対面営業・商談

デザインの打ち合わせの進め方|最初に聞くことと、見本を見せる順番

デザインの打ち合わせの進め方|最初に聞くことと、見本を見せる順番のイメージイラスト

このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

打ち合わせがうまくいかないのは、話が下手だからではない。聞く順番を習っていないだけ

結論から言います。最初に聞くのは3つだけです。①これはどこで誰に見せるものか→②見た人に見たあと何をしてほしいか→③今あるものへの不満、の順に聞き、見本はこの3つを聞き終えてから2〜3案に絞って出します。話がうまい必要はありません。この順番を守るだけで、打ち合わせの空気は変わります。

打ち合わせのあとに残るモヤモヤ

ポートフォリオを開いて10分かけて説明した。相手は「いいですね」とうなずいていた。なのに、あとから届いた修正指示は、最初に思い描いていた方向とまったく違うものだった。

帰り道、頭の中で結論が出る。「自分は打ち合わせが下手だ」「もっと話がうまければ、最初からズレなかったはずだ」。

この結論を一度出すと、次の打ち合わせでも同じことが起きる前提で身構えるようになります。話す量を増やそうとする。説明を丁寧にしようとする。それでも修正の回数は減りません。

「口下手だから」ではない

デザイナーの多くは、会社にいたころ打ち合わせの進行そのものを担当していません。営業担当やディレクターが場を仕切り、デザイナーは呼ばれて意見を聞かれる立場だったという人が多いはずです。

独立すると、その「仕切る役」が急に自分に回ってきます。聞く順番を一度も教わらないまま、打ち合わせの主導権だけを持たされる。話がうまいかどうかの前に、そもそも「何をどの順番で聞くか」を知らないだけ、というのが実際のところに近いと思います。

ロゴを新しく作る場合と、今あるものをリニューアルする場合とでは、あとで出てくる③の質問「困っていること」の重みが変わります。リニューアルなら③が一番濃い情報源になり、新規なら①と②が中心になります。

しゃべりすぎ型かもしれません

しゃべりすぎ型かもしれません。沈黙が怖くて自分の説明で埋めてしまい、相手が話す番を奪ってしまう型です。打ち合わせのたびに修正が増えるのは、口下手ではなく、聞く順番を習っていないからだと思います。次の章から、3つの質問を順番に見ていきます。

最初の10分で聞くのはこの3つだけ

説明を始める前に、この3つを聞き終える。それだけで打ち合わせの構造が変わります。

デザイン打ち合わせで最初に聞く3つの質問の順番を示した図

①「これは、どこで、誰に見せるものですか」

使い道と置き場所を最初に確認します。名刺なのか、店頭に貼るチラシなのか、Webサイトのトップなのかで、サイズ・文字量・色の考え方はまったく別物になります。名刺なら情報を絞る必要があるし、店頭のポスターなら遠くから見て一瞬で伝わる文字の大きさが要ります。

言い方の例:「これは、どこに置く、誰に見せるものですか」

相手がよく返す答え:「お店の入口に貼ります」→ 次に聞くひと言:「入口の前を通る人は、歩いている人ですか、車の人ですか」

②「見た人に、見たあと何をしてほしいですか」

デザインの好き嫌いではなく、役目を聞きます。電話してほしいのか、来店してほしいのか、ただ覚えておいてほしいのか。

言い方の例:「これを見た人に、見たあとどうしてほしいですか」

相手がよく返す答え:「とりあえず知ってもらえれば」→ 次に聞くひと言:「知ったあと、どこで思い出してもらえたら一番うれしいですか」

役目が決まると、色や配置の判断基準が一気に定まります。目立たせるべきは電話番号なのか、店名なのか、地図なのかが決まるからです。

③「今あるもので、困っていることは何ですか」

前のチラシ・ロゴ・サイトがあれば見せてもらい、困っていることを言ってもらいます。ここで「好きな色はありますか」から入るのはNG例です。好みを聞くと「おまかせで」で止まりやすく、会話が続きません。不満は具体的な言葉になって出てきやすい、という違いがあります。

言い方の例:「今お使いのもので、困っていることはありますか」

相手がよく返す答え:「なんとなく古い気がして」→ 次に聞くひと言:「古いと感じるのは、色ですか、文字の形ですか、それとも情報の量ですか」

この3つを聞き終えるまでは、こちらの説明も見本も出しません。聞くことに専念する10分です。

実際の流れにすると、こうなります。

  • 自分:「これは、どこに置いて、誰に見せるものですか」
  • 相手:「お店の入口に貼るチラシです」
  • 自分:「入口の前を通る人は、歩いている人が多いですか、車の人が多いですか」
  • 相手:「歩いている人がほとんどですね」
  • 自分:「これを見た人に、見たあとどうしてほしいですか」
  • 相手:「一度お店に入ってみてほしいです」
  • 自分:「今お使いのチラシで、困っていることはありますか」
  • 相手:「文字が多すぎて、何のお店か一瞬で伝わらない気がします」

