対面営業・商談
紹介をお願いするときの文面|相手が誰に渡せばいいか分かる書き方
このシリーズの全体像 営業メールの例文集|場面別に、そのまま使える文面
紹介が出ないのは、まだ頼んでいないからではない
仕事が一段落したあと、お礼のメールに「またお役に立てることがあれば、いつでもお声がけください」と書いて送信ボタンを押す。そこで止まっている、という人は多いと思います。

頼むタイミングや心理的なハードルをどう乗り越えるかは、また別の話です。ここで扱うのは、その先です。頼み方に遠慮があることが問題なのではなく、相手が「誰に渡せばいいか」を思いつけない文面になっている、それだけです。
紹介は、相手の善意の量で決まるわけではありません。相手の頭の中に、具体的な顔が1人浮かぶかどうかで決まります。
たとえば、こう書いたとします。
どなたかいらっしゃいましたら、ぜひご紹介いただけると嬉しいです。
丁寧ですし、失礼なところもありません。ただし相手は、これを読んだ瞬間に知り合い全員を思い出す作業を頭の中で始めることになります。面倒な作業なので、たいてい「今度会ったときに誰かいないか考えておきます」で保留になり、そのまま忘れられます。
一方、こう書くとどうなるでしょうか。
会社案内の中身が古いままで、直したいけれど頼む人がいなくて止まっている会社を探しています。
相手は知り合い全員を思い出す必要がありません。自分の取引先を1社ずつ、この条件に当てはまるかどうかで照合するだけで済みます。取引先が10社あれば、10回の判定で終わります。
この記事で渡す方法は1つだけです。「どんな人を探しているか」を条件2つで書き切ること。件名も、逃げ道の一文も、送る順番も、すべてこの1つを機能させるための付属品です。
紹介お願いメールの型(そのまま使える5ブロック)
紹介をお願いするメールは、次の5つのブロックで組み立てます。

- この前の仕事のお礼(1〜2文)
- いま受けられる状況の報告
- どんな人を探しているか(条件2つ)
- 相手にしてほしいこと(1つだけ)
- 断りやすい逃げ道
順番通りに置くだけで、文面として成立します。実際の完成形は、後半の「場面別の文面」でそのまま使える形にして渡します。ここでは各ブロックの要点だけ押さえます。
③の条件は「業種+いま困っている状態」の2つで組みます。「飲食店で、写真が10年前のままメニューに使われているところ」のように、業種と状態がセットになると、相手は自分の取引先リストと照合しやすくなります。
④は「ご紹介ください」と書かないようにします。相手にしてほしい動作を1つに絞り、「もし思い当たる方がいたら、私の名前だけ出していただければ」まで書きます。紹介の段取りを全部相手に任せず、こちらが用意した1つの動作だけをお願いする形です。
⑤の逃げ道は、返信の義務を相手に感じさせないための一文です。「思い当たらなければ、このメールは読み流していただいて大丈夫です」を入れるだけで、返信できないまま放置される事態を減らせます。
件名は「ご報告と、ひとつお願いがあります」のように、報告が主で依頼が従の形にします。「ご紹介のお願い」という件名は、開く前から身構えられてしまいます。
受け取った側は何を考えているか(紹介が止まる3つの関門)
送ったメールは、相手の頭の中で3つの関門を通ります。1つでも引っかかると、「今度会ったときに言っておきます」で終わり、そのまま流れます。

第1関門は「誰か思いつくか」です。条件が抽象的だと、ここを通りません。私の体感では、紹介が止まる原因の大半はここです。
第2関門は「紹介して自分が恥をかかないか」です。相手は紹介するとき、自分の信用を貸しています。渡した相手が期待外れだったら、紹介した相手自身の評価も下がります。
たとえば、紹介された仕事の納期を守らなかったり、返事が遅かったりすると、相手は「あの人を紹介するんじゃなかった」と感じます。ここを軽く扱うと、次からは紹介してもらいにくくなります。
第3関門は「何と言って渡せばいいか」です。相手が自分の言葉で説明できないと、面倒になって保留になります。ここは自分で文章を用意すれば解決できます。メールの最後に、相手がそのまま転送できる3行を付けておきます。
○○という仕事をしている人を探しています。会社案内のデザインが古いままで、直したいけれど頼む人がいなくて困っている会社に強いです。もしよろしければ、この人の連絡先を伝えてもいいですか。
この3行があれば、相手は自分の言葉を1つも足さずに、知り合いへそのまま送れます。
