対面営業・商談
回数券の売り方|押し売りにならない勧め方と、断られたときの返し
このシリーズの全体像 お金の話の伝え方|値段・値上げ・値引きを、関係を壊さずに伝える
回数券は「売るもの」ではなく、次の予約の話の続きで出す
結論から言うと、押し売りにならない順番は「今日の状態→通う間隔→『続けるなら』と前置き→金額を言ったら黙る」の4つです。回数券は、次の予約の話の続きとして出します。
施術が終わって、会計の場面になる。回数券のことは頭にある。でも口に出すと「結局それが目的だったのか」と思われそうで、何も言わずに1回分のお会計を済ませてしまう。帰り道で「また言えなかった」と思う。この場面に覚えのある人は多いと思います。
この引っかかりは、押しが弱いとか、営業に向いていないとかの話ではないと、私は見ています。回数券を「追加で買わせる商品」として考えているので、口に出すのが重くなっているのだと思います。
実際の回数券は、「次はいつ来るか」という予約の話を、まとめて決めやすくした形にすぎません。新しい商品を売り込むのではなく、すでにしている予約の相談を一段まとめるだけです。
NGの流れと、自然な流れ
まず、言いにくくなる典型的な流れです。
- 会計の場面で、いきなり「今なら回数券がお得です」と切り出す
- 相手は、施術の話からお金の話に急に切り替わったと感じる
- 「やっぱり売りたかったのか」という空気になる
次に、同じ回数券でも自然に聞こえる流れです。
- 施術中に「次は3週間後くらいがちょうどいいです」と、間隔を伝えておく
- 終わったあとに「その間隔で続けて来られるなら、回数券もあります」と出す
- 相手にとっては、間隔の話の続きとして聞こえる
3週間という数字は例です。お店や施術の内容ごとに決めてください。大事なのは、回数券の話の前に「次はいつ」という話が済んでいることです。お金の伝え方の全体像はお金の伝え方の基本にまとめています。回数券もその一部として読んでもらえるとつながります。
勧める前に決めておく3つのこと:間隔・回数・やめどき
言い方の前に、自分の中で決めておくことが3つあります。ここが決まっていないと、丁寧な言い方でも相手に伝わりにくくなります。数字はお店ごとに決めるものなので、ここでは型だけを示します。
何回でどこまで変わるか
回数券の中身を、自分の言葉で一文にしておきます。型はこうです。
最初の数回で〇〇を整えて、そのあとは間隔をあけて保つ
〇〇には、肩の張りでも、姿勢でも、発音でも、その仕事で相手が良くなってほしい点を入れます。この一文が言えないまま回数券を出すと、「何回買えば何になるのか」が相手に見えません。見えないものにお金を払うのは、怖いものです。
通う間隔
「また来てください」は、相手に判断を丸ごと渡す言い方です。いつ来ればいいのか分からないので、結局来ないまま日が空きます。
「〇週間後くらい」と言えるように、間隔の目安を先に決めておきます。決めておけば、施術中にさらっと伝えられます。
やめどき
「ここまで来たら回数を減らしていい」という区切りを、先に言える状態にしておきます。
これは私の見解ですが、出口を言える人の勧め方は、押し売りに聞こえにくいと思っています。「ずっと通ってください」と聞こえると身構えます。「この状態になったら間隔をあけて大丈夫です」と先に言われると、相手は終わりの見える話として聞けます。回数券を売るために、卒業のラインを先に出す。順番が逆に見えますが、効くと私は考えています。
押し売りにならない勧め方の順番(そのまま使える言い方つき)
手順は4つです。順番を入れ替えないでください。
手順1:今日の状態を一言で伝える
施術中か、終わってすぐに、今日の状態を短く伝えます。
右肩のほうが張りが残っています。
評価でも売り込みでもなく、見たままの報告です。ここで回数券の話は出しません。
手順2:次に来る間隔の目安を伝える
2〜3週間後にもう一度見られると、戻りにくくなります。
この段階では、まだ回数券の話をしません。間隔の話だけで止めます。相手が「そうなんですね」と受け取った時点で、次の一言が出しやすくなります。
手順3:「続けて通う予定なら」と前置きして出す
前置きが大事です。通う予定のない人に向けた話ではない、と最初に区切ることで、押し付けに聞こえにくくなります。
