対面営業・商談
値上げを伝えたあとのフォローメール|返事がない相手に送る3通の型
このシリーズの全体像 営業メールの例文集|場面別に、そのまま使える文面
値上げの連絡に反応がないのは、高いと思われたからではない
値上げのお知らせを送って5日。送信は済んでいるのに、返信がない。担当者の顔を思い浮かべて、「高いと思われたかもしれない」と考え始める。

でも、値上げの連絡は、返事をもらう連絡に見えて、実は相手に「もう一度決め直す作業」を渡す連絡です。決め直すには、社内や家族に説明する材料と、その時間がいります。黙っているのは、金額への回答ではなく、材料と時間が足りていないサインかもしれません。
沈黙の中身は、だいたい3つに分けられます。
- 誰かに通す材料がない(上司や配偶者にどう説明するか、まだ言葉になっていない)
- 今は決める時期ではない(繁忙期、予算の締め、担当者の異動時期と重なっている)
- もう決めたが言いづらい(断る方に決めたが、切り出し方が見つかっていない)
ここに挙げた3つは、数字の裏づけがある話ではなく、現場で使ってきた経験則です。どれも、「高い」という返事ではありません。
出したあとに何をすればいいか、教わっていないだけかもしれません。「あとは相手の番」で止まってしまい、そのまま日にちだけが過ぎていきます。
ここで「その後、いかがでしょうか」とだけ送るのはNGです。相手の手元に何も材料を足していないので、黙っている理由がそのまま残ります。返事を急かす前に、まず相手が決め直すための材料を渡す。それが、このガイドで扱うフォローの中身です。
高いと思われたのではなく、まだ決められないだけかもしれません。そう考えると、次に送るメールの中身が変わってきます。
値上げのあとは3通で組む(いつ・何を・何を書かないか)
反応がないとき、やりがちなのが「1通に思いをすべて詰め込む」ことです。確認も、事情の説明も、お願いも1通に入れると、全部薄まって結局ただの催促に読まれます。

1通に1つの目的だけを持たせて、3通に分けます。
| 通数 | 送る時期の目安 | その1通の目的 | その1通には入れない言葉 |
|---|---|---|---|
| 1通目 | 通知の3〜5営業日後 | 届いているかの確認 | ご検討状況 |
| 2通目 | 通知の2週間後 | 相手が社内で説明できる材料を渡す | 値引き |
| 3通目 | 通知の1か月後 | 期限を置いて締める | お願いします |
この間隔は統計ではなく、自分の段取りの目安として書いています。相手の締め日や繁忙期が分かっていれば、そちらに合わせて前後させてかまいません。
反応がないからと毎週送るのはNGです。毎週のような短い間隔で送っても、返事が増えるとは限りません。増えるのは、相手が「断る」という決心をする回数だけ、ということもあります。
メールと電話の使い分けも決めておきます。値上げに至った理由の説明は口頭でもかまいませんが、金額・開始日・条件は必ず文字で残します。口頭の説明より、文字にしたもののほうが社内で回しやすいからです。
1通目:返事を求めない確認メール(そのまま使える文面)
件名で値上げを隠さないことが前提です。開いたあとに隠されていたと分かるほうが、相手の受け取り方は悪くなります。
件名例:「【ご確認】4月からの料金改定について(ご返信は不要です)」
本文に入れる中身は次の4つだけです(宛名・挨拶・署名は別)。
- 先日の連絡が届いているかの確認
- 変わる点を1行で要約(何が、いつから、いくらになるか)
- 分からない点の受け皿(いつまで質問を受け付けるか)
- 「ご返信は不要です」の一文
そのまま貼れる文面例です。
◯◯様
いつもお世話になっております。◯◯(自分の名前)です。
先日ご案内いたしました料金改定の件、行き違いがあってはと思い、念のためご連絡いたします。
改定の内容は、◯月分のご請求より、月額◯◯円から◯◯円への変更です。それ以外の内容にお変わりはございません。
内容についてご不明な点がございましたら、◯月◯日までにご連絡くださいますようお願いいたします。