逆の失敗もあります。条件を絞りすぎて、「そういう人は知り合いにいないな」で終わるケースです。条件は2つまでにして、3つ目以降を足したいときは「できれば」と書き、必須条件から外します。
頼む相手の順番(全員に同じ文面を送らない)
同じ文面を全員に送ると、紹介は出にくくなります。頼む相手には順番があります。
- 仕事が終わって、満足してもらえた直後の相手
- 過去に一度でも紹介してくれた相手
- 長く付き合いはあるが、まだ仕事はしていない相手
- 一度会っただけの相手
①〜③には、この記事の文面をそのまま使えます。④に同じ文面を送ると、営業メールとして処理されてしまいます。まだ関係ができていない相手には、紹介の話より先に、何を頼めば力になれる相手なのかを知ってもらう段階が要ります。
タイミングの目安は、納品直後、記憶が新しいうちです。しばらく連絡が空いた相手にいきなり紹介をお願いすると唐突に感じられるので、先に近況の連絡を1本挟んでから、紹介の話を出します。
一斉送信も避けます。宛名だけ差し替えたBCCで同じ文面を送ると、相手に気づかれやすくなります。探している人の条件が、相手の業種や付き合いの深さとずれている場合が多いからです。1社ごとに、条件を微調整して送るほうが通りやすくなります。
| 相手の分類 | お礼の量 | 条件の具体度 | 逃げ道の書き方 |
|---|---|---|---|
| ①直後の相手 | 多め(具体的に) | 高い(業種+状態) | 軽く一言 |
| ②紹介してくれた相手 | 前回の紹介への感謝も添える | 高い | 軽く一言 |
| ③長い付き合い | 近況報告を厚めに | 中程度 | 丁寧に |
| ④一度きりの相手(紹介依頼は原則保留。送るなら) | 出会いの経緯を思い出させる | やや広め | 必須(強調) |
紹介を頼めない気持ちの扱い方
紹介が増えないと、多くの人は「紹介したくなるほどの仕事ができていないからだ」と自分の腕のせいにします。ここでいう紹介待ち型とは、紹介は口コミで自然に生まれるものだと考えて、自分からお願いすることを避けている人のことです。ここまで読んでもらえば分かる通り、紹介が出ないのは腕の問題ではなく、頼み方が「誰に渡せばいいか」を思いつける形になっていないだけです。

借りになる感覚そのものは勘違いではありません。紹介を頼めば、相手は自分の信用を使って動いてくれる分、実際に借りは発生します。だから、借りを消してから頼む必要はなく、返す前提で頼めばいいだけです。返し方は3つあります。
- 紹介した相手に進捗を報告する
- 相手の仕事を、今度は自分が人に紹介する
- 成果を数字で伝える
このうち一番効くのは、進捗報告です。理由は、相手の第2関門「恥をかかないか」を先につぶせるからです。紹介した後にどうなったか分からないままだと、相手はいつまでも不安を抱えることになります。
「成果を数字で伝える」といっても、売上や金額まで細かく出す必要はありません。「おかげさまで、ご紹介いただいた件は無事に契約となり、来月から半年ほどのお仕事になりそうです」のように、規模感が伝わる一言で十分です。
それでも「紹介してください」がどうしても言えないなら、まず頼まずに「いま新規のお仕事を1件お受けできる状態です」という報告だけを送ります。
○○様
ご無沙汰しております。おかげさまで前回のお仕事も落ち着き、来月から新しいお仕事を1件お受けできる状態です。またどこかでお会いできればうれしいです。
これは依頼ではないので、断られることがありません。それでも、これをきっかけに紹介が出ることは珍しくありません。
やってはいけないのは、頼んだあとに催促することです。相手の第1関門(誰か思いつくか)は自分の力では動かせないので、返事を待つより、別の相手にもう1通出すほうが見込みがあります。
場面別の文面(3パターン)
パターンA 納品直後のクライアントへ
最も通りやすいパターンです。お礼と一体にして送ります。
件名:ご報告と、ひとつお願いがあります
このたびはロゴのデザインをお任せいただき、ありがとうございました。おかげさまで、新しいお仕事のお声がけも増えてきました。
実は来月、新しいお仕事を1件お受けできる状態です。もし、店舗の看板が古いままで直したいけれど頼む人がいなくて困っているお店に心当たりがあれば、私の名前だけ出していただけると助かります。思い当たらなければ、このメールは読み流していただいて大丈夫です。
相手が「何と言えば伝わるか」に迷いそうなら、メールの最後にそのまま転送できる3行を足しておきます。
○○という仕事をしている人を探しています。看板のデザインが古いままで、直したいけれど頼む人がいなくて困っているお店に強いです。もしよろしければ、この人の連絡先を伝えてもいいですか。
