対面営業・商談
取引停止の伝え方|合わない相手との仕事を、揉めずに終える文面
このシリーズの全体像 営業メールの例文集|場面別に、そのまま使える文面
取引停止は「時期を先に・理由は短く・お礼で閉じる」で揉めずに伝わりやすくなる
単価は上がらない。修正は増える。夜の連絡も続く。それでも「自分から切ったら次が来なくなる気がする」と思って、今月も同じ条件で受けてしまう。この状態の人は、独立した人の中にいると私は見ています。
切れずにいる人に多い、頭の中の声
合わないと分かっている仕事も受け続け、いい話が来たときには手が空いていない。この状態に名前をつけるなら「断れない型」です。断ったら次が来ない気がして、合わない仕事にも席を空け続ける状態のことです。
切れない原因は、薄情になれない性格にあるとは限りません。仕事の取り方と同じで、仕事の終え方も誰にも習わないまま独立した人が多い、と私は見ています。腕がないから切れないわけではありません。足りないのは、終わらせる順番を知る機会だったと私は見ています。
メールの書き方の土台は営業メールの例文集にまとめています。この記事はその応用で、「続けたい相手に送る文面」ではなく「終える相手に送る文面」を扱います。
伝える中身は3つでいい(終了日・短い理由・お礼)
取引停止の連絡に入れるのは、次の3つです。
- いつまで続けるか(終了日)
- 理由は1〜2文
- これまでのお礼と、引き継ぎの申し出
この3つがそろえば、角は立ちにくくなります。逆に、どれかが抜けると相手は「急だ」「理由が分からない」「うちの仕事はどうなる」と不安になり、そこから揉め事が始まりやすくなります。
性格を変えなくても、順番どおりに進めれば終えられる
強く言える人になる必要はありません。穏やかな言い方のままで構いません。必要なのは、先に段取りを組み、決めた順に伝えることだけです。この記事は、その順番を渡すためのものです。
揉める終わり方は、受け手から見ると3つの「急に」でできている
送る側の言い方を磨く前に、受け取る側がどこで怒るかを見ておきます。受け手が知りたいことは、次の3つに絞れます。
| 受け手が知りたいこと | 答えられないと起きること |
|---|---|
| いつまで続けてもらえるのか | 代わりを探す時間がなく、「逃げられた」と感じる |
| 進めている仕事はどうなるのか | 業務が止まり、不信感が残る |
| これから誰に頼めばいいのか | 相手が自力で探すことになり、不満が強まる |
終了日が近すぎると「逃げられた」に見える
「来月から対応できません」という一文は、避けたいNG例です。相手は代わりを探す時間がなく、事情を聞く前に怒りが先に立ちます。進めている仕事の納品日を見て、相手が次の人を探せる余裕を持たせた終了日にします。
理由を説明しすぎると交渉が始まってしまう
つい書いてしまうのが、不満を並べる文面です。
修正の回数が多く、支払いも遅れがちで、夜間の連絡も続いたため、これ以上のお取引は難しいと判断しました。
正直な文面ですが、一つひとつが反論の材料になります。「修正は減らす」「支払いは早める」と返されて、話し合いが始まってしまいます。短くするとこうなります。
いまの条件では、十分な品質でお応えし続けることが難しくなりました。
自分側の事情として1〜2文で書く。これで十分に伝わります。
途中の仕事を置いていくと、評判が残る
進行中の案件、預かっている資料、管理しているアカウントを置いたまま去ると、相手の業務が止まります。腹を立てた相手が周りに話すとしたら、この部分だろうと私は見ています。終了日を決めるときは、途中の仕事とデータの扱いも同じ紙に書きます。
伝える前にやる段取り:契約書・終了日・次の仕事の当て
文面を書く前に、3つのことを済ませます。送る順番は、準備のあとです。
契約書の「終わり方」の決まりを先に読む
契約書や発注書に、解約や終了の決まり(何日前までに伝えるか、書面が必要か、など)が書かれているかを確認します。書いてあれば、それが最初の基準です。取引の内容によっては法律上の扱いが絡むこともあります。判断に迷う場合や、揉めそうな場合は、個別の判断を専門家に相談してください。この記事は一般的な進め方の説明であり、法的な結論を示すものではありません。
途中の仕事から逆算して終了日を決める
