対面営業・商談
整骨院の集客|通っている人からの紹介が出るまでの段取り
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
整骨院の集客で紹介が出ないのは、腕が足りないからではない
新規が減ったとき、院長が自分に言い渡していること
開業して数年、最初は近所の人や知り合いの紹介で予約表が埋まっていました。それが半年、1年と経つうちに、新規の予約がぽつぽつ空くようになる。「近くに新しい院ができたから」「うちの施術が、まだ人に勧めるほどのレベルじゃないから」。そんな理由を自分の中で組み立てて、納得しようとしている院長は多いと思います。忙しく施術をこなしているぶん、原因を自分の腕に置いたほうが分かりやすいからです。
でも、腕が落ちたわけではありません。通っている人が、誰かに勧める場面と言葉を持っていないだけです。満足して通っている患者は、いま院内にたくさんいます。その人たちが、まだ一度も紹介というアクションを起こしていないだけです。
紹介待ち型かもしれません
紹介待ち型——いい仕事をすれば紹介は出ると思っていて、思い出してもらう働きかけをしていない型です。患者が減ったのではなく、思い出してもらえなくなった、というだけかもしれません。腕のせいではないと思います。
「待っていれば、いつか誰かが言ってくれる」という前提のまま数か月が過ぎると、紹介はゼロのまま新規だけが減っていきます。院の中では何も悪いことは起きていないのに、外からは「最近来ている人がいない院」に見えてしまいます。待つことをやめて、渡す側に回るだけで、この見え方は変わります。
チラシ・ポータル・SNSより先に、通っている人への段取りを整える理由
チラシやMEO対策、ポータルサイトへの掲載は「まだ知らない人に来てもらう」手段です。紹介は「すでに信頼している人に、思い出してもらう」動きで、信頼のぶん動かす距離が短くなります。費用もかからず、今日の診療からそのまま始められます。チラシやポータル掲載には印刷費や掲載料がかかりますが、紹介の段取りにお金は要りません。
チラシは印刷して配って、反応を待つまでに時間がかかります。紹介は、いま目の前にいる患者との会話1つで動き出します。順番として、まず院の中にある信頼を使い切ってから、外に向けた手段を検討するほうが無駄がありません。
この「知っている人から先に」という順番は、整骨院に限らず独立して仕事を取るすべての人に共通する型です。仕事の取り方の順番を先に押さえておくと、紹介以外の場面でも同じ考え方が使えます。
通っている人が紹介しない理由は「勧めたくない」ではなく「勧め方が分からない」
患者側から見た紹介が起きない3つの壁

満足している患者でも、次の3つが空いていると紹介は起きません。
- 勧めていいのか分からない: 先生は忙しそうだし、混んだら自分の予約が取れなくなる気がする。だから黙っておく
- 誰に向く院か分からない: 腰の人向け? スポーツをしている人向け? お年寄り向け? 分からないので、誰の顔も浮かばない
- なんて言えばいいか分からない: 「いい先生だよ」だけでは、相手にとって「行く理由」にならない。だから言葉が出てこない
満足度が高くても、この3つが空いたままだと紹介は出ません。逆に言えば、この3つを院側が先に埋めてしまえば、患者は「勧めていいんだ」「この人に向いてるかも」「こう言えばいいんだ」と迷わず動けます。3つの壁は、患者の性格の問題ではなく、院側が渡していない情報の問題です。
NG例: 待合室の「ご紹介キャンペーン」ポスターだけで終わる
「ご紹介キャンペーン実施中」というポスターを待合室に貼っている院は少なくありません。これが埋めるのは1つ目の壁だけです。2つ目・3つ目の壁は、ポスターを読んでも埋まりません。「誰に向いているか」を具体的に想像できる患者は、ポスターの前ではほとんどいないからです。しかも「キャンペーン」という言葉が付くと、紹介が営業っぽく見えてしまいます。患者は勧めたい相手の顔が具体的に浮かんだときにしか動きません。貼ってから半年経っても紹介が1件も出ない院は、たいていここで止まっています。
院側が「誰に・なんと言うか」を渡す
2つ目と3つ目の壁を埋めるのは院側の仕事です。「腰で困っている人がいたら、一度ちゃんと話を聞いてくれる院だと伝えてください」のように、対象と院の特徴を一文で渡します。スポーツをしている人が多い院なら「部活や試合でケガをした人がいたら」、高齢の患者が多い院なら「歩くのがつらそうな人がいたら」と、実際の患者層に合わせて言葉を変えます。「必ず良くなります」「治ります」のような効果の約束は使わず、「どんな人向けか」「どう診るか」で伝えます。スポーツ向けの院の言葉を、保険中心の高齢患者が多い院にそのまま当てはめると、紹介された相手が「思っていた院と違う」と感じて来院しないまま終わることもあります。院ごとに、実際の患者層に合わせた一文を用意しておきます。
紹介が出るまでの段取り|来院の流れに沿った3つの場面
初回:「どうしてうちに来てくれたんですか」を聞いて記録する

