代理店・パートナー制度

紹介手数料が支払われない…代理店が未払いを防ぐ契約チェックリスト

このシリーズの全体像 代理店になりたい人の完全ガイド

未払いが起きる原因は「支払い条件のズレ」——契約書のどこを押さえるか

紹介手数料が払われない場合、相手が意図的に踏み倒しているように見えても、実際は支払い条件の解釈がそもそもズレていた、というケースがあります。

ズレやすい論点は主に4つあります。①何をもって「紹介成立」とするか ②いつ支払うか ③いくら払うか ④返金や解約が起きたときどうするか、の4つです。

実際の契約書の文言を見比べると、条件がはっきり決まっている条項とあいまいな条項の差がよく分かります。「乙が紹介し、契約締結に至った顧客一人当り5万円」という書き方は、成立条件(契約締結に至ったこと)と単価(一人当り5万円)が両方確定しています。

一方で「売上金額の入金が確認された後、売上金額の5%を紹介手数料として支払う」という書き方は、入金がなければ手数料も発生しない設計だと読めます。自分がどちらの条件で契約しているのかを、まず確認してください。単価が固定される契約か、売上に連動するレベニューシェア型の契約かで、未払いの起きやすさも変わってきます。

契約書がなく、口約束やメールだけのやり取りでも、商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができるとされています。ただし「相当な報酬」がいくらなのかを後から立証するのは簡単ではありません。だから書面化を最優先にしてください。

支払い条件がズレやすい4つの論点の図解 未払いの火種は4つ——契約書で先に確定させる論点

契約前チェックリスト12項目——署名する前に潰しておく

紹介手数料の契約書は、署名する前に次の12項目を確認しておくと、あとで揉めにくくなります。

確認項目曖昧な書き方の例直すべき書き方の例
①発生条件「紹介した顧客が成約したら」「申込書への署名があり、契約締結日から7営業日以内に取消がなかった時点」
②単価か料率か「売上に応じて」「税抜売上金額の5%」(税抜か税込か、値引き後の金額かまで書く)
③支払期日「入金確認後、速やかに」「毎月末締め、翌月末日払い、振込手数料は甲負担」
④継続課金商材の扱い「継続する限り」「初回契約から12ヶ月分、最大12回まで」
⑤返金・解約時の減額「返金があれば手数料も減額」「顧客に返金を行った場合、返金額に応じた紹介手数料の減額を行う」
⑥紹介の記録方法「口頭やチャットで報告」「紹介都度、企業名・担当者名・紹介日をメールで送付し、双方で保存」
⑦成約情報の共有義務規定なし「甲は成約の有無を紹介後30日以内に乙へ通知する」
⑧契約終了後の扱い「契約終了時に精算」「契約終了前に紹介した案件は、終了後6ヶ月以内の成約分まで対象とする」
⑨遅延損害金規定なし「支払期日を過ぎた場合、年◯%の遅延損害金を付す」
専任・非専任「基本的にお願いしたい」「非専任とし、他社への紹介活動を妨げない」
⑪管轄裁判所規定なし「本契約に関する紛争は◯◯地方裁判所を第一審の専属的合意管轄とする」
⑫契約書の名義「代表者名でざっくり」「個人事業か法人か、押印か電子署名かを明記し、双方の正式名称で締結」

⑤の「返金があれば手数料も遡って減額する」という仕組みは、クローバック条項と呼ばれることがあります。受け取る側にとって不利にもなり得るので、返金対象期間や減額の上限を切っておくと、あとで揉めにくくなります。

⑦の成約情報の共有義務は、法律上は代理商が取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならないとされていますが、これは代理商と本人の間の話です。逆に「相手が成約したかどうかを自分に知らせる義務」は、契約に明記していないと、当然には認められません(信義則上の付随義務として争う余地はありますが、立証は容易ではありません)。疑義がある場合は専門家に確認してください。

なお、契約書を見る前の募集要項の段階で相手の報酬管理体制を見極めるポイントは、報酬管理がずさんな代理店募集企業に潜む3つのサインで解説しています。

「成果に対する報酬」はいつ請求できるか——支払いタイミングの法的な物差し

委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならないとされています。ただしこれは「成果の引渡しを要するとき」に限った規定です。紹介手数料は、モノの引渡しを伴わない成果であることが多く、この条文がそのまま当てはまるとは限りません。だからこそ、支払期日を契約書に明記しておく必要があります。

民法634条の規定は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用されます。途中で契約が終了した場合でも、すでに行った給付が可分であり、その部分について相手方が利益を受けるときに限り、相手方が受ける利益の割合に応じた報酬請求(民法634条準用)が問題になり得る、という理屈につながります。

支払いが遅れた場合の利息にも、法律の物差しがあります。改正前は民事法定利率が年5%、商事法定利率が年6%と定められていました。民法改正で、商事法定利率を廃止して民事法定利率に一本化されました。施行当初は年3%とし、その後は3年ごとに市場金利に連動して見直されます。

