対面営業・商談
電話の問い合わせ対応|ひとりで受ける人が、最初の一言と聞くことを決めておく
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
電話の問い合わせ対応は「最初の一言」「聞く順番」「切る前の一言」を決めておけば足りる
値段を答えたら「また連絡します」で切れた電話
作業中に、知らない番号から着信がある。手を止めて慌てて出ると、「ホームページをお願いしたいんですが、いくらくらいですか」と聞かれる。頭の中で計算して、総額をひとつ答える。「検討して、またご連絡します」と言われて、電話は切れる。そのまま、連絡は来ない。
ひとりで仕事を受けている人には、思い当たる場面だという人が多いと思います。
黙られたのは、高かったからとは限らない
こういう電話のあと、「やっぱり高いと思われたんだ」と自分の中で結論を出してしまう人が多いです。返事が来ないことそのものより、金額を聞いた相手に黙られたことのほうが、あとまで引きずりやすいものです。
ただ、別の見方もできます。相手は、決める材料がそろわないまま電話を切ったのかもしれません。何に使うのか、いつまでに必要なのかを聞かずに金額だけ伝えると、相手が比べられるのは値段だけになります。値段だけで比べるしかない相手は、ほかの見積もりが届いたときに、こちらを選ぶ理由を持っていません。
高いと思われたのか、材料が足りなかったのか。電話を切ったあとでは、どちらなのかを確かめようがありません。確かめられないなら、次の電話から、材料をそろえてから切る形に変えるほうが早いです。
話のうまさより、電話の横に置くメモ1枚
電話の問い合わせ対応に必要なのは、話のうまさではありません。先に決めておく3つです。
- 最初の一言(名乗りと、いま話せるかどうか)
- 聞く順番(値段を答える前に聞くこと)
- 切る前の一言(次に、誰が、何をするか)
この3つを紙に書いて電話の横に置き、読みながら受ければ足ります。口がうまい必要も、性格を変える必要もありません。口下手な人は、決めた言葉があるほうが落ち着きやすいです。
営業全体の中で電話がどこに位置するのかは、ひとりで仕事を取る営業の進め方にまとめています。この記事では、電話を受ける場面だけを切り出して、そのまま使える言葉を並べます。
会社の受付向けのビジネスマナー(取り次ぎ、保留の作法など)は、ここでは扱いません。取り次ぐ人がいないので、電話を受ける人が仕事を取る人でもあります。電話は、マナーの試験ではなく仕事の入口です。
最初の一言は、名乗りと「いま話せるかどうか」を正直に伝える
ひとりで受ける人の名乗り方
最初の一言は、屋号と名前をセットにして、毎回同じ言い方にします。
はい、〇〇デザインの〇〇です。
携帯電話で受ける人ほど、先に決めておくことをおすすめします。着信が個人の電話と仕事の電話で同じ端末に入ってくるので、出た瞬間に切り替える言葉がないと、つい普段の声で出てしまいます。
NG例は2つあります。
- 「もしもし」だけで出る(相手は、仕事の電話に出てもらえたのか分からず不安になることがあります)
- 名乗らずに「はい」だけで出る(相手がかけ間違いを疑って、切ってしまうことがあります)
毎回同じ言い方にしておくと、慌てて出た日も口が勝手に動きます。
手が離せないときは、その場で折り返す時間を言う
作業中、施術中、運転中。出てしまったけれど、いま話せない場面はあります。
このとき、上の空のまま話を続けるのがいちばんよくありません。相手の話が頭に入らず、聞くべきことも聞けないまま、値段の話に進んでしまうからです。中途半端に受けるより、時間を決めて折り返したほうが、あとでちゃんと話を聞けます。
いま作業中なので、15時過ぎに折り返してもよろしいですか。このお電話番号で大丈夫ですか。
言うことは2つです。折り返す時間と、折り返す番号の確認。この2つがそろえば、相手は「後回しにされた」とは感じにくく、「あとで話せる」と受け取りやすくなります。
言い切るために、折り返す時間は自分の予定表を見て決めます。「のちほど」と言うと、あとで自分も相手も困ります。
出られなかった電話と留守番電話への返し方
出られなかった着信は、留守番電話の案内で受け止めます。屋号、名前、折り返すことの3つを入れます。
お電話ありがとうございます。〇〇デザインの〇〇です。ただいま電話に出られません。お名前とご用件をお残しください。こちらから折り返しご連絡します。
折り返すときの最初の一言は、これです。
先ほどお電話をいただいた〇〇デザインの〇〇です。いま少しお時間よろしいですか。
「いま少しお時間よろしいですか」を入れると、相手が移動中や会議中でも、無理に話を始めずに済みます。
もうひとつ、決めておくことがあります。着信を確かめるタイミングです。たとえば「作業の区切りごと」と決めておきます。決めていないと、見たのが夕方で、折り返したのが翌日になります。問い合わせの電話は、日が空くほど相手の熱が冷めやすいです。
値段を聞かれたら、答える前に4つだけ聞く
聞く順番の表
値段を答える前に聞くことは、4つに絞ります。多すぎると、尋問のようになります。
