対面営業・商談

ヒアリングシートの作り方|聞く順番を決めておくと、打ち合わせが短くなる

ヒアリングシートの作り方|聞く順番を決めておくと、打ち合わせが短くなるのイメージイラスト

このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

ヒアリングシートは項目の一覧ではなく、聞く順番を決めた紙

先に結論から書きます。ヒアリングシートの作り方は3手順しかありません。

沈黙を説明で埋めると打ち合わせが長引く悪循環を示す図

  1. 欄を5つに絞る
  2. 上から聞く順番を固定する
  3. 自分の説明は、5つ目の欄が埋まるまで口に出さない

これだけです。A4一枚で足ります。項目を増やすことでも、きれいなテンプレートを探すことでもありません。

打ち合わせが長引くのは、口下手だからではない

打ち合わせが長引いてまとまらないと、「自分が口下手で話を回せないからだ」と考えている人がいます。しゃべりすぎ型かもしれません。沈黙が怖くて自分の説明で埋め、相手の話を取ってしまう型です。

長引くのは口下手だからではありません。何をどの順で聞くかを決めていないからです。決めていないから、相手が黙った瞬間に自分の説明で埋めにいく。

埋めるほど相手の話を聞く時間が削られ、聞き漏らしたことをあとで確認するメールが往復し、結果としてもっと時間がかかります。話がうまい必要はありません。聞く順番でいいんです。

短くなる理由は簡単です。説明で埋めていた時間がまるごと減り、聞き漏らして後日メールで聞き直す往復も消えます。順番を決めておくだけで、打ち合わせの中身は変わらないのに時間だけ縮みます。

例えば、こんな場面です。「困っていることはありますか」と聞いて、相手が3秒黙る。その3秒が怖くて「弊社のサービスは〜」と説明を始めてしまう。この3秒を説明で埋めずに待てるかどうかが、聞けるかどうかの分かれ目です。

相手に書かせるシートと、自分が手元に置くシートは別物

「ヒアリングシート」で検索すると、相手に記入してもらうアンケート型のテンプレートがたくさん出てきます。項目を並べて、相手に埋めてもらう前提のものです。

対面のBtoBでこれを渡すと、多くの場合「書類仕事を押しつけられた」という印象になり、関係が冷えます。この記事で作るのはそちらではありません。自分が手元に置いて使うメモ型です。相手には見せず、自分が聞く順番を忘れないための紙だと考えてください。

NG:「先にこちらに書いておいていただけますか」と打ち合わせ前にシートを渡す。相手は「本題の前に仕事を頼まれた」と感じます。 OK:シートは自分の手元だけに置き、相手には存在すら見せずに埋めていく。

欄を増やすほど打ち合わせは長くなる

ありがちな失敗は、項目が20個近いテンプレートをそのまま持ち込み、上から順に読み上げてしまうことです。これは聞き取りではなく尋問になります。相手は質問に答えるほど、自分が本当に困っていることから遠ざかっていきます。

欄は5つまでにします。次の章で、その5つの中身を順番に渡します。

なお、この記事は「①知り合う→②話を聞く→③お金の話→④返事をもらう」という営業全体の流れのうち、②話を聞く工程だけを扱う道具です。全体の流れは対面営業のやり方にまとめています。

聞く順番は5つ。上から順に埋めると話が勝手につながる

聞く順番と、そのまま口に出せる言葉をまとめました。

①〜⑤の欄を上から順に埋めていく縦方向のフロー図

欄聞く一言メモすること
①きっかけ今回、声をかけてくださったのは何があったからですか事実(いつ・何がきっかけか)
②困りごとそれで、いま一番困っているのはどれですか困りごとを1つに絞る
③試したことこれまで、どんな手を打ってみましたかすでに断った案
④ゴールこれがどうなったら、今回は良かったと言えますか相手の言葉での「良かった」の状態
⑤決め方進めるとしたら、いつまでに・誰が・どのくらいの枠で決めますか時期・決める人・予算の枠

