この記事は『聞く力』の棚です 棚の記事一覧 →
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
ホームページ制作のヒアリングシートは「項目の数」より「聞く順番」で決まる
初回は、5つのかたまりをこの順で聞きます。ここで示すのは、決まった型ではなく、実務ではこの順で聞くことが多い、という私の整理です。
結論:初回は5つのかたまりをこの順で聞く
- 今回考え始めたきっかけ・いま困っていること
- サイトができたら何が起きてほしいか(問い合わせ・予約・採用など)
- いまの状況(今のサイト、お客さんがどこから来ているか、更新できる人がいるか)
- 時期・予算の幅・誰と相談して決めるか
- 作るもの(ページ・デザインの好み・写真や文章の素材)
作るものは最後に回します。作るものから並んでいるシートを手元に持っているなら、この順に並べ替えて使います。初回の打ち合わせは、営業全体の流れの中の一工程です。ここで聞いた内容が、見積、提案、返事をもらうところまでつながっていきます。
シートを厚くしても、初回で手が止まりやすい理由
「自分は話を引き出すのが下手だから、せめて聞きもらしのないシートを用意しておかないと」。ホームページ制作のヒアリングシートを探している人には、こう考えている人が多いのではないか、というのが私の見立てです。確かめたわけではないので、仮説として置いておきます。
腕はあるのに、初回の打ち合わせで何を聞けばいいかを誰にも教わらないまま、制作を請けている。そういう人がシートで穴を埋めたくなるのは、自然な動きです。ただ、うまく話せないことより、何をどの順で聞くかを教わっていないことのほうが大きい、と私は見ています。
項目をたくさん並べたシートでも、聞く順番が逆だと「なぜ作るのか」が最後まで出てきません。デザインの好みやページ数を聞き終えたころに「実は求人に応募が来なくて」と出てくれば、それまでの答えは組み直しになります。
よくあるシートが「デザインの好み」から始まって、あとで困る理由
NG例1:「どんな雰囲気がいいですか」から入る

「どんな雰囲気のサイトがいいですか」「参考にしたいサイトはありますか」。ここから始まると、相手は答えに詰まるか、同業他社のURLを出すことが多いと感じます。そのまま似せて作ると、公開後に「きれいだけど、問い合わせが来ない」となりかねません。似せたのは見た目だけで、相手が困っていた理由には、まだ触れていないからです。
NG例2:「ページ数は?」から入る
「ページ数は?」「お問い合わせフォームは要りますか?」から入ると、最初から見積の材料集めになります。目的を聞かないまま金額の話に進み、相手は「とりあえず5ページで」と答える。あとで「本当は採用に使いたかった」と分かり、構成から組み直しになる場面です。
先に「なぜ今つくるのか」を聞くと、あとの答えが変わる
同じ「おしゃれにしたい」でも、きっかけが違えば、載せる中身も最初のページも変わります。
| Aさん(求人に応募が来ない) | Bさん(取引先に見せるのが恥ずかしい) | |
|---|---|---|
| 載せる中身 | 仕事の内容、働く人の写真、募集の条件 | 会社の概要、取り扱い内容、実績の見せ方 |
| 最初のページで見せたいこと | ここで働く自分が想像できる | ちゃんとした会社だと一目で分かる |
| 「おしゃれ」の中身 | 明るさ、親しみやすさ | 信頼感、整って見えること |
| 追加で聞くこと | 今の応募は、どこから来ているか | 取引先は、どんな場面でサイトを見るか |
「おしゃれにしたい」と言われて、そのとおりおしゃれに作る。依頼に応えた動きなので、間違いではありません。ただ、理由を聞く前だと、何を載せるかが決まらず、手直しが増えます。
【テンプレート】初回ヒアリングシートの項目と、そのまま使える聞き方
5つのかたまりを13項目に分けた表です。「実際の言い方」はそのまま口に出せる形にしてあります。【 】の部分は、自分の仕事に合わせて入れ替えてください。
| 順番 | 聞くこと | 実際の言い方 | 聞くねらい | 答えが出ないときの言い換え |
|---|---|---|---|---|
| ①-1 | きっかけ | 今回ホームページを考え始めたのは、何かきっかけがあったんですか | 作る理由を相手の言葉で聞く | 最近、サイトのことで気になった場面はありましたか |
| ①-2 | いま困っていること | いま、いちばん困っていることは何ですか | 課題の中心を知る | 仕事の中で、もう少しこうなれば、と思うことはありますか |
| ②-1 | 半年後の姿 | サイトができて半年後、どうなっていたらうれしいですか | 問い合わせ・予約・採用のどれかを知る | 問い合わせを増やしたい/求人に応募がほしい/今のお客さんに安心してほしい、だとどれが近いですか |
| ②-2 | 来てほしい人 | 最近来てくれたお客さんで、もっと来てほしい、という方はいますか | 相手を場面で知る | いちばん最近、いい仕事だったなと思ったお客さんは、どんな方でしたか |