ここを変えると通らなくなる箇所:お礼を抜いていきなり②から始めると、依頼だけのメールに見えてしまいます。
パターンB 長く連絡していない相手へ
近況報告を主にして、紹介の話は最後の2行だけにします。
件名:ご無沙汰しております
○○様
しばらくご連絡できておらず、申し訳ありません。おかげさまで元気にしております。
実は最近、新しいお仕事を受けられる状態になりました。もし、○○のことで困っているお知り合いがいらっしゃれば、思い出していただけるとうれしいです。ご無理のない範囲で構いません。
ここを変えると通らなくなる箇所:いきなり条件2つを書くと、久しぶりの連絡なのに用件だけ、という印象になります。近況を先に置きます。
パターンC 紹介してくれた相手への報告メール
ここを書かない人が多いのですが、次の紹介につながる一番大事なメールです。
件名:ご紹介いただいた○○様の件、ご報告です
○○様
先日はお忙しい中、ご紹介いただきありがとうございました。おかげさまで○○様とお話しすることができ、来月からお仕事をご一緒することになりました。
○○様のおかげです。また何かお力になれることがあれば、いつでもお声がけください。
ここを変えると通らなくなる箇所:契約に至らなかった場合でも、この形式で必ず報告します。結果を伏せると、紹介した相手には「渡したのに、どうなったか分からない」という状態だけが残ります。
対面で口頭で頼む場合も、考え方は同じです。「実はいま1件お受けできる状態で、○○で困っている方がいたら教えてください」まで、条件を1文で言い切れば十分です。
送ったあとにやること(返事が来なくても終わりにしない)
返信が来ないのは、断られたわけではありません。多くの場合、第1関門で誰も思いつかなかっただけです。
数か月経ったら、もう一度出します。ただし同じ文面ではなく、探している人の条件を変えて出します。条件を変えると、相手の頭の中で照合する対象が変わるので、前回とは違う人が思い浮かぶ可能性が出てきます。たとえば1回目に「飲食店で、写真が古いままのところ」と書いたなら、2回目は「美容室で、SNSの更新が止まっているところ」のように、業種と状態の両方を入れ替えます。
紹介が出たあとの初動のタイミングと、契約に至らなかった場合の伝え方は、前述の「パターンC」と同じ考え方で対応できます。ここでは繰り返しません。
紹介の依頼と報告が数件を超えてくると、誰にいつ何を頼んだか、どこまで報告したかを覚えておく仕組み(PRMと呼ばれます)があると助かります。件数が少ないうちは、この記事の文面と、送った記録をメモしておくだけで十分です。営業メール全般の書き方はこちらの記事にまとめています。
送信前に、次の6項目を確認します。
- 条件は2つになっているか
- 相手にしてほしい動作は1つに絞られているか
- 逃げ道の一文が入っているか
- (相手が言葉に迷いそうなら)転送用の3行を用意したか
- 件名は「報告が主、依頼が従」になっているか
- 文字数はスマホ1画面に収まる長さになっているか(目安150〜300字、厳密な基準ではない)
この6つが揃っていれば、あとは誰に、いつ送るかだけです。
よくある質問
紹介をお願いするメールの件名は何と書けばいいですか
「ご紹介のお願い」は開く前に身構えられる。「ご報告と、ひとつお願いがあります」のように、報告が主で依頼が従の形にする。相手は開く前に断る理由を探さずに済む。
紹介してほしいと頼むのは図々しいですか
頼むこと自体は図々しくない。図々しく感じられるのは「どなたか」と丸投げして、相手に思い出す作業を全部渡したとき。条件を2つ書いて相手の手間を減らせば、依頼の重さは大きく下がる。
紹介をお願いしたのに返事が来ません。催促していいですか
催促はしない。返事がないのは断りではなく、相手が誰も思いつかなかったことが多い。催促では相手の頭の中は動かないので、数か月後に「探している人の条件」を変えて出し直す。
どんな人を紹介してほしいか、どこまで具体的に書けばいいですか
条件は2つまで。「業種+いま困っている状態」の形にする。3つ目からは「できれば」と書く。絞りすぎると「そんな人いないな」で終わるため、2つが限界。
紹介してもらったあと、紹介者に何を報告すればいいですか
連絡が取れた時点で24時間以内に一報。契約に至らなかった場合も必ず伝える。報告は紹介者が「紹介して恥をかかないか」という不安を消す作業で、次の紹介が出るかどうかを決める。
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