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このシリーズの全体像 お金の話の伝え方|値段・値上げ・値引きを、関係を壊さずに伝える

見積書の備考欄に書くのは、範囲・修正・追加料金・支払い・有効期限の5つ

見積書の備考欄に書くのは、①作業の範囲、②修正の回数、③追加料金の出し方、④支払いの条件、⑤有効期限の5つです。自分を守る注意書きを並べる欄ではありません。見積を受け取った人が「この金額で、どこまで頼んでいいのか」を迷わず読める案内を書く欄です。

備考欄に書く5項目を並べた全体図

この記事では、5つをそのまま書き換えて使える一行ずつの例文で渡します。数字はすべて◯で置いてあるので、自分の数字を入れてください。

項目書くこと書かないと起きること
①作業の範囲含むものと、含まないもの「それも入っていると思っていた」と言われることがある
②修正の回数何回まで含むか、超えたときの扱い直しがいつまでも続くことがある
③追加料金の出し方いつ・どう金額を伝えるか請求書で初めて追加が出て、「聞いていない」になることがある
④支払いの条件締め日、支払い期日、手数料、前金の有無入金の時期や手数料を、毎回確認する気まずさが生まれる
⑤有効期限この金額を守れる期間いつまでもこの金額で、と待たれることがある

5つ全部を一度にそろえなくて構いません。以降の章で、1項目ずつ一行の例文を出します。

直しが続くのは腕が足りないからだ、と思っていないか

デザインの見積を、総額だけ書いて出した。受注できて、制作に入る。初稿を出すと直しが来る。直して出すと、また直しが来る。3回目の修正依頼のメールを開いたところで、こう考える人がいます。「最初の出来が悪いから、直されているのだ」。

追加料金の話をしたい気持ちはあるのに、口に出せません。直しが続くのは自分のせいなのに、お金の話をするのは図々しい。そう思って、そのまま4回目に入ります。

このとき自分に言い渡している文は、「直しが何回も来るのは自分の腕が足りないからで、追加料金なんて言える立場じゃない」というものです。仮説ですが、こう受け止めて黙ってしまう人は多いと私は見ています。

相手は、どこまで頼んでいいかを知らないだけ

総額だけが書かれた見積を受け取った側には、分からないことが3つあります。何回まで直してよいのか。どこからが追加になるのか。追加になるとしたら、いくらで、いつ分かるのか。

紙に線が書かれていなければ、相手は悪気なく頼み続けます。頼む側からすれば、言われていない範囲は「含まれている」と読むほうが自然だと私は思います。直しが続く原因は、腕の出来より、紙に線が引かれていないことにある場合が少なくありません。

総額しか書かず、中身を分けないまま見積を出してしまう。私はこれを「総額だけ型」と呼んでいます。中身を分けずに総額だけ出すので、値段の話しかできなくなる状態のことです。腕とは関係がなく、見積の書き方を習っていないだけです。

作業の範囲は「含むもの」と「含まないもの」を一行ずつ書く

例文:含むものを書く

含むものと含まないものを左右に分けた比較図

含むものは、成果物と数を並べて書きます。

本見積には、ロゴ案の作成(◯案)、選定後の調整、データ納品(AI・PNG)を含みます。

職種が違っても形は同じです。

  • カメラマン:本見積には、撮影(◯時間)、データの色味調整、納品(◯枚)を含みます。
  • 講師:本見積には、講座当日の登壇(◯時間)と、当日資料の作成を含みます。資料の事前送付は含みません。

数字は相場ではなく、その案件で自分が引き受ける内容を入れます。◯案、◯時間、◯枚は、過去の案件を見返して自分で決めてください。

NG例:「制作一式」だけで終わる

「一式」は、書いた本人には中身が分かっています。読む側には何も見えません。見えないので、相手は「全部入っている」と受け取ることがあります。

書き換えるとこうなります。

【Before】
ロゴ制作 一式 ◯◯円

【After】
ロゴ制作 ◯◯円
・ロゴ案の作成(◯案)
・選定後の調整(◯回まで)
・データ納品(AI・PNG)

