対面営業・商談
施術中の会話|話すのが苦手でも、お客様が話しやすくなる聞き方
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
施術中の会話は「話す力」より「聞く順番」で楽になる
施術のためにタオルをお客様の顔に乗せる。そのあと、部屋がしんと静かになる。何か話さなければと思うのに、天気の話の次が出てこない。施術が終わってお客様を見送ったあと、「今日は全然話せなかった」と一人で落ち込む。
この場面に覚えがあって、「話すのが苦手な私は、そもそも接客に向いていない」と感じている人は多いです。先に結論を書きます。施術中の会話に要るのは、話のうまさよりも、何をどの順で聞くかです。順番は、あとから覚えられます。
「口下手だから接客に向いていない」と思ってしまう場面
次のような場面が重なると、人は「自分は向いていない」と結論を出しやすくなります。
- タオルを顔に乗せたあと、沈黙が続く
- 天気やニュースの話をしたら、そこで話題が尽きる
- 施術後に「今日は全然話せなかった」と振り返って落ち込む
どれも、お客様から苦情が出たわけではありません。自分の中で「話せなかった=仕事ができなかった」と点数をつけているケースが少なくない、と私は見ています。
沈黙が怖くて、自分の話で間を埋めてしまう
沈黙を埋めようとして、つい自分の話を出すことがあります。
- 休日に行った店の話
- ほかのお客様から聞いた話
- 使っているオイルや機器のうんちく
話している間は、気まずさが消えます。ただ、お客様は横になって目を閉じたまま、相づちを打つだけになりがちです。こちらは話し続けて疲れ、お客様のことは何も分からないまま、施術が終わります。
この状態を、この記事では「しゃべりすぎ型」と呼びます。沈黙が怖くて自分の説明で埋め、相手の話を取ってしまう状態のことです。聞く順番を習っていないと起きやすい動きだと、私は見ています。
話題を増やすより、何をどの順で聞くかを決める
会話が続かない理由を、話の引き出しが少ないことに求める人は多いです。それで雑誌やニュースを読んで、話題を仕込もうとします。ただ、つまずいているのは、聞く順番を誰にも教わっていないところだと私は見ています。順番が決まっていれば、話題は用意しなくても、お客様の答えの中から出てきます。
だから、話がうまい必要はありません。聞く順番でいいです。明るく話す人に変わる必要もなく、性格はそのままでいいです。相手の話を待てる人は、聞く側に向いていることもあります。
この記事で渡す方法は1つです。施術前・施術中・施術後で、聞くことを分けます。最後の節に、そのまま使える表を置きました。
お客様は施術中に話したいとは限らない|沈黙は失敗ではない
寝たい人・話したい人・どちらでもない人がいる
お客様側から見てみます。ベッドに横になり、目を閉じ、顔にはタオルがかかっている。仕事や家事で疲れたまま来店している人もいます。
この状態で、ずっと話していたい人もいれば、眠りたい人もいます。どちらでもよい人もいます。どれが多いのかを示す数字は、私は持っていません。ただ、見た目では分からないことは確かです。
分からないなら、本人に選んでもらうのが一番早いです。
施術に入る前に「話すか休むか」を選んでもらう
施術に入る前に、次の2つを伝えます。
- 「途中で眠くなったら、そのまま休んでくださいね」
- 「お話ししたいときは、いつでも声をかけてください」
これで、お客様は黙っていてもよくなり、話したくなったら話せます。こちらも、沈黙が出たときに「休んでいるのかもしれない」と考えられます。
NG例は、沈黙のたびに「最近どうですか」と話しかけることです。休みに来たお客様は、そのたびに現実に引き戻されることがあります。私は、沈黙を埋めるための声かけは、お客様のためではなく自分のためになりやすいと見ています。
沈黙のあとに話しかけるなら、施術に関わる一言だけ
沈黙が続いて、どうしても声をかけたくなったら、施術に関わることだけにします。
- 「力加減、このくらいで大丈夫ですか」
- 「寒くないですか」
- 「タオル、ずれていませんか」
これは雑談ではなく確認です。話すのが苦手でも言えますし、お客様も「大丈夫です」の一言で済みます。
沈黙は、自分の接客が足りない証拠ではありません。お客様が休めている時間かもしれません。そう受け取って大丈夫です。
