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このシリーズの全体像 営業メールの例文集|場面別に、そのまま使える文面
失注の理由は「何がダメでしたか」ではなく「決め手は何でしたか」で聞く
先に答えを書きます。断りの連絡をもらったら、そのお礼の返信の中で、質問を1つだけ、返信しなくてもいいと添えて聞きます。聞く中身は「何がダメでしたか」ではなく、「最後に決め手になったのは何でしたか」です。断った相手が、一言で答えられる形にするのがポイントです。
「失注 理由 聞き方」で検索する人には、理由を聞いたら「腕が足りなかった」とはっきり言われそうで、手が止まっている人が多いのではないか、と私は見ています。これは仮説です。ただ、もしそうなら、先に知っておいてほしいことがあります。理由が返ってこないのは、断った側も理由を書きにくいからかもしれません。聞き方を変えれば、返ってくる余地はあると私は考えています。
断られた翌日に起きていること:書きかけのメールを閉じる
見積を出して、数日待って、断りの連絡が届く。その翌日、メールを開いて「ご検討ありがとうございました。差し支えなければ、理由を」まで書く。そこで手が止まります。もし「実績が足りない」「他社のほうが上」と返ってきたら、そのとおりだと認めることになってしまう。そう考えて、書きかけの文面を閉じる。
もう一度断られたら向いていないと確定してしまう気がして、次の連絡が出せなくなる。この場面は、そういう状態です。教科書ではこれを「二回目が怖い型」と呼んでいます(もう一度断られたら向いていないと確定する気がして、次の連絡が出せなくなる状態のことです)。
断られた直後は、相手からの言葉をすべて自分への評価として読みやすい時期だと、私は見ています。理由を聞くことが、自分への判決を取りに行く行為に見えます。けれど、あとの章で書くように、返ってくる理由は判決の形をしているとは限りません。まずは、聞く側の怖さと、答える側の事情を分けて見ていきます。
断った側が理由をぼかす事情
断りのメールには「今回はタイミングが合わず」「社内で検討した結果」といった言い方がよく並びます。私はこれを、相手が嘘をついているというより、書きにくい理由をまとめた言い方だと受け取っています。
ふつうの見積や提案の段階なら、断った側に理由を細かく書く義務はないと、私は理解しています。むしろ、書けば相手の仕事を評価する形になります。だから、ぼかしたまま終わらせる人が出てきます。聞く側が「書いてもらえる形」を用意しないかぎり、答えは出てきにくい。この記事は、その形をメール文面のレベルまで落とし込んでいきます。
この記事で渡すもの:メール1通と、聞く順番
この記事で渡すのは3つです。
- 聞き方の置き換え表(NGの聞き方と、答えやすい聞き方)
- 状況別のメール例文3パターン(そのまま送れる全文つき)
- 聞いた理由を次の見積に残すための失注メモ
営業メール全体の例文を探している場合は、営業メールの例文まとめもあわせて見てください。この記事は、その中の「断られたあと」だけを深く扱います。
断った側から見ると、理由を書くのはなぜ気まずいのか
この記事の軸は、売る側のテクニックではなく、受け取る側の事情です。断った人が理由を書くのをためらう事情を、私は3つに分けて考えています。
悪く言うことになる気まずさ
理由を書くということは、相手の提案のどこかを指摘することです。「金額が高かった」は、相手の値付けへの意見になります。「他社のほうが実績があった」は、相手の実績への意見になります。
数日前まで丁寧にやりとりしていた相手に、わざわざ否定的なことを書くのは気が重い。そこで「タイミングが合わず」でまとめる。これは相手を守るための言い方である場合もあります。
長く書く手間
断ったあとの相手は、たいてい次の仕事に移っています。理由を丁寧に書こうとすると、考えて、言葉を選んで、読み返す時間がかかります。聞く側が「詳しく教えてください」と書くと、この手間が一気に重くなります。返信がないのは、反発というより、単に時間が取れなかっただけという場合も多いと思います。
引き止められそうだという警戒
断ったあとに返信すると、「もう一度考え直してもらえませんか」「値引きできます」と来るかもしれない。そう警戒して、返信しない人もいます。
引き止めるつもりがなくても、そう読まれる可能性がある。だから、引き止めないとはっきり書くことが、聞く側の最初の仕事になります。
NG例:答えにくい聞き方