| ③-1 | 今のサイト | 今のサイトで、気になっているところはありますか | 現状の不満を知る | 今は、名刺やSNSで伝えている感じですか |
| ③-2 | お客さんの来る道 | 今のお客さんは、どこから来てくれることが多いですか(紹介・検索・SNS・看板など) | 集客の実態を知る | 最近のお客さんは、どうやってお店を知ったと言っていましたか |
| ③-3 | 更新する人 | 公開したあと、お知らせや写真を更新するのはどなたになりそうですか | 公開後の運用を知る | 更新は自分でやりたいか、お任せしたいか、どちらに近いですか |
| ④-1 | 時期の理由 | その時期に、何か合わせたい予定はありますか(新店舗・展示会・求人の募集開始など) | 期限の理由を知る | 遅くなると、困ることはありますか |
| ④-2 | 予算の幅 | 費用は、この3つの幅のどれに近いですか(A・B・C) | 幅で見当をつける | まだ決まっていなければ、目的に合う幅をこちらからお伝えしましょうか |
| ④-3 | 決め方 | 最終的には、どなたかと相談して決めますか | 決める人を知る | ご家族や一緒に経営している方に見せる機会はありそうですか |
| ⑤-1 | 必要なページ | ここまでのお話だと、まずこのページが要りそうです。足りないものはありますか | こちらから案を出す | 【A】【B】【C】のうち、今回入れたいものはどれですか |
| ⑤-2 | デザインの好み | お客さんに、どんなお店(会社)だと思われたいですか | 見た目の方向を目的から決める | 好きなお店や、ああいう感じ、と思う場所はありますか |
| ⑤-3 | 写真・文章の素材 | 写真や文章は、今あるものを使えそうですか | 素材の準備の量を知る | 撮り直しが必要になりそうなものはありますか |
項目は全部埋めなくて大丈夫です。①と②が聞けていれば、初回は十分だと私は考えています。
①きっかけと困りごと
最初は「今回ホームページを考え始めたのは、何かきっかけがあったんですか」です。「古くなったから」と短く返ってきたら、「古くなったと感じたのは、どんな場面でしたか」と場面を聞きます。理由が場面で出てくると、あとの答えの意味が分かります。
②目的と③いまの状況
「サイトができて半年後、どうなっていたらうれしいですか」で、問い合わせ・予約・採用のどれが欲しいのかを聞きます。続けて、お客さんの来る道と、公開後の更新者を聞きます。更新する人が決まっていないと、公開後の運用の話が宙に浮くので、ここは飛ばしません。
④時期・予算・決め方と⑤作るもの
⑤は最後に聞きます。「ここまでのお話だと、まずこのページが要りそうです」とこちらから案を出してから、好みを聞きます。案があると、相手は白紙から答えなくて済みます。
予算・時期・相談相手は「いつ」「どう」聞くか
④は、③のあとに聞きます。きっかけと目的が出たあとなら、お金の話も理由つきで出てきやすくなります。
予算は金額を答えさせず、幅を選んでもらう
「だいたいどのくらいで考えていますか」だけだと、「特に決めてません」で止まりがちです。こちらで3つほどの幅を用意して、選んでもらいます。
費用は、だいたいこの3つのどれに近いか、教えてもらえますか。A:【 】円くらいまで/B:【 】円から【 】円/C:【 】円以上
幅の数字は、自分の価格表に合わせて入れてください。この記事では相場の金額は示しません。それでも決まらないときは、時期と目的を先に固めて、「この目的なら、このくらいの範囲になります」とこちらから幅を示します。
時期は「公開したい日」より「その日に何があるか」を聞く
「その時期に、何か合わせたい予定はありますか(新店舗・展示会・求人の募集開始など)」と聞きます。理由が分かると、間に合わないときに「まず1ページだけ先に公開して、残りはあとから足す」のような代わりの案を出せます。
誰と相談して決めるかを聞く
「最終的には、どなたかと相談して決めますか」。小さな会社なら、社長の家族や共同経営者が入ることがあります。NG例は、最後に「ご予算は?」と一言だけ聞いて終わること。決める人を知らないまま見積を出すと、「相談してみます」と言われたきり、返事が止まることがあります。
相手が黙ったとき、自分の説明で埋めない聞き方
黙っている時間は、相手が考えている時間

質問のあと、相手が少し黙る。そこでこちらが制作実績や進め方の説明を始めてしまい、相手が話しかけていたことを取ってしまう。沈黙が怖くて、自分の説明で埋める動きです。私はこれを『しゃべりすぎ型』と呼んでいます。
口下手かどうかより、何を聞けばいいかを習っていないことが原因のことが多い、と私は見ています。話がうまい必要はありません。聞く順番があればいい。抜ける最小の行動は、シートの次の質問を手元に置いておくことです。沈黙のあとは、説明ではなく、次の質問か「たとえば?」で返します。
答えにくい質問の言い換え例
| 答えにくい聞き方 | 場面に言い換えた聞き方 |
|---|---|
| ターゲットは? | 最近来てくれたお客さんで、こういう人がもっと来てほしい、という方はいますか |
