対面営業・商談
工事前の近所への挨拶|回る範囲、持っていく品、挨拶文の例文
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
工事前の近所への挨拶は「お詫び」より「誰が来るかを知らせる」ためのもの
先に結論を表で出します。検索してここだけ読んだ人も、これで動けます。
| 項目 | 一般的な目安 |
|---|---|
| 回る範囲 | 戸建ては両隣・向かい・裏。マンションは上下左右と管理会社 |
| 時期 | 着工の1週間前〜数日前 |
| 持っていく品 | タオル・洗剤・ごみ袋・日持ちする菓子など、気をつかわせない消耗品 |
| 伝えること | 工事期間・作業時間・工事内容・担当者名と連絡先 |
個人で独立して現場や仕事を取っている方は、こちらも:独立後の営業の進め方
どれも決まりではなく、実務でよく選ばれている目安です。地域や現場の条件で変わります。
挨拶は頭を下げに行く場面だと思われがちです。私は、この現場には責任者がいて、困ったらその人に言えばいいと近所に知ってもらう場面だと見ています。そう考えると、持っていくものも、話す順番も決まってきます。
この記事では、回る範囲、時期、品物、そのまま使える例文、工事中と終わったあとのひと言まで、順に書きます。
近所の人が知りたいのは、いつから・何時まで・困ったら誰に言えばいいか
挨拶を受ける側から考えてみます。ある日、隣の家の前にトラックが停まり、知らない人が何人も出入りしはじめる。近所の人が不安になるのは、騒音そのものより、「いつまで続くのか」「困ったとき誰に言えばいいのか」が分からないことだと受け止められることが多いようです(一般的な受け止め方で、人によって違います)。
だから挨拶で伝えることは、お詫びの言葉よりも次の3つです。
- いつからいつまで、何時から何時まで作業するのか
- 何の工事をするのか
- 困ったとき、誰にどの番号で連絡すればいいのか
挨拶を形だけで済ませると、苦情は施主に行きやすい
NG例を場面で書きます。菓子を玄関に置いて「ご迷惑をおかけします」とだけ言って帰る。担当者の名前も、連絡先も、期間も伝わっていません。
工事が始まって3日目、朝の早い時間に大きな音が出ます。近所の人は誰に言えばいいか分からないので、顔の分かる施主の家のインターホンを押します。施主は業者から何も聞いていないので、答えられません。苦情そのものより、「あの工事、ちゃんと管理されているのか」という空気が施主と近所の関係を傷めます。業者にとっても、施主に気まずい思いをさせた現場として残ります。
回る範囲と順番の目安
戸建ての場合:両隣・向かい・裏の家
昔から「向こう三軒両隣」と言われます。一般的な目安は、向かいの3軒と両隣に、裏の家を加えた範囲です。
これは決まりではありません。次の家は、範囲の外でも加えたほうが安全です。
- トラックの出入りや足場で、家の前の道をふさぐことになる家
- 粉じんや音が届きやすい家(解体や外壁の洗浄、切断作業のとき)
- 工事車両を停める場所の目の前にある家
マンション・集合住宅の場合:上下左右と管理会社
工事する部屋の上下左右に加えて、斜めの部屋まで含めることもあります。音は思わぬ方向に響くので、迷ったら広めに回ります。
ここで先にやることがあります。管理規約で、工事の届け出や掲示が必要な場合があります。住民に挨拶して回る前に、管理会社か管理組合へ確認します。順番を逆にすると、住民から「管理会社から聞いていない」と言われ、挨拶の意味が薄れてしまいます。
順番と留守の家
工事の影響が大きい家から回ります。音が届く家、車の出入りで迷惑をかける家が先です。あとから「あの家には先に行ったのに」と思われないためです。
留守の家は、時間を変えてもう一度訪ねます。それでも会えなければ、挨拶文と品物をポストへ入れます。品物を玄関先に置きっぱなしにするのはNGです。盗難や、置き配と間違われる恐れがあります。ポストに入らない大きさなら、品物は持ち帰り、挨拶文だけを入れます。
いつ、誰と回るか
時期は着工の1週間前〜数日前が目安