来院の経路(看板・検索・知人の名前)をカルテか台帳に一言書いておきます。紹介で来た人には、紹介元の名前を必ず聞きます。
「今日はどこで、うちのことを知ってくださったんですか?」
問診の最初か、会計のときに聞くと、他の会話に紛れず聞き忘れがありません。
「たまたま前を通って」という答えでも構いません。聞くこと自体を毎回の習慣にするのが目的です。ここを聞かずに施術に入ると、誰が紹介してくれているのか一生分からないままになります。半年後に「そういえば紹介、来てましたっけ?」と聞かれても答えられません。
通院中: 本人が変化を口にした回に、一文だけ足す
「朝起きるのが楽になった」と患者が自分から口にした回が、頼むタイミングです。初回や痛みが強い時期には言いません。まだ効果を確信していない段階で頼むと、押し売りに聞こえてしまいます。
「同じことで困っている人、周りにいませんか」
変化を口にした回を合図にするのは、患者が院の効果を一番信じている瞬間だからです。毎回言う必要もありません。1人につき、多くて1〜2回で十分です。
卒業・通院間隔が空くとき:「困ったらまた」と対象を口頭で言い、紙を1枚渡す
通わなくなった人は、時間が経つと院のことを忘れます。最後の来院で次の接点を作っておきます。渡す紙は「紹介カード」ではなく、院名・連絡先・「どんな人向けか」の一文だけを載せた名刺サイズの紙にします。特典の文言や割引の案内は書きません。特典を先に見せると、紹介より特典が目的の紙に見えてしまいます。
施術中にそのまま言える紹介の頼み方と、言わないほうがいい言い方
場面別の例文3つ

- 変化を口にした回: 「同じように腰で困ってる人、周りにいますか。いたら、一度話を聞く院だって伝えてください」
- 卒業の回: 「困ったらまた来てください。それと、ご家族で同じことがあったら言ってくださいね」
- 久しぶりの来院時: 「戻ってきてくれてありがとうございます。前に話した方は、その後どうなりました?」
どれも「紹介してください」という頼む形ではなく、「困っている人がいたら」という形にしてあります。施術の手を止めず、雑談の延長で言える長さにしてあるのも共通点です。
NG例:「紹介お願いします」「キャンペーン中なので」「うちなら治ります」
「紹介お願いします」は患者に宿題を出す形になり、頼まれた側が困ります。誰に言えばいいか分からないまま、その場だけ「はい」と答えて終わります。「キャンペーン中なので」は営業に聞こえて、それまで積み上げた信頼を削ります。「うちなら治ります」は効果の約束になり、言った瞬間に院の言葉全体が軽くなります。3つとも、言っている側の都合が先に出ている言い方です。同じ内容でも、相手を主語にした言い方に変えるだけで受け取られ方が変わります。
紹介が来た日にやること: 紹介元へその日のうちにひと言
「◯◯さんが来てくれました。ありがとうございます」を、紹介元の次回来院時か連絡できる手段で伝えます。個人の来院情報を伝える範囲は、本人の了承を得たうえで行います。紹介した人が知りたいのは、自分の紹介が役に立ったかどうかです。ここで何も言わないと、その人からの2人目は出ません。施術して終わりにしない、最後のひと手です。
紹介のお礼・特典はどこまで出していいか
金券や割引を渡すなら上限がある

紹介してくれた患者にお礼として金券や割引券を渡す場合、景品規制の対象になりえます。取引価額が1,000円未満の場合の景品類の最高額は200円、取引価額が1,000円以上の場合の景品類の最高額は取引価額の10分の2です。保険施術の窓口負担に割引を適用できるか、紹介への特典提供が受領委任の取扱規程に抵触しないかは、所轄の厚生局や専門家に事前に確認してください。特典は自費施術に限るのが無難です。
金券より効くのは「役に立った」と伝えること
紹介は金券目当てで出るものではなく、勧めた相手に感謝されたときに次が出るものだと思います。紹介元に「あの方、通ってくれていますよ」と近況を(本人の了承の範囲で)一言伝えるほうが、割引券より続きます。特典なしで回る段取りを先に整え、特典は後から足す順番がいいはずです。特典を先に用意しても、そもそも紹介の一文を渡していなければ使われません。特典は段取りの後押しであって、段取りの代わりにはなりません。
特典を出すなら、誰に何をいつ渡すかを紙に書いて決めておく
紹介した側・された側のどちらに渡すか、条件(初回来院後か、何回目か)、期限。この3つを1枚の紙に決めておきます。口頭で場当たり的に渡すと、受付のスタッフによって案内が変わり、患者どうしで話が食い違って揉めます。
| 決めごと | 例 |
|---|---|
| 誰に渡すか | 紹介した患者 |
| 何を渡すか | 自費施術1回分の割引券 |
| いつ渡すか | 紹介された人の初回来院後 |
| 期限 | 発行から3か月 |
保険施術(受領委任)の一部負担金の取り扱いや、紹介への特典提供が受領委任の規定に抵触しないかは院ごとに判断が分かれます。割引券を出すなら自費メニューに限り、所轄の厚生局や専門家に事前に確認してください。
