対面営業・商談
契約書を送るときのメール例文|堅くなりすぎない一通
このシリーズの全体像 営業メールの例文集|場面別に、そのまま使える文面
契約書のメールで手が止まるのは、失礼が怖いからではない
契約書メールで書くべきことは、実は3つしかありません。何を送ったか、相手は何をするか、いつまでにやるか。この3つが本文に入っていれば、堅苦しい前置きは要りません(そのまま使える例文は後述します)。
それでも、見積が通って契約書のファイルまで準備できているのに、宛名を入力した画面のまま手が止まる——という経験はないでしょうか。
契約が決まった直後に、いちばん長く止まる
会議中の返信や、依頼メールへの一行返信はすぐ書けるのに、契約書を送るメールだけ時間がかかる。書く内容が特別だからではなく、これから相手が署名するという重みが、いつもの言葉選びを迷わせているだけです。書けないのは日本語力の問題ではなく、何を書くか決まっていないから、挨拶と定型句で長さを埋めているだけだと考えたほうが実態に近いです。
堅い文章は、相手の作業を隠す形で失礼になる
受け手が契約書メールを開いて探しているのは3つだけです。何が届いたか、自分は何をするか、いつまでにやればいいか。
「平素は格別のご高配を賜り」から始まる12行のメールは、この3つを本文の底に沈めてしまいます。丁寧ではあっても、相手はどこを読めば次の作業が分かるのか、探すところから始めることになります。
NG例を挙げます。
ご確認のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
丁寧な締めですが、これで終わる一通は、相手が次に何をすればいいか書かれていません。丁寧さと、相手が動けることは別の話です。契約書に限らず、営業メールの基本も同じ考え方で書けます。
送ったあとに動けないのは、送り方の問題
契約書を送ったあと、返信が来るまで何もできずにいる——相手の番型かもしれません。出したあとに何をすればいいか習っていないので、「あとは相手の番」で止まってしまう型です。
つらいのは、契約書が戻ってこないことそのものより、こちらから何も言えないまま日が過ぎることかもしれません。
催促するかどうかは性格の問題ではありません。最初の一通に期限と次の連絡日を書いておけば、あとから送る連絡は催促ではなく、予告どおりの進行確認になります。
この記事で渡す方法は1つです。送るときのメールで、返ってくるかどうかを決めておく。これだけです。
そのまま使える契約書送付メールの例文(3パターン)
形式が違えば、書くべきことも少しずつ変わります。3つのパターンに分けて、そのまま使える文面を置きます。
PDFで送る基本形
件名は次の形にします。
【ご確認のお願い】業務委託契約書の送付(◯◯の件)
本文は5行で足ります。
先日はありがとうございました。 契約書を添付します(業務委託契約書・全4ページ)。 ご確認のうえ、ご署名をお願いします。 9月11日(金)までにご返送いただけると助かります。 内容でご不明な点があれば、このメールに返信ください。
宛名と署名を除いた本文はこれだけです。挨拶を長くする必要はありません。
紙で郵送して押印返送してもらう場合
郵送する場合、メールは「いま発送した」という予告として送ります。入れる要素は次の4つです。
- 発送日
- 同封物(双方保管なら2部+返信用封筒)
- 押印して1部を返送してほしいこと
- 投函の目安日
本日、契約書2部を郵送いたしました。1部に署名・押印のうえ、返信用封筒にて9月18日(金)ごろまでにご返送いただけますと幸いです。もう1部はお手元での保管をお願いいたします。
返信用封筒を同封したら、必ずメールにもその旨を書きます。書かないと、相手は自分で封筒を用意する前提で止まってしまいます。
電子契約サービスで署名依頼を出す場合
サービスからの自動通知メールとは別に、自分から一通出します。自動通知は迷惑メールに振り分けられるか、社内の別部署に転送されて止まることがあるためです。
◯◯(サービス名)より、署名依頼のメールをお送りしました。差出人は「◯◯」という名前で届きます。ご確認からご署名まで、数分程度で完了することが多いです(利用するサービスにより所要時間は前後します)。届いていないようであれば、お知らせください。
3パターンとも、末尾に共通で入れる一文があります。
9月11日までにご返信がなければ、こちらから一度ご連絡します。
これが後半の伏線になります。
契約書メールに必ず入れる5つ(抜けると返ってこない)
契約書メールに必ず入れる要素は5つです。持ち帰り用のチェックリストとして使ってください。