続けて来られるなら、回数券にしておくと、1回ずつ払うより負担が軽くなります。1回ずつでももちろん大丈夫です。
「1回ずつでも大丈夫」は、断りやすさを用意するためのひと言です。ここを同じ口調で言ってください。回数券のときだけ声が明るく、1回ずつのときだけ小さくなると、相手は選ばされている感じを受けやすくなります。
手順4:値段を言い切ったら黙る
金額まで言ったら、そこで止めます。相手は頭の中で、予定と財布を照らし合わせています。その時間を取らせてあげてください。
よくあるNGは、相手が考えている間に自分から引いてしまう流れです。
- 「無理にとは言わないので……」
- 「今日じゃなくても大丈夫ですので……」
- 「高いですよね、すみません」
気を遣っているつもりでも、「この値段に自信がない」と受け取られやすくなります。黙っているのが気まずいときは、お茶を出す、予定表を開くなど、手を動かして待つと楽です。
言いがちなNGの言い方と、言い換え
| 言いがちなNGの言い方 | 言い換え |
|---|---|
| よかったら回数券もありますけど… | 続けるなら、回数券もあります |
| お得なんです | 1回あたりの負担が軽くなります |
| 今日決めてもらえると助かります | 次の予約日が決まっているなら、そこから使えます |
| 無理にとは言わないので | 1回ずつでももちろん大丈夫です |
| 高いですよね、すみません | (金額を言い切って、黙る) |
言い換えに共通するのは、自分の都合ではなく、相手の通い方を基準に話していることです。「助かります」は売る側の都合、「続けるなら」は相手の予定です。
オプションの勧め方:足し算ではなく「今日の状態に合うか」で出す
回数券と同じ考え方で、オプションも「追加で売るもの」ではなく「今日の状態に合うかどうか」で出します。
オプションを全部並べて見せるNG例
メニュー表を渡して「どれか付けますか」と聞く。これは、相手が値段で選ぶしかなくなる聞き方です。内容の違いは相手には分かりません。分からないとき、人は一番安いものか、何も付けないかを選びがちです。
今日の状態を見てから1つだけ出す
言い方の例です。
今日は首まわりが固いので、ここを10分足すと楽になると思います。付けますか。
10分は例です。実際の時間や内容は、それぞれのお店のメニューに置き換えてください。ポイントは3つあります。
- 理由が「今日の状態」にある
- 出すのは1つだけ
- 最後が「付けますか」と、選ぶのは相手に返っている
断られてもその日の施術は手を抜かない
オプションを断られたとき、無意識に態度が変わることがあります。声のトーンが落ちる、説明が減る、など。相手はそこに気づくことがあります。
勧め方の合格ラインは、「断った人が、次も気持ちよく来られるか」だと考えてください。付けてもらえたかどうかで測ると、次から勧めるのが怖くなります。断られた日も同じ質で終えられれば、その勧め方は合格です。
「考えておきます」と断られたときの返し
断られた瞬間に値引きしない
一番やりたくなるのが、これです。
じゃあ少し安くしますよ。
その場で下げると、「その値段に根拠がなかった」と伝わりやすくなります。次に別の人に説明するときも、自分の中で値段がぐらつきます。値引きは、返しの選択肢から外してください。
返しの言い方3パターン
① 次の予約だけ先に入れる
もちろんです。次の予約だけ先に入れておきますか。
回数券の話は一度おいて、予約の話に戻します。回数券は予約の話の延長だったので、ここに戻れば関係は変わりません。
② 1回ずつで様子を見てもらう
1回ずつで様子を見て、合うと思ったらそのとき切り替えても大丈夫です。
相手に選ぶ余地を残す返しです。切り替えの入口を用意しておくことで、「断った」が「保留」に変わります。
③ 理由を1つだけ聞く
気になっているのは金額ですか、通える日のほうですか。
聞くのは1回、選択肢は2つ。尋問にならないように、答えやすい形にします。金額なら①か②、通える日なら予約の取り方の話に進めます。
次回に話題を戻す一言
次に来たとき、状態を根拠に戻します。
前回お話しした回数券、今日の状態を見ると、切り替えどきかもしれません。