欄①〜③:いま何が起きているかを聞く

①は事実です。何がきっかけで声をかけてくれたのかを、そのまま聞きます。

②は困りごとを1つに絞ります。困りごとが3つも4つも並ぶ人はまずいません。一番困っていることはどれかを聞けば、話す順番は相手が決めてくれます。

③は忘れられがちですが、実は一番大事です。相手がすでに試して外した案を知るためです。ここを飛ばすと、相手が試して外した案をそのまま提案してしまい、また外れます。「前にも似たようなことをやってみたけどうまくいかなかった」という話が出たら、そのやり方は提案から外します。

欄④〜⑤:どうなれば良くて、どう決めるかを聞く

④は相手の言葉で「良かった」の状態を取ります。自分の言葉に言い換えず、相手が言った通りの表現でメモします。

⑤は時期・決める人・予算の枠の3点です。予算は「いくらですか」ではなく「どのくらいの枠で考えていますか」と幅で聞きます。金額をそのまま聞くより、答えやすくなります。

1欄1問が原則です。答えが薄くても、その場で2問目を重ねません。「困っていることはどれですか」と聞いて「まあ、色々ありますね」と返ってきたら、「その中で一番困っているのはどれですか」ともう一段だけ絞ります。

ここで「具体的には?」「たとえば?」と重ねてしまうと、しゃべりすぎ型の裏返りである聞きすぎになります。「それで?」「もう少し聞かせてください」で、相手が続きを話すのを待つくらいがちょうどいい深さです。

順番を入れ替えると何が起きるか

⑤を先に聞くと、以後の会話が「その金額で何ができるか」に固定されます。金額の話しかできなくなり、④のゴールを聞く余地がなくなります。

①の前に自分の商品説明を入れるのも同じです。相手が身構えて、②の困りごとが出てこなくなります。これは説明から入る型(自分の商品説明から始めてしまう。何をどの順で聞くかを習っていない型)です。順番を決めておくだけで、この型からは抜けられます。

実際の流れはこうなります。

  • 自分「今回、お声がけいただいたのは何かあったんですか」
  • 相手「知り合いから聞いて、一度話だけでもと思いまして」
  • 自分「そうなんですね。今、一番困っているのはどのあたりですか」
  • 相手「正直、人が全然足りなくて」
  • 自分(②に書きながら)「これまで、何か手を打ってみましたか」
  • 相手「求人は出してるんですけど、応募がなかなか来なくて」

このやりとりの間、自分の説明は一度も入っていません。相手が話した分だけ、欄が埋まっていきます。

会う前に埋める3行を上に置く。当日「御社は何を」と聞かない

会う前に埋める3行:相手の仕事・最近の動き・自分との接点

聞く5欄の上に、会う前に埋める3行を置きます。

  • A 相手の仕事(何を誰に売っているか)
  • B 最近の動き(HPのお知らせ最新3件・SNSの直近3投稿・求人の有無)
  • C 接点(誰の紹介か・前回いつ何を話したか)

求人が出ていれば、「人が足りない」が②の困りごとの候補として先に見えてきます。お知らせに新店や新サービスの案内があれば、①のきっかけを当てにいけます。

埋めた例で見てみます。

  • A 相手の仕事:内装工事を個人宅向けに請け負っている
  • B 最近の動き:求人サイトに「職人急募」の広告が出ている
  • C 接点:去年名刺交換した知人からの紹介で、3年ぶりの連絡

Bの「職人急募」を見た時点で、②の困りごとの仮説は「人手が足りず、案件を断っている」に絞れます。会ってから聞くのは、この仮説が合っているかどうかだけです。

会ってから聞くと相手が冷める質問

やってしまいがちなのが「御社はどんな事業をされているんですか」という質問です。相手は「調べてきていない」と受け取り、その先の質問に本気で答えてくれなくなります。

これは下調べなし型(会う前に調べる時間を取らず、その場の会話で乗り切ろうとしている型)です。10分の下調べは才能ではなく手順の問題です。手順に組み込んでしまえば、毎回同じように再現できます。