| 順番 | 聞くこと | 聞き方の例文 | なぜ聞くか |
|---|---|---|---|
| ① | 何に困っているか・何をしたいか | 「どういったことでお困りですか」 | 内容によって金額が変わる。相手が欲しいものと、こちらが想像しているものがずれていないかを確かめる |
| ② | いつまでに必要か | 「いつ頃までに必要ですか」 | 急ぎかどうかで、受けられるかどうかと進め方が変わる |
| ③ | どこで知ったか | 「どちらで私のことをお知りになりましたか」 | 紹介なのか検索なのかで、相手がこちらをどう見ているかが分かる。次の問い合わせにも生きる |
| ④ | 一緒に決める人がいるか | 「ご家族やほかの方とも相談されますか」 | 電話の相手が決める人とは限らない。相談する相手がいるなら、あとで見せる資料が要る |
④は、聞き方で相手の受け取り方が変わります。「ほかにどこに問い合わせていますか」と聞くと、探りを入れているように聞こえます。「ご家族やほかの方とも相談されますか」と聞けば、相手の都合に合わせる聞き方になります。
いきなり値段を聞かれたときの返し方
電話の最初に、値段だけを聞かれることがあります。こういうときは、値段を隠さずに、先に聞く理由を言います。
内容によって変わるので、2つ3つだけ伺ってもいいですか。目安はそのあとすぐお伝えします。
「目安はそのあとすぐお伝えします」まで言うのがポイントです。ここまで言うと、はぐらかされている感じが出にくくなります。
NG例も2つ挙げます。
- 「お見積もりは、お会いしてからでないと出せません」とはぐらかす。相手は、値段を言えないのかと感じて、ほかを探し始めることがあります。
- 何も聞かずに、総額を即答する。冒頭の場面のように、相手は値段しか比べられなくなります。
どちらも、相手の質問を無視している点が同じです。答えると約束して、そのために聞く。この順番にすると、どちらのNGも避けられます。
聞いたことは、その場で言い直して確かめる
聞いたことは、最後に言い直します。
〇月までに、〜をお願いしたい、ということで合っていますか。
言い直すと、相手は分かってもらえたと感じやすくなります。こちらにとっても、メモの書き間違いや聞き間違いを、電話を切る前に直せます。
電話は、顔が見えない分、お互いに聞き取りのずれが起きやすいです。あとで「そんなつもりではなかった」となれば、話が壊れることもあります。数十秒の言い直しは、それを防ぐ保険になります。
金額は「幅」と「何で変わるか」をセットで答える
電話では総額をひとつだけ言わない
金額を答えるときは、総額をひとつだけ言わず、幅と、何で変わるかをセットで伝えます。
この内容なら〇万〜〇万円くらいです。ページ数と、写真をこちらで用意するかどうかで変わります。
何で変わるかを添えると、相手は値段以外にも比べるものができます。「ページ数を絞れば下がるのか」「写真を自分で用意すれば安くなるのか」と考えられます。値段だけを見て黙るのではなく、中身を見て考える形に変わります。
電話では、金額の細かい内訳までは伝わりません。だからこそ、変わる要素を2つくらいに絞って言うほうが、相手の頭に残ります。
黙られても、自分から値下げを言い出さない
金額を言ったあと、相手が黙ることがあります。このとき、沈黙に耐えられずに「もう少し下げられます」と言ってしまうのがNG例です。
黙っているのは、高いと思っているからとは限りません。計算している途中かもしれませんし、頭の中で別のことを考えているのかもしれません。そこで先に値下げを出すと、最初の金額が根拠のないものだったと伝わってしまいます。
代わりに言う一言は、これです。
どこか気になるところはありますか。
金額、納期、進め方。どこが引っかかっているのかを、相手の口から出してもらいます。引っかかりが金額でなければ、値下げの話をしなくて済みます。
電話で約束しないほうがいいこと
電話で、その場で約束しないほうがいいことがあります。
- 確定の金額(条件を紙に書いて見直す前に言うと、あとで直せません)
- 納期の約束(手元の予定を確かめずに言うと、守れなくなります)
- その場では引き受けられない対応(相手の勢いに押されて「できます」と言うと、あとで断りづらくなります)
これらを聞かれたときの代わりの言い方は、これです。
確認して、〇日までにメールでお送りします。
日付と手段を言い切ります。「確認してまた連絡します」だけだと、冒頭の電話と同じで、次の一手がどちらにもありません。
切る前に「次に、誰が、何をするか」を決める
「ご検討ください」で切ると、次の一手は相手に残ったまま
金額を伝えて「ご検討ください」と言って電話を切る。そのあとは、相手からの連絡を待つ。
この状態を、ここでは「相手の番型」と呼びます。出したあとに何をすればいいかを決めていないので、あとは相手の番で止まってしまう形のことです。
電話を切った時点で、次の一手が相手にだけ残っています。相手が忙しければ、そのまま忘れられます。こちらの腕や値段とは関係なく、連絡が途切れる形になっています。