聞く順番|「はい・いいえ」で答えられる質問から、自由に答えられる質問へ
質問は2種類ある
質問は、大きく2種類に分けられます。1つは、相手が「はい」か「いいえ」で答えられる質問、またはこちらが出した選択肢から選んでもらう質問で、クローズドクエスチョンと呼ばれます。もう1つは、相手が自由に答えられる質問で、オープンクエスチョンと呼ばれます。
用語はここで一度出しただけです。以降は「選んで答える質問」「自由に答える質問」と書きます。
横になっているお客様には、答えやすい質問から入る
順番は次の3段です。以下の例文と順番は、私の実務上の見方で組んだものです。
- 選んで答える質問:「今日は肩と腰、どちらが気になりますか」
- 自由に答える質問:「どんなときに一番つらくなりますか」
- もう一段、深める質問:「それはいつ頃からですか」
理由は、お客様の状態にあります。横になって目を閉じているときに、いきなり自由に答える質問をされると、何から話すかを考えるだけで疲れます。選んで答える質問なら、「肩です」の一言で済みます。一言返してもらえれば、そこから次を聞きやすくなります。
なお、選んで答える質問ばかりを続けると、取り調べのように感じさせやすいと私は見ています。これは出典のある話ではなく、私の見方です。2段目の自由に答える質問に、早めに移るのがおすすめです。
次の質問は、お客様が使った言葉から作る
話題を自分で用意しなくていい理由は、次の質問を、お客様の言葉から作れるからです。
- お客様:「最近パソコン作業が多くて」
- こちら:「パソコン作業、1日のうちどのくらいされてるんですか」
お客様が出した言葉を、そのまま使って聞き返します。こうすると、話はお客様の世界の中で進みます。自分の引き出しを探す必要がなく、話が的外れになることも減ります。
聞き返すときは、一度に1つだけにします。2つ、3つと重ねると、お客様は何から答えればいいか迷います。
やりがちなNG3つと言い換え|説明から入る・自分の話で埋める・すぐおすすめに変える
施術の説明から始めてしまう
NG:「今日のコースは〜で、このオイルは〜で」と、最初に説明する。
言い換え:「今日はどこが一番気になりますか」
説明がいけないわけではありません。順番の問題です。先に聞いて、お客様の答えに合わせて、説明を短くします。気になる場所が肩なら、肩に使う部分だけ伝えれば足ります。
沈黙を自分の話で埋める
NG:お客様が「最近、寝つきが悪くて」と言ったあと、「私も最近そうで」と自分の体験を長く話す。
言い換え:「寝つきが悪いんですね。それは、どんなときが多いですか」
自分の体験を一言添えるのは悪くありません。ただ、話の中心をお客様に戻すところまでを、ひとまとまりにします。
聞いた話を、すぐ商品やコースの話に変える
NG:お客様「乾燥が気になって」→ すぐ「このクリームが〜」
言い換え:「乾燥、どのあたりが一番気になりますか」
もう一段聞いてから、おすすめは施術後に回します。施術中は、聞くことに使います。
持ち帰り用の表
| やりがちな一言 | お客様側の受け取り方(私の見方) | 言い換えの一言 |
|---|---|---|
| 「今日のコースはですね…」 | 説明が先で、自分の話をする隙がない | 「今日はどこが一番気になりますか」 |
| 「最近どうですか」(沈黙のたびに) | 休んでいるところを起こされる | 「力加減、このくらいで大丈夫ですか」 |
| 「私も最近〜で」(長く続く) | 自分の話が、相手の話に変わっていく | 「〜なんですね。それはどんなときですか」 |
| 「お仕事は何を?ご家族は?」(続けて) | 取り調べのように感じる | お客様が出した言葉を1つ選んで、そこだけ聞く |
| 「乾燥なら、このクリームが」(すぐ) | 話を聞いてもらえず、売られている感じがする | 「乾燥、どのあたりが一番気になりますか」 |
| 「何かあったら言ってくださいね」(だけ) | 何を言えばいいのか分からない | 「寒くないですか」「眠くなったら休んでくださいね」 |
施術中に聞いた話を、次の来店につなげる
カルテに残すのは施術内容だけでなく、お客様の言葉
施術内容は、記録として当然残します。そこに、お客様が使った言葉も、そのまま足します。
