対面営業・商談
追加費用が出るときの伝え方|あとから請求しない段取り
このシリーズの全体像 お金の話の伝え方|値段・値上げ・値引きを、関係を壊さずに伝える
追加費用の伝え方は「起きたこと→選べる道→金額→返事の期限」の順番
この記事で渡す方法は、この順番1つだけです。4つを一息で言うとこうなります。

「壁を開けたら下地が傷んでいました(起きたこと)。直すなら追加で○円、今回は触らずに進めることもできます(選べる道)。直す場合は材料○円と手間○日分です(金額と理由)。明日までにどちらか教えてください。それまでこの箇所は止めておきます(返事の期限)」
この順番を守ると、相手は「責められている」ではなく「一緒に決めている」と感じます。順番を入れ替えて金額から言ってしまうと、理由が分からないぶん、相手は身構えます。
選べる道は必ず2つ出す
「追加費用を払うか払わないか」という聞き方にすると、相手は責められた気になります。「追加でやる/今回の範囲から外す」という聞き方にすると、相手は自分で選んだことになります。
NG「追加になりますが、いいですか?」は、相手に逃げ道がありません。はいと言うしかない聞き方になっています。
金額は単価×量で言う。総額だけ言わない
「追加でいくらかかかります」ではなく「1ページ○円×3ページで○円です」「材料○円+手間○日分で○円です」。
理由と金額をセットにすると、相手は高い安いではなく、要る要らないで判断できます。逆に、金額を言わずに「少し追加になるかもしれません」とだけ言うと、相手は上限が分からないぶん、最悪の額を想像します。
口頭で言ったら、その日のうちに文面で残す
電話や現場で伝えた内容は、当日中にメールかチャットで「先ほどお伝えした件です」として3行で送ります。
起きたこと/選べる道と金額/返事の期限。この3行です。言った言わないを防ぐためであって、相手を疑うためではありません。
追加費用を言い出せないのは、相手に悪いからではない
Web制作なら「ついでにこのバナーも」「ついでにこのページも直してもらえますか」が3回続いたとき。リフォームなら壁を開けたら下地が傷んでいたとき。開発なら打ち合わせの途中で「この機能も入りますよね」と話が広がったとき。
どの場面も、腕の問題ではありません。言うタイミングを逃しただけです。見積もりを出した時点で、壁の中の状態や相手の要望がどこまで広がるかまで、すべて見抜くことはできません。
「追加を言ったら、最初の見積もりが甘かったと認める気がする」
値段が言えない型かもしれません。金額を言うことが自分の値打ちを言うことになっていて、口に出せない型です。
「追加が出た=自分が最初に見抜けなかったミス」だと自分で決めていて、それを言葉にすると評価が下がる気がするから、という人が多いです。
でも追加が出るのは、見積もりが甘かった証拠ではありません。見積もりは「今分かっている条件」でしか作れないものだからです。
相手が嫌なのは金額ではなく、あとから聞かされること
受け手の立場で考えると分かりやすくなります。相手が怒るのは、追加の額そのものではありません。自分で選べなかったことです。
作業が終わってから「実は追加が出ていました」と言われる。請求書を見て初めて追加の行に気づく。どちらも、相手が選ぶ機会を奪っています。
同じ金額でも、やる前に聞いていれば「自分が選んだ結果」になります。あとから聞かされると「押しつけられた」に変わります。金額の大小より、いつ聞いたかのほうが受け取り方を決めています。
追加費用は見積もりの失敗ではなく、条件が変わった記録
見積もりは「この条件なら、この額」という約束です。条件が変わったら額が変わるのは当然で、それを伝えるのは約束を破ることではなく、約束を守る行為です。
この考え方さえ持っていれば、伝えるときに変に構える必要はなくなります。ここから、場面別にそのまま使える例文を渡します。
そのまま使える例文|場面別に3つ
場面は違っても、型は同じです。「できます」で始める。想定外なら手を止める。変更なら差額で見せる。この3つを押さえておけば、たいていの追加費用は言葉に詰まらず伝えられます。
相手が「ついでにこれも」と言ったとき(その場の一言)
「できます。ここは最初の見積もりに入っていないので、追加で○円になります。それでも進めますか?」
コツは「できます」を先に言うことです。断っているのではなく、条件を伝えています。
