対面営業・商談

「営業が苦手」の正体は、話し方より「何を聞くか決まっていないこと」かもしれない

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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

見積もりを出す前から、話す内容を考えすぎて疲れる。商談中に相手が黙ると、何か言わなければと焦って喋ってしまう。心当たりがあるなら、しゃべりすぎ型に近いかもしれません。沈黙が怖くて自分の説明で埋め、相手の話を取ってしまう型のことです。

自分は口下手だから営業には向いていない、と思ってしまうことがあります。ただ、口下手というより、何を聞くかが決まっていないことが原因になっている人が多いようです。

フリーランスで営業が苦手だと感じている人の中には、この違いに気づかないまま話し方や言い回しを探し続ける人がいます。本を読み、セリフを覚え、それでも商談になると同じところで詰まる。原因が話し方ではなく順番にあるなら、話し方をいくら直しても詰まりは消えません。

人脈や紹介はあるのに、そこから次の一歩が続かないという場合は、フリーランスの営業苦手をどう乗り越えるかから読んだほうが近道かもしれません。ここで扱うのは、会ってからの数十分で何を聞くかという、もう一段手前の話です。

「営業が苦手」の中身は、話し方より「何を聞くか」かもしれない

苦手の正体を、まず言葉にする

営業が苦手だと感じると、聞き方や話し方のコツをすぐに探し始めがちです。でもその前に、苦手の中身が分かれていないことがあります。

営業が苦手の3つの中身と、本記事が扱う3つ目の分岐図

  • 話すのが苦手(口下手)
  • 断られるのが怖い
  • 何を聞くか、何を話すかが決まっていない

この3つは手当てが正反対です。話すのが苦手な人に「もっと喋れ」は逆効果ですし、決まっていない人に「話し方を直せ」も的外れです。まず自分がどれに当たるかを切り分ける必要があります。この記事が主に扱うのは3つ目です。1つ目や2つ目に当たる人は、合わない部分があるかもしれません。

調査でも悩みは「伝えられない」に寄っている

現役の営業従事者800人への調査では、悩みの2位が「売りたい商材・サービスの良さをうまく伝えられない」26.9%、3位が「コミュニケーションを取るのが得意でない」25.9%でした。どちらも約4人に1人が挙げており、苦手を「話す側の問題」として捉えている人は少なくないことが分かります。なお、これは営業従事者全般を対象にした調査で、フリーランスだけの数字ではありません。

ただし、調査が示しているのは悩みの割合までで、原因までは分かりません。私は、この悩みの背景に、何を聞いてから何を話すかの順番が決まっていないことがある人が少なくないと見ています。

伝え方の本の多くは、話す内容が決まったあとの技術を扱っています。そもそも何を話すかを決める手前の技術は、あまり扱われていません。私は、苦手の正体は伝え方より一段手前にあるケースが多いと考えています。

口下手というより、聞く順番を習っていないのかもしれない

何を聞くかが決まっていないと、商談中の沈黙が怖くなります。沈黙を埋めるために自分の説明を足す。説明が増えるほど、相手は話す機会を失って口を閉じる。これが繰り返されると「自分は口下手だ」という結論に落ち着きやすくなります。

でも起きているのは、口下手というより順番が決まっていないことだ、という人が多いようです。聞く順番が決まっていれば、沈黙は「相手が考えている時間」として待てます。

「とにかく場数を踏めば慣れる」とすすめる人もいますが、聞く型がないまま場数を踏むと、うまくいかなかった経験だけが積み上がりやすくなります。慣れるのは説明の滑らかさだけで、聞く力は伸びにくいと考えています。

場数を踏むこと自体は悪くありません。ただ、何を聞くかを決めずに場数だけ増やすと、毎回同じところで詰まったまま回数だけが増えていきます。先に順番を決めてから場数を踏む方が、同じ回数でも身につくものが変わると考えています。

苦手の中身を切り分ける4場面チェック

4つの場面で自分がどう詰まるかを見る

表で確認します。

商談の4場面を時間順に並べた流れ図

場面チェック項目
会う前相手の会社を10分以上調べたか/聞きたいことを紙に書いたか/今日決めたいことを一文で言えるか
会って最初の5分自分の説明より先に質問をしたか/相手が話した時間の方が長かったか/メモを取ったか
お金の話金額を聞かれる前に自分から言わなかったか/中身を分けて説明したか/即答で下げなかったか
終わり際次に何をするか決めて帰ったか/期限を口にしたか/連絡する日を決めたか

3項目のうち2つ以上に×がついた場面が、今いちばん詰まっている工程の目安になります。これは私の目安で、診断ではありません。

「会う前」に×が多いなら、話し方以前に材料が足りていない可能性があります。話す内容を考える前に、調べる時間を確保するだけで変わることがあります。「お金の話」に×が多いなら、これは口下手とは別の詰まりかもしれません。総額だけで押し切ろうとしていないか、値段を聞かれる前に自分から下げていないかを見直してください。

