対面営業・商談
「他社にお願いすることにしました」への返信、関係の深さで変える3パターン
このシリーズの全体像 営業メールの例文集|場面別に、そのまま使える文面
「他社にお願いすることにしました」に返信できないのは、例文を知らないからではない
書けないのは敬語ではなく、負けを自分の字で書くことになるから
「他社にお願いすることにしました」という連絡が来たとき、返信の文面はネットで探せば見つかります。それでも手が止まるのは、敬語が分からないからではないと思います。「承知しました」の一行を送った瞬間、選ばれなかったことが自分の中で確定してしまう気がするからかもしれません。断られた事実そのものより、それを自分の手で文字にする作業のほうがつらいのだと思います。
こうして例文を探している時点で、返信をきちんと出そうとしていることは変わりません。あとは型に沿って埋めるだけです。
二回目が怖い型かもしれません
このつらさは、二回目が怖い型に近いかもしれません。断られたあと次の連絡を出すと「やっぱり向いていない」が確定してしまう気がして、連絡そのものを止めてしまう型です。返信を出さないまま案件をそのまま終わらせるのも、同じ動きだと思います。ただ、返信は評価への返事ではありません。次の1件の入口です。断られても、仕事の値打ちが下がるわけではありません。
下書きを開いては閉じ、また開く。そうしているうちに数日が過ぎ、今さら返信するのも変な間になってしまう。この流れに心当たりがあるなら、なおさら型として扱うのが向いています。作文ではなく、決まった手順を埋める作業だと考えると、手が動きやすくなります。
返信しないと何が起きるか
返信しないままだと、その名前は相手の記憶の中で「途中で消えた人」になります。断った側は次に別の仕事を頼む相手を探すとき、最後にどう終わったかで思い出します。ここで営業メールの基本の型に戻れば、失注も1通で終わらせずに済みます。
この記事で扱う範囲
この記事では、相手との関係の深さによって返信の文面をどう変えるかに絞って書きます。お礼・受け止め・引き際・次の余白という基本の型そのものを一から知りたい場合は、失注メールの例文に一通り整理してあるので、先にそちらを読んでおくと迷いにくくなります。
そのまま使える返信例文3パターン(関係の深さで文面を変える)
文面は一種類ではありません。相手との関係がどこまで進んでいたかで、入れる分量が変わります。浅い関係に長文を送ると重く、深い関係に3行だけ送ると素っ気なく映ります。

一度会っただけ・提案まで至らなかった相手(3〜4行)
まだ仕事をしたことのない相手には、短く軽い文面が合います。
ご連絡ありがとうございます。今回はご縁がありませんでしたが、お話をうかがえて勉強になりました。進行中の件が落ち着かれたころに、また状況をうかがえればうれしいです。ご返信には及びません。
短さがそのまま誠実さになる場面です。長く書くほど、相手を気まずくさせます。
見積・提案まで出した相手(5〜6行)
見積や提案書まで出した相手には、検討してもらった時間への感謝を一段厚くします。
ご連絡ありがとうございます。ご検討いただき、決定までご連絡をいただけたこと、ありがたく思っております。◯◯の進め方についてお話しできたのは、こちらにとっても学びになりました。差し支えなければ、今回どのあたりが決め手だったか一言だけうかがえると次に活かせます。難しければお気になさらないでください。
理由をたずねる一文を足せるのは、ここまで関係が進んだ相手だけです。
長い付き合い・紹介経由の相手(気まずさをこちらから引き取る)
長い付き合いや紹介経由の相手には、気まずさを先にこちらから引き取る一文を入れます。
ご連絡ありがとうございます。声をかけていただいたのに力になれず、こちらこそ恐縮です。紹介いただいた◯◯さんにも、私からお礼をお伝えしておきます。
紹介者がいる場合は、紹介者への一報まで含めて1セットです。ここを抜かすと、次の紹介が止まります。
メールでもチャットでも、型は同じ
失注の連絡がチャットやメッセンジャーで来ることも増えています。その場合も入れる要素は変わりません。お礼、受け止め、引き際、次の余白の順で短く返します。かしこまった件名や宛名を無理に足す必要はなく、相手が使った文体に合わせるのが自然です。
どのパターンでも共通のNG例
- 「残念です」「またの機会にぜひ!」だけの一行返信。機械的で記憶に残りません
- 「もし何かあればいつでも」。何かが起きる前提で終わっていて、次の接点が曖昧です
- 件名を新しく立てて送る。元のスレッドに返すのが基本です
