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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
営業しても決まらないとき、まず疑うのは自分の値打ちではなく「決める場面」があったかどうか
打ち合わせでは「いいですね」「ぜひお願いしたいです」と言ってもらえた。その日のうちに見積を送った。ところが、そのあと返事が来ない。三日待ち、一週間待っても静かなまま。こういうことが、何度か続いている。

このとき、「話は聞いてもらえるのに決まらないのは、結局、自分の仕事にはお金を払うほどの値打ちがないってことだ」と考えてしまう人が多いです。腕に自信がある人ほど、返事のない日が続くと、そこに行き着きやすいようです。
ただ、相手の側から見ると、別の景色になっていることが多いです。相手は断るつもりでいるわけではなく、気に入った話を「持ち帰り」の箱に入れたまま、決め方が分からずにいます。いつまでに決めればいいのか。誰かに相談するのか。何を見て決めるのか。この3つが空いたまま打ち合わせが終わると、良い話でも机の上で止まります。
この記事で見直すのは、次の3か所だけです。
- 話を聞く段階(困りごとだけでなく、相手の決め方も聞いているか)
- 提案を出す段階(相手が持ち帰って説明できる形になっているか)
- 打ち合わせの最後(次に話す日を決めて帰っているか)
腕や話し方を変える必要はありません。直すのは、言い方と順番の3か所です。知り合ってから仕事になるまでの全体の順番は、フリーランスの営業のしかたにまとめています。
先に、よくある遠回りを1つ挙げておきます。決まらない原因を「もっと実績を見せれば」「もっと安くすれば」に持っていく考え方です。どちらも、この3か所の外側の話です。実績を足しても値段を下げても、相手が「いつ・誰と・何を見て決めるか」を決められないままなら、返事の来ない状態はそのまま残ります。残るのは、削れた利益だけになりかねません。
1か所目:困りごとは聞けているのに、相手の「決め方」を聞いていない
困りごとを聞いただけでは決まらない理由

打ち合わせで、相手の困っていることはしっかり聞けた。ここまでは、多くの人ができています。抜けやすいのは、その困りごとを「いつまでに何とかしたいのか」と「決めるときに誰が関わるのか」です。
これを聞いていないと、提案を出したあと、相手の中でその件の優先順位が上がりません。困ってはいるけれど急ぎではない話は、目の前の仕事に押されて後ろに回ります。奥さんや共同経営者に相談しないと決められない人なら、その人に説明する場面が来るまで、話は止まります。
聞いておく3つ
| 聞くこと | 聞き方の例 | 聞かないと起きること |
|---|---|---|
| いつごろまでに形にしたいか | 「この件、いつごろまでに形になっているとうれしいですか」 | 急ぎではない案件として後回しになる。こちらも納期を決められない |
| ほかに相談する人はいるか(家族、共同経営者、現場の担当者など) | 「決めるときに、ほかにご相談される方はいますか」 | 相談相手が見えないまま提案を出し、その人に伝わらない形になる |
| ほかにも声をかけているところはあるか | 「ほかにも何社か話を聞かれていますか。比べていただいて大丈夫です」 | 比べられていると知らないまま、値段だけで比べられる |
そのまま使える聞き方とNG
この3つは、困りごとを聞き終えた打ち合わせの後半に、順番に聞きます。1つ聞いたら、相手の答えを最後まで聞いてから次に進みます。続けて質問を重ねると、取り調べのように聞こえます。
「比べていただいて大丈夫です」と添えるのがコツです。比べられること自体を気にしていない、という合図になり、相手が正直に答えやすくなります。
NG例は、予算や比較先を聞くのは失礼だと思って、何も聞かないことです。気持ちは分かります。ただ、聞かないまま見積を出すと、相手が何を基準に選ぶのか分からないまま、金額だけを置くことになります。聞くのは相手を試すためではなく、相手が決めやすい形で提案を出すためです。
ここで想定している相手は、小さな会社の社長や個人の方です。大きな会社のような手続きの話ではなく、「家族に聞いてから」「パートナーと相談してから」といった、身近な相談相手を聞くイメージで大丈夫です。
2か所目:提案が、相手が持ち帰って説明できる形になっていない