「話すのが苦手」に見えて、実は準備が空白のことがある

2017年に行われた企業向けの調査(有効回答381名)でも、営業上の悩みの3位は「行くべき先、やるべきことの明確化」37.3%でした。これは企業を対象にした調査ですが、企業の側でも、何をやるか決めること自体が悩みの上位に入っています。会社に営業部があれば、上司や先輩がこの整理を手伝ってくれることがあります。1人で仕事をしていれば、それを自分で決めることになります。

商談後に「何を聞いたか」を3つ書き出せるか

一番早い判定はこれです。商談が終わったあと、「何を聞いたか」を3つ書き出してみてください。

  • 書き出せない → 苦手なのは話すことではなく、聞くことかもしれません
  • 書き出せるのに受注に至らない → 詰まっているのは別の工程(金額の出し方や、そのあとの連絡)かもしれません

チェックの結果を「自分はコミュ障だから」で片づけないでください。人格の問題と決めつけず、いまハマっている型の問題として見たほうが、手を打てます。

説明を減らすと楽になる理由(受け手の側から見る)

説明された側は、判断材料より「押されている感じ」を受け取ることがある

話し手は分かってもらおうとして情報を足します。でも聞き手の側からは、自分の状況に重ねる場面がないと判断しにくいことがあります。実績を並べすぎると、相手が自分の話をする隙がなくなり、黙って聞くだけの時間が増えがちです。これを「説得力がある」ではなく、押されているように感じる人もいます。

説明で押す商談と質問で聞く商談の左右比較図

沈黙の3秒を待つ、という具体手順

質問をしたあと、相手が黙っても3秒は口を開かないでください。手元のメモに目を落とすと待ちやすくなります。それでも埋めたくなったら、次の質問ではなく「たとえば、どんな場面ですか」と1つだけ言葉を足してください。

対面は聞く練習の場にできる

法人営業の売り手への調査(従業員51〜5,000人の企業が対象)では、「訪問営業の方がリモート営業より好ましい」と回答した人が53.3%で、顧客とやりとりしている時間は業務時間の54%を占めていました。対面で顧客と向き合う時間を聞く練習の場にできると筆者は考えますが、これは調査結果からの直接の結論ではなく、筆者の判断です。

資料を最初から最後まで通しで説明するのはやめてください。資料は聞かれてから開くものです。

言い方を比べると分かりやすくなります。

  • NG「弊社のサービスはこういう機能があって、こういう強みがあって、こういうお客様に選ばれていて……」と一方的に話し続ける
  • OK「いまはどんな形で対応されていますか」と聞いて、そのまま黙って答えを待つ

説明を先に出す方が親切に見えますが、相手が話す隙をふさいでしまうことがあります。

聞く順番を先に決める(4つの区分を借りる)

商談を実測した研究がある

ニール・ラッカムらのプロジェクトは、研究チームが20か国以上で35,000件の商談を調べ、12年にわたって行われました。売り手と買い手のやりとりそのものを実測したこの研究から、SPIN(Situation/Problem/Implication/Need-payoff)という4区分が整理されました。「話がうまい人が売れる」かどうかではなく、実測から生まれた区分があるという事実だけで十分です。

状況から助かることまで質問を4段で進める階段図

使うのは名前と並び順だけ

状況を聞く → 困っている点を聞く → それが続くとどうなるかを聞く → どうなれば助かるかを聞く。この4段の並びを紙に書いて持っていきます。各区分の細かい定義は原著の書籍にあたる必要があり、今回確認できた出典には定義文までは載っていませんでした。ここでは順番だけを借ります。

自分の商材で1問ずつ埋める

例えば、こんな形で自分の言葉に置き換えます。

段質問の例(デザイナーの場合)
状況いまはどなたが作られていますか
困りごとそこで手が止まるのはどこですか
このままだと今のやり方を続けると、どこが一番困りそうですか
助かることどうなっていれば一番助かりますか

施術者であれば「いまはどのくらいの頻度で通われていますか」「そのなかで、良くならないと感じるのはどんなときですか」という並びになります。工務店や職人であれば「いまの現場はどなたが管理されていますか」「そのなかで、手が止まるのはどこですか」という並びです。仕事の中身が変わっても、状況から入って困りごとに進む順番は変わりません。

4段を全部その日に聞き切ろうとしないでください。1回目は上2段まででも十分です。

苦手が続くと、仕事が来る接点が減ることがあります

稼げている経路は人脈と既存の取引先

フリーランス白書2025では、最も稼げる獲得経路の1位が「人脈」、2位が「過去・現在の取引先」、3位が「エージェントサービス」でした。すでに知っている相手からの仕事が、最も稼げる経路として挙がっています。

「人脈で回っている」は「営業しなくていい」ではない

既存の相手の中で次の話が出るかどうかは、聞く型があるかが影響すると私は見ています。近況を聞けていないと、相手が困っていることに気づけないまま関係だけが薄くなります。仕事が減ったとしても、それは腕のせいではなく、思い出してもらう回数が減っただけかもしれません。