一式と書いた行の下に、中身を数行足すだけです。金額は同じでも、相手が「何にお金を払うのか」を読めるようになります。

含まないものを書くと角が立つと思うとき

「〜は含みません」と書くと冷たく見えそうで、書けない人もいると思います。その場合は、断る文で終わらせず、受け皿まで書きます。

名刺・封筒への展開をご希望の場合は、別途お見積りします。

断る文ではなく、次に頼める道を書く文にします。相手は「頼んではいけないこと」ではなく「頼むときの手順」を知ることになります。

修正の回数は「回数」と「それを超えたとき」をセットで書く

例文:回数と超えたときの扱い

修正回数の内と超えた後の扱いを示す段階図

修正は◯回まで、この金額に含みます。以降は1回につき◯円で承ります。

回数だけで止まっている文は、使えません。

【NG】修正は◯回までとします。

これでは、◯回を超えたときに何が起きるのか分かりません。結局、超えた時点でもう一度話し合うことになり、そこで言い出せなくなる人が多いと思います。超えたときの扱いまで書いて、はじめて線になります。

回数が何回なら適切か、という相場はここでは示しません。根拠のある数字がないからです。決め方は、この章の最後に手順で書きます。

「修正」と「作り直し」を分けて書く

文字や色の直しと、方向性そのものの変更は、手間がまるで違います。ここを分けておくと、揉めにくくなると考えています。

文言・色・配置などの修正は、上記の回数に含みます。方向性の変更による作り直しは、別途ご相談します。

揉めやすいのは、回数そのものより、この線がないときです。「3回目の修正」と言われたものが、実はゼロからの作り直しだった、ということが起こり得ます。

回数で切りにくい仕事は期間で切る

施術や顧問のように、回数で数えにくい仕事もあります。その場合は期間で書きます。

納品後◯日以内にいただいたご連絡については、追加料金なしで対応します。

回数や日数は、過去の案件を見て決めます。手順はこうです。

  1. 直近の案件を数件、思い出す
  2. それぞれ、実際に何回直したかを書き出す
  3. 「ここまでは含めてもいい」と思える回数を自分で決める
  4. 超えたときの料金を、手間の重さから決める

他人の相場より、自分の過去の案件のほうが、根拠としてずっと確かです。

追加料金は、金額より「いつ伝えるか」を書いておく

例文:作業の前に伝えると約束する

追加料金を伝える時期の違いを比べた時間の流れ図

追加のご依頼は、作業に入る前に金額をお伝えし、ご了承をいただいてから進めます。

追加料金の備考欄で一番効くのは、金額の書き方より、この「いつ伝えるか」の一行だと私は考えています。受け取る側がいやなのは、追加の金額そのものより、あとから知らない金額が来ることだ、という人が多いと私は見ています。この一行は、そこを先に消します。

NG例:請求書で初めて追加が出てくる

受け手の目線で、場面を描いてみます。

見積は◯◯円でした。納品が終わり、請求書が届きます。金額が、見積より◯◯円多い。内訳を見ると「追加修正対応」と書いてあります。

このとき相手が引っかかるのは、金額の大きさより「聞いていない」という点です。断られたわけでも、怒られたわけでもありません。ただ、次の依頼が来なくなることがあります。何も言われないので、理由も分かりません。

作業の前に金額を伝える一行があれば、この場面は避けられます。

単価を先に書くか、その都度出すか

追加料金の書き方は、よく出るものとめったに出ないもので分けます。

種類書き方例
よく出る追加単価を先に書くページ追加は1ページにつき◯円。撮影の延長は◯分につき◯円
めったに出ない追加都度お見積りと書く上記以外のご依頼は、内容を伺ったうえで都度お見積りします

