対面営業・商談
音楽教室の集客|発表会と体験レッスンを、次の生徒につなげる段取り
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
音楽教室の生徒が増えないのは、教え方や腕のせいではない
発表会が終わった翌週、体験レッスンに来た親子が「検討します」と言って帰った日。そんな夜に、生徒が増えない理由を自分の中で結論づけている先生は少なくありません。帰り際の空気を思い出すと、モヤモヤした気持ちが残ることもあると思います。
「教え方が地味だから」「駅前の大手教室に負けるから」。そう言い渡してしまう気持ちは分かります。ただこれは事実というより、自分に対する判決に近いものです。
生徒が増えないのは、腕のせいでも立地のせいでもありません。すでに接点があった人、たとえば発表会に来た家族や体験レッスンに来た人、辞めていった生徒の親に、次のひと言を出す段取りを持っていないだけです。
音楽教室の集客は、知らない人を新しく集める割合より、一度会った人を次につなげる割合のほうが大きいと考えられます。発表会と体験レッスンは、その中でも最大の場面です。ここを「やって終わり」にしていると、毎回ゼロから探すことになります。
紹介待ち型かもしれません。いいレッスンをすれば紹介は自然に出ると思っていて、思い出してもらうための働きかけをしていない型です。「口コミで広がるはずなのに広がらないのは、自分の教え方が地味で人を惹きつけないからだ」と考えてしまう人もいますが、そうとは限りません。紹介が出ないのは、家族が「誰かに勧めていい」と知らないだけかもしれません。
もしこの判決が正しいなら、教え方を変えない限り生徒は増えないことになります。ただ、変えるべきは教え方ではなく、終わったあとに出す一言の順番とタイミングだと考えられます。この記事で渡す方法は1つだけです。発表会と体験レッスンのそれぞれに、終わったあと3日以内に出すひと言を決めておくこと。一度会った人を次につなげる考え方の基本は、フリーランスの営業のやり方でも触れています。以降の見出しは、すべてこの1点を具体的にしていきます。
体験レッスンで「検討します」と帰られる理由
30分の体験レッスンを、いつも通りの1回目のレッスンとして全部やり切り、最後に月謝表を渡して「ご検討ください」で終える。このやり方だと、相手が家に持ち帰るのは月謝の数字だけになります。
体験に来た時点で、習わせたい気持ちはすでにあります。決まらないのは、腕や相性ではなく「この先生に決めていい理由」を親が家で説明できないからです。夫婦のあいだで、あるいは本人と親のあいだで、話す材料がないだけです。
たとえば「先生の教え方はどうだった?」と聞かれても「優しかったよ」としか言えなければ、話はそこで止まります。「3か月でここまで弾けるようになる」と聞いていれば、家庭でその話を続けられます。
体験の中で言うべきことは3つあります。
- 今日の30分で何ができるようになったかを、その場で言葉にします。「最初は弾けなかった右手の4小節が、最後は通りました」というように、具体的な変化を口に出します。
- 「3か月続けたら、ここまでできるようになります」という見通しを一文で伝えます。
- 月謝表は、この見通しに対する条件として渡します。数字だけを先に見せません。
体験中に自分の経歴や指導実績を長く話してしまう先生もいますが、保護者が知りたいのは「うちの子がどう変わるか」です。実績の話は、聞かれたときに一言で答える程度で十分です。話す時間が長いほど、子どもの変化を見せる時間が削られます。
そして帰り際に、次の日付を仮で置きます。「来週の火曜か木曜、どちらなら来られそうですか」。これは相手に決めさせる言葉ではなく、席を仮で押さえておく言い方です。
ここを「またご連絡ください」で終えてしまうと、返事を待つだけの状態で止まります。返事が来ないつらさは、金額を見て黙られたことより、決める場面を用意しなかったことのほうが大きいかもしれません。
同じ30分でも、できたことを言葉にする先生と、月謝表だけ渡す先生とでは、相手が持ち帰るものがまったく違います。前者は「続けたらこうなる」という絵を持ち帰り、後者は数字だけを持ち帰ります。
体験のあとに出す「3日以内のひと言」の文面
体験の翌日から3日以内に、短い連絡を送ります。LINEでもメールでも構いません。構成は3行だけです。
- 昨日できたことを、具体で1つ
- 次に来たときにやることを1つ
- 仮で置いた日付の確認
売り込みの言葉は入れません。
文例です。
「昨日はありがとうございました。◯◯さんが最後に右手で4小節通せたのがとても良かったです。次に来ていただくときは左手を1音ずつ足していく予定です。来週火曜の16時、席を空けておきますね。ご都合が変わったら教えてください」