道具はあるのに、使い道が決まっていない

同じ調査では、活用している営業ツールとして「ビジネス用メアド」「名刺」は6割、「SNSアカウント」は5割という結果でした。名刺やメアドを持っていても、その先で何を聞くかが決まっていないと、そこで止まりやすくなります。

直近1年で仕事をした相手を紙に全部書き出し、最後に連絡した月を横に書いてみてください。それだけで、次に声をかける相手が決まります。

新しい相手を探す前に、この一覧を先にやることをすすめます。人脈と既存の取引先はすでに稼げている経路として挙がっています。そこへの働きかけを後回しにする理由は少ないと考えています。新規開拓は、聞く順番を練習してからでも遅くありません。

今日からやることは1つだけ。会う前に質問を5つ書く

5行テンプレ

会う前に、この5行をスマホのメモか手帳に書いておきます。

  1. いまはどうやっているか
  2. 困っているのはどこか
  3. それが続くと何が起きるか
  4. どうなれば助かるか
  5. いつまでに決めたいか

机の上に出しておいて、見ながら聞いて構いません。暗記は不要です。そのまま使える言い方に直すと、こうなります。

  1. 「今は、どんな形で対応されているんですか」
  2. 「そのなかで、地味に手間がかかっているところはありますか」
  3. 「このままだと、来年あたりどうなりそうですか」
  4. 「逆に、どうなっていたら一番助かりますか」
  5. 「決めるとしたら、いつ頃までに考えていますか」

言葉は自分の話し方に合わせて変えて構いません。順番だけ崩さないでください。

終わったら◯×を付ける

5行の横に、聞けた◯、聞けなかった×を書きます。×が付いた行が、次に用意すべき言い回しです。3回ほど続けると、自分用の型が見えてきます。

うまく言えなくていい

「順番に聞いていってもいいですか」と最初に断ってから聞いてください。読むように聞いても失礼になりにくく、準備してきたことが伝わると私は考えています。

方法はこの1つに絞ります。資料の作り直しや金額の出し方といった他の改善は、この記事では扱いません。

直そうとすると遠回りになりやすい3つのやり方

話し方を鍛えにいく

話し方教室やロープレで滑らかさを上げても、聞く順番が決まっていなければ、滑らかに説明しすぎるだけになりがちです。相手の話す時間はむしろ減ります。

トークスクリプトを丸暗記する

セリフを覚えると、相手の返事を聞く余裕がなくなります。頭の中は「次のセリフを探す」ことでいっぱいになり、聞くための余白が消えます。覚えるのはセリフではなく順番です。

性格を変えようとする

一番遠回りになりやすいやり方です。必要なのは性格の改造ではなく、聞く順番を紙に書くことだと私は考えています。しゃべりすぎるのも、口下手に見えるのも、性格の欠陥ではありません。性格はそのままでいい。まずは会う前の5行と、聞く順番から始められます。

話し方教室もスクリプトの暗記も、順番が決まったあとに足すなら意味があります。順番より先に足すから、遠回りになりやすいだけです。

営業の型は、この記事で扱った「聞く」の手前にも先にもあります。全体の流れはフリーランスの営業のやり方にまとめています。

よくある質問

営業が苦手なのは性格のせいですか?

性格より、会う前に聞くことが決まっていないことが原因のケースが多いです。聞く順番を5行書いて持っていくところから始めてください。3回ほど続けると、自分用の型が見えてきます

人見知りでも営業できますか?

人見知りでも営業はできます。沈黙の場面で困る人が多いので、質問を用意しておくと待ちやすくなります。質問が手元にあれば、黙る時間も「相手が考えている時間」として受け止められます

フリーランスは営業しないと仕事が来ませんか?

最も稼げる経路は人脈と過去・現在の取引先です。新規開拓より先に、すでに知っている相手にいつ最後に連絡したかを書き出すほうが早いと考えています

営業トークは覚えたほうがいいですか?

セリフの暗記はすすめません。覚えるのは順番です。状況→困りごと→続くとどうなるか→どうなれば助かるか、の4段だけで足ります

何を聞けばいいか分からないときは?

「いまはどうやっているか」から入ってください。答えやすく、そこから困っている点まで自然につながります

参照した情報源

  1. 現役の営業従事者に「営業に関する悩み」をアンケート調査 営業の悩みは「ノルマ」ではない本当の第1位は「良さをうまく伝えられない」(ferret(運営:株式会社Basic))・確認日 2026-09-08
  2. 企業の抱える営業上の悩み1位は「新規顧客開拓」 労働人口減少、長時間労働抑制のなかでいかに売上を伸ばすかが課題に(ソフトブレーン株式会社)・確認日 2026-09-08
  3. 日本の営業に関する意識・実態調査2024の結果をHubSpotが発表(HubSpot Japan株式会社(調査委託:株式会社マクロミル))・確認日 2026-09-08
  4. 【プレスリリース】「フリーランス白書2025」を発表〜フリーランスの実態・ホンネが明らかに〜(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会)・確認日 2026-09-08
  5. Neil Rackham(Wikipedia)・確認日 2026-09-08

本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。

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