早すぎると忘れられます。前日だと「急に言われても」という受け止めになりやすいです。着工の1週間前から数日前が、実務でよく言われる目安です。
初日に解体や足場組みなど音の大きい作業が来るなら、早めに回ります。近所の人が予定を調整する時間を残すためです。
訪ねる時間帯
平日の日中を基本にします。食事どきと、朝の出勤前は避けます。
NG例は、夕方の忙しい時間に訪ねて、工事の説明を長々と続けてしまうことです。玄関先で1〜2分で終わらせます。詳しい内容は挨拶文に書いて渡せば、口頭で全部話す必要はありません。
施主と一緒に回るか、業者だけで回るか
施主と業者が一緒に回ると、「誰の家の工事で、誰が責任者か」が近所の人に一度に伝わります。可能なら一緒に回るのが、いちばん伝わりやすい形です。
施主が忙しいときは、業者が回ります。その場合は事前に、近所の人に施主の名前を出してよいか、施主に確認しておきます。名前を勝手に出されて困る施主もいるからです。
持っていく品と、のしの書き方
相手が気をつかわない消耗品を選ぶ
タオル、洗剤、ごみ袋、日持ちする菓子などがよく選ばれます。使い切れる、置き場所に困らない、好みが分かれにくいものです。
高すぎる品は、相手がお返しを気にします。金額には決まった相場がありません。「受け取った側が気をつかわない程度」を目安にします。
のしは「御挨拶」+会社名か施主名
表書きは「御挨拶」とし、下に名前を入れるのが一般的です。
- 業者が回る場合:会社名(例:△△工務店)
- 施主と回る場合:施主の姓にするか、会社名も添えるかを施主と相談して決める(決まった形はありません)
業者名が入っていると、あとで連絡先が分かる品になります。
NG:自社チラシや宣伝が強い品を一緒に渡す
工事の挨拶に営業色が出ると、かえって印象を下げます。着工前の挨拶で渡すのは、品物と、連絡先の入った挨拶文まで。名刺は、この時点では渡しません。名刺を置くのは、工事完了の挨拶のときだけです(詳しくは後ろの節で書きます)。
そのまま使える挨拶の例文(玄関先・ポスト用)
玄関先で言う30秒の例文
名乗る、期間と時間、内容、連絡先の順に話します。
「失礼します。◯◯様のお宅で、◯月◯日から◯月◯日まで外壁の工事をします、△△工務店の□□と申します。 作業は朝8時半から夕方5時までです。音や車の出入りで、ご迷惑をおかけします。 何かあれば、こちらの挨拶文に書いてある番号に、私あてにお電話ください。」
「私あてに」と言うのがポイントです。誰に言えばいいかが、その場で決まります。
ポスト投函用の挨拶文テンプレート
空欄を埋めて印刷し、品物と一緒に渡すか、ポストに入れます。
工事のお知らせ
近隣の皆さまへ
◯◯様邸にて、下記の工事を行います。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
- 工事場所:________
- 工事期間:_月_日 〜 _月_日
- 作業時間:_時_分 〜 _時_分
- 休工日:________
- 工事内容:________
- 車両の駐車場所:________
- 担当者:_____(携帯 ___-____-____)
△△工務店
解体・はつりなど音の大きい工事で足す一文
日付を絞って伝えます。
「特に◯月◯日から◯月◯日の間は、大きな音が出ます。」
NG例は、「多少うるさくなるかもしれません」とぼかす言い方です。聞く側は「多少」を小さく受け取ります。実際に大きな音が出た当日に、「聞いていた話と違う」という苦情になりやすいです。日付と、音が出るという事実をはっきり書くほうが、あとで揉めません。
挨拶は工事前だけで終わらせない(工事中と終わったあとのひと言)
音の大きい日の前日に、もうひと言
最初の挨拶で伝えた日程が変わったら、連絡します。また、音の大きい作業の前日には、もうひと言伝えます。
「明日、予定どおり解体の作業が入ります。朝から少し大きな音が出ます。」
近所の人から見ると、「ちゃんと見てくれている現場」に映ります。
終わったら「無事終わりました」を伝えに回る
工事後の挨拶まで回る業者は多くない、と私は見ています。そのぶん、印象に残りやすいと考えています(私の見方で、数字の裏づけはありません)。