次の2つは、実際にありそうな文面ですが、答える側にはやや重くなります。
- 「率直に、ダメだった点を教えてください」→ 相手に批判を書かせる形になります。気まずさの1つ目にそのまま当たります。
- 「今後の参考に、詳しく理由をお聞かせください」→ 丁寧ですが、「詳しく」が手間の2つ目に当たります。読んだ相手は、あとで時間のあるときに書こうと思い、そのまま忘れます。
ここから言えること
返事がない、あるいは「タイミングが」とぼかされる。これは、自分の腕への判決とは限りません。聞かれ方が答えにくかっただけかもしれない、と私は考えています。確かめる方法は、聞き方を変えて送ってみることです。
答えてもらえる質問に言い換える:3つの置き換え
答えにくい聞き方を、答えやすい聞き方に置き換えます。次の表は、そのまま持ち帰って使えます。
| NGの聞き方 | 答えやすい聞き方 | 答えやすくなる理由 |
|---|---|---|
| 何がダメでしたか | 最後に決め手になったのは何でしたか | 自分の欠点ではなく、相手が選んだ理由を聞く形になる |
| 他の人と比べて、どこが劣っていましたか | もし1つだけ挙げるとしたら、何があれば違いましたか | 1つに絞ると書きやすい |
| 理由を教えてください | 金額・時期・内容のうち、いちばん近いものはどれでしたか | 選ぶだけで答えられる。一言で返せる |
自分の欠点ではなく「決め手」を聞く
「何がダメでしたか」は、相手に欠点を探させる質問です。探す作業は、答える人にとって気の重い作業になります。
「最後に決め手になったのは何でしたか」なら、相手は自分が選んだ理由を話すだけです。誰かを悪く言う必要がありません。「担当者の方の対応が早かったので」「社内の予算の都合で」のように、相手の側の事情として書けます。
私は、この聞き方がいちばん最初に使いやすい形だと思っています。ただし、これも万能ではありません。決め手が「他社のほうが安かった」だった場合、結局は金額の話になります。それでも、「ダメだった」と言われるより、「決め手は金額だった」と言われるほうが、情報としてずっと使えます。
選ぶだけで答えられる形にする
3つ目の置き換えは、返信がいちばん来やすい形だと考えています。「金額・時期・内容のうち、いちばん近いものはどれでしたか」と聞かれたら、相手は1語選ぶだけです。文章を書く必要がありません。
選択肢は、3つ程度にしておきます。多すぎると選ぶ手間が増えます。「金額・時期・内容」は、断る理由として大きく3つに分けられるものを並べた私の整理で、統計に基づく分類ではありません。自分の仕事に合わせて、「納期」「進め方」などに差し替えて使ってください。
質問は1つに絞る
1通のメールに質問を3つ並べると、答える手間がそのぶん増えます。手間の大きいメールは、後回しにされやすくなります。
3つの置き換え表を見て、全部聞きたくなる気持ちはわかります。けれど、1通で聞くのは1つだけです。迷ったら、次の順番で選んでください。
- まず、相手が選んだ理由を一言で聞く形(1つ目の「決め手」)
- 相手に文章を書く手間をかけさせたくないときは、選ぶだけで答えられる形(3つ目)
- 具体的に何を変えれば違ったかを知りたいとき(2つ目)
1回で全部を聞き出そうとしないことが、答えをもらう近道です。
そのまま使える失注理由を聞くメール例文3パターン
メールの型を先に示します。どのパターンも、次の6つを上から順に並べて組み立てています。
- 件名
- 検討してもらったお礼
- 引き止めないとはっきり書く
- 質問を1つ
- 返信は不要でも大丈夫という一文
- また何かあればという短い締め
見積や提案のあとに断られたとき
件名:ご検討いただいたお礼と、ひとつだけお伺いしたいこと
○○様
お世話になっております。△△です。
このたびは、お見積をご検討いただき、ありがとうございました。ご連絡の内容、承知いたしました。
もう一度ご検討をお願いするつもりはありません。今後の参考に、ひとつだけお聞かせください。
「金額」「時期」「内容」のうち、いちばん近かったのはどれでしたか。
一言いただけましたら十分です。お忙しければ、このメールへのご返信は不要です。
また何かありましたら、お声がけください。
ありがとうございました。
使うときに変えるところ:相手の名前、「お見積」の部分(提案書、デザイン案など実際に出したもの)、「金額・時期・内容」の3語(自分の仕事に合う言葉に)。
