対面営業・商談
造園・植木屋の集客|年に一度の仕事を、続く関係にする
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
造園・植木屋の集客で最初に見直すのは、新規の探し方ではなく去年切った庭
呼ばれないのは仕上がりのせいではない
去年の5月に剪定したお宅から、今年の5月になっても連絡が来ない。多くの人はここで「気に入られなかったのかもしれない」と自分に言い渡します。
でも、実際に起きていることは別です。庭主はあなたの名前を覚えていません。覚えているのは「去年頼んだ人」までで、領収書も電話番号も出てこないまま、探す手間の前にポストに入っていたチラシや検索結果に流れていきます。仕上がりが悪かったからではなく、思い出してもらう働きかけが庭主の手元に残っていなかっただけです。
腕を疑う前に、確かめてほしいことがあります。去年作業したお宅に、名前と連絡先が書かれた紙は残っていますか。口頭で「また来年」と言っただけで終わっていませんか。この2つの問いに詰まるなら、原因は庭木の仕上がりではなく、その先の一手間です。
「紹介待ち型」になっていないか
いい仕事をすれば次の依頼も紹介も出ると思っていて、思い出してもらうための働きかけを自分からはしていない。これは紹介待ち型と呼べる状態で、相手の記憶力に自分の来年の仕事を預けているのと同じです。
新規を追い続ける構造の計算
たとえばの話として考えてみます。去年切った庭のうち半分しか今年戻ってこないとしたら、残り半分の枠は毎年チラシや検索広告で新しく埋め続けることになります。新規は一件ごとに値段の話から始まるので、単価も相手のペースで決まりやすくなります。
戻ってくる割合を上げるほうが、チラシの部数を増やすより先にやることです。ホームページ・地図登録・チラシは「去年の庭に戻る仕組み」ができたあとに足す話であって、最初にやることではありません。
新規の問い合わせを追いかけている間は、値段も相手のペースも自分でコントロールできません。去年の庭に戻るほうは、相手がすでにあなたの仕事を知っているところから話が始まります。同じ一件でも、話の始まる位置が違います。
庭木は次に切る時期が決まっている——剪定カレンダーがそのまま次の約束になる
木の種類で時期が違う
剪定の時期は木の種類によって決まっています。表にすると次の通りです。
| 木の種類 | 目安の時期 |
|---|---|
| 常緑樹 | 5〜6月/9〜10月 |
| 落葉樹 | 7〜8月/11〜3月(7〜8月の強剪定は避ける) |
| 花の咲く木 | 花が咲き終わったら早めに |
この表は剪定の作業計画であると同時に、そのまま「営業カレンダー」として読み替えられます。庭に何の木が植わっているかが分かれば、次にあなたが声をかけるべき月は、すでに木の側で決まっています。考える必要があるのは「いつ連絡しようか」ではなく「この庭はいつの木か」だけです。
常緑樹は年2回の窓がある
常緑樹は5〜6月と9〜10月の両方に目安があります。つまり、年に一度の仕事だと思い込んでいた庭が、木の種類によっては年2回の約束になり得るということです。
これは作業当日にそのまま言葉にできます。「今日は5月なので、秋の9〜10月にもう一度、軽く整える回があります」。この一言があるだけで、庭主の頭の中に「次」が生まれます。
落葉樹だけの庭でも、年に一度で終わらせる必要はありません。7〜8月は軽い手入れだけにとどめ、本格的な剪定は11〜3月に回す、という分け方もできます。木の種類ごとに時期を分けて説明すると、1回の訪問が2回の約束に変わります。
NG例: 必要になったら呼んでください
作業の最後によく出てしまう一言が「また必要になったら呼んでください」です。これは主導権を丸ごと庭主に渡してしまう言い方で、渡された側は忘れます。連絡先を探す手間より、目についたチラシや検索のほうが早いからです。
言い換えるなら「来年の6月ごろ、こちらから一度ご連絡します。切るかどうかはその時に決めていただいて大丈夫です」。決めるのは庭主、声をかけるのは自分、という役割分担をこちらの一言で作っておきます。
作業当日の最後の30分で、翌年の仕事は決まる
「今日やったこと」で終わらせず「次に起きること」を言う