避けたい言い方もあります。「ご検討いただけましたでしょうか」「お早めのお申し込みをおすすめします」。返事を催促する文面は、相手を「まだ返事をしていない側」に立たせてしまうので、かえって出しづらくなります。
送るタイミングも大事です。数日たってから送るより、思い立ったその日のうちに送るほうが伝わります。時間が空くほど、体験当日の空気が文面から消えていきます。
1週間たっても返事が来なかったときは、2通目を送ります。ここでは「席を空けておく期限」だけを事実として伝えます。
「来月からは火曜の枠が埋まりそうなので、もし迷われていたら今週中に一度お知らせいただけると助かります」
これで終えてかまいません。3通目は送らないでおきます。送るほど熱心に見えると思いがちですが、実際は逆で、返事のない相手には静かに引くほうが次につながりやすいです。
発表会は「生徒のお披露目」ではなく「次の生徒に会える日」
発表会に来るのは、いまの生徒の家族、祖父母、友だちです。全員が「音楽教室に通っている子の身近な人」で、しかも今日、生の演奏を実際に見ています。教室の外で、これ以上の見込みの人が集まる場面はそう多くありません。
準備と当日の進行だけで手一杯になり、来場者が帰ったあと何も残らない、というのはよくあることです。プログラムに教室名と電話番号だけを載せ、体験の案内は受付に置いた紙1枚だけ、というやり方です。こちらから声をかけなければ、せっかく足を運んでくれた家族との接点は、その日で終わってしまいます。
当日にやることは3つです。
- プログラムの裏に、「体験レッスンの申し込み方法」ではなく「発表会をご覧いただいた方限定の、きょうだい・お友だち体験の候補日(2日程)」を載せます。
- 終演後の挨拶で、「きょうだいやお友だちで習ってみたい方がいたら、受付で声をかけてください」と一言だけ添えます。
- 受付に、名前と連絡先を残せる用紙を置きます。申込用紙ではなく、感想カード兼用にします。
感想カードには、「お子さんやお知り合いで、音楽を習ってみたい方がいれば教えてください(任意)」の欄を1つ足すだけで十分です。書いた人だけに、後日1通ずつ連絡します。全員に一斉案内を送るより、この欄に書いた人に1通ずつ書くほうが反応があると感じます。
連絡先を書いてもらったあとも、いきなり体験の案内から始めないほうがいいです。まずは「発表会にご来場ありがとうございました」という一言から始めます。ここで営業の話を急ぐと、警戒されてしまいます。
ここでのポイントは、発表会を「営業の場」に変えないことです。体験の申し込みを前面に出すのではなく、あくまで感想を聞くついでに1行足す。この順番を逆にすると、保護者は身構えてしまいます。
発表会のあと、いまの生徒の家族に頼むこと
紹介は、いいレッスンをしていれば自然に出るものではありません。出ないのは、家族が「誰かに勧めていい」と知らないからです。頼まれてもいないことを、人はなかなか自分からやりません。
頼み方には手順があります。発表会のあと1週間以内に、生徒ごとに1通ずつ書きます。
- 本番でのその子の良かった場面を1つ、具体的に書きます
- 次の目標を一文で書きます
- 最後に「きょうだいやお友だちで、音楽に興味のある方がいたら体験の枠を用意しますので教えてください」と1行添えます
①②があってはじめて、③が自然に読めます。いきなり③だけを送ると、案内ではなく営業文になってしまいます。
文例です。
「◯◯くん、発表会での演奏、堂々としていて素晴らしかったです。次はもう少し長い曲に挑戦する予定です。もしきょうだいやお友だちで音楽に興味のある方がいたら、体験の枠をご用意しますのでいつでも教えてください」
生徒の人数が多い教室では大変に感じるかもしれませんが、1人あたり数行で十分です。①②③の型に当てはめれば、10人分書いても長い時間はかかりません。
避けたいのは、全員に同じ文面で「ご紹介キャンペーン実施中」と送ることです。値引きや特典を先に出すと、家族は「友だちに割引を勧める人」になったような気がして、動きづらくなります。頼むのは「体験の枠を用意しておく」という段取りだけで十分です。
紹介を頼むと家族に借りができる気がして言えない、という場合もあると思います。そのときは「枠を用意しておく」という言い方にすると、頼み事ではなく案内になり、頼む側の負担も減ります。
頻度の目安は、発表会のあとの1通で十分です。年に1〜2回、発表会やクリスマス会など、本番のあとにだけ出します。それ以外の時期に紹介の話は出さないでおきます。毎月のように紹介をお願いすると、家族にとっては負担になり、かえって遠ざかられます。
持ち帰り:発表会と体験レッスンの「あと3日」段取り表
場面ごとに、やること・言う一文・やらないことをまとめました。この表を持ち帰れば、次の体験と発表会からそのまま使えます。準備するのは、文面のひな形と、感想カードの1行だけです。