紹介が来ない整骨院がやりがちな失敗3つ
施術して、次の予約を取らずに帰している
「また痛くなったら来てください」で終わると、患者は院のことを忘れていきます。2〜3か月後、痛みが再発したときに思い出す院は、最後に次の約束をくれた院です。次の来院日か、次に連絡する日を決めてから帰すようにします。紹介は接点が続いている人からしか出ません。
紹介カードを全員に配って、誰にも頼んでいない
配ることは頼むことになっていません。財布の中でカードが色褪せていく、というのはよくある結末です。カードは「誰に渡すか」を院と一緒に考えた人にだけ渡します。10枚配るより、1人に「◯◯さんのお母さんは、その後どうですか」と具体的に言うほうが動きます。
紹介が来ても、紹介元に何も言わない
よくある失敗です。紹介した人は「来たのかな」「役に立ったのかな」を気にしています。何も返ってこないと「言わないほうがよかったか」と思い、次は出なくなります。半年後、別の用件で来院したときに「そういえばあの人来ました?」と聞かれて初めて気づく院もあります。そのときには、紹介した本人もすでに気持ちが冷めています。台帳がないと紹介元自体を忘れるので、記録とお礼はセットで行います。
3つとも、悪気があってやっているわけではありません。忙しさの中で、つい後回しになるだけです。
共通しているのは、どれも「相手が何を気にしているか」を想像せずに動いていることです。ここまでの段取りを踏めば、この3つは自然に避けられます。
今週の診療から始める段取り表とチェックリスト
段取り表(場面×言うこと×渡すもの×記録すること)
| 場面 | 言う一文 | 渡すもの | 台帳に書くこと |
|---|---|---|---|
| 初回 | 今日はどこでうちのことを知ってくださったんですか | ー | 来院経路・紹介元の名前 |
| 変化を口にした回 | 同じことで困っている人、周りにいませんか | ー | 誰に、何を伝えたか |
| 卒業の回 | 困ったらまた来てください。ご家族で同じことがあったら言ってください | 院の特徴が書かれた名刺サイズの紙 | 卒業日・渡した紙の内容 |
| 紹介が来た日 | ◯◯さんが来てくれました、ありがとうございます | ー | 紹介元・紹介された人・お礼をした日 |
そのまま受付の裏に貼っておける形にしてあります。スタッフが複数いる院では、この表を共有しておくと、誰が対応しても同じ言葉が出せます。
今週やる3つ
- 今日の診療で1人に「どうしてうちに?」を聞いて書く
- 紹介の一文を1つ決めて、自分用に紙に書いて受付に貼る
- 紹介台帳をノート1冊で始める(誰が・誰を・いつ・お礼したか)
3つとも、今日の診療時間の中で始められることばかりです。台帳は表計算ソフトでなくノート1冊で構いません。書く手間が少ないほど、続きます。全部やらなくてもいいはずです。①だけでも、来月の記録は今日と変わります。
やらないと決めること
チラシとポータルサイトの検討は、この段取りが1か月回るまで止めます。手段を足すほど「思い出してもらう」動きが後ろに回ってしまいます。段取りが回り始めてから、必要に応じて他の手段を検討すればいいはずです。性格を変える必要はありません。順番を変えるだけです。
よくある質問
整骨院で患者さんに紹介をお願いするタイミングはいつがいいですか?
本人が「楽になった」と変化を口にした回と、通院を卒業する回。初回や痛みが強い時期は言わない。「紹介してください」ではなく「同じことで困っている人がいたら」の形で一文だけ足す
紹介してくれた患者さんに謝礼や割引を渡しても問題ないですか?
金券や割引は景品規制の対象になりうる。取引価額1,000円未満なら上限200円、1,000円以上なら取引価額の10分の2。保険施術の窓口負担への適用や紹介特典が受領委任の規定に抵触しないかは院によって判断が分かれるため、特典は自費施術に限定し、所轄の厚生局や専門家に事前相談を。お金より「役に立った」と伝えるほうが次の紹介につながる
紹介カードを配っているのに紹介が来ないのはなぜですか?
配ることが頼むことになっていないから。患者は「誰に」「なんと言って」渡せばいいかが分からないと動かない。院側が対象と院の特徴を一文で渡し、思い当たる相手を一緒に考えた人にだけ渡す
整骨院の集客はチラシやポータルサイトと紹介、どちらを先にやるべきですか?
通っている人への紹介の段取りが先。費用がかからず今日の診療から始められ、すでに信頼している人に思い出してもらう動きだから。段取りが1か月回ってから新規向けの手段を検討する
紹介をお願いすると図々しいと思われませんか?
「紹介お願いします」と宿題を出す形だと相手は困る。「腰で困っている人がいたら、一度話を聞く院だと伝えてください」のように、相手の周りの人を気にかける形にすると、頼まれた側に負担がかからない
参照した情報源
- 景品規制の概要(消費者庁)・確認日 2026-09-15
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