工務店や施工会社の見積なら、「お見積」を「工事のお見積」に、「内容」を「工事の範囲」や「工期」に置き換えると、そのまま使えます。
ほかの人に決まったと言われたとき
件名:ご連絡へのお礼と、ひとつだけお伺いしたいこと
○○様
お世話になっております。△△です。
このたびは、ご連絡をいただき、ありがとうございます。決まったとのこと、承知いたしました。
ご縁がなかったことは、このまま受け止めます。そのうえで、今後の参考にしたく、ひとつだけお願いです。
最後に決め手になったのは何でしたか。差し支えない範囲で、一言だけ教えていただけますか。
お答えいただけない場合は、返信は不要です。
また何かありましたら、お声がけください。
ありがとうございました。
使うときに変えるところ:相手の名前、「決まったとのこと」の言い方(相手のメールの表現に合わせる)。相手が選んだ先は、名前を出さず、悪くも言わないことが大事です。「どこの会社ですか」「どこが優れていたんですか」と聞くと、答えにくくなります。
返事がないまま立ち消えになったとき
このパターンは、相手から断りの連絡がない場合の、締めくくりのメールです。「今回は見送りと受け取っています」と先に書くことで、相手が断りの言葉を書かなくて済むようにします。
件名:先日のお見積について
○○様
お世話になっております。△△です。
先日お送りしたお見積について、今回は見送りと受け取っています。お気遣いは無用です。
ひとつだけ、今後の参考にお聞かせください。
「金額」「時期」「内容」のうち、いちばん近かったのはどれでしたか。
一言いただけましたら十分です。ご返信がなくても、問題ありません。
また何かありましたら、お声がけください。
使うときに変えるところ:「先日お送りしたお見積」の部分(送った日と中身)、送るタイミング(提案から2週間ほど空けた頃を、私は目安にしています。業界によって違うので、自分の仕事の返事の速さに合わせてください)。
送るタイミングと、答えが返ってこなくなる落とし穴
聞く中身が整っても、送るタイミングや混ぜるものを間違えると、返事は来ません。よくある3つの落とし穴を書きます。
断りへの返信と同じメールで聞く
断りの連絡をもらったら、そのお礼の返信の中で聞きます。日をあけて、別のメールで聞くと、相手には「終わった話をまた蒸し返された」と映りやすいと私は考えています。
お礼の返信は、断りの連絡を受け取ったことを伝えるものです。その中に質問を1つ入れる形なら、新しい連絡が増える感覚が薄くなります。
引き止めや値下げを混ぜない
NG例を挙げます。
このたびはご連絡ありがとうございます。もし金額が理由でしたら、調整も可能です。ぜひもう一度ご検討いただけませんか。また、今後の参考にご意見もお聞かせください。
この文面は、質問より先に再提案が来ています。相手は、質問に答えたら再提案の話に進むのではないかと身構えます。そして、質問への返信ごと止まります。
質問を送るなら、質問だけ。再提案は、別の機会に別の話として送ります。
電話で聞かない・催促しない
電話で聞くと、その場で答えを迫ることになります。相手は考える時間がないので、「タイミングが」とぼかすしかなくなります。メールなら、考えてから一言で書けます。
返事が来ないからと、催促するのもやめます。聞くのは1回きりと決めておきます。返事がないことも、ひとつの答えとして受け取ります。答えたくなかったのか、答える手間をかけられなかったのか。どちらなのかはわかりません。わからないまま、次の仕事に移ります。
返ってきた理由の受け取り方:言い返さず、お礼だけ返す
運よく返事が来たとき、その受け取り方で、次に聞けるかどうかが決まります。
お礼の返信は2文で止める
返信へのお礼は、次のくらいで足ります。
ご返信をありがとうございます。教えていただいた点を、次に活かします。
2文です。言い訳や補足を足しません。
説明し直しはしない
NG例を挙げます。
金額については、実は○○の作業が含まれておりまして、他社様の見積とは前提が違いまして……
こう返された相手は、「書かなければよかった」と思うでしょう。そして、次に別の人から理由を聞かれたとき、書かなくなるかもしれません。
返ってきた理由は、相手が自分の判断を一言で伝えてくれたものです。その判断に反論したくなる気持ちは、わかります。でも、ここは受け取って終わりにします。説明し直すなら、次の見積の中でします。
「金額」と言われたときの読み方