| 場面 | やること | 言う一文 | やらないこと |
|---|---|---|---|
| 体験レッスン当日 | できたことを言葉にする・次の日付を仮で置く | 来週の火曜か木曜、どちらなら来られそうですか | 月謝表だけ渡して終える |
| 体験の翌日〜3日 | 3行の連絡を送る | ◯◯ができたのが良かったです。次は△△をやります。火曜16時、席を空けておきますね | 「ご検討いただけましたか」と催促する |
| 体験の1週間後 | 席を空けておく期限だけ伝える | 今週中に一度お知らせいただけると助かります | 3通目を送る |
| 発表会当日 | プログラム裏に体験の候補日・終演の挨拶で一言・感想カードに任意欄 | きょうだいやお友だちで習ってみたい方がいたら、受付で声をかけてください | 受付に紙を置くだけで終える |
| 発表会後1週間 | 生徒ごとに1通(良かった場面・次の目標・枠の案内) | きょうだいやお友だちで、興味のある方がいたら体験の枠を用意します | 全員同文の紹介キャンペーンを送る |
表にある文面はそのまま使えるように書いています。名前と曜日だけ差し替えれば、今日からでも送れます。
チェック項目は3つです。
- 次の体験レッスンの「翌日に送る文面」はもう書いてありますか
- 発表会のプログラムに、体験の候補日は載っていますか
- 発表会後に生徒ごとに書く1通のひな形は、手元にありますか
3つとも「はい」と言えれば、次の発表会や体験からすぐに使えます。書けていないものがあれば、まずは翌日の3行から作ってみてください。
辞めた生徒と、体験に来て決めなかった人を「終わり」にしない
辞めた生徒や、体験に来て決めなかった人を「縁がなかった」で片づけてしまうと、教室の接点は毎年減っていきます。ただこの2つの相手は、すでに教室の場所も先生の顔も知っている人たちです。
やることは1つです。発表会の案内を、辞めた生徒の家族と、過去1年に体験に来て決めなかった人にも送ります。「見に来てください」だけで十分です。再入会や申し込みの話は書きません。
文例です。
「◯月◯日に発表会があります。以前来ていただいた◯◯さんにも、もしよければ聴きに来ていただけたらうれしいです。入場は自由です」
避けたいのは「再入会キャンペーン」「今なら入会金無料」といった言い方です。辞めた側が見ているのは「戻る理由」ではなく「戻っても気まずくないか」です。案内だけにすると、その心配が薄れます。
頻度は年1回、発表会の前だけにします。それ以上は送らないでおきます。名簿は年々増えていくので、発表会の前に「送る相手リスト」を見直すところから始めると続けやすいです。
発表会も体験レッスンも、すでに教室と縁があった人に向けた場です。発表会の翌週に「検討します」と言われた夜も、じつはやることは同じです。連絡先を知っている相手に、次のひと言を出す段取りを持っているかどうかだけです。
よくある質問
音楽教室の体験レッスンで、入会につながる割合を上げるにはどうすればいいですか?
体験の中身よりも「そのあと」で決まります。当日にできたことをその場で言葉にして、次の日付を仮で置きます。翌日から3日以内に、できたこと・次にやること・日付の確認という3行を送ります。催促する文面は入れません。
体験レッスンのあと、返事が来ない人に何回まで連絡していいですか?
2回までにします。翌日から3日以内に1通目、1週間後に「席を空けておく期限」だけを伝える2通目を送ります。3通目は送らず、次の発表会の案内でもう一度接点を作ります。
発表会を集客に使うのは、生徒や保護者に嫌がられませんか?
「体験申し込みはこちら」を前面に出すと嫌がられやすくなります。プログラムの裏に、きょうだいやお友だち向けの体験候補日を載せ、終演の挨拶で一言添え、感想カードに任意の欄を1つ足す程度にとどめます。発表会そのものは、生徒のための場のままにします。
生徒の保護者に紹介をお願いするのは気が引けます。どう頼めばいいですか?
「紹介してください」ではなく、「きょうだいやお友だちで興味のある方がいたら、体験の枠を用意しておきます」という案内の形にします。発表会のあとに送る、その子の良かった場面と次の目標を書いた1通の最後に、1行だけ添えます。特典や割引は先に出しません。
辞めた生徒に連絡してもいいですか?
年1回、発表会の案内だけを送ります。「聴きに来てください。入場は自由です」とだけ伝え、再入会の話は書きません。辞めた側は戻る理由よりも「気まずくないか」を見ていることが多いので、案内だけにすると来やすくなります。
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