| サイトのコンセプトは? | お客さんに、どんなお店(会社)だと思われたいですか |
| 競合は? | お客さんが比べていそうなお店はありますか |
「たとえば」を2〜3個出して選んでもらう
「問い合わせを増やしたい、求人に応募がほしい、今のお客さんに安心してほしい。だとどれが近いですか」。選んでもらうと、答えやすくなります。選択肢は、それまでのやりとりで出てきた言葉から作ると、外れにくいです。
シートは事前に送るか、その場で使うか
全項目を事前に書いてもらうと、空欄が多いまま返ってくることがある
実務ではよくある、という私の見立てです。割合は分かりません。相手が「書けない=準備不足」と感じると、打ち合わせが気まずい空気で始まります。
事前に送るなら3問だけ
そのまま使える文面です。
件名:ご相談の前に、3つだけ教えてください
〇〇様
お世話になっております。△△です。
〇月〇日の打ち合わせの前に、次の3つだけ、分かる範囲でお知らせください。
① 今回ホームページを考え始めたきっかけ
② 今のサイトや、参考にしたいサイトのURL(なければ空欄で大丈夫です)
③ ご希望の時期(決まっていなければ「未定」で大丈夫です)
短いメモ程度で構いません。残りは当日お聞きします。
当日はよろしくお願いいたします。
その場では「自分用の台本」として持つ
相手に記入用紙として渡さず、自分用の台本として持ちます。画面共有や紙で見せるときは、聞き終わった項目を相手の目の前で書き込み、「こう理解しましたが、合っていますか」と確かめます。オンラインの打ち合わせでも同じです。
ヒアリングが終わったら、当日中にやること
聞いた内容を、相手の言葉のまま1枚にまとめて送る

相手の言い回しを残すと、「分かってもらえた」が伝わります。当日中に送れば、記憶が新しいうちに内容を確かめてもらえる、と私は考えています。例文です。
件名:本日はありがとうございました(お話の整理)
〇〇様
本日はお時間をいただき、ありがとうございました。
お話をこう理解しました。違うところがあれば教えてください。
■きっかけ
求人を出しても応募が来ないことが気になり始めた
■目的
半年後に、求人を見た人から応募の連絡が来ている
■いまの状況
今のサイトは数年前に作ったもの。お客さんは紹介が中心。
更新は事務の△△さんが担当できそう
■時期と予算の幅
【 】月の募集開始に合わせたい。予算はBの幅
■決め方
共同経営者の□□さんと相談して決める
■次にやること
こちらで必要なページの案を作り、【日付】までにお送りします。
1点だけ、今のサイトのURLを教えてください。
聞きもらしは、次に連絡する口実にする
「1点だけ確認させてください」で、次の接点が作れます。全部聞けなかった自分を責める必要はありません。聞けなかった項目は、まとめメールに「1点だけ」として入れれば足ります。
見積に進む前に確認する3つ
- きっかけと目的を、相手の言葉で書けるか
- 誰と相談して決めるかが分かっているか
- 時期の理由が分かっているか
1つでも空欄なら、見積より先に確認の連絡を入れます。
持ち帰りチェックリスト
- 事前に送るのは3問だけにした
- 5つのかたまりを、きっかけ→目的→いまの状況→時期・予算・決め方→作るもの、の順で聞いた
- ①と②が聞けた
- 沈黙のあと、説明ではなく次の質問で返した
- 当日中に、相手の言葉でまとめを送った
- 見積の前に、3つの確認が埋まっている
よくある質問
ホームページ制作のヒアリングシートは、ネットの無料テンプレートをそのまま使ってもいいですか?
項目の参考にはなります。ただ、テンプレートによって項目の並びは違います。作るものから始まっているなら、順番を「きっかけ→目的→いまの状況→時期・予算→作るもの」に並べ替えて使います。項目を全部埋めることより、①きっかけと②目的を聞けることを優先します。
ヒアリングシートは打ち合わせの前に送って書いてもらうべきですか?
全項目を事前に送ると、空欄が多いまま返ってきやすいです。送るなら「きっかけ・参考URL・希望時期」の3問程度に絞り、残りはその場で聞きます。
予算を聞いても「特に決めていない」と言われたらどうすればいいですか?
金額を答えてもらうのではなく、こちらで3つほどの幅を出して選んでもらいます。それでも決まらないときは、時期と目的を先に固め、「この目的ならこのくらいの範囲になります」とこちらから幅を示します。
お客さんがうまく答えられないときは、どう聞き直せばいいですか?
「ターゲットは?」のような言葉を、「最近来たお客さんで、もっと来てほしい人は?」のように具体的な場面に言い換えます。「たとえば」を2〜3個出して選んでもらうと、答えやすくなります。
オンラインの打ち合わせでも同じヒアリングシートで大丈夫ですか?
聞く順番は同じで大丈夫です。画面共有するなら、聞き終わった項目を相手の目の前で書き込み、「こう理解しましたが合っていますか」とその場で確かめる使い方にします。
本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。