切る前にやることは決まります。相手が決めるのを待つのではなく、次に誰が何をするかを、電話の中で決めてしまうことです。高いと思われたのではなく、まだ決められないだけかもしれない、という見方は、いつも残っています。決める材料が足りないか、ほかの人に相談する時間が要るか、単に目の前の仕事に押されているか。そのどれであっても、次の約束があれば連絡は途切れません。
切る前の一言の例文3つ
切る前の一言は、3つ用意しておきます。
① メールで見積もりを送る
では明日までに見積もりをメールでお送りします。届いたか、あさってお電話で確認してもいいですか。
② 会って決める
一度30分ほどお会いして、実物を見ながら決めませんか。
③ こちらから時期を決めて連絡する
お急ぎでなければ、来月に入ったらこちらから一度ご連絡します。
どれを使うかは、相手が急いでいるかどうかで選びます。
- 期限が近い → ①。見積もりを早く出して、確認の電話の日も決める
- 文章や数字だけでは決めにくい内容(現物を見ないと分からない、相談する人が多い)→ ②
- 急いでいない、まだ検討の入口にいる → ③。こちらから連絡する日をあらかじめ言っておく
どれにも共通するのは、「こちらが次に動く日」が相手に伝わっていることです。
電話のあとに送るメールには、電話で聞いた内容を書いておきます。
本日はお電話ありがとうございました。〇月までに、〜をご希望とのことで、〇万〜〇万円の目安をお伝えしました。見積もりは〇日までにお送りします。
聞いたこと、伝えたこと、次の約束。この3つが残っていれば、相手があとで見返しても、こちらが何をする人なのかがすぐ分かります。
電話の横に置く1枚メモ(そのまま使える台本)
電話を受ける前に書いておく項目
次の項目を、紙かスマホのメモに書いて、電話の横に置きます。
- □ 名乗りの一言(屋号と名前)
- □ いま話せないときの一言(折り返す時間と番号の確認)
- □ 聞く4つと順番(困りごと→期限→どこで知ったか→ほかに相談する人)
- □ 金額の答え方(幅と、何で変わるか)
- □ 切る前の一言(3つのうち、相手に合うもの)
- □ 控えること(名前、連絡先、やりたいこと、期限、次の約束)
すべて一度に使いこなす必要はありません。最初の一週間は、名乗りと切る前の一言だけでも、メモを見ながら言ってみてください。聞く順番は、慣れてから足せば十分です。
電話を切ったらすぐやること
電話を切ったら、すぐ2つのことをします。
- メモを、読める字で書き直す(電話中の走り書きは、翌日には読めなくなりがちです)
- 約束した連絡(見積もりの送付、確認の電話)を、その場で予定表に入れる
NG例は、あとでやろうとメモを置いたまま日が空くことです。日が空くと、約束したこと自体を忘れてしまいます。
うまくいった電話は、メモに書き足していく
問い合わせの電話で、相手の反応がよかった言い回しや、聞いてよかった質問があったら、メモに書き足していきます。
うまくいかなかった電話のほうが記憶に残りやすく、うまくいった電話の言い回しや聞いた順番は流れてしまいがちです。だからこそ、うまくいったほうを紙に残しておきます。次の電話は、毎回いちから考えずに、前回の続きから始められます。
メモが1枚の紙として育っていくと、電話は「その場で頑張るもの」から「用意したものを使うもの」に変わっていきます。
個別の契約や金額の取り決めで判断に迷う場合は、弁護士や税理士などの専門家に相談してください。
よくある質問
電話でいきなり値段を聞かれたら、どう答えればいいですか?
値段は隠さず、「2つ3つ伺ってから目安をお伝えします」と、先に聞く理由を言ってから質問します。答えるときは、総額をひとつだけ言うのではなく、幅と、何で変わるかをセットで伝えます。
作業中で電話に出られないときは、どうすればいいですか?
出てしまってから話せないと気づいたときは、その場で折り返す時間と番号を確かめて切ります。出られなかった着信は、留守番電話の案内で折り返すことを伝えておき、着信を確かめるタイミング(作業の区切りごとなど)を自分で決めておきます。上の空のまま話を続けないほうが、あとで話を聞けます。
電話が苦手でも、問い合わせに対応できますか?
話のうまさは必要ありません。最初の一言、聞く順番、切る前の一言をメモに書いて電話の横に置き、読みながら対応すれば足ります。
問い合わせの電話を携帯で受けるとき、どう名乗ればいいですか?
屋号と名前をセットにして、毎回同じ言い方にします(例:「はい、〇〇デザインの〇〇です」)。「もしもし」だけだと、相手が仕事の電話かどうか分からず不安になることがあります。
電話のあと連絡が来ません。こちらから連絡してもいいですか?
切る前に次の連絡の約束をしておけば、こちらから連絡しやすくなります。約束していなかった場合も、電話で聞いた内容を添えて一度連絡するのは不自然ではありません。連絡が来ないのは、高いと思われたからとは限らず、まだ決められないだけのこともあります。
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