進めている仕事の納品日を一覧にして、どこまで責任を持つかを決めます。そこから、相手が代わりを探せる余裕を足したところが終了日の目安です。具体的な日数は取引ごとに違うので、一律には決められません。迷うときは、相手の立場で「自分がこの連絡を受けたら、何があれば間に合うか」と考えてみてください。
止めたあとの売上の穴を、先に数字で見ておく
今の仕事が続く前提で動いてきて、次の当てを作らないまま来た人は、ここで手が止まります。その取引先の月の売上が、全体のどれだけを占めているかを書き出します。穴の大きさが見えると、「全部切る」か「条件を変える」かの判断もしやすくなります。次の当てづくりは、終える準備と同時に始めます。
伝える前のチェックリスト
- 契約書・発注書の終了の決まりを確認した
- 途中の仕事を洗い出した
- データ・アカウントの返し方を決めた
- 終了日を決めた
- 売上の穴と、次の当てを書き出した
そのまま使える文面:メール・電話・LINEの3パターン
メール全文の例(件名から締めまで)
件名:今後のお取引についてのご相談
◯◯株式会社 ◯◯様
いつもお世話になっております。◯◯です。 これまで長くお付き合いいただき、ありがとうございます。
今回は、◯月◯日をもって、今後のお取引を終了させていただきたくご連絡しました。
今後は◯◯の仕事に絞ることにしました。そのため、これまでと同じ形でお応えし続けることが難しくなっています。
現在進めている◯◯の件は、◯月◯日の納品まで責任を持って対応します。それ以降のデータや資料は、◯月◯日までにすべてお渡しします。
後任の方への引き継ぎが必要でしたら、資料の作成や説明の場を設けることもできます。ご希望をお知らせください。
至らない点もあったかと思いますが、これまでお任せいただいたことに心から感謝しています。
◯◯
構成は、お礼→結論→短い理由→途中の仕事→引き継ぎ→お礼、の順です。結論を二段落目に置いているのは、長い前置きのあとで切り出すと、相手が身構えるからです。
角が立たない理由の書き方3パターン
理由は、相手の非を責めない自分側の事情として書きます。
| パターン | 文例 |
|---|---|
| ①体制の見直し | 今後は◯◯の仕事に絞ることにしました。 |
| ②条件が合わない | いまの条件では、十分な品質でお応えし続けることが難しくなりました。 |
| ③時間の都合 | 手持ちの仕事の量から、これ以上の時間を確保できなくなりました。 |
本当の理由が相手への不満であっても、文面には書きません。不満を伝えて相手に直してもらうのが目的であれば、それは取引停止ではなく条件の相談になります(後の章で扱います)。
長い付き合いの相手には電話が先、文面はあと
付き合いが長い相手に、いきなりメールだけで済ませるのは避けます。まず電話で、最初のひと言をこう切り出します。
「◯◯さん、いまお時間大丈夫でしょうか。今後のお取引について、先にお伝えしたいことがあって電話しました」
要点を話したあと、「内容はあらためてメールでお送りします」と添え、通話のあとに上の全文をほぼそのまま送ります。口頭だけだと、終了日や途中の仕事の扱いがあとで食い違います。
LINEでやりとりしている相手の場合
LINEで仕事をしている相手には、要点だけをLINEで送ります。
今後のお取引について、大事なご相談があります。詳しい内容はメールでお送りしてもよろしいでしょうか。
返事をもらってから、詳細をメールか書面で残します。終了日や納品の取り決めをLINEの流れに埋もれさせないためです。
引き止められた・値上げを提案されたときの返し方
伝えたあとに、反応が返ってきます。ここで答えがぶれると、ずるずる続いて、もう一度言い出す必要が出ます。
値上げの提案には、その場で答えない
「単価を上げるから続けてほしい」と言われたら、こう返します。
「ありがとうございます。一度持ち帰って考えさせてください」
条件しだいで続けるのか、どんな条件でも終えるのかは、伝える前に自分で決めておきます。決めていないと、その場の空気で受けてしまいます。
「困る」と言われたら、終了日ではなく引き継ぎで応える