| # | 入れる要素 | 具体例 |
|---|---|---|
| ① | 送ったものの名前と数 | 業務委託契約書 1式・全4ページ |
| ② | してほしい作業 | 確認だけか、署名か、押印して返送か |
| ③ | 期限(日付) | 「今週中」ではなく「9月11日(金)まで」 |
| ④ | 返送の方法 | メール添付・郵送・サービス上で完結 |
| ⑤ | 不明点の窓口 | このメールに返信でOK、と明記 |
いちばん抜けるのは③と④
「ご確認をお願いします」だけのメールは、相手にとって期限のないタスクになります。期限のないタスクは机の右端に置かれ、次の案件に埋もれていきます。
返ってこないのは、相手の熱が冷めたからではありません。順番が付かなかっただけです。
期限は相手の作業量から逆算して置く
確認だけなら3営業日、社内の承認が必要そうなら1週間、押印して郵送してもらうなら10日が目安です。短すぎる期限は急かしているように見え、長すぎる期限は忘れられます。
迷ったときは「9月11日まで」と日付を置いたうえで、「ご都合が合わなければ教えてください」を添えます。
NG例と直し方
NG:
添付の件、ご査収くださいませ。
直し方:
添付の業務委託契約書(全4ページ)をご確認のうえ、9月11日(金)までにご署名いただいたPDFをこのメールへ返信でお送りください。
文字数は増えますが、相手の手は減ります。
契約書ファイルの送り方——パスワード付きZipは避ける
文面が整っても、送り方でつまずくことがあります。とくにパスワード付きZipは、いま見直されている送り方です。

パスワード付きZipは、いま外していく流れにある
2020年11月、当時の平井デジタル相の言及をきっかけに、政府は中央省庁でのパスワード付きzipファイルのメール送信を廃止する方針を示しました。平井デジタル相は「zipファイルのパスワードの扱いを見ていると、セキュリティレベルを担保するための暗号化ではない」と述べています。さらに「全ての文書をzipファイル化するのは何でもはんこを押すのに似ている」とも表現しています。
代わりに何で送るか
代替手段として、Word/PDFの暗号化機能、OS標準ツールでの暗号化、ビジネスチャットの活用、クラウドサービス(GoogleDrive、Box、OneDrive等)を利用したファイル共有が挙げられています。
個人で仕事をしているなら、PDFにパスワードをかけて別経路(電話・チャット)でパスワードを伝えるか、共有リンクを相手だけに出すかの2択で足ります。
実務の落とし穴:相手の会社のルールが先
大きい会社ほど、外部の共有リンクが社内ルールでブロックされていることがあります。初取引の相手には、送る前に一文聞いておきます。
契約書のファイル、メール添付とクラウド共有のどちらがご都合よいでしょうか。
これを聞くだけで、送ったあとに「開けません」で3日溶けるのを防げます。
添付そのものを見直す選択肢
電子契約サービスを使うなら、ファイルを送らずに署名依頼だけを出す形になります。多くのサービスでは受信者側のアカウント登録は不要で、届いたメールのリンクから署名まで完了します。ただし相手の社内ルールで電子契約が認められていない場合があるため、初取引では先に一文確認しておくと安全です。
どこまで崩していいか——堅さと軽さの境目
堅すぎても軽すぎても、相手は動きにくくなります。崩していい場所と、崩してはいけない場所を分けて考えます。

崩していい場所と、崩してはいけない場所
| 崩していい場所 | 崩してはいけない場所 |
|---|---|
| 書き出し・締め・お礼の言い方 | 書類名 |
| 語尾のやわらかさ | 金額・日付・期限 |
| 一言添える雑談 | 返送方法 |
「例の書類」「先日の金額で」は、親しさではなく事故のもとです。柔らかくするのは人に向けた部分で、正確にするのは書類に向けた部分だと分けて考えます。
3段階で見比べる
堅すぎ:
平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。さて、標記の件につきまして…
ちょうどいい:
先日はお時間をいただきありがとうございました。契約書をお送りします。
崩しすぎ:
契約書送っときますね!確認だけお願いします〜
崩しすぎがまずいのは、失礼だからではありません。契約という手続きの重さと、文面の軽さが釣り合わず、相手が社内で転送しづらくなるからです。
相手別に変える一行だけ
本文の骨格は変えず、次の一行だけ差し替えます。
- 初取引:「はじめての契約になりますので、内容でひっかかる点があれば遠慮なくお知らせください」
