・送る前のチェックリスト
刷る前・送る前の10項目チェック
- ①1行目が「こんなときに呼んでください」になっている
- ②頼める仕事が3つ以内
- ③実績が3つ以内で、困りごとから書いてある
- ④取引先の名前は、相手の了解を取った
- ⑤顔写真がある
- ⑥料金の目安か、相談の入口がある
- ⑦連絡先が1つに絞ってある
- ⑧「幅広く」「お客様第一」など、どの会社にも書ける言葉を消した
- ⑨渡すときのひと言を決めた
- ⑩翌日に送るメールの文面を用意した
最初から作り込まない:渡して直すほうが早い
最初からデザイン会社に頼むより、自分で作って何人かに渡し、直してから頼むほうが、中身が固まると私は考えています。全員に当てはまるとは言えません。中身が決まっていないまま頼むと、見た目は整っても、1行目が「地域に根ざした」で始まる案内になりやすいと見ています。
今日やるのは「こんなときに呼んでください」の一文だけ
全部を見せなくても、信用は減らないと私は考えています。詰め込むほど、読む人は自分を重ねにくくなります。
今日やることは一つです。「こんなときに呼んでください」の一文を、書いてみてください。上の職種別の例から近いものを選んで、自分の場面に直すだけで始められます。
よくある質問
会社案内は何ページくらいが適切ですか?
ひとり・数人の会社なら、A4で1枚(表と裏まで)が私の目安です。ページを増やすほど、相手が「何を頼める人か」を見つけにくくなります。足したくなったら、実績を3つに絞れているかを先に見直してください。
ひとり社長やフリーランスでも会社案内は必要ですか?
必須ではありません。ただ、初めて会った相手が後で見返せる1枚があると、名刺だけより思い出してもらいやすいと私は見ています。まずPDFで1枚作り、何人かに渡して反応を見るところからで十分です。
実績が少ないときは、会社案内に何を書けばいいですか?
件数ではなく場面で見せます。会社員時代の仕事を、守秘に触れない範囲で「どんな困りごとを手伝ったか」に書き直して使います。実績の水増しや、やっていない仕事を書くことはしません。
ホームページがあれば会社案内はいりませんか?
使われ方が違うと私は考えています。ホームページは相手が探しに来たときに見るもの、会社案内は会った相手の手元に残すものです。中身は同じでかまわないので、ホームページの要点を1枚にまとめれば足ります。
会社案内のテンプレートは無料のものを使っても大丈夫ですか?
見た目の型紙は無料のものでも足りることが多いと私は考えています。ただし道具を開く前に、1行目の「こんなときに呼んでください」と、頼める仕事3つ・実績3つを先に決めてください。順番が決まらないまま型紙に流し込むと、項目を埋めるだけの案内になりやすくなります。
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