「急に言われても困る」と言われたとき、終了日を動かせる幅は、あらかじめ決めておきます。そのうえで、引き継ぎの手伝いを具体的に申し出ます。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。後任の方への説明の場を1回設けることと、引き継ぎ用の資料の作成はお手伝いします」
「困る」という言葉は、日にちへの不満というより、先が見えない不安から出ていることが多いと私は見ています。見通しを渡せば、落ち着くことがあります。
感情的な反応には、くり返すだけでいい
強い言葉が返ってきても、言い返しません。伝えた内容、つまり終了日と途中の仕事の扱いを、同じ言い方でくり返します。議論を始めないことが、揉めないための方法です。
ぶれないために、伝える前に決めておく2つのこと
- 条件しだいで続けるのか、どんな条件でも終えるのか
- 終了日を動かせる幅と、手伝える引き継ぎの内容
NG例は、引き止められて終了日をあいまいにすることです。「また考えます」で終わると、相手は続くものと受け取ります。
「全部切る」の前に選べる、関係の細め方
取引停止だけが選択肢ではありません。
条件を変える・量を減らす・新しい依頼を止める
| 選択肢 | 一文の例 |
|---|---|
| 条件を変える | 修正は2回までとさせてください。 |
| 量を減らす | 今後は月◯件までの対応とさせてください。 |
| 新しい依頼だけ受けない | 新しいご依頼は◯月以降お受けできなくなります。 |
| 完全に終える | ◯月◯日をもって、お取引を終了させてください。 |
続けるか終えるかを決める2つの問い
- 条件を変えれば、続けられるか。
- 条件を変えても、続けたくないか。
前者なら、条件の相談を先にします。後者なら、終えます。
終えたあとも関係を残す連絡の仕方
終えた相手とも、季節のあいさつなどで細く関係を残せます。いつか状況が変わったときに、声がかかる余地が残ります。売り込みではなく、近況を伝えるくらいで構いません。ただし、これは連絡を続けたほうが得という話ではなく、関係を荒らさずに終えた人にだけ残る選択肢だという話です。
今日やること:1枚の紙に「終えたい相手」と「終了日」を書く
今日やることは1つです。合わないと感じている取引先を1社だけ書き、その横に、契約の決まりと、仮の終了日を書きます。
書くのは1社・契約の決まり・仮の終了日だけ
まだ送らなくていいです。書くだけで、ずるずる受け続ける状態から一歩出られます。頭の中にあるときは重く感じた話も、紙の上では段取りの1行になります。
合わない仕事を終えることは、恩を忘れることとは限りません。空いた手で、本当に力を出せる仕事を受けられるようになる。そう考えることもできます。
送る日は、次の当てが1つ見えてからでもいい
次の仕事の当てづくりは、終える準備と同時に始めます。一斉に動く必要はありません。当てが1つ見えてから送る日を決めれば、不安は小さくなります。次の当てを作る連絡の文面は、営業メールの例文を使ってください。
よくある質問
取引停止はメールだけで伝えても失礼になりませんか?
付き合いが短い相手や、普段からメール中心でやりとりしている相手なら、メールでも構いません。長い付き合いの相手には、電話で先に伝えて、内容をメールで残すと誤解が起きにくくなります。
取引をやめる理由は正直に書くべきですか?
不満を並べると、反論や交渉の材料になりやすくなります。「今後は◯◯に絞る」「いまの条件では品質を保てない」など、自分側の事情として1〜2文で書くのが無難です。
取引停止は何日前に伝えればいいですか?
まず契約書や発注書に終了の決まりがあるかを確認してください。決まりがなければ、途中の仕事の納品日と、相手が代わりを探す時間から逆算します。揉めそうな場合は、個別の判断を専門家に相談してください。
取引をやめたいと伝えたら値上げを提案されました。どうすればいいですか?
その場では答えず、持ち帰ります。伝える前に、条件しだいで続けるのか、どんな条件でも終えるのかを自分で決めておくと、ぶれません。
取引先を切ると、悪い評判が広がりませんか?
評判を落としやすいのは、終了日が急すぎることと、途中の仕事やデータを置いたまま去ることだと私は見ています。余裕のある終了日と引き継ぎの申し出をそろえれば、揉めずに終えやすくなります。
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