この4往復だけで、サイズ感・文字量・優先して見せる情報がほぼ決まります。

「説明から入る」と打ち合わせがどう崩れるか

実績を先に見せると、相手はその中から選ぼうとする

実績を先に見せる進め方と質問から入る進め方の違いを比較した図

ポートフォリオを先に10点見せると、相手は自然とその中から近いものを選ぼうとします。「この感じでお願いします」と過去の作品を指定され、相手の商売にはまったく合わない方向で話が固まってしまう。これはよくあるNG例です。

実績は自分がどれだけ作れるかを伝える材料ですが、相手が今欲しいのは「自分の商売に合う一枚」です。順番を間違えると、この二つがすれ違ったまま進みます。

NG例の会話はこうなりがちです。

  • 自分:「これまでこんな仕事をしてきました」(過去作を10点見せる)
  • 相手:「これ、いいですね。この感じでお願いします」
  • 自分:(それ、まったく違う業種のロゴなんだけどな……)

指定された過去作が、今回の相手に合っているとは限りません。それでも一度「この感じで」と言われてしまうと、あとから方向を変えるのは難しくなります。

自分の説明が長いほど、相手の本音は出てこない

説明をしている間、相手は聞く側に回ります。聞く側になっている間は、困りごとを話す番が来ません。最初の10分は自分が話す時間をできるだけ短くして、質問と相づちだけで進める。これは私自身がやってみて効果を感じているやり方で、万人に当てはまる法則として言い切れるものではありませんが、試す価値はあると思います。

説明が必要なのは「聞いたあと」

進め方や料金の区切り、修正の回数といった自分側の説明は、聞き終えたあとに出したほうが通りやすくなります。「今伺った内容だと、こういう進め方になります」という形で、相手の話を受けてから自分の話をする。説明を先に出すかあとに出すかだけで、同じ内容でも相手の受け取り方が変わります。

「おまかせで」「いい感じに」と言われたときの聞き返し方

言われたままに受けると、あとで修正が増える

「おまかせで」への聞き返し方を対立する言葉の組で示した図

「おまかせで」は、好みがないという意味ではないことが多いです。言葉にできていないだけ、というケースのほうが多いと感じます。そのまま受けて作ってしまうと、出来上がったものを見てから「思っていたのと違う」と言われ、3回作り直す、ということが起こります。

聞き返すのは失礼ではない

聞き返すことを遠慮する必要はありません。前置きを一言添えると角が立ちません。

言い方の例:「『いい感じ』を外したくないので、2つだけ教えてもらえますか」

この一言があるだけで、確認が相手のための手間だと伝わります。

言葉ではなく「どっちが近いか」で聞く

言葉で説明してもらうのではなく、反対の言葉を2つ並べて選んでもらうほうが早く決まります。3〜4組ほど用意しておくと、たいていの打ち合わせで使えます。

選んでもらう組み合わせ分かること
落ち着いた/にぎやか色数や余白の方向性
高級そう/親しみやすいフォントと写真のトーン
シンプル/情報たっぷり文字量と要素の数
新しい/昔ながら配色と書体の年代感

「落ち着いた方ですね」と一言返ってくるだけで、方向性はかなり絞れます。

もし「どちらでもない」と言われたら、別の組み合わせをもう1組出します。それでも決まらないときは、「では今出た言葉に近い方向で1案作ってみます」と伝えて先に進めば十分です。無理にその場で言葉にさせる必要はありません。

見本を見せる順番|聞き終わってから、2〜3案に絞って出す

見本は「聞いた内容の確認」として出す

見本を見せる順番と案の構成(本命1つ+振り幅案)を示した図

見本を出すときは、「さっき伺った、入口の前を通る人に向けたものなら、この方向が合うと思います」というように、相手の言葉と結びつけて出します。見本を出すたびに、相手が言った言葉を1つ引用する。これだけで「自分の話を聞いてくれた」という印象に変わります。

案は2〜3つまで

5案以上並べると、相手は選べなくなり「全部いいですね」で止まりやすくなります。本命1つに、振り幅の違う案を1〜2つ添える組み立て方がおすすめです。本命だけだと比較材料がなく、5案以上だと選ぶ負担が大きすぎます。

