対面営業・商談
雑貨屋の集客|見るだけで帰った人に、もう一度来てもらう
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
雑貨屋の集客は「新しい客を呼ぶ」より「見るだけで帰った人にもう一度来てもらう」が先
見るだけで帰る人が多いのは、センスがないからではない
店に入ってくれた時点で、品揃えはもう見てもらえています。棚を一周して、手に取って、戻して、そのまま出ていく。その人は「気に入らなかった」のではなく、「今日買う理由がなかった」だけかもしれません。
足りないのは品揃えのセンスではなく、その人が次に来る理由と、店を思い出すきっかけのほうです。ここを取り違えると、新商品を増やす方向にばかり手を伸ばしてしまいます。新しい商品を足しても、次に来る理由がなければ、また同じように見るだけで帰る人が増えるだけです。
紹介待ち型かもしれません
紹介待ち型かもしれません。いい仕事をすれば紹介は出ると思っていて、思い出してもらう働きかけをしていない状態を指す言い方です。
雑貨屋に置き換えると、「いい物を置いていれば、また来てくれるはず」と待っている状態にあたります。品揃えを整えることに時間を使い、来店した人に次に来る理由を渡す動きはしていない。仕入れや陳列にかけた時間の分だけ、来店した人への一言は後回しになりがちです。
客が減ったのではなく、思い出してもらえなくなった。そう感じている店主は多いはずです。
もしそうだとしても、品揃えのせいではありません。仕入れの目利きと、来店した人への一言は、まったく別の力です。片方が得意でも、もう片方は習っていないというだけのことです。
この記事で渡すのは1つだけ
この記事で渡すのは「見るだけで帰る人に、次に来る日を1つ渡す」ことだけです。
Instagramを毎日更新する、新商品を増やす、チラシを撒く――そういう話ではありません。それらは新しい人に店を知ってもらう手段であって、すでに店に入ってくれた人への一言とは別の作業です。手を広げる前に、目の前を通り過ぎていく人への一言から見直すほうが、遠回りに見えて早く結果につながります。
この記事が扱うのは、店に来た人と交わす一言を、少し変える話です。声を出すのが苦手な店主でも使える、紙とPOPだけの方法も含みます。
「見るだけ」の人は失敗ではなく、次に来てくれるかもしれない人
何も買わずに帰った人を数えてみる

まず、1日のうち「入ってきた人」と「買った人」を紙に正の字で書いてみてください。レジ横にメモを置くだけでできます。難しい集計は要りません。入ってきたら1本、買ったらもう1本、それだけです。
数えてみると、見るだけで帰る人のほうが多いのが普通だとわかります。買った人だけを見ていると、見るだけの人は「今日は縁がなかった人」で終わってしまいますが、正の字で数に残しておくと、次の来店の候補として扱えるようになります。1週間続けるだけでも、自分の店の割合が見えてきます。
帰り際に店主が何を思っているか
何も買わずに出ていく背中を見て、「やっぱり高いと思われたのかもしれない」「うちの物は刺さらないのかもしれない」と、自分に言い渡してしまう。そう受け取ってしまう店主は多いようです。
その判断は、レジに立っている側からしか見えていない景色です。買わなかった側の事情は、実はもっと単純なことが多いです。判断を急いで自分を責めるより、次の来店を作ることに手を動かしたほうが早く進みます。同じことを何日も考え続けても、答えは相手側の事情の中にあるので、店の中からは見えません。
買わない理由は店のせいとは限らない
見るだけで帰る理由は、たいてい店の外にあります。
- 今日は下見で、贈り物の予算をまだ決めていない
- プレゼントの相手が決まっておらず、選べない
- 荷物が多くて、今は買い物を増やしたくない
- 家計や財布を見直している最中で、今日は見るだけにしている
- 職場や自宅から近く、また通りがかったときに寄るつもりでいる
- 一緒にいる連れの用事についてきただけで、今日は自分の買い物ではない
どれも品揃えとは関係のない事情です。店の中を見て回ってくれた時点で、興味は持ってもらえています。あとは、その興味が次の来店に変わるきっかけを渡せるかどうかです。品揃えを変える前に、まずこの事情を思い出すだけでも、レジに立つときの受け止め方が変わってきます。
声をかけるなら「売る一言」ではなく「次に来る理由を渡す一言」
売り込みに聞こえる声かけと、聞こえない声かけの違い

