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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

クロージングのトーク例は「買ってください」ではなく「次をどうするか」を決める一言

施術や体験が終わって、金額を伝えた。お客さんは少し黙って、「ちょっと考えます」と言った。帰ったあとで店を片づけながら、「やっぱり高かったのかな」と何度も思い返した。この記事は、そういう経験がある人に向けて書いています。

「考えます」で終わる会話と、次の一手が決まる会話の比較図

場面別のひと言3つ

そのまま使える一言を、先に3つ置きます。細かい理由と使い分けは、次の章から書きます。

サロン・施術の場合

「次は3週間後くらいがちょうどいいです。◯日と◯日なら、どちらが来やすいですか」

教室・講座の場合

「続けるなら、月2回のコースが合いそうです。始めるなら、来週の火曜から入れます」

ひとりで受ける仕事(制作・撮影・士業など)の場合

「この内容で進めるなら、来週月曜に下書きを出せます。進めるか見送るか、金曜までにひと言もらえますか」

3つに共通しているのは、「買ってください」と言っていないことです。決めてほしいのは「次の一手」で、時期・日にち・返事の日のどれかを、具体的に1つ出しています。

クロージングは、次の一手をその場で1つ決めること

クロージングというと、押して買わせる技術のように聞こえます。私はそう考えていません。これは私の見方ですが、クロージングとは、相手と一緒に「次の一手」をその場で1つ決めることです。

決める中身は、予約日でも、申し込みでも、返事をもらう日でもかまいません。大事なのは、会話が終わるときに「次にいつ、何が起きるか」が二人の間ではっきりしていることです。見送りも、その選択肢の一つとして堂々と置いてかまいません。

「考えます」と言われたあと、頭の中で起きていること

金額を言って黙られると、「高いと思われた。自分の仕事にその値打ちはないと言われたんだ」と受け取る人がいます。腕に自信がある人ほど、そう受け取りやすいと私は見ています(読者の声から確認したものではなく、仮説です)。

そう受け取ると、次のお客さんの前では金額を言う声が小さくなりがちです。聞かれる前に「高いですよね」と先に謝ったり、「今回は少しお安くしておきます」と自分から下げたりする。仕事の中身は変わっていないのに、伝え方だけが弱くなっていきます。

黙られたのは、値段への答えとは限らない

黙られた時点では、値段にどう思っているのかは分かりません。相手は、次に何を決めればいいのかが分からなくて、言葉が止まっているだけのこともあります。

次の予約を取るのか、コースに申し込むのか、今日は持ち帰るのか。何を決める場面なのかが示されていないと、お客さんは選択肢を自分で組み立てることになります。そうなると「考えます」と言うのがいちばん楽です。高いと思われたのではなく、決められないだけかもしれない。まずはそう見てみてください。

その場で決まらない理由は3つ。それぞれに効く一言

お客さんがその場で決めないのには、理由があります。理由が違うと、効く一言も変わります。ここでは3つに分けます。

決まらない3つの理由と、それぞれに効く対応を結んだ構造図

何を決めればいいか分からない

よくあるのは、何を決める場面なのかが見えていないケースです。ここで「どうされますか?」と聞くのはおすすめしません。答えを自分で組み立てる負担が、全部相手に回るからです。

  • NG:「いかがでしょうか。どうされますか?」
  • 言いかえ:「次は◯日か◯日が空いています。どちらが来やすいですか」

選択肢を2つに絞って出すと、相手は「どちらにするか」だけを考えればよくなります。3つ以上出すと、また迷いやすくなります。2つに絞るのが目安です。

決めるための材料が足りない

総額だけを伝えると、相手は値段の話しかできなくなります。回数・期間・1回あたりを口で分けて言うと、相手は中身を見ながら考えられます。

「全部で4回のコースで、期間は2か月です。1回あたりに直すと◯円で、4回分で◯円です」

※この金額は説明用の仮の数字です。ご自分の料金に置きかえてください。

言いにくい金額ほど、内訳に分けると口に出しやすくなります。「何に対していくらか」が見えると、相手も判断しやすくなります。

人や予定を確かめたい

家族に聞きたい人、自分の予定表を見たい人もいます。この場合は、無理にその場で決めさせないほうが、あとの関係がよくなります。ただし「考えておいてください」で終わらせず、返事の日を決めます。