失注返信に入れる4つ・入れない4つ(この表だけ手元に置けばいい)
入れる4つ

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ①連絡へのお礼 | 断る連絡は相手にとっても手間がかかる作業 |
| ②決定を受け止めた一文 | 「承知しました」で止めず、検討への感謝まで書く |
| ③引き際を自分から示す一文 | 相手に気を遣わせない |
| ④次の余白を作る一行 | 「状況が変わったとき」ではなく「◯月ごろにまた状況をうかがえれば」 |
入れない4つ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ①理由の詰問 | 「なぜ弊社ではダメだったのでしょうか」 |
| ②値下げの後出し | 「その金額なら合わせられます」 |
| ③再考のお願い | 「もう一度ご検討いただけませんか」 |
| ④長い自己弁護 | 「弊社は〜の点で優れており」の再アピール |
言い換え表
抽象的なあいさつを、日付か具体物に置き換えるだけで、次の連絡の口実が残ります。
| よくある一言 | 置き換え |
|---|---|
| 残念です | お話しできてよかったです |
| またの機会にぜひ | ◯月ごろに一度状況をうかがえればうれしいです |
| 何かあればご連絡ください | ◯◯の件で進め方を整理した資料があるので、必要になったらお送りします |
文末の作り方
文末は、相手が返信しなくても終われる形にします。「ご返信には及びません」の一言があるだけで十分です。断った側は返信のたびに気まずさが延びるので、こちらで会話を閉じるのが親切です。
逆に「ご返信お待ちしております」のような言葉で締めると、相手は何か書かないといけない気になります。返信不要の一言は、相手のための配慮であると同時に、こちらが会話をきちんと畳んだという印象にもつながります。
理由は聞いていい。ただし「評価」を聞くと誰も答えられない
答えられない聞き方
「なぜ弊社ではダメだったのでしょうか」「どこが足りませんでしたか」という聞き方は、相手に他社との優劣を言語化させる質問です。担当者は角が立つことを書けないので、「総合的に判断しました」で終わります。聞いた側も、結局何も得られません。
質問の形は丁寧でも、中身は「評価を言葉にしてください」という依頼になっている点が同じです。相手が答えに困る質問を送ると、次の連絡へのハードルまで上げてしまいます。
答えられる聞き方(選択肢で出す)
理由は、選ぶだけで済む形にすると返ってくる確率が上がります。
差し支えなければ、金額・時期・対応範囲・進め方のどれが近かったか、一言だけ教えていただけると助かります。
返ってきた一語が、次の提案の直し所になります。金額なら見積の内訳を見直し、時期なら着手までの早さを次回の売りにするなど、聞いた答えをそのまま次の提案の準備に回せます。
聞かない方がいい場面
- 定型文の不採用通知が来たとき
- 窓口が代理店や事務担当のとき
- 入札や相見積で結果だけ通知される仕組みのとき
こうした場面で理由を求めると、相手にとって断る仕事を増やすだけになります。聞かずに引いて、次の余白の一行だけ残します。窓口の立場によって聞ける相手かどうかが変わる、という見分け方だと覚えておくと判断しやすくなります。
返ってこなくても追わない
理由を聞いた返信に反応がなくても、催促はしません。聞けたら儲けもの、くらいの位置づけで一度だけ聞くものだと考えておきます。
電話や対面で聞ける関係なら、そちらの方が本音に近い
過去に何度も会っている相手なら、メールで理由を聞くより、電話や次に顔を合わせたときに一言たずねる方が本音に近い答えが返ってきやすいです。文字にすると角が立つ内容でも、声のやりとりなら「実は価格より納期がネックで」くらいの本音がこぼれることがあります。メールは記録に残る分、相手も言葉を選びます。
値下げの後出しが、その相手との次を消す
何が起きるか

失注の連絡を受けてから「その金額なら合わせます」と出すと、最初に出した見積の根拠がなかったことになります。今回その案件が取れるかどうかより、次に見積を出したときに「また下げられるのでは」と読まれることのほうが痛手です。一度そう読まれると、その後の見積は毎回値切り交渉の出発点として扱われるようになります。
それでも条件を変えて出したいとき
値段だけを下げるのではなく、範囲を削って別物として出します。
今回の内容そのままの値下げはできませんが、◯◯を外した形なら別の見積になります。今回の決定を覆していただく必要はないので、次の機会の参考までにお伝えします。