調べるのは10分まで

調べすぎるのも良くありません。調べたことを当日話したくなり、また説明から入ってしまいます。3行が埋まったらそこでやめます。埋まらない行は空欄のまま持っていき、①の質問で自然に埋めればいいんです。

エクセルで作るなら、A4一枚・縦8行・横3列で足りる

セル構成はこうなります。

A4用紙に3列8行のマス目を配置したシートレイアウト図

  • A列 欄名(下調べ3行+聞く欄5行=8行)
  • B列 聞く一言
  • C列 相手の言葉(言い換えず、口にした通りに書く)
  • D列 気づき(自分が言いたくなった説明や提案の種)

列は3つ:聞く一言/相手の言葉/自分の気づき

列幅はC列>D列>B列にします。行の高さはB列が1行分、C列は5〜6行分、D列は2行分ほど取っておくと書きやすくなります。

ありがちな失敗は、相手が「売上が伸びない」と言ったのに、C列に「集客課題」と自分の言葉で書き換えてしまうことです。提案書の一行目が相手の言葉から離れ、「分かってもらえていない」という印象につながります。相手が言った通りに書いてください。

印刷して手書きにする理由

打ち合わせ中にPCを開くと、目線と手が画面に向かい、相手が話しにくくなります。C列さえ広く取っておけば、紙とペンで十分です。データ化は打ち合わせが終わった直後の3分でやります。

テンプレ配布サイトの項目を全部入れない

業種・従業員数・導入時期・使っている競合サービスといった項目は、ヒアリングシート配布サイトによく載っています。全部入れると、この記事で言う「欄は5つまで」を超えてしまいます。

こうした項目は、「会う前に埋める3行」か「⑤決め方」のどちらかに振り分け、残りは捨てます。捨てる基準はひとつです。「聞かなくても提案が書けるか」。書けるなら、その項目は要りません。

シートの上部には版と日付を入れておきます(例:「v1 2026-09」)。直したら版を上げます。育て方は最後の章で書きます。

操作面も具体的に書いておきます。1行目に列見出し(聞く一言/相手の言葉/気づき)を入れたら「ウィンドウ枠の固定」をかけます。下にスクロールしても見出しが消えません。

印刷するときは印刷範囲をA1からD8までに指定し、1ページに収まるよう拡大縮小を調整します。作った時点で一度印刷して、A4一枚に収まるかを確認しておきます。

打ち合わせ中の使い方。埋めるのが目的になると尋問になる

順番どおりに聞くが、相手が飛ばしたら追いかけない

相手が①の途中で④(こうなりたい)を話し始めることがあります。そのときは④の欄にそのまま書いて、聞き続けます。話が一段落したら、「さっき少し戻りますが」と②に戻ります。

順番は自分のための順番であって、相手を従わせる順番ではありません。相手の話す順番のほうを優先します。

自分の説明は⑤が埋まるまで口に出さない

説明したくなった瞬間の手順を決めておきます。口には出さず、D列に一言書きます。「見積の分け方を提案」のようにです。⑤まで埋まってから、「聞いていて思ったことが2つあります」とまとめて出します。

シートは口下手を直す道具ではありません。説明で埋めなくて済むようにするブレーキです。

やってしまいがちな失敗を3つ挙げます。シートを相手に見せて上から読み上げること。相手の答えを復唱して「なるほど、では次に」と即座に次へ進むこと。答えが出た瞬間に解決策を言い始めることです。どれも、相手が話し終わる前に自分の番にしてしまっています。