相手は提案を、だれかに説明し直している

提案を受け取った人は、それを家族や社員、あるいは自分自身に向けて「なぜこれを頼むのか」と説明し直します。この説明に使える一文が提案書の中にないと、相手は言葉を組み立てる作業から始めることになります。その手間が重いと、そこで止まります。
売り手が書きたいことと、受け手が説明に使いたいことは、少しずれます。売り手は「何をやるか」を書きたい。受け手は「頼むと何が変わるのか」を人に言いたい。ここを受け手の側に寄せます。
金額の横に「何が変わるか」を書く
| 作業内容だけを並べた提案 | 相手の側で変わることも書いた提案 |
|---|---|
| ホームページ修正一式 ◯万円(デザイン3案、修正2回) | 問い合わせフォームを直して、電話で受けていた確認の手間を減らす ◯万円(デザイン3案、修正2回を含む) |
| チラシ制作 ◯万円 | 初めて見た人に、何をしてくれる店なのかがすぐ伝わるチラシにする ◯万円 |
右側は、相手がそのまま家族や社員に言える文です。「フォームを直すと、電話の確認が減るらしい」と一言で伝わります。効果の数字を約束する必要はありません。数字を書くと根拠が要るので、「何が変わるか」を言葉で書くだけで足ります。
案は1つだけにせず、選べる形に
案が1つだけだと、相手の判断は「頼むか、頼まないか」の二択になります。二択のときは、断るほうが気が楽です。範囲を変えた2〜3案にすると、相手の判断は「どれにするか」に変わります。
並べ方の例です。
- 必要な分だけの案:いま困っていることだけを直す
- おすすめの案:困っていることに加えて、次に起きそうなことまで先に手当てする
- しっかりやる案:全体を作り直す
おすすめの案には、理由を一文つけます。「いまの困りごとだけを直すと、半年後に同じ場所でまた手間が出そうなので、この案をおすすめします」のように、打ち合わせで聞いた話につなげて書きます。聞いていない話を理由にすると、押しつけに聞こえます。
NG例は、提案を充実させようとして資料を増やすことです。事例、会社紹介、工程表、と足していくうちに、相手が一番知りたい「で、いくらで何が変わるのか」が埋もれます。1ページ目に、変わること・案・金額が見える状態にしておきます。
3か所目:最後が「ご検討ください」で終わっている
「ご検討ください」のあと、だれも動かない

見積を送って、「ご検討ください」と添える。あとは相手が決めることだから、待つ。誠実なやり方に見えます。ただ、相手は忙しく、思い出したときには熱が冷めています。出した側も、いつ連絡していいか分からないまま日が過ぎ、連絡しづらくなっていきます。
出したあとに何をすればいいかを習っていないので、「あとは相手の番」で止まってしまう。私はこれを「相手の番型」と呼んでいます。
この形にはまっている人には、返事が来ないことそのものより、金額を見て黙られたことがつらい、という人が多いです。「高いと思われたんだな」と受け取って、それ以上動けなくなります。ここに、1つ別の見方を置いておきます。高いと思われたとは限りません。決められないだけかもしれません。
次の日時を決めて帰る言い方
打ち合わせの最後に、こう言います。
「来週の水曜日に、一度お電話してもいいですか」
「決めにくいところがあれば、その場で直しますので言ってください」
「返事をください」ではなく、「次に話す日」を決めます。返事を求められると相手は答えを出さなければなりませんが、日を決めるだけなら相手の負担は小さいです。そして、決めた日に連絡すれば、催促ではなく約束を守っただけになります。
押しつけに聞こえない締め方
最後のひと押しをすると引かれそうで、言えない人もいます。ここは位置づけを変えます。決めてもらうことをお願いするのではなく、決めるための段取りを一緒に決めるだけです。「いつごろまでに決めたいですか」「どなたかに見せるなら、その方向けに資料を直しましょうか」と聞くのは、押す行為ではなく段取りの確認です。
NG例は、「今日決めていただければお安くします」のような急かし方です。条件につられて決める人もいますが、不信感を持つ人もいます。決まったとしても、次からも値引きを待たれる前例が残ります。
それでも返事が来ないときの、催促にならない連絡
連絡するのは「約束した日」