今回の話を蒸し返さず、次回の選択肢として置く形です。
失注の連絡を受けた直後は、なんとかもう一度振り向いてもらいたくて値下げに手が伸びやすい瞬間でもあります。断られた結果を今すぐ書き換えたい気持ちの表れだと思いますが、ここで焦って条件を崩すより、次の機会に同じ相手からもう一度声がかかる形を作る方が、結果として値段を保てます。
NG例と言い換え
「他社さんより安くできます」は言いません。「もう一度チャンスをください」ではなく、「次に同じような案件が出たとき、声をかけていただければうれしいです」と伝えます。頭を下げて取り返しにいくのではなく、次の順番待ちに並び直す形にします。
断った側から見ると、返信の何が記憶に残るのか
断る連絡を出す人も気まずい
他社に決めたという連絡は、担当者にとっても書きたくないメールです。そこへ恨み節や粘りが返ってくると、以後その名前は「断りにくい相手」として避けられます。逆に、きれいに引く一通は、気まずさを引き取ってくれた相手として残ります。
記憶に残るのは提案内容ではなく引き際
提案の中身は数か月で忘れられますが、断ったときの反応は覚えられています。担当者が異動や転職をしても、その記憶は本人と一緒に動きます。失注は関係の終わりではなく、相手の頭の中の並び順が変わっただけだと考えられます。
具体的にどう映るか
| 返信のしかた | 相手の印象 |
|---|---|
| 当日中に短く返ってくる | 仕事が早い人 |
| 一週間後に長文が来る | 引きずる人 |
| 無返信 | 途中で消えた人 |
同じ「取れなかった」という結果でも、次に声がかかる順番はここで分かれます。
返信を出したあと、次の連絡をいつ出すか決める
その場でカレンダーに置く

返信を送ったら、画面を閉じる前に次の連絡日を入れます。決めていない再連絡は「そのうち」のまま消えます。目安は、相手が今回発注した案件が一区切りするころです。案件の長さに合わせて、3か月後や半年後など幅を持たせます。「落ち着いたら連絡しよう」という言い方は、落ち着いた瞬間が分からないので実行されません。日付という具体物に変えて初めて、実際に動く予定になります。
二回目の連絡は売り込みにしない
「その後いかがですか」は答えにくい聞き方です。
前にうかがった◯◯の件で、こういう進め方を整理しました。
こちらの手持ちを渡す形にすると、返事がなくても失うものがありません。失うものがない出し方にしておけば、三回目も出せます。
カレンダーに入れる予定名は「◯◯社に連絡」だけで十分です。当日になって何を送るか迷わないよう、失注返信を出した直後の記憶が新しいうちに、送る内容の一行メモまで一緒に残しておくと、次に開いたときすぐ送れます。
一回で終わらせないための記録
失注した案件について、相手が最後に迷っていた点を一行だけ残しておきます。次の連絡は、その一点から入れます。毎回いちから考えていると、二回目の連絡は永久に出せません。
よくある質問
「他社にお願いすることにしました」に返信は必要ですか
必要です。無返信は相手の中で「途中で消えた人」になります。お礼・受け止め・引き際・次の余白の4つを短く書けば足りるので、長く書く必要はありません。
浅い関係と深い関係、どちらの例文を使えばいいか迷ったときはどうすればいいですか
迷ったら短いほうを選びます。関係が浅いのに長文を送ると重く映り、深い関係なのに素っ気ない一文だと冷たく映ります。一度も会っていない・提案まで進んでいない相手には短い例文、見積や提案まで進んだ相手には理由を一言たずねる例文、紹介や長い付き合いの相手には気まずさをこちらから引き取る例文を選びます。
失注理由を聞くのは失礼ですか
聞き方次第です。「なぜダメだったのか」は相手が答えられません。金額・時期・対応範囲・進め方の中から選んでもらう形なら答えやすくなります。定型の不採用通知や窓口が代理の場合は聞かない方が無難です。
値下げして再提案してもいいですか
同じ内容のまま値段だけ下げるのは避けます。最初の見積の根拠がなかったことになり、次の見積も信用されにくくなります。範囲を削った別案として、次の機会の参考に置く形なら出せます。
返信したあと、次はいつ連絡していいですか
相手が今回発注した案件が一区切りするころが目安です。返信を送ったその場でカレンダーに日付を入れます。内容は「その後いかがですか」ではなく、こちらの手持ちを渡す報告にします。
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