NG「あー、はい…やっておきます」は、引き受けた瞬間に無料が確定します。一度でも無料でやると、次からもそれが基準になります。
言い換え:「すみません、追加になっちゃうんですが…」→「できます。ここは追加で○円になります」
開けてみたら想定外だったとき(作業を止めて連絡する文面)
まず手を止めます。電話で「作業を一度止めています。開けてみたら○○の状態で、このまま進めると○○になります。直すなら追加で○円、今回は触らずに進める道もあります。どちらにするか、明日までに教えてください」。
そのあとメールで写真を添えて同じ内容を送ります。写真は「本当に起きたこと」の証拠になり、相手も状況を想像しやすくなります。
言い換え:「多少かかるかもしれません」→「直すなら追加で○円です。今回は触らずに進めることもできます」
相手の都合で納期や仕様が変わったとき(メール文面)
「ご連絡ありがとうございます。変更の内容を確認しました。○○が加わるため、見積もりを次のとおり変更させてください。
変更前:○円(○○まで) 変更後:○円(○○を追加) 差額:○円
ご確認のうえ、○日までにご返事をいただけますか。ご返事をいただいてから着手します」
変更前・変更後・差額を3行で並べると、相手は差額だけ見て判断できます。全体をもう一度計算し直す手間がありません。
言い換え:「仕様が増えたので値段も変わります」→「変更前・変更後・差額をまとめました。ご確認ください」
言ってはいけない伝え方|受け手が嫌がるNG例
謝りから入らない

「申し訳ないんですが」「すみません」で始めると、相手も「悪いことをされた」と受け取ります。追加費用は謝ることではなく、お知らせすることです。「お伝えしておきたいことがあります」で始めます。
曖昧にしない
「少し追加になるかも」「多少かかるかもしれません」は、金額を言うのが怖くて逃げた言葉です。相手は上限が分からないので、実際の額より不安が先に立ちます。
金額がまだ固まっていないなら、「○円から○円の間です。確定したら今日中に連絡します」と幅で言います。幅で伝えるだけで、相手は「最大でもこのくらい」という見通しを持てます。見通しがあるだけで、不安はかなり減ります。
請求書で初めて知らせない・「今回はサービス」と言わない
請求書に相手が知らない行があるのが、あとから請求の正体です。
もう1つのNGが「本当は追加なんですが、今回はサービスで」です。言った瞬間、次からも無料が当たり前になります。吸収するなら黙って吸収するか、「今回は範囲内で対応します。次回からは別途になります」と線を引きます。
| NGの言い方 | 相手がどう受け取るか | 言い換え |
|---|---|---|
| 申し訳ないんですが追加で… | 悪いことをされたと感じる | お伝えしたいことがあります |
| 少し追加になるかもしれません | 上限が分からず不安になる | ○円から○円の間です |
| 追加になりますが、いいですか? | 断りにくい聞き方だと感じる | 追加でやる/今回は外す、どちらにしますか |
| 今回はサービスにしておきます | 次も無料が基準になる | 今回は範囲内で対応します。次回からは別途です |
| 請求書で初めて伝える | 隠されていたと感じる | やる前に金額を伝え、返事をもらってから動く |
あとから請求しない段取り|最初の見積もりに「追加が出る条件」を書いておく
追加費用の伝え方で一番効くのは、追加が出た瞬間の言葉ではありません。最初の見積もりを出すときです。ここで線を引いておけば、追加を言う場面は「約束どおりのお知らせ」に変わります。

見積書に足す3行
①含まれるもの ②含まれないもの ③追加になる条件と単価。
業種別の書き方はこうなります。
- Webデザイン:「修正は2回まで含む。3回目以降は1回○円」
- リフォーム:「下地の状態により補修が必要な場合は別途お見積もり」
- ライター:「取材1件追加ごとに○円」
- 講師:「時間延長は30分ごとに○円」
「含まれないもの」の行がない見積書が、あとから請求を生みます。
渡すときに口で添える一言
「この見積もりはここまでが範囲です。ここを超えるときは、やる前に金額をお伝えして、決めてもらってから動きます」。
最初に宣言しておくと、あとで追加を切り出すときが楽になります。言うと決めていたことを、言うだけになるからです。
建設業では、変更は書面で交わすことが法律で決まっている