「そうですよね。では◯日までに、ひと言だけもらえますか。その日までは枠を空けておきます」

3つの理由と効く一言(まとめ)

決まらない理由相手の言葉の例返すひと言
何を決めればいいか分からない「どうしようかな」「うーん」「次は◯日か◯日なら、どちらが来やすいですか」
決めるための材料が足りない「ちょっと高いかも」「考えます」「1回あたり◯円で、4回分です。中身を分けてご説明しますね」(金額は仮)
人や予定を確かめたい「家族に聞いてみます」「予定を見ないと」「◯日までにひと言もらえますか。その日まで枠を空けておきます」

サロン・施術のクロージングのトーク例

施術の終わりに次の予約を聞くひと言

施術の終わりに次の予約を聞く、話す順番3ステップの手順図

話す順番は3つです。①今日の状態の説明、②次に来るといい時期、③日にちを2つ。この順で話すと、次の予約が「営業」ではなく「ケアの続き」として聞こえます。

「今日は肩まわりがだいぶ固まっていました。ほぐれた状態を保つなら、次は3週間後くらいがちょうどいいです。◯日と◯日なら、どちらが来やすいですか」

NG例は、これです。

「ご都合がよければ、また予約してくださいね」

「ご都合がよければ」で終わると、決める役目が全部お客さんに戻ります。都合がいいかどうかを考えるのは面倒なので、「また連絡します」になりやすい言い方です。

回数券やコースを案内するとき

先に1回ずつの料金を言います。そのあとにコースを並べて見せます。順番を逆にすると、コースの値段だけが先に目に入ります。

「1回ずつなら◯円です。4回のコースもあって、こちらは◯円です。どちらでも、合うほうを選んでください」(金額は仮の数字)

選ぶのはお客さんだという言い方にします。「本日中なら割引します」のように、その日に決めさせるための値引きは、私は使いません。値引きで決めてもらうと、次からも値引きを前提に話が進みやすいと考えているからです。

「また連絡します」と言われたとき

引き止めません。引き止めると、相手は断る言葉を探し始めます。かわりに、相手の手間が少ない形を出します。

「では仮で◯日を押さえておきますね。合わなければ、前日までに連絡ください」

仮押さえなら、断るほうが連絡する形になります。相手にとっては、今すぐ決めなくていいぶん気が楽です。

教室・講座のクロージングのトーク例

体験レッスンの終わりに

3段で話します。①今日できたこと、②続けると次にできること、③始められる日。

「今日は最初の曲を、最後まで通して弾けました。続けると、次は両手で弾けるようになります。始めるなら、来週の火曜から枠があります」

①でお客さん自身の変化を言葉にして返すと、③が「売り込み」ではなく「続きの案内」に聞こえます。

月謝やコースを説明するとき

月謝・入会金・教材費は、分けて言います。まとめて言うと、総額が大きく聞こえるからです。

  • NG:「月謝と入会金と教材費で、最初にけっこうかかってしまうんですが……高いと思われたらすみません」
  • 言いかえ:「月謝が◯円、入会金が◯円、教材費が◯円です。最初の月だけ合計で◯円、2か月目からは月謝の◯円です」(金額は仮の数字)