打ち合わせで決めた日に連絡するのが基本です。その日が決まっていなかった場合は、提案を送った翌週など、自分で区切りを決めて連絡します。区切りを決めておかないと、「そろそろかな」と思いながら日が過ぎ、連絡しそびれていきます。
それでも返事がなければ、次の文面のように範囲を絞った案を添えて聞き方を変え、もう一度だけ送って区切りにします。何度も送り続けるより、答えやすい聞き方に変えるほうが、相手は返しやすくなります。
そのまま送れる文面
先日お送りしたお見積の件、気になる点や決めにくいところはありませんでしたか。範囲を絞った形にもできますので、お気軽にお知らせください。
ポイントは、「確認したか」ではなく「決めにくいところはないか」を聞いていることです。相手が答えやすく、答えの中に断る理由も、決められない理由も出てきます。
NG例は、「ご確認いただけましたでしょうか」だけの一文です。相手は「はい、見ました」としか答えられません。見ていても決めていない人は、返事のしようがなく、そのまま黙ります。
断られたら、理由を1つだけ聞く
断られたときは、聞き返せる関係であれば、1つだけ聞きます。
差し支えなければ、どこが合わなかったか1つだけ教えていただけますか。次に活かしたいので。
答えが返ってきたら、それが3か所のどこで起きたのかに当てはめて、手元に残します。「比べる先を聞いていなかった」「提案が相手の説明に使える形ではなかった」「次の日を決めて帰らなかった」。こう分けておくと、断られた出来事が、自分の値打ちの点数ではなく、次に直す箇所のメモになります。
決まらない打ち合わせを減らす、3か所のチェック表
手元に置いて使えるよう、段階ごとに並べます。
| 段階 | 確かめること | できていないと起きること |
|---|---|---|
| 打ち合わせの前 | 相手の困りごとを1つ言えるか | 質問が広がりすぎて、核心を聞けないまま終わる |
| 打ち合わせの前 | いつまでに・誰と相談・比べる先、の3つを聞く準備があるか | 提案を出したあとに止まる理由が分からない |
| 提案を出す前 | 金額の横に「相手の側で何が変わるか」の一文があるか | 作業内容と値段だけで比べられる |
| 提案を出す前 | 選べる形(2〜3案)になっているか | 頼むか頼まないかの二択になり、断られやすい |
| 提案を出す前 | 相手がだれかに説明し直せる一文があるか | 相手が持ち帰ったところで話が止まる |
| 打ち合わせの最後 | 次に話す日時が決まっているか | 連絡のきっかけがなく、日が空く |
| 打ち合わせの最後 | 「決めにくいところ」を聞いたか | 決められない理由が分からないまま待つことになる |
| 打ち合わせの最後 | 「ご検討ください」だけで終わっていないか | 相手の番で止まり、熱が冷める |
全部を一度に直そうとすると、次の打ち合わせで何も変わらないまま終わります。今日やれるのは1つだけです。次の打ち合わせの最後に、「来週◯曜日に、一度お電話してもいいですか」と1回だけ言ってみてください。そこから、決まらない理由が見えるようになります。
よくある質問
営業で話は盛り上がるのに契約にならないのはなぜ?
多くの場合、相手がいつまでに・誰と相談して・何を見て決めるかが決まらないまま、打ち合わせが終わっています。話の中身より、決める段取りが抜けているところを見直します。
「検討します」と言われたら、どう返せばいい?
引き止めたり値下げしたりせず、「決めにくいところはどこですか」と1つ聞き、次に話す日を決めます。例:「来週水曜に一度お電話してもいいですか」。
見積を送ったのに返事がない。何回まで連絡していい?
まず打ち合わせで決めた日に1回。日を決めていなければ、自分で区切りを決めて1回。それでも返事がなければ、範囲を絞った案を添えて聞き方を変え、もう一度だけ送って区切りにします。回数より、相手が答えやすい聞き方にすることが大事です。
その場で決めてもらおうとするのは、押し売りにならない?
決断を迫るのではなく、次に話す日や決めにくい点を一緒に決めるだけなら、押し売りにはなりません。「今日決めれば安くする」のような急かし方は避けます。
決まらないのは、値段が高いから?
そうとは限りません。金額の横に相手の側で何が変わるかが書かれていないと、値段だけで比べられやすくなります。下げる前に、提案の書き方と、選べる案があるかを見直します。
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