よく出るものは、過去の案件で実際に追加になったものを見れば分かります。単価を先に書いておくと、相手も追加のときの金額を想像できます。

支払いの条件と有効期限は、自分の都合で決めて言い切る

支払いの条件の例文

例を2つ並べます。どちらが一般的か、という話はしません。自分の仕事に合うほうを選んでください。

  • 締め日と期日で書く:納品月の月末締め、翌月末までにお振込みください。
  • 前金を入れる:ご発注時に半額、納品後に残りの半額をお願いします。

前金を入れたい理由が自分にあるなら、それを根拠にしてよいと思います。たとえば、材料費が先に出ていく仕事。制作が長く、途中で止まると困る仕事。そういう理由があるなら、言い切って構いません。

振込手数料も一行で

お振込み手数料はご負担をお願いします。

これを書いていないと、毎回「手数料はどうしましょうか」という確認が必要になります。入金のたびに差額が出て、それを言い出せずに飲み込む。そういう状態も起こり得ます。一行で防げるので、入れておきます。

有効期限は相場ではなく、自分の事情で決める

本見積の有効期限は、発行日から◯日間です。

日数の目安は書きません。決め方はこうです。

  1. 見積の金額が動く事情を書き出す(材料費が変わる、仕入れ先の価格が変わる)
  2. 予定の空きを押さえている期間を考える(この日程で受けられるのは、いつまでか)
  3. その事情が変わらない期間を、日数にする

有効期限は、急かすために置くものではありません。「この金額を守れる期間」を伝えるためのものです。そう位置づけると、書くことへの気まずさが減ります。

なお、見積の金額の伝え方の全体は、お金の話の伝え方にまとめています。備考欄を書く前に、金額そのものをどう言うかで迷っているなら、先にそちらを読んでみてください。

備考欄を書いても揉める3つの落とし穴

小さな字の長文は読まれない

不安になって、備考欄に注意書きを何行も詰めてしまう人がいます。

【NG】
※修正は原則として◯回までとし、それ以上の場合は別途費用が発生する場合があります。
※納期は素材をいただいた日から起算します。素材の遅れによる納期の遅延は…
(以下、同じ調子で続く)

読まれない条件は、書いていないのと同じです。一行に一条件で、5行に絞ります。

【OK】
・本見積には、ロゴ案(◯案)とデータ納品を含みます。
・修正は◯回まで含みます。以降は1回につき◯円です。
・追加のご依頼は、作業の前に金額をお伝えします。
・お支払いは、納品月の月末締め、翌月末までにお願いします。
・本見積の有効期限は、発行日から◯日間です。

書いただけで、渡すときに触れない

備考欄は、書くだけでは半分です。見積を送るときに、一言添えます。

金額と一緒に、備考欄の2か所だけ見ておいていただけますか。修正の回数と、追加のときの流れを書いています。

対面で渡すなら、その場で備考欄を指さして、ひと言で触れられます。「ここに修正の回数と、追加のときの流れを書いています」と言うだけです。口で触れておくと、あとで「読んでいなかった」と言われる余地が減ると考えています。

「ご了承ください」が並ぶと冷たく見える

【NG】
・修正が◯回を超える場合はご了承ください。
・納期が遅れる場合はご了承ください。
・追加費用が発生する場合はご了承ください。

3行とも、相手に「飲み込んでくれ」と言っているように読めます。書き換えると、こうなります。

【OK】
・修正が◯回を超える場合は、先にご相談します。
・納期に影響が出そうな場合は、分かった時点でお知らせします。
・追加費用が発生する場合は、作業の前に金額をお伝えします。