なお、このメール自体へのご返信は不要です。何かございましたら、そのタイミングでお知らせください。
◯◯(署名)
金額と開始日は必ず本文に書きます。「添付をご確認ください」だけで済ませると、開かないまま埋もれやすくなります。
NG例は「ご検討状況はいかがでしょうか」です。これは相手に「まだ決めていません」と報告させる質問で、決まっていない人ほど返せなくなります。
「ご返信は不要です」と書くのは、返事の義務を外すためです。義務を外すと、かえって一行の返事が戻ってくることがあります。返事が来たら1通目の役目は終わりで、2通目は送らなくてかまいません。
2通目:相手が社内で説明できる材料を渡す
2週間たっても反応がなければ、2通目は「相手が上司や家族に説明するときに使える言葉」を渡す回です。

まず、値上げ理由の書き方を変えます。
- 変更前(こちらの事情):「原材料費と人件費の高騰のため、誠に勝手ながら料金を改定させていただきます」
- 変更後(相手が上司に言える言葉):「これまでと同じ納期と仕上がりを、今後もご提供し続けるための改定です」
前者は自分たちの都合の説明で、相手はそのまま社内で使えません。後者は相手が上司に一言で伝えられる言葉になっています。
本文に貼る比較表も出します。
| 項目 | これまで | これから | 変わらないこと |
|---|---|---|---|
| 月額料金 | ◯◯円 | ◯◯円 | 納品物の品質・仕様 |
| 納期 | ◯営業日 | ◯営業日(変更なし) | 対応の速さ |
| 対応窓口 | ◯◯ | ◯◯(変更なし) | 担当の顔ぶれ |
効くのは「変わらないこと」の列です。相手が社内で通すときに使うのは、上がった金額ではなく、変わらない部分だからです。
全部を一律に上げるのではなく、選択肢を1つ添えるのも手です。たとえば「対応回数を減らして総額は据え置き」「今の条件を3か月だけ延長」のどちらかです。選択肢は2つまでにします。3つ以上になると比べる作業が増えて、また黙ってしまうことがあります。
このメールは、そのまま転送できる文にします。内輪の事情、値上げに至った苦労話、こちらの言い訳は書きません。転送された先で読むのは、まだ会ったことのない人だと考えて書きます。
メールの基本の組み立て方は営業メールの基本の型にまとめています。ここでは値上げのあとという場面に絞って書いています。
3通目:切る前に一度だけ、期限を置いて締める
1か月たっても反応がなければ、3通目で一度区切りをつけます。
期限は、相手を急かすためではなく、自分の段取りの都合として書きます。「◯月◯日で次の期の準備に入るため」のように理由を添えます。
※この書き方が使えるかは下記の注意を先に読んでください。
そのまま使える文面例です。
◯◯様
お世話になっております。◯◯です。
料金改定の件、◯月◯日までにご連絡がなければ、現在ご案内している内容のまま、新しい料金でお取引を継続させていただきます。
取りやめをご希望の場合も、この日までにお知らせいただければ大丈夫です。その場合のデータの返却や引き継ぎについては、あらためてご相談させてください。
◯◯(署名)
この「連絡がなければ継続」という書き方には注意が必要です。日本の法律では、沈黙は原則として同意にはあたりません。契約書に料金改定の手続きが具体的に明記されているなど、限られた場合を除いて、この書き方はそのままでは使えません。自動更新条項があるというだけでは、値上げの根拠にはならないのです。相手が一般消費者の場合は、さらに制限が加わります。使う前に、契約書の該当条項を確認してください。判断がつかない場合は、専門家に相談してください。
断る形も用意しておきます。続けない場合のデータ返却・引き継ぎ・最終納品日を1行書いておくと、相手は断りやすくなります。断りやすくすると、断らない人のほうがむしろ先に返事をくれることがあります。
NG例は「お返事いただけないと困ります」「今月中にご決断ください」です。困っているのはこちらの都合だと読まれ、相手は返す理由をなくします。