剪定には目的があります。樹形を美しく保つこと、湿度が籠るのを防いで病害虫を予防すること、樹木の内側にも光が届くようにして光合成を促進すること、古い枝葉を落として若い枝葉に栄養を行きわたらせ花付きをよくすることです。
これをそのまま説明しても専門用語の羅列にしかなりません。庭主の庭に当てて、一言に変換します。「内側まで光が入るようにしたので、来年は元気な枝が出やすくなります。それを来年また整えるのが次の回です」。今日やった作業の説明の中に、次回の理由をあらかじめ入れておくということです。
お庭カルテを1枚残す
作業の最後に、紙を1枚残します。書く項目は次の4つです。
- 木の種類と本数
- 今日の作業内容
- 次の目安月(S1の時期表から)
- 気になった点(枯れ枝・虫・隣家への越境など)
この紙の写しを庭主に渡し、同じものを自分の台帳にも残します。渡す紙には自分の名前と電話番号を入れておきます。これで、庭主の記憶の中の「去年頼んだ人」が、名前と連絡先に戻ります。
記入例はこのような形です。
| 項目 | 記入内容の例 |
|---|---|
| 木の種類と本数 | 常緑樹(キンモクセイ)2本、落葉樹(モミジ)1本 |
| 今日の作業 | 剪定・枝の透かし・落ち葉の清掃 |
| 次の目安月 | 秋(9〜10月ごろ) |
| 気になった点 | 隣地側に枝が越境気味 |
特別な書式は要りません。手書きのメモ用紙1枚で十分です。大事なのは、名前と連絡先が庭主の手元に残ることです。
帰り際の一言の台本
NG例は「ありがとうございました、また何かあれば」です。お礼の言葉で区切って終わっています。
OK例は「来年の◯月ごろに、木の様子を見に一度ご連絡します」です。お礼のやりとりで止まらず、次の一言まで自分で言い切ります。この差だけで、翌年の連絡のしやすさが変わります。
翌年、こちらから声をかける——「そのうち連絡する」を日付に変える
時期の1〜2か月前に出す
S1の時期表を基準に、常緑樹なら3〜4月ごろ、落葉樹なら10月ごろに一報を出します。
「また連絡しようと思っている」で止まってしまう人が多いです。いつ出すかを決めていないので、そのまま日が過ぎて切れてしまいます。台帳を「次の目安月」で並べ替えておき、月初に翌月分の連絡先を出す、というところまで決め事にしておきます。
売り込みに見えない文面例
そのまま使える短文です。
昨年6月に剪定させていただいた◯◯です。今年もそろそろ枝が伸びてくる時期です。ご都合のよい週があれば教えてください。今年は見送る場合もお気遣いなくどうぞ。
断る逃げ道を先に書いておくことで、売り込みに見えず、庭主のほうも返事がしやすくなります。ハガキ・LINE・電話のどれでも構いませんが、最初の年は前回と同じ連絡手段を使うのが無難です。
LINEやショートメールで送るなら、もう少し短くても構いません。
◯◯です。そろそろお庭の枝が伸びてくる時期ですね。今年もお手入れのご予定があれば教えてください。見送りでしたら遠慮なくお知らせください。
長い説明は要りません。木の時期という理由と、断ってもいいという一言があれば十分です。
NG例: 値引きで呼び戻す
「今年はお安くします」で呼び戻すのは誠実さではありません。安さで戻ってきた庭主は、もっと安いところが見つかれば同じように離れていきます。
声をかける理由は木の時期だけで十分です。値段の話は、聞かれてからで構いません。
現場そのものが営業になる——近所の目を味方にする
作業中は近隣に見られている
隣家は、音とゴミと車の停め方を見ています。作業前に一声かけておきます。「今日は◯時まで音が出ます。終わったら道路も掃いて帰ります」。
そして実際に、帰りに道路を掃いている姿。これが隣家にとっての、最初の見積り前の顔合わせになります。何も営業していないのに、営業になっています。
隣家に渡す1枚
お庭カルテと同じ紙の裏面に、S1の時期表をもとにした「お庭の手入れ時期の目安」を作っておき、挨拶した隣家にも渡します。名刺より手元に残ります。
押し売りに見せないために「ご入用のときにどうぞ」の一言だけ添えて、その場で仕事の話はしません。渡して終わりにします。
紙を渡すタイミングは、作業の音や車で迷惑をかけた直後がちょうどいいです。詫びの延長として渡せるので、営業の押しつけに感じられにくくなります。
紹介の頼み方を、借りにならない形にする
庭主に「どなたか紹介してください」と頼むのは、気が引ける人が多いです。頼んだ瞬間、対等じゃなくなる気がするからです。