建設業法19条では、請負契約の当事者は請負代金の額、工事着手と完成の時期、価格の変動や工事内容の変更に基づく請負代金の額の変更などを書面に記載して相互に交付し、契約内容のうちこれらの事項を変更するときも、その変更の内容を書面に記載して相互に交付することが定められています。
建設以外の業種にこの条文の義務はありません。それでも、変更前・変更後・差額をメールで残す形は、どの仕事にも使えます。契約や書面の扱いで迷うときは、個別の判断は専門家に相談してください。
見積もりや請求まわりのお金の伝え方を一つずつ整理しておくと、こうした場面での迷いは減っていきます。
追加費用を伝えたあと|「高い」と言われたとき・返事が来ないとき
「高い」と言われたら、値下げではなく範囲を動かす
「では今回はここを外して、元の範囲で進めますか」「材料を変えれば○円まで下がります」。金額を下げるのではなく、やることを減らします。
NG「じゃあ半額で…」は、次から半額が基準になります。
返事が来ないときは、追加箇所を止めたまま期限の前日に一度だけ確認する
「先日の件、○日までにご返事がなければ、今回の範囲から外して進めます」。
返事がないのを「怒っている」と受け取らないことです。決めかねているだけのことが多いです。期限を切っておけば、返事がなくても自分の作業が止まりません。
断られたら「元の範囲で進めます」で終わる
「分かりました。今回は元の範囲で進めます」。押さない、謝らない、値引きしない。
追加を断られたのは、その作業が要らないという判断であって、自分の腕や値打ちの点数ではありません。値段は自分の価値の点数ではなく、仕事の条件です。
追加費用チェックリスト|見積時・起きたとき・請求時の3段階
| 段階 | チェック項目 |
|---|---|
| 見積時 | 含まれるものを書いた/含まれないものを書いた/追加の条件と単価を書いた/口頭で「超えたらやる前に言う」と宣言した |
| 起きたとき | 手を止めた/起きたこと→選べる道→金額→期限の順で言った/その日のうちに文面で残した/返事をもらってから動いた |
| 請求時 | 請求書の追加行が相手の返事と一致している/相手が初めて見る項目がない |

迷ったときの判断基準
「これは相手が知っていて選んだことか?」の一問だけで決めます。知らない・選んでいないなら、請求の前に伝えます。金額の大小で決めないことです。
たとえば、修正の3回目を無料で受けるかどうかで迷ったら、「相手は2回までだと知っていたか」で考えます。知っていたなら伝える。伝えていなかったなら、今回はそのうえでどちらか選んでもらいます。
今日やれること
直近に出した見積書を1枚開いて、「含まれないもの」の行があるか見てください。なければ1行足して、次の見積もりからその形で出します。
追加費用の伝え方は、次の追加が出る前に、見積書の1行で決まります。
よくある質問
追加費用はいつ伝えるのが正解ですか?
作業をする前です。やってから伝えると相手は選べず、押しつけになります。手を止めて「追加でやる/今回は外す」の2つを出し、返事をもらってから動きます。
追加料金を伝えるメールはどう書けばいいですか?
起きたこと→選べる道→金額と理由→返事の期限の順で書きます。金額は「変更前/変更後/差額」の3行で並べると、相手は差額だけ見て判断できます。
追加費用を伝えたら「聞いていない」と言われました。どうすればいいですか?
最初の見積もりに「含まれないもの」の行がなかったのが原因です。今回は範囲を相談して元の範囲で進めるか決め、次の見積もりから「含まれるもの・含まれないもの・追加の条件と単価」の3行を足します。
少額の追加でも、いちいち伝えるべきですか?
金額の大小ではなく「相手が知らずに請求されるか」で決めます。吸収するなら「今回はサービス」と言わず、「今回は範囲内で対応します。次回からは別途になります」と線を引いて伝えます。
追加費用を断られたら、どうすればいいですか?
「分かりました。今回は元の範囲で進めます」で終わります。押さない、謝らない、値引きしない。断られたのは作業が要らないという判断で、自分の値打ちの評価ではありません。
参照した情報源
- 建設業法第19条(建設工事の請負契約の内容)(法令リード(建設業法条文データベース))・確認日 2026-09-12
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