- 「来月、娘さんの結婚式がある」
- 「デスクワークで夕方に肩が張る」
言い換えず、お客様が言ったままの形で書くのがコツです。「肩こり」とまとめてしまうと、次に会ったときに話を広げる手がかりが消えます。
次の来店は、前回聞いた話から始める
次にお客様が来たら、最初の一言は前回の話にします。
- 「結婚式、どうでしたか」
- 「夕方の肩の張り、その後どうですか」
これなら、話題を考えなくても会話が始まります。覚えてもらえていることは、また来る理由になりやすいと私は見ています。
次回の提案は、聞いた話を根拠に1つだけ
提案をするなら、聞いた話を根拠に、1つだけにします。
- 「結婚式の前に、もう一度ここを整えておきますか」
複数のコースを並べると、売り込みに聞こえやすいと私は見ています。お客様の話に沿った1つなら、「売る」というより「覚えていた話をもとに伝える」形になるので、売り込みに抵抗がある人でも言いやすいです。
施術中の会話も、仕事を切らさないための営業の一部です。話がうまくなることが目的ではなく、次の来店につながる話を1つ聞いておくことが目的です。
今日の施術から使える|聞く順番チェックリスト
施術前・施術中・施術後で聞くことを分ける
| タイミング | 聞くこと | 例文 |
|---|---|---|
| 施術前 | 今日気になる場所/話すか休むかの合図 | 「今日は肩と腰、どちらが気になりますか」「眠くなったら休んでくださいね」 |
| 施術中 | 力加減の確認/お客様が出した話題を一段だけ深く | 「力加減、このくらいで大丈夫ですか」「パソコン作業、1日のどのくらいですか」 |
| 施術後 | 体の変化/次回に向けた一言 | 「肩の感じ、いかがですか」「次回は、今日の続きを整えておきましょうか」 |
話すのが苦手な人のための、最初のひと言3つ
迷ったら、次の3つだけ覚えてください。
- 「今日はどこが一番気になりますか」
- 「力加減、このくらいで大丈夫ですか」
- 「眠くなったら休んでくださいね」
この3つがあれば、施術前から施術中までは始められます。
施術後に振り返る3項目
施術が終わったら、次の3項目を○×で付けます。
| 項目 | ○× |
|---|---|
| ①お客様の言葉を1つ、カルテに残したか | |
| ②自分の話より、相手の話のほうが長かったか | |
| ③次回の最初に聞くことが決まったか |
「今日は全然話せなかった」と落ち込むかわりに、この3つを見ます。話した量ではなく、聞いた中身で振り返れます。○が1つでもあれば、前に進んでいます。
今日やることは1つ
次のお客様で、「今日はどこが一番気になりますか」から始めてください。返ってきた答えの言葉を1つ、そのままカルテに書きます。それだけで十分です。
よくある質問
施術中にお客様が黙っているときは、話しかけた方がいいですか?
無理に埋めなくていいです。施術前に「眠くなったら休んでくださいね」と伝えておき、施術中は力加減や寒さの確認だけにします。沈黙は接客の失敗ではありません。
会話が苦手でも、エステやサロンの仕事は続けられますか?
話がうまいかどうかより、何をどの順で聞くかが大事、というのが私の見方です。答えやすい質問から入り、お客様の言葉から次の質問を作れば、話題を用意しなくても会話は進みます。
施術中に話題がないとき、何を話せばいいですか?
話題は用意しなくていいです。「今日はどこが一番気になりますか」のように選んで答えられる質問から入り、返ってきた言葉を使って次を聞きます。
お客様のプライベートな話は、どこまで聞いていいですか?
お客様が自分から出した話の範囲で、一段だけ深く聞きます。家族・仕事・お金のことは、こちらから掘り下げないほうがよい、というのが私の見方です。
施術中に商品やコースをすすめてもいいですか?
施術中は聞くことに使い、提案は施術後に回します。聞いた話を根拠に1つだけ伝えます。複数を並べると売り込みに聞こえやすい、というのが私の見方です。
参照した情報源
- オープンクエスチョン・クローズドクエスチョン(ビジネス用語解説)(NTT東日本 ビジネスのヒント(BizDrive))・確認日 2026-10-12
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