- 2回目以降:「前回と同じ内容ですが、期間だけ変わっています」
- 紹介経由:「◯◯さんにご紹介いただいた件です」
返ってこないときの一通(催促にならない書き方)
返信が来ないときに一番効くのは、返信を待ってから考える文面ではなく、送る前に仕込んでおく一行です。

最初のメールに“予告”を入れておく
送るときに「9月11日までにご返信がなければ、こちらから一度ご連絡します」と書いておけば、その連絡は催促ではなく、予告どおりの進行になります。相手の番型から抜ける最小行動はこれ1つです。文面を練り直すより、送る前に一行足すほうが効きます。
期限翌日に出す文面
先日お送りした契約書の件、ご確認いただけていますでしょうか。もし送付方法や内容で確認が必要な点があれば、こちらで対応します。
相手の落ち度に触れず、止まっている理由をこちら側に置く書き方です。
NG例:
ご返信をお待ちしております。
これだけで終わると、相手を待たせている側にする言い方になってしまいます。
それでも動かないときの、期日を自分側に置く言い方
開始予定日が9月22日(火)ですので、9月18日(金)までにご返送いただけると予定どおり進められます。難しければ、開始日をずらす形でも大丈夫です。
急かしているのではなく、自分の段取りを共有している形にします。逃げ道(開始日をずらす案)を同時に出すと、相手は返事を書きやすくなります。
何回まで送っていいか
予告どおりの1回目、期日を添えた2回目、そこで止まったら方法を変えます(電話・チャット・紹介者経由)。同じ文面を3回送るのが、一番効きません。
契約書が戻ってきたあとの、最後の一通
契約書が返ってきたら、そこで終わりではありません。最後の一通が、次の仕事につながります。
受領の連絡を、その日のうちに出す
契約書を確かに受け取りました。ありがとうございます。
3行でいい内容です。ここを出さないと、相手は「届いたのか」を数日気にし続けます。手間は1分ですが、印象は最後まで残ります。
開始日と最初の動きを、同じメールに書く
9月22日(火)から着手します。まず◯◯の資料をいただけると助かります。
契約の話を仕事の話に切り替える一文で、次の連絡を出す口実が自然に残ります。
控えの保管と、次の更新の一言
署名済みファイルの保管場所は、相手にも伝えておきます。
署名済みのPDFを添付します。お手元でも保管をお願いします。
期間のある契約なら、「終了の1か月前に一度ご相談させてください」まで書いておくと、次の話を自分から切り出す必要がなくなります。
契約書の内容そのもの(条項の妥当性・印紙・税務)は、ここでは一般的な考え方の説明に留めています。個別の判断は弁護士・税理士に相談してください。
よくある質問
契約書はメール添付のPDFで送ってもいいですか
相手の会社のルール次第です。送る前に「メール添付とクラウド共有のどちらがご都合よいですか」と一文聞いておくのが早いです。パスワード付きZipは中央省庁で廃止する方針が示された流れがあり、PDF自体の暗号化やクラウド共有が代替として挙げられています。
契約書のメールに「ご査収ください」は使っていいですか
使ってもいいですが、それだけで終わらせないことです。「ご査収」は相手が何をすればいいかを指定しない言葉なので、確認なのか署名なのか返送なのかを日本語で書き足します。
契約書の返送期限は何日後に設定すればいいですか
相手の作業量から逆算します。確認だけなら3営業日、社内の承認が要りそうなら1週間、押印して郵送なら10日が目安です。日付で書き、「ご都合が合わなければ教えてください」を添えます。
契約書を送ったのに返事が来ません。いつ連絡していいですか
最初のメールに「◯日までにご返信がなければ一度ご連絡します」と書いておけば、期限の翌日に出す連絡は催促ではなく予告どおりの進行確認になります。文面は相手の落ち度に触れず、止まっている理由をこちら側に置きます。
電子契約サービスを使うなら、送付メールは要りませんか
自動通知とは別に、自分から一通出したほうがいいです。自動通知は迷惑メールに振り分けられたり、社内で転送されて止まったりします。差出人名と所要時間を先に伝えておくと開封されやすくなります。
参照した情報源
- 契約書ファイルの安全な送信方法—パスワード付きzip廃止への対応(クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社))・確認日 2026-09-08
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