見せる順番にもコツがあります。私は振り幅のある案を先に見せて、本命は最後に見せるようにしています。比較したうえで最後に見たものの印象が残りやすいと感じるからで、必ずそうなると保証できるものではありません。

「どれが好きですか」ではなく「どれが一番お客さんに届きそうですか」と聞く

判断の軸を、相手個人の好みから、②で聞いた「見た人にどうしてほしいか」に戻します。好みで選んでもらうと、あとで家族や社員の一言でひっくり返りやすくなります。「お客さんに届くのはどちらか」という軸で選んでもらうと、あとから覆りにくくなります。

NG例OK例
実績一覧を最初に見せる3つを聞いてから見本を出す
聞く前に作り込んだ案を出す聞いた言葉を引用しながら出す
10案並べて選んでもらう本命1つ+振り幅違い1〜2つの2〜3案
「どれが好きですか」で聞く「どれがお客さんに届きそうですか」で聞く

打ち合わせの終わり方で、次の修正回数が決まる

最後の5分で「決まったこと」を読み上げる

打ち合わせの終わりに、使い道・見る人・方向性・次回までにやること、の4点を口頭で読み上げて確認します。「今日決まったことを確認させてください」の一言から入ると、自然に読み上げに入れます。

当日中に文章で送る

読み上げた内容を、当日中に箇条書き3〜5行にしてメールかLINEで送ります。「言った言わない」を防げるだけでなく、相手が社内で共有するときにもそのまま使えます。

文面の例です。

「本日はありがとうございました。決まったことを共有します。 ・用途:店舗入口に貼るチラシ ・見た人にしてほしいこと:来店 ・方向性:落ち着いた配色、文字は少なめ ・次回:○月○日に初稿をお送りします」

この4行があれば、相手は家族や社員にもそのまま転送できます。

次の予定をその場で決める

「初稿は○日にお送りして、○日に15分だけ見ていただく時間をもらえますか」と、次の予定をその場で決めます。日が空くほど相手の熱は下がっていく、というのは私が何度も経験してきたことです。次の約束を打ち合わせの場で取ってしまうのが一番確実です。

打ち合わせは単発のやり取りではなく、フリーランスの営業のしかた全体の中の一工程です。聞く・見本を出す・決まったことを確認する、という一連の流れを営業のどこに位置づけるかを知っておくと、打ち合わせ単体で悩むことが減ります。

次の打ち合わせに持っていくチェックリスト

会う前(5分でできる下調べ)

相手の今のチラシ・サイト・SNSがあれば見て、気になった点を1つだけメモしておきます。1つで十分です。多く用意しようとすると、それだけで時間を使ってしまいます。

打ち合わせ中

  • 3つの質問(使い道/見た人にしてほしいこと/今の不満)を聞き終えるまで説明しない
  • 「おまかせで」が出たら、反対の言葉の組で選んでもらう
  • 見本は2〜3案。本命1つ+振り幅違い1〜2つ
  • 最後に「決まったこと」を読み上げる

この4つを紙に印刷して手元に置いておくと、話しながらでも見返せます。

今日やれること

次の打ち合わせ用に、①の質問を自分の言葉に書き直して、スマホのメモに入れておいてください。1つだけやるなら、これだけで十分です。

性格を変える必要はありません。話がうまくなくても、聞く順番さえ持っていれば、打ち合わせは進みます。

よくある質問

デザインの打ち合わせで最初に何を聞けばいいですか?

好みより先に、①どこで誰に見せるものか、②見た人にどうしてほしいか、③今あるものの不満、の3つ。役目が決まると色や雰囲気の話が早くなる

打ち合わせでポートフォリオはいつ見せるべきですか?

相手の話を聞き終わってから。先に見せると過去作から選ぶ打ち合わせになり、相手の商売に合わない方向で固まりやすい

「おまかせします」と言われたらどうすればいいですか?

そのまま受けず、『落ち着いた/にぎやか』のような反対の言葉を2つ並べて選んでもらう。言葉にできていないだけのことが多い

デザイン案は何案出すのがいいですか?

2〜3案が目安。本命1つと振り幅の違う1〜2つ。多すぎると選べず決まらない。『どれが好きか』ではなく『どれがお客さんに届きそうか』で選んでもらう

打ち合わせ後、修正のやり直しを減らすには?

最後に決まったことを読み上げ、当日中に3〜5行の文章で送る。次に見てもらう日もその場で決めておく

本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。

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