代わりに「近所で同じ時期に困っている方がいたら、この目安表を渡してください」と、紙を2枚置いていきます。頼んでいるのは紹介ではなく、紙の受け渡しです。庭主も気軽に渡せますし、自分も紹介を頼んだ感覚にならずに済みます。
「一本いくら」から「この庭を一年見る」へ——頼まれ方を変える見積の分け方
総額だけの見積は値段の話しかできなくなる
NG例は「剪定一式 ◯円」という総額だけの見積です。これだと庭主が見比べられるのは金額しかなく、話は自然と値段の話に寄っていきます。他所と比べられたときも、何が違うのか説明のしようがありません。
OK例は、木ごと・作業ごとに分け、S1の時期表と合わせて「春の回」「秋の回」に分けて見せる書き方です。たとえば「常緑樹の剪定」「落葉樹の剪定」「生垣の刈り込み」「清掃・処分」を別項目にして、それぞれどの時期の回に入るかを添えます。庭主が見るのは金額だけではなく「いつ・何をしてもらえるか」になります。
年間で見る提案は、押し付けではなく選択肢
「一年分を先に決めてください」ではなく、「単発でも、年2回まとめてでも、どちらでも大丈夫です」と両方を並べて渡します。決めるのは庭主です。
並べておくだけで、これまで年に一度だった関係が、年に二度の関係に変わる庭が出てきます。強く勧める必要はありません。
金額の言い方
数字は言い切ります。「だいたい◯円くらいになると思うんですが……」と濁すと、庭主のほうが不安になります。
値段は自分の値打ちの点数ではなく、仕事の条件です。見積りの分け方や言い方を深く詰めていくと、これは剪定に限った話ではなく、独立して働く人全体に共通する話になります。詳しくは独立した人の営業のやり方にまとめています。
造園・植木屋の集客でよくある順番違いと、やらなくていいこと
ホームページやSNSを先に作り、去年の庭に連絡していない
順番を間違えている例です。正しい順番は次の4つです。
- 去年までの顧客一覧を紙に書き出す
- 木の種類から次の目安月を振る
- 今月出す分から連絡する
- それが回り始めてから、新規の入口(地図登録・チラシ)を足す
1〜3までは、お金がかかりません。
お礼で区切ってしまう
作業後のお礼のやりとりで、関係をそこで終えてしまう人が多いです。お礼のあとに「次の目安月」の一言を足すだけで、続く関係になります。
ありがとうございました。来年の6月ごろにまたご連絡しますので、そのころ庭の様子を見せてください。
やらなくていいこと
話し上手になる必要はありません。値引きで勝つ必要もありません。毎年新しい集客法を試す必要もありません。
造園や植木屋の仕事は、木という決まった周期を相手にしています。周期がある仕事は、周期に合わせてこちらから動くほうが、相手を待つより確実です。必要なのは、木の時期に合わせてこちらから声をかける台帳1冊です。今日やることは、この3つに絞れます。
- 去年の顧客を書き出す
- お庭カルテの紙を作る
- 来月分の連絡日を手帳に書く
よくある質問
植木屋の集客はチラシとホームページのどちらを先にやるべきですか?
どちらも後でよい。先に去年までの顧客一覧を書き出し、木の種類から次の目安月を振って、こちらから連絡する。それが回ってから新規の入口を足す
剪定の営業はいつの時期にかければいいですか?
木の種類で違う。常緑樹は5〜6月と9〜10月、落葉樹は7〜8月と11〜3月が目安なので、その1〜2か月前に一報を出す。花の咲く木は花後早め
去年のお客さんに自分から連絡するのは迷惑ではないですか?
木の時期を理由にした短い一報で、断る逃げ道(今年は見送っても大丈夫です)を先に書けば売り込みにならない。庭主は名前を思い出せずに困っていることが多い
一人でやっている植木屋でも年間管理の提案はできますか?
できる。「単発でも、春と秋の2回まとめてでも、どちらでも」と選択肢を並べるだけでよい。決めるのは庭主。契約書や大がかりな仕組みは要らない
お客さんが名前を覚えてくれません。どうすれば思い出してもらえますか?
作業当日に、名前と番号が入った「お庭カルテ」1枚を渡す。次の目安月も書いておくと、庭主が探す前にこちらから声をかける流れになる
参照した情報源
- 庭木の剪定|住友林業緑化株式会社(住友林業緑化株式会社)・確認日 2026-09-16
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