「昔の感覚で年6%取れる」と思って請求書を書くと、金額がズレます。契約書に遅延損害金の利率を書いておくのが確実です。

ここに書いたのは法律の一般的な考え方です。実際に請求する段階の当てはめは個別事情で変わるので、個別の判断は専門家に相談してください。

未払いが起きてからの動き方——督促から公的窓口まで4ステップ

契約書を整えていても、未払いは起きます。そのときの動き方は4ステップです。

ステップ1は事実の整理です。いつ誰を紹介し、いつ成約し、契約書のどの条項で手数料が発生するのかを1枚にまとめます。

ステップ2はメールでの請求です。「催促」ではなく、契約条項の引用と金額と期日をセットで書きます。

ステップ3は、それでも動かない場合の書面通知です。ここで遅延損害金の起算日が意味を持ってきます。

ステップ4は外部の窓口です。取引かけこみ寺は中小企業庁の委託事業で、全国48か所に設置したものです。秘密厳守/相談無料/匿名相談可能で、フリーダイヤル 0120-418-618です。

取引かけこみ寺への相談は、製造業と建設業の方からの相談が多く、相談内容は「代金の未払い」、次いで「取引中止」「代金の減額」などの相談が多くなっています。代金の未払いは、相談内容の中でも特に多いテーマだと分かります。

なお、相手との資本金関係や取引の実態によっては、下請法の保護対象になる場合もあります。

感情的な催促は交渉を止めます。淡々と事実と条項だけを積んでください。

未払い発生後の対応4ステップの順番図 感情ではなく段階で動く——督促から公的窓口まで

払う側から見ると何が起きているか——未払いは「払えない」ではなく「判断できない」から起きる

発注側の担当者が支払いを止める典型パターンは4つあります。紹介経路の証跡がない。社内で誰が承認するか決まっていない。請求書の様式や宛名が違っていて経理で止まる。成約金額がまだ確定していない。この4つです。

だから紹介する側が先回りしてやると効くことがあります。紹介した時点でメールに相手企業名・日付・担当者名を書いて記録を残すこと。請求書のフォーマットと送付先を契約時に確認しておくこと。支払いの承認者を聞いておくこと。この3つです。

紹介経路の記録は、代理店募集の仕組みを作る段階から、PRMのようなツールで一元管理しておくと、あとで「言った言わない」になりにくくなります。

代理商は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならないとされています。これは代理商と本人の間の法律上の義務ですが、こうした情報共有を法が前提にしていることの表れとも読めます。義務の有無に関わらず、記録を先に整えた側が回収で強くなります。

「信頼関係があるから契約書は要らない」という考え方は、相手の担当者が変わった瞬間に崩れます。契約書は疑いの表明ではなく、担当者交代への保険です。

よくある質問

契約書がなく口約束だけでも紹介手数料は請求できますか

商人が営業の範囲内で他人のために行為をしたときは相当な報酬を請求できるとされている。ただし「相当な報酬」がいくらかを後から立証するのは難しく、実際の回収では紹介の証跡と金額の合意記録が要になる。個別の判断は専門家に相談を。

支払いが遅れた分の利息は何%で計算しますか

契約書に利率の定めがあればそれが優先。定めがない場合、民法改正で商事法定利率(年6%)は廃止され民事法定利率に一本化され、施行当初は年3%、その後3年ごとに市場金利に連動して見直される。請求時点の利率は専門家に確認を。

相手が「顧客に返金したから手数料も払えない」と言ってきました

契約に返金時の減額規定があるかを見る。実務では「顧客に返金を行った場合、返金額に応じた紹介手数料の減額を行う」といった条項が置かれることがある。逆に規定がないのに一方的に減額されているなら、根拠を書面で確認する。契約条項の解釈は個別事情で変わるため、判断に迷う場合は専門家に相談を。

どこに相談すればいいですか

取引かけこみ寺は中小企業庁の委託事業で、全国48か所に設置され、相談無料・秘密厳守・匿名相談も可能。フリーダイヤルは0120-418-618。相談内容は『代金の未払い』が最も多い。

参照した情報源

  1. 商法第512条(商人の報酬請求権)(Wikibooks(条文原文))・確認日 2026-07-23
  2. 商法第27条(代理商の通知義務)(Wikibooks(条文原文))・確認日 2026-07-23
  3. 民法第648条の2(成果等に対する報酬)(tek-law.jp(条文解説))・確認日 2026-07-23
  4. 取引かけこみ寺(旧・下請かけこみ寺)事業案内(公益財団法人全国中小企業振興機関協会(中小企業庁委託事業))・確認日 2026-07-23
  5. 顧客紹介手数料契約書のリーガルチェックポイント(波戸岡法律事務所)・確認日 2026-07-23
  6. 法定利率に関する民法改正のポイント(BUSINESS LAWYERS)・確認日 2026-07-23

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