対面営業・商談
フリーランスで営業が苦手な人へ|人見知りのまま仕事が続く人がやっていること
営業が苦手なのは性格のせいではない。仕事の話を切り出す順番を習っていないだけ
頼んだ瞬間、対等じゃなくなる気がする
名刺交換をして、仕事の話でひとしきり盛り上がった。もう少しで「よかったら一度お仕事の話もさせてください」と言えそうだったのに、結局その一言だけが出てこないまま「今日はありがとうございました」で解散した。帰り道、なんであの一言が言えなかったんだろうと考える。
見積を送っていいか聞くだけの連絡に、文面を練って30分かけて、結局その夜は送信ボタンを押せなかった。翌朝には「今さら送るのも変だ」という気持ちが勝って、そのまま連絡は途切れる。
こういう場面に心当たりがある人は多いと思います。よく見ると、話すこと自体が苦手なわけではありません。世間話や打ち合わせの中身については普通に話せている。つまずいているのは、雑談から仕事の話に切り替える一言だけです。ここだけがいつも出てこない。
「苦手」の下にある判決
この場面を何度か繰り返すと、多くの人がそれを証拠にして「自分は性格的に営業に向いていない」と自分に言い渡してしまいます。営業が下手なのではなく、そもそも向いていない人間なんだと、静かに結論を出してしまう。
切り出せない型かもしれません。まだ仕事をしたことのない相手に、仕事の話を切り出せない状態を指します。
向いていないのではありません。会社員時代は、上司や先輩が間に立ってくれたり、営業担当が別にいたりして、相手を用意してもらえる仕組みの中にいました。独立するとこの工程が抜け落ちる、というだけです。その工程をどう埋めるかは「フリーランスの営業の仕方はこちら→フリーランスの営業の仕方」にまとめたので、そちらを読んでください。この記事で扱うのは、その先——性格に合わせてどう話すか、どう聞くか、どう続けるかの部分です。
渡す許可
性格を変えろという話はこの記事では一切しません。頼まなくていい。
この記事で渡すのは3つです。自分がどの型かを見分ける基準、話す量を増やさずに信頼を作る対話の技術、そして苦手なまま仕事を切らさない名簿の回し方。順番に読んでください。
「人見知り」と「内向型」は別物。中身が違えば手当ても変わる
起きる場面が違えば、効く一手も違う

「人見知り」とひとくくりにされがちですが、中身は違います。自分がどれに近いかを取り違えると、手当ても的外れになります。
| 呼び方 | 起きる場面 | 効く一手 | 効かない一手 |
|---|---|---|---|
| 内向型 | 人が多い場所でエネルギーが減り、一人の時間で回復する | 1日に会う予定を絞る、回復の時間を先に確保する | 場数を踏ませて連続で人に会わせる |
| 内気 | 人前で自分を表現することに苦手意識があり、新しい環境や人との出会いに慣れるまで時間がかかる | 同じ相手と何度も会う機会を作る | 初対面の相手を毎回変える |
| 人見知り | 新しい人や場所に対して最初に感じる緊張や不安 | 会う前の下調べで「未知」を減らす | 「とりあえず慣れろ」で押し切る |
| シャイ | 人と話す・集まりに参加するときに恥ずかしさや不安を感じる | 一対一から始めて人数を減らす | 大勢の前でいきなり発言させる |
人見知りは”最初”に出る
心理学辞典(1999)では、人見知りは「見知らぬ人に対する恐怖,不安」と定義されています。人見知りは新しい人や場所に対して最初に感じる緊張や不安のことです。
つまり、2回目以降の相手には出にくい感情だということです。初めて会う瞬間がいちばん重く、2回目、3回目と会うほど軽くなっていく。ここから見えてくるのは、交流会や飛び込み営業のように初対面の相手を次々と作るやり方は、人見知りの人にとって自分の苦手が一番強く出る場面ばかりを選んで戦っているということです。同じ時間を使うなら、初対面を増やすより、一度会った相手ともう一度会う回数を増やすほうが、自分の苦手とぶつからずに進められます。
内向型なら回数ではなく配分の問題
内向型は人が多い場所でエネルギーが減り、一人の時間で回復します。この場合に効くのは「慣れる」ことではなく、配分を変えることです。
- 1日に人と会う予定は2件までにする
- 打ち合わせは午後に寄せて、午前は一人で作業する時間にする
- 交流会や商談が続いた日の翌日は、人と会う予定を入れずに回復の時間を確保する
「場数を踏めば慣れる」という言葉を、内向型の人にまで当てはめないでください。場数を踏むほど消耗して、かえって営業から遠ざかることがあります。