3通目を出したら、この案件のフォローは一度終わりにします。ここで区切りをつけないと、催促だけが続く関係になります。次に動くのは、値上げ通知日から6か月後です。それまでの間、この案件単位のフォローは行いません。
黙って離れた相手に、半年後に出す一通
3通出しても反応がなく、そのまま取引が終わることもあります。その相手にも、半年後に一通だけ送る余地があります。

離れた理由は聞きません。「なぜ切り替えられたのでしょうか」と聞くと、相手は断りの言葉を作らないといけなくなり、そこで関係が本当に終わります。
中身は3つだけです。
- 近況を1行
- 相手に使える情報を1つ(相手の業界の制度変更、自分の対応範囲が増えたことなど)
- 「今すぐ何かのお願いではありません」の一文
文面例です。
◯◯様
ご無沙汰しております。◯◯です。
その後いかがお過ごしでしょうか。先日、◯◯に関わる制度が変わるという話を耳にしたので、念のため共有させていただきます。
今すぐ何かをお願いする連絡ではありません。またお近くにお越しの際にでも、お声がけいただければうれしいです。
◯◯(署名)
「またお願いします」「ご検討いただけませんか」は入れません。頼まないから出せる、という順番で書きます。
送る日は先に決めておきます。値上げの通知を出した日に、カレンダーへ6か月後の予定を入れておきます。思い出したときに送るやり方は、思い出さないまま切れていくことが多いです。
NG例は、反応がないからと値上げを撤回して「元の金額に戻します」と送ることです。戻すなら理由と期間を必ず付けます。無条件に戻すと、次に値上げを伝えるときの説明が難しくなります。
送る前に見るいくつかの項目(このまま出していいかの判定)
送信ボタンを押す前に、次のいくつかの項目を確認します。
- 1通の目的が1つになっているか
- 催促の言葉が入っていないか
- そのまま転送できる内容になっているか
- 金額と開始日が本文にあるか
- 返事の期限か「返信不要」のどちらかが書いてあるか
- 断る方法が書いてあるか
- メールの件名だけで内容が分かるか
「催促の言葉」にあたるものを具体的に挙げます。
- ご検討状況
- 再度のご連絡となりますが
- お返事お待ちしております
- お忙しいところ恐縮ですが(枕だけで中身が続かない場合)
送信前に、一度声に出して読みます。読んでいて気まずくなる一文があれば、受け取る側も気まずく感じています。その一文を消しても、用件はたいてい通ります。
今どの通を出す番かは、値上げの通知を出した日からの日数で判断します。3〜5営業日なら1通目、2週間なら2通目、1か月なら3通目です。3通目を出したあとは、通知日から6か月がたつまで、この案件単位のフォローは行いません。6か月たったら、催促ではなく半年後の一通に切り替えます。
よくある質問
値上げを伝えたのに反応がありません。断られたということですか?
沈黙は拒否とは限りません。社内や家族に通す材料がないか、決める時期ではないだけかもしれません。3〜5営業日後に「ご返信は不要です」と書いた確認メールを1通出して様子を見ます。
値上げ後のフォローメールは何日後に送るのが目安ですか?
1通目は3〜5営業日後、2通目は2週間後、3通目は1か月後が目安です。毎週のような短い間隔で送っても、返事が増えるとは限りません。増えるのは、相手が断る決心をする回数だけ、ということもあります。
値上げに「高い」と返信が来たら、値引きしてもいいですか?
金額を下げる前に、回数・量・対応範囲を減らして総額を合わせる方法があります。金額だけ下げると、次に値上げを伝えるときの根拠が弱くなります。
値上げの連絡はメールと電話、どちらがいいですか?
理由の説明は口頭でもかまいませんが、金額・開始日・条件は必ず文字で残します。口頭の説明より文字にしたもののほうが社内で回しやすいため、電話だけで済ませると話が止まりやすくなります。
値上げを伝えて離れた相手に、また連絡してもいいですか?
半年後に、頼まない一通なら出してかまいません。離れた理由は聞かず、依頼もしません。近況と相手に使える情報を1つだけ送ります。
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