相手を疑う文ではなく、相手が迷わずに済む文にします。条件の中身は同じでも、読んだときの印象が変わります。

そのまま使える備考欄の例と、今日やること

職種別の備考欄テンプレート

5行ずつ、丸ごと載せます。◯に自分の数字を入れてください。

デザイン制作

1. 本見積には、ロゴ案の作成(◯案)、選定後の調整、データ納品(◯形式)を含みます。印刷物への展開は、ご希望の場合に別途お見積りします。
2. 修正は◯回まで、この金額に含みます。以降は1回につき◯円で承ります。
3. 方向性の変更による作り直しや追加のご依頼は、作業に入る前に金額をお伝えし、ご了承をいただいてから進めます。
4. 納品月の月末締め、翌月末までにお振込みください。お振込み手数料はご負担をお願いします。
5. 本見積の有効期限は、発行日から◯日間です。

撮影

1. 本見積には、撮影(◯時間)、色味の調整、納品(◯枚)を含みます。撮影のやり直しや別日の再撮影は含みません。
2. 調整のやり直しは◯回まで含みます。以降は1回につき◯円で承ります。
3. 撮影時間の延長は◯分につき◯円です。その他の追加は、事前に金額をお伝えしてから進めます。
4. ご発注時に半額、納品後に残りの半額をお願いします。お振込み手数料はご負担をお願いします。
5. 本見積の有効期限は、発行日から◯日間です。日程の空きは、ご発注の確定まで押さえています。

講座・研修

1. 本見積には、当日の登壇(◯時間)と、当日資料の作成を含みます。事前の個別相談や、後日の質問対応は含みません。
2. 資料の修正は、開催前に◯回まで含みます。以降は1回につき◯円で承ります。
3. 開催時間の延長や、受講者数の追加は、事前に金額をお伝えし、ご了承をいただいてから進めます。
4. 開催月の月末締め、翌月末までにお振込みください。お振込み手数料はご負担をお願いします。
5. 本見積の有効期限は、発行日から◯日間です。

今日やること:直近の見積を1枚だけ開く

過去に出した見積を1枚、開いてください。その案件で、困ったことを1つ選びます。直しが続いた。追加を言えなかった。入金が遅れた。そのどれかです。

選んだら、それを防ぐ一行だけを備考欄に足します。直しが続いたなら、修正の回数の一行。追加を言えなかったなら、作業の前に伝えるという一行。5つ全部を、今日そろえなくていいのです。

次に出す見積で、口頭のひと言までやる

書き足した一行は、渡すときに言葉でも伝えます。先ほどの例文を、そのまま使って構いません。「備考欄の2か所だけ見ておいていただけますか」。書いた一行が、相手に届きます。

最後に、この記事は取引条件の伝え方だけを扱っています。税の表記やインボイスの記載事項、契約としての効力や支払い条件の法的な扱いは扱っていません。税は国税庁の案内で確認し、個別の判断は税理士・弁護士など専門家に相談してください。

よくある質問

見積書の備考欄には何を書けばいいですか?

作業の範囲(含むもの・含まないもの)、修正の回数、追加料金の出し方、支払いの条件、見積の有効期限の5つです。一行に一条件で書くと読まれやすくなります。

備考欄に条件を細かく書くと、面倒な人だと思われませんか?

「ご了承ください」で切る書き方だと冷たく見えます。「〜の場合は、先にご相談します」と書けば、相手が迷わずに済む案内になります。量は5行ほどに絞るのがおすすめです。

修正は何回までにすればいいですか?

決まった相場の数字はこの記事では示していません。過去の案件で実際に何回直したかを見て自分で決め、超えたときの扱い(1回ごとの料金や別見積)とセットで書きます。

見積を出したあとで、備考欄に条件を足してもいいですか?

発注前なら、条件を足した見積を出し直して、ひと言添えます。発注後に条件を変える場合は、一方的に書き足さず、相手と話して合意してから進めてください。契約上の扱いに不安があるときは、専門家に相談してください。

備考欄に書く消費税の表記やインボイスの記載はどうすればいいですか?

この記事では取引条件の伝え方だけを扱っています。税の記載事項は国税庁の案内で確認し、個別の判断は税理士など専門家に相談してください。

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