埋まらない欄は次に会う口実になる

⑤の決め方が当日埋まらないこともあります。そのときは「決め方のところは、次回までに確認しておいていただけますか」と言って、その場で次回の日を決めます。

埋まらないのは失敗ではありません。次の接点です。1回の打ち合わせで全部決めなくていいんです。

⑤まで埋まったら、「今日伺ったことをまとめて、◯日までに送ります」で終えます。その場で商品説明をフルにする必要はありません。

打ち合わせ後の3分でやること。シートは2回目から効く

C列を見返して、提案の一行目を決める

打ち合わせが終わったら、まずC列を見返します。相手が2回以上口にした言葉に印を付けます。その言葉を、提案書や見積の一行目にそのまま使います。

例えば相手が「問い合わせは来るのに決まらない」と言っていたら、提案の見出しは「問い合わせが決まらない理由と手当て」にします。相手の言葉をそのまま使うほど、「分かってもらえている」と伝わります。

聞けなかった欄を、メールで1つだけ聞く

⑤が埋まらなかったときは、お礼メールの末尾に1問だけ足します。

「本日はありがとうございました。1点だけ、進める場合にご相談される方はどなたになりますか。」

全部を聞き直そうとせず、1つに絞ります。

うまく聞けた一言をB列に書き足す

相手がよく答えてくれた聞き方があれば、その欄の「聞く一言」に上書きします。3回使えば、シートは自分の言葉になっていきます。毎回いちから考える必要がなくなります。

3分で終えるのには理由があります。翌日に回すと、C列に書いた相手の言葉の温度が思い出せなくなります。手書きからエクセルへのデータ化も、このタイミングでやってしまいます。

シートは打ち合わせ1回につき1枚作り、相手の名前でファイル名を付けて保存しておきます。次に会う前に見返せば、③の「試したこと」を二度聞かずに済み、「前回おっしゃっていた〜」と切り出せます。

よくある失敗3つと直し方

自社の紹介欄がある

NGパターンとOKパターンを左右に並べた3行の比較図

シートに自社紹介の欄を作ると、その欄を埋めるために説明を始めてしまいます。直し方は、自分が話す欄をそもそも作らないことです。説明したいことはD列のメモとして残し、⑤のあとにまとめて出します。

予算欄が一番上にある

予算を先に聞くと、以後の会話が「その金額で何ができるか」に固定されます。直し方は⑤に下げて、幅で聞くことです。「枠は決まっていますか」「上限だけ教えていただけますか」の2択で聞けば、答えやすくなります。

欄が埋まらないと不安で、質問を重ねる

欄が埋まらないと不安になって、「具体的には?」「たとえば?」と重ねてしまうことがあります。重ねるほど、相手は試験を受けているような顔になります。

直し方は1欄1問です。薄いまま次に進み、C列に「薄い」とだけ書いておきます。薄い欄は、次に会う口実にすればいいんです。

話がうまい必要はありません。聞く順番が決まっていれば、性格はそのままでいいんです。今日やることは、A4一枚に8行の欄名だけ書いて、次の打ち合わせに持っていくことです。

よくある質問

ヒアリングシートは相手に渡して書いてもらうものですか?

対面のBtoBでは自分の手元に置くメモ型が向いています。渡すと書類仕事に見えて関係が冷えます。事前に聞くなら1問だけメールで聞くくらいにとどめます。

ヒアリングシートの項目は何個が適切ですか?

会う前に埋める3行+当日聞く5欄の8行で足ります。増やすほど打ち合わせは尋問になります。捨てる基準は「聞かなくても提案が書けるか」です。

ヒアリングシートはエクセルとワードどちらで作ればいいですか?

表にしやすいエクセルで作り、印刷して手書きで使います。打ち合わせ中はPCを開きません。データ化は打ち合わせが終わった直後の3分でやります。

予算はヒアリングのどのタイミングで聞けばいいですか?

最後の欄(⑤決め方)で、時期・決める人とセットで幅で聞きます。最初に聞くと、以後の話が金額に固定されます。

シートの順番どおりに聞いても話がそれるときはどうすればいいですか?

それた先の欄に書いて聞き続け、話が切れたら「少し戻りますが」で戻ります。順番は自分のための順番で、相手を従わせるものではありません。

本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。

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