「高いと思われたら……」と先に謝ると、聞いている側は「高い話なんだ」と構えます。謝らずに、順番に数字を並べるだけにします。

「家族と相談します」と言われたとき

家族に相談するのは当然です。まず、そのまま受け止めます。そのうえで、家族に見せられる紙を渡し、返事の日を決めます。

「もちろんです。ご家族に見せられるように、料金と曜日を書いた紙をお渡ししますね。◯曜までにお返事をもらえると、その枠を空けておけます」

紙があると、相談する場でも内容がずれません。返事の日があると、相談したあとの連絡も出しやすくなります。

ひとりで受ける仕事(制作・撮影・士業など)のクロージングのトーク例

見積を出したその場で言うひと言

見積を出す前に返事の日を決め、確認連絡は1回にする時系列図

見積を渡すときに、①進めた場合の次の段取り、②返事がほしい日、をセットで言います。

「この内容で進めるなら、来週月曜に下書きを出せます。進めるか見送るか、金曜までにひと言もらえますか」

「見送るか」と言い添えていることが大事です。断る選択肢を先に出しておくと、相手は断りやすくなります。断りやすい形にしておくほうが、返事そのものが戻ってきやすいと私は考えています。

見積を出して黙られたとき

見積を送ったら、あとは返事を待つだけ。こちらからは次の一手を出さない。この動きは、仕事を取りたい独立者に少なくないと私は見ています。返事が来ない日が3日、5日と続くと、待っているだけなのに「断られたのでは」と感じて、ますます連絡しづらくなります。

見積を出したあとに何をすればいいかを教わっていないと、「あとは相手の番」で止まってしまいます。

ここから抜けるための最小の行動は、見積を渡す前に、返事の日を1つ決めておくことです。

「◯日までにお返事をもらえますか。その日を過ぎたら、こちらから一度だけ確認の連絡をします」

返事の日が決まっていれば、その日を過ぎたときの連絡は催促ではなく、予告していた確認になります。

「一度持ち帰ります」と言われたとき

聞くのは1つだけです。

「持ち帰るとしたら、どこが決め手になりそうですか」

返ってくる答えが、本当の理由に近いはずです。金額かもしれないし、納期かもしれないし、まだ比べている別の相手がいるのかもしれません。

ここでやりがちなNG例が2つあります。

  • 沈黙が怖くなって、自分の説明を足して埋める
  • 聞かれてもいないのに、「少しなら調整できます」と値引きを申し出る

どちらも、相手が考える時間を奪います。値引きを先に出すと、あとから出す金額がすべて「下げられる金額」に見えてしまうと、私は考えています。1つ聞いたら、相手が答えるまで待ちます。

言わない方がいいクロージングの言葉と、その言いかえ

決めさせる圧になる言葉

「本日中なら値引きします」「みなさん決めてますよ」。こうした言葉は、その場の決断を早めることはあっても、あとで「やっぱりやめます」につながるおそれがあります。

言いかえは、相手のペースを守る言葉にします。

  • 「みなさん決めてますよ」→「始める方は、まず月2回から入る方が多いです」(実際にそうである場合に限る)
  • 「本日中なら値引きします」→「料金は変わりません。ご自分のペースで決めてください」

見送りも選べるようにしておく

先に「今回は見送る、でも大丈夫です」と言っておくと、相手は本音を言いやすくなります。押し売りにならないための、いちばん効く一言だと私は考えています。

「今回は見送る、でも大丈夫です。合わないと思ったら、そう言ってもらえるほうが助かります」

見送りを許されると、相手の構えが解けて、「実は金額が気になっていて」「もう少し比べたくて」と、理由を話してくれることがあります。理由が分かれば、次に出すべき一言が決まります。