期限で急かすのではなく、状態を根拠に話します。言うのは1回だけにしてください。もう一度断られたら、それ以上は追いません。相手の判断を尊重している姿勢のほうが、長く通ってもらえると私は考えています。
値段を口に出しにくいのは、腕に自信がないからではない
回数券の金額を言う直前、声が小さくなる。早口になる。言い終わってから、自分で「高いですよね」と付け足してしまう。身に覚えがある人もいると思います。
このとき頭の中では、金額を言うことが、自分の値打ちを言うことになっている人がいるようです。金額を言った途端に「そんなに価値があるのか」と判定される気がして、口ごもる。この状態を、ここでは「値段が言えない型」と呼んでおきます。
この型の人が感じていることを、一文にするとこうです。
金額を言う瞬間、自分の値段を言っている気がする。
これは腕の有無とは別の話だと、私は見ています。腕に自信がある人でも、金額の場面だけ声が細くなることはあると思います。
渡したい許可
値段は、自分の価値の点数ではなく、仕事の条件です。
回数券の金額は、「この間隔で、この回数通うときの条件」を読み上げているだけです。天気予報のように、決まっている内容を伝えるだけだと考えてみてください。評価されるのは、読み上げた条件ではなく、施術のほうです。
今日やれる最小の行動
回数券の説明を、金額を含めて、声に出して3回練習します。紙に書いた言い方を、そのまま読むだけで構いません。うまく話す必要はありません。3回読むと、金額のところで声が止まる場所が自分で分かります。そこがいつも詰まる場所なので、その箇所だけもう一度読んでください。
回数券を出す前の確認チェックリスト
持ち帰って、回数券を出す前に1項目ずつ確認してください。
- 通う間隔を、一言で言えるか
- 何回でどこまで変わるかを、説明できるか
- やめどき(回数を減らしていい目安)を言えるか
- 1回ずつの選択肢も、同じ口調で言えるか
- 断られたときの返しを、1つ決めているか
- 有効期限と、途中でやめるときの扱いを、紙に書いてあるか
- 値段を言ったあと、黙っていられるか
全部にチェックが入ってから出す必要はありません。ただ、チェックが入らない項目があるなら、そこが言いにくさの正体だと思います。その項目だけ、先に埋めてみてください。
有効期限や返金の扱いは、先に紙で見せる
有効期限、日付の延ばし方、途中でやめたときの扱い。これらは、買ってもらう前に紙で見せておきます。あとで揉めないためですが、もう一つ効果があると見ています。条件を最初から見せている店は、押し売りに見えにくいのです。隠していることがない、という印象になるからです。
業種ごとの決まりは専門家に確認を
回数券の期限や返金のルールは、業種によって守るべき決まりがある場合があります。自分の仕事に当てはまるかどうかの個別の判断は、専門家に相談してください。紙に書く内容も、その相談を踏まえて決めると安心です。
よくある質問
回数券はいつ勧めるのがいいですか?初回でも大丈夫?
会計のときにいきなり出すより、施術中に通う間隔を伝えて、その延長で出すほうが自然に聞こえます。初回でも「続けて来られるなら」と前置きし、1回ずつでもいいことを同じ口調で伝えれば、押し売りにはなりにくいです。
回数券を断られたら値引きしてもいいですか?
その場で下げると、値段に根拠がなかったと伝わりやすくなります。値引きではなく、次の予約を入れる、1回ずつで様子を見てもらうなど、別の選び方を出してください。
オプションを勧めると嫌がられませんか?
メニューを全部並べるのではなく、今日の状態に合うものを1つだけ、理由を添えて出します。断られても施術の質を変えないことが、次の来店につながります。
「考えておきます」と言われたら、もう一度勧めてもいいですか?
期限で急かすのではなく、次に来たときの状態を根拠に「切り替えどきかもしれません」と一言だけ戻すのは自然です。言うのは1回だけにしてください。
回数券の有効期限や返金はどう決めればいいですか?
先に紙に書いて見せるのが基本です。業種によって守るべき決まりがある場合があるので、個別の判断は専門家に相談してください。
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