「金額」と書かれていても、金額そのものより、中身の伝わり方が足りなかった場合もあります。同じ金額でも、何にいくらかかるのかが見えていれば、納得してもらえることがあるからです。これは私の見方で、確かめられる話ではありません。
だから、自分の推測は別にメモしておき、相手には聞き返しません。「金額と言われたけれど、中身の説明が足りなかったかもしれない」と、メモの中だけで考えます。
返ってきた理由は、判決ではなく材料
返ってきた理由は、自分の値打ちを決める判決ではなく、次の提案を直すための材料です。断られても、自分の価値が下がるわけではありません。これは、「理由を聞くのが怖い」と感じている人に向けて、いちばん伝えたいことです。
聞いた理由を次の見積に残す:失注メモの付け方
理由を聞いて終わりにすると、次の見積に活きません。うまくいかなかった提案を振り返らず、次もいちから組み立てる。その繰り返しだと、同じところで断られ続けます。
残すための表を、次のように作ります。表計算ソフトでもノートでも構いません。
| 日付 | 相手 | 出したもの | 返ってきた理由 | 自分の推測 | 次に1つだけ変えること |
|---|---|---|---|---|---|
| 10/5 | ○○社 | Webサイト制作の見積 | 金額 | 中身の説明が足りなかったかもしれない | 見積に内訳の説明を一文足す |
案件ごとに残す6つの欄
6つの欄の使い分けです。
- 日付・相手:あとで探せるようにするだけです。
- 出したもの:見積か提案か、中身がどんなものだったかを一言で書きます。
- 返ってきた理由:相手の言葉をそのまま書きます。
- 自分の推測:相手の言葉とは分けて書きます。推測は、事実と混ぜないことが大事です。
- 次に1つだけ変えること:変えるのは1つだけです。複数変えると、何が効いたのかがわからなくなります。
返事がなかった案件も残す
理由が返ってこなかった案件も、「返事なし」と残します。何も書かない行を作らないでください。空白の行は、「なかったこと」にしたくなる気持ちを後押しします。「返事なし」と書いてあれば、聞いたという事実が残ります。
3件たまったら同じ理由を探す
3件たまったら、見返します。同じ理由が2回出ていないかを見ます。2回出ていれば、次の見積では、そこだけを変えます。変えるのは1つだけです。
理由が1回しか出ていないうちは、たまたまの可能性が残ります。2回出て初めて、直す価値のあるところとして扱う。これも私の目安で、決まりではありません。件数が少なくて見えないなら、無理に結論を出さず、次の案件を待ちます。
今日やれること
直近で断られた案件について、表の1行目を埋めます。「日付」「相手」「出したもの」まで書ければ十分です。もし、断りの連絡をもらってからまだ日が浅く、間に合うなら、「見積や提案のあとに断られたとき」の例文で1通送ってみてください。送ったあとの返事は、期待しすぎずに待ちます。返ってこなくても、「返事なし」として残せば、それでその案件の記録になります。
個別の契約や法律に関わる判断が必要な場合は、専門家に相談してください。この記事は、メールの言い方と順番についての一般的な考え方をまとめたものです。
よくある質問
失注した理由を聞くのは失礼ではないですか?
断りへのお礼の返信の中で1回だけ、質問を1つに絞り、返信しなくてもいいと書き添えれば、相手の負担は小さく済みます。失礼になりやすいのは、引き止めや値下げの再提案を混ぜたときや、何度も催促したときです。
失注の理由は電話とメールのどちらで聞くべきですか?
メールがおすすめです。電話だとその場で答えを迫ることになり、相手は「タイミングが」とぼかしやすくなります。メールなら相手が考えてから、一言で返せます。
失注理由を聞いても返事が来ないときはどうすればいいですか?
催促はしません。聞くのは1回きりと決めておき、「返事なし」として失注メモに残します。返事がないのは、腕への判決とは限らず、答える手間の問題かもしれません。
失注理由を聞いたあと、もう一度提案してもいいですか?
同じメールの中ではしません。お礼の返信は2文で止めます。次に連絡するなら、別の機会に、こちらの近況や新しい提案として送ります。
「金額が合わなかった」と言われたら値下げすべきですか?
すぐ下げなくて構いません。金額そのものより、中身の伝わり方が足りなかった場合もあります。失注メモに自分の推測として書いておき、次の見積で中身の見せ方を1つだけ変えてみてください。
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