線引き:ここから先は営業の工夫の範囲を超える
人見知りには、他人からの評価が気になる自意識型のシャイネスがあり、10代から急激に増加し、日常生活に支障が出ると社交不安症と診断される場合もあります。
眠れない、当日キャンセルが続く、外に出る前に動悸がする、といったことが日常的に起きているなら、それは営業の工夫の話ではありません。専門家に相談する範囲です。この記事で渡す方法は、あくまで「人と会うこと自体はできる」人が、仕事の話をどう組み立てるかの話にとどまります。(S4は乳幼児期の人見知り研究を含む心理学辞典の定義であり、大人のフリーランスに特化した統計ではない点は留意してください。)
データで見ると、仕事は「ゼロからの初対面」より「関係のある人」を起点に来ている
主戦場は「関係のある人」

フリーランス白書2023では、もっとも収入につながる仕事獲得経路は「人脈」33.6%、僅差で「過去・現在の取引先」33.5%です。人見知りの人がいちばん苦しいのは、面識のない相手にいきなり売り込む「ゼロからの初対面を量産する」動き方ですが、データが示す主戦場はそこではありません。知人の紹介で会う初対面はこの主戦場に含まれるので、関係のある人との縁をどう切らさないかに力を割くほうが理にかなっています。
データの詳しい読み方や、職種によってエージェント経由の比率が変わる話は「フリーランスの営業の仕方はこちら→フリーランスの営業の仕方」にまとめました。ここから先は、関係を切らさないために苦手な性格のままでどう振る舞うかだけに絞って説明します。
会う前に決めておく(本番で頑張らないための下準備)
NG例:「何かお困りのことはありますか」で始める
この聞き方をすると、相手は答えを用意していないので、たいてい少し考え込んで沈黙になります。その沈黙が気まずくて、埋めようとして結局自分の説明から話し始めてしまう。苦手意識はこの流れの中で作られていきます。本番で頑張って話そうとするほど、この失敗は起きやすくなります。
手順(会う前15分)
- 相手の最近の発信を3つ見る(SNS・ブログ・会社サイトのお知らせなど、見られるものでいい)
- 相手の取引先や扱っている商品・サービスを1つ覚える
- 一問目を紙かスマホのメモに書いて持っていく
書いた一問目は、当日そのまま読み上げてかまいません。用意した言葉をそのまま使うことは手抜きではなく、準備です。その場で気の利いた質問を思いつく必要はありません。
準備するのは「話すこと」ではなく「聞くこと」
傾聴は、会話の7〜8割を相手が話している状態を指します。自分の持ち時間は2〜3割でいいと最初から決めておけば、口下手であることは不利にならなくなります。話す練習より、聞く準備に時間を使うほうが、この記事の考え方には合っています。
本番中は話し方を変えない。聞く順番を1本だけ持つ
3つの質問を順番で持つ

- いまはどうやっているか
- その中でやりづらい場面はどこか
- どうなったら助かるか
この順で聞くと、相手は自分の言葉で困りごとを整理しながら話してくれます。①だけで終わらせず、②まで踏み込むと、相手自身もまだ言葉にしていなかった困りごとが出てくることがあります。自分の商品説明は、③のあとに30秒だけで十分です。長く説明するほど、相手が話す時間は削られていきます。
性格を変えずに使える技術
- ミラーリング:相手の言葉遣いや身ぶり、表情を意識的にまねて、相手との同調性を高める手法。人は自分と似た相手に対して親近感を抱く傾向があるとされています
- アクティブリスニング:相手の話に耳を傾け、理解と共感を示すコミュニケーション技法
- 自己開示:自分の内面や個人的な体験を他者と共有して、心理的な親密さを形成する技法
どれも「話す量」を増やす技術ではなく、「聞き方」の技術です。口数を増やす必要はありません。
NG例
まねだと分かるほど大げさなミラーリングは、かえって不自然に映って逆効果です。自分の失敗談を長々と話す自己開示も、相手の時間を奪ってしまいます。沈黙が出たら、埋めようとせずに3秒待つ。これを一行ルールとして持っておいてください。3秒待つだけで、相手が続きを話し始めることがよくあります。
苦手なままでも切れない仕組み(月45分で回す)
会ったあとに送るのは「頼まない連絡」

会った当日にその場で仕事を依頼する必要はありません。会って24時間以内に、頼まない連絡を1通だけ送ります。礼と、相手の話で覚えた一言と、役立ちそうな情報を1つ。仕事の依頼は書きません。テンプレートと、返事がないときの扱い方は「フリーランスの営業の仕方はこちら→フリーランスの営業の仕方」にまとめたので、そちらを見てください。ここでは、この「頼まない連絡」を苦手なまま何ヶ月も続けるための土台、名簿の運用だけを説明します。