自分を下げる言葉

「高いですよね」「無理にとは言いません」。気づかいのつもりで言う人が多い言葉です。ただ、聞いている側には「自分の値段に自信がない」と聞こえることがあります。

  • 「高いですよね」→(言わない。金額を言い切って、内訳を続ける)
  • 「無理にとは言いません」→「見送りでも大丈夫です。進めるなら、◯日から始められます」

NG→言いかえの対比表

NGの言葉なぜ詰まるか言いかえ
「ご都合がよければ、また予約してくださいね」決める役目が全部お客さんに戻る「次は3週間後です。◯日と◯日なら、どちらが来やすいですか」
「どうされますか?」答えを自分で組み立てることになる「Aにしますか、Bにしますか」と2つに絞る
「高いですよね」値段に自信がないように聞こえる内訳を分けて、順に言う
「みなさん決めてますよ」圧になり、あとで後悔されるおそれがある「始める方は、まず月2回から入る方が多いです」
「本日中なら値引きします」値引き前提の関係になりやすい「料金は変わりません。ご自分のペースで決めてください」
「無理にとは言いません」腰が引けて聞こえる「見送りでも大丈夫です。進めるなら、◯日から始められます」
沈黙を自分の説明で埋める相手が考える時間を取られる1つ聞いて、答えが出るまで待つ
聞かれる前に値引きを申し出る金額の基準が崩れる「どこが決め手になりそうですか」と1つだけ聞く

その場で次を決めるために、話す前に確かめるチェックリスト

ここまでの言い方は、会う前の準備で半分決まります。話す前に、次の3つを確かめておくと、その場で慌てなくなります。

決めたい次の一手を1つに絞っておく

予約日、申し込み、返事の日。このうちどれを今日決めるのかを、会う前に決めておきます。複数を一度に決めようとすると、聞き方がぶれます。

金額は、内訳と回数をセットで言えるようにしておく

口に出す練習として、次の3行をメモに書いておきます。

  • 1回あたり:(  )円
  • 期間:(  )
  • 総額:(  )円

書いてあれば、本番でも落ち着いて言えます。

決まらなかったときのひと言を用意しておく

その場で決まらなかったときのために、返事の日の決め方と、その日を過ぎたときの連絡を用意しておきます。

返事の日の決め方:「◯日までにひと言もらえますか」

過ぎたあとの連絡:「先日お話しした件ですが、その後いかがでしょうか。進める場合も見送る場合も、ひと言いただければ大丈夫です」

確認の連絡は1回だけ出します。出したあとは、返事を待ちます。

チェックリスト

会う前に、次の項目を確かめてください。

  • 今日決めたい次の一手を、1つに絞った
  • 日にちやコースは、2つに絞って話せる
  • 1回あたり・期間・総額を、1行ずつ書いてある
  • 「見送りでも大丈夫です」と言う場面を決めてある
  • 返事の日を、自分から言う準備ができている
  • 返事が来なかったときの確認連絡の文面を、1回分だけ用意してある
  • 「高いですよね」「無理にとは言いません」を言わないと決めた

今日できること

最後に、今日できる形に落とします。自分の場面のひと言を1つ選び、1行のカードに書いてください。サロンなら「次は◯週間後です。◯日と◯日なら、どちらが来やすいですか」、ひとりの仕事なら「◯日までに、ひと言もらえますか」。書いたカードを、次に人に会う前に1回だけ声に出して読んでおきます。

クロージングは、言葉の巧みさよりも、言う順番と、次を決めることを先に決めておく準備のほうが効くと私は考えています。仕事を取る流れ全体は、仕事の取り方の全体の順番にまとめています。クロージングの前後の流れとあわせて読むと、どこを整えればいいかが見えやすくなります。

よくある質問

クロージングで「考えます」と言われたら何と返せばいい?

引き止めません。「持ち帰るとしたら、どこが決め手になりそうですか」と1つだけ聞いて、返事の日を一緒に決めます。

押し売りにならないクロージングのコツは?

「見送りでも大丈夫です」と先に言い、日にちやコースを2つに絞って示します。決めるのは相手だと分かる言い方にします。

接客で使えるクロージングの例文は?

「次は3週間後くらいがちょうどいいです。◯日と◯日なら、どちらが来やすいですか」のように、時期と日にち2つで聞きます。

金額を伝えたあとに黙られたらどうする?

沈黙を説明や値引きで埋めません。少し待ってから「どこが気になりますか」と1つだけ聞きます。

見積を出したあと返事が来ないときは?

見積を渡すときに、返事の日を決めておきます。その日を過ぎたら、確認の連絡をこちらから1回だけ出します。

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