「◯◯様のお宅の工事が、おかげさまで無事終わりました。長い間、音や車でご迷惑をおかけしました。」
玄関先で、1分かからず終わります。
名前と連絡先が残れば、それで十分
名刺を置くのは営業くさい、と引っかかる人は多いと思います。その引っかかりの奥には、いい仕事をすれば紹介は出ると思って、思い出してもらう働きかけをしない、という動き方があることが多いようです。工事が終わると、片づけて帰ります。近所の人の手元には何も残りません。この記事では、この動き方を「紹介待ち型」と呼びます(公式な呼称ではなく、この記事での呼び名です)。
紹介が減っていると感じる場合、腕ではなく、現場が終わった時点で思い出す入口が残っていないことが一因かもしれません。挨拶の場面で何を残せばいいかを、誰からも習っていないだけだと私は見ています。
そこで、動きは小さく一つだけにします。挨拶のときは名刺を渡さず、工事完了の挨拶のときだけ、名刺を一枚置いて、「家のことで何かあれば」と言い添えます。売り込みではなく、連絡先を残すだけです。それで十分で、遠慮はいりません。
私の仮説ですが、近所の人はのちに、自分の家の修理や相談先を探す場面があるかもしれません。そのとき、名前と連絡先が手元にあれば、思い出してもらう道が残ります。現場のあとに次へつなぐ動き方は、独立後の営業の進め方でも整理しています。
着工前から完了後までの挨拶チェックリスト
印刷して、現場に持っていける形にしました。
着工前
| やること | 確認 |
|---|---|
| 回る家のリストを作る | □ |
| 管理会社・管理組合へ確認する(集合住宅) | □ |
| 品物とのしを用意する | □ |
| 挨拶文を印刷する(連絡先・担当者名入り) | □ |
| 施主と回るか、業者だけで回るかを決める | □ |
| 着工の1週間前〜数日前に訪問する(名刺は渡さない) | □ |
工事中
| やること | 確認 |
|---|---|
| 日程が変わったら連絡する | □ |
| 音の大きい日の前日に、ひと言伝える | □ |
| 車の停め方・ごみ・たばこのNG行動を職人全員に共有する | □ |
完了後
| やること | 確認 |
|---|---|
| 完了の挨拶回りをする | □ |
| 名刺を一枚置く(売り込みはせず、連絡先を残すだけ) | □ |
| 施主へ「近所に挨拶を済ませた」と報告する | □ |
挨拶は、工事前の1回で終わらせず、工事中と終わったあとまでを一続きにします。そうすると、苦情が減るだけでなく、近所の人の手元に名前と連絡先が残ります。まずは、次の現場の挨拶文を、担当者名と携帯番号入りで1枚つくるところから始めてみてください。
よくある質問
工事前に近所へ挨拶しないとどうなりますか?
知らない業者の出入りや騒音について、苦情が施主に直接行きやすくなります。担当者の名前と連絡先を伝えておけば、困ったときの連絡先が業者になります。集合住宅では管理規約で届け出や掲示が決まっていることがあるので、管理会社や管理組合に確認してください。
留守の家にはどうすればいいですか?
時間を変えてもう一度訪ね、それでも会えなければ、工事期間・作業時間・連絡先を書いた挨拶文と品をポストへ入れます。玄関先に置きっぱなしにはしません。
挨拶の品はいくらくらいのものを持っていけばいいですか?
決まった相場はありません。相手がお返しを気にしない程度の消耗品(タオル・洗剤・ごみ袋など)が一般的によく選ばれます。のしは「御挨拶」に名前を入れるのが一般的です。
挨拶は施主と業者のどちらが回るべきですか?
一緒に回ると「誰の家の工事で、誰が責任者か」が一度に伝わります。施主が回れない場合は業者が回り、施主の名前を出してよいか先に確認します。
工事が終わったあとも挨拶は必要ですか?
必須ではありませんが、「無事終わりました」と伝えに回ると印象に残りやすいと考えています。名刺は着工前の挨拶では渡さず、完了の挨拶のときに一枚置くだけにします。売り込みではなく、連絡先を残すためです。
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