名簿を1つ作る
過去に仕事をした人、見積を出した人、紹介してくれた人を書き出してください。仕事の獲得経路で上位を占めるのは、前述の「人脈」と「過去・現在の取引先」です。ここが自分の営業リストになります。新しい人を探す前に、まずこの名簿に目を通してください。
回し方
月に1回、名簿から3人を選んで、頼まない連絡を送ります。1人あたり15分で書けるので、3人まとめて45分。記録は1つのファイルに「日付」「送った内容」「返事」の3列だけつけてください。たとえば「8/23・A社の◯◯様に記事を1本送付・未返信」のように1行で書ければ十分です。項目を増やさないこと。項目を増やすほど記録することが負担になり、続かなくなります。
落とし穴
仕事が詰まっている月に連絡を止めてしまうと、暇になってから再開することになります。忙しいときに送る3通のほうが、実は一番効きます。今の仕事が続く前提で予定を組まないこと。これだけ覚えておいてください。
会う前後の振る舞いや人脈の育て方をまとめて確認したい人は、対面営業の作法・人脈術 完全ガイドを合わせて読んでください。
よくある質問
人見知りでもフリーランスは続けられますか?
続けられる。もっとも収入につながる仕事獲得経路は「人脈」33.6%、僅差で「過去・現在の取引先」33.5%。いずれも“関係のある人”を起点にした経路(本人からの再依頼か、知人からの紹介か)。ゼロから初対面を量産する力より、関係のある人との縁を切らさない手順のほうが効く。
営業が苦手なら、エージェントに任せてもいいですか?
仕事による。IT・Web系の調査ではエージェント経由が63%以上を占めたが、白書全体ではエージェント利用は12.4%。職種で事情が違うので、自分の分野の人がどこから受注しているかを先に確かめる。任せる場合も、単価と条件の話は自分で持つ。
異業種交流会には行ったほうがいいですか?
人見知りは新しい人や場所に最初に感じる緊張なので、初対面を大量に作る場は自分の苦手が最も出る。行くなら「名刺を10枚配る」ではなく「翌日に連絡する相手を2人だけ作る」に目標を置き換える。
人見知りは克服しないと営業できませんか?
克服は前提ではない。話す量を増やすのではなく、会う前の下調べ、聞く順番、会ったあとの一文で組み立てる。傾聴では会話の7〜8割を相手が話すので、口数の少なさは不利になりにくい。
営業のトークは練習すれば上手くなりますか?
上手くはなるが、順番が逆。先に決めるのは何を話すかではなく何をどの順で聞くか。①いまどうしているか ②やりづらい場面 ③どうなったら助かるか、の3問を固定すれば当日の即興が要らなくなる。
人前で話すと動悸がして予定を断ってしまいます。これも営業の工夫で直りますか?
生活に支障が出ている場合は営業の工夫の範囲を超える。他人の評価が気になる自意識型のシャイネスは、日常生活に支障が出ると社交不安症と診断される場合がある。当日キャンセルや不眠が続くなら医療・専門家への相談を先に。
参照した情報源
- フリーランス白書2023抜粋解説。コロナ禍でフリーランスの収入はどうなった?仕事獲得経路にも変化あり(Workship MAGAZINE(フリーランス白書2023/一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 調査の引用))・確認日 2026-08-23
- フリーランスの案件獲得経路に関する実態調査と考察|2022年版(ITプロパートナーズ(IT・Web専門フリーランスエージェント))・確認日 2026-08-23
- 内向型、内気、人見知り、シャイの違い:それぞれの性格特性と課題(一般社団法人あがり症克服協会)・確認日 2026-08-23
- 人見知りの意味とは?原因と改善法(ダイコミュ(公認心理師監修))・確認日 2026-08-23
- 営業で使える心理学のテクニック7選!|お客様の心を掴み、動かす方法(NLP-JAPANラーニング・センター)・確認日 2026-08-23
- 営業活動に生かせる心理学とは?成約率を上げる12のテクニックと話し方の例をご紹介(営業DX Handbook by Sansan)・確認日 2026-08-23
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