声をかけること自体は悪くありません。問題は、その一言が「決めさせようとしている」ように聞こえるかどうかです。
| 聞こえ方 | 声かけの例 | 相手が感じること |
|---|---|---|
| 売り込みに聞こえる | 「何かお探しですか」 | 何か答えないといけない、と身構える |
| 売り込みに聞こえる | 「これ人気なんですよ」 | 今買うかどうかを決めさせられている |
| 聞こえにくい | 「これ、来週色違いが入ります」 | 情報をもらっただけで、決める必要がない |
| 聞こえにくい | 「その棚、月末に入れ替えるんです」 | 次に来る理由が自然に残る |
違いは、相手に「今、答え」を求めているかどうかです。入荷予定や入れ替え時期は、聞いた側が何も返さなくていい情報なので、身構えられにくくなります。「そうなんですね」のひと言で会話を終えても構わない、という余地を残しておくことが大事です。
場面で考えると分かりやすくなります。器を眺めているお客さんに「何かお探しですか」と聞けば、探し物があるかのように答えないといけなくなります。同じ場面で「それ、実は手作りの作家さんの新作なんです」と情報だけ置けば、相手は聞き流しても、気になれば質問を返しても、どちらでも構いません。
声をかけるタイミングは「手に取って戻したとき」
商品を手に取って、棚に戻した瞬間は、興味があったという合図です。ここで商品の説明を続けると、売り込みに近づいてしまいます。
そのタイミングで伝えるのは、入荷予定や使い方の小ネタを1つだけにします。たとえば、器を手に取って戻したお客さんには「それ、来月別の色も入る予定なんです」。かごを見ていた人には「それ、実は普段使いしている方が多くて」くらいの短さで十分です。
説明を重ねるより、情報を1つだけ置いて離れるほうが、次に来る理由として残ります。長く説明したくなる気持ちは分かりますが、そこはぐっとこらえます。
最初はぎこちなくても構いません。決まり文句を1つか2つ用意しておいて、それだけを繰り返す形で始めると、続けやすくなります。毎回違う言葉をひねり出す必要はありません。
話しかけるのが苦手な店主のための代わりの手
声を出すのが得意でない店主も少なくありません。その場合は、紙で同じことができます。
手書きのPOPに「次の入荷:◯月◯日ごろ」と書いて棚に添えておく。レジ横に、入荷予定を書いた小さな黒板を置いておく。どちらも、声を出さずに次の日付を渡す方法です。
文字にしておけば、店主が忙しいときでも、見た人が自分のタイミングで読んでくれます。会話が苦手なことは、集客ができない理由にはなりません。
帰ったあとに思い出してもらう仕組みを、店の中で作っておく
持ち帰れる紙を1枚だけ用意する

ショップカードの裏に、「次の入れ替え予定」「取り置きできます」の一言を印刷しておきます。買った人だけでなく、見るだけで帰る人にも渡してかまいません。
渡すときの一言はこれくらいで十分です。「よかったらこちら、次の入れ替え時期が裏に書いてあります」。押しつけがましくならず、次に来る理由だけを手渡せます。名刺のように配るのではなく、会計のあと、もしくは出口で軽く添える程度で十分です。
取り置き・入荷連絡を「買わない人」にも案内する
気になっている様子の人には、「これ、次に入ったらご連絡しましょうか」と聞いてみます。相手が得をする形の質問なので、押し付けにはなりにくいです。
名前と連絡先を控えたら、実際に入荷したタイミングで一言だけ送ります。「先日お声がけいただいた、あの色違いが入りました」。これだけで十分です。
長い説明はいりません。返信が来なくても、それ以上は追いかけずに一度で止めておきます。追いかけて何度も送ると、頼まれた連絡ではなく催促に変わってしまいます。
NG例:連絡先を集めてセール告知だけを送り続ける
連絡先を控えたのに、セールや新商品の告知ばかり送ってしまうと、思い出してもらうための連絡が、ただの売り込みに変わってしまいます。
| 送る内容 | 相手の受け取り方 |
|---|---|
| 頼まれた入荷・取り置きの連絡だけ | 覚えていてくれた、と感じる |
| セールや新商品の告知を毎回送る | また売り込みか、と距離を置かれる |
頼まれた内容だけを、短く送る。これが思い出してもらう連絡と、売り込みの連絡の分かれ目です。
今は回っている店ほど、見るだけの人を放っておきやすい
常連さんで売上が回っているうちは困らない

今の常連さんが変わらず来てくれている間は、見るだけで帰る人を気にしなくても店は回ります。困っていないので、次の常連さんを作る動きが止まっていることに気づきにくいです。
ですが、その常連さんも、いつまでも同じ頻度で来てくれるとは限りません。引っ越しや生活の変化で、少しずつ来店が減っていくことはよくあります。今困っていないことと、この先も困らないことは別の話です。
常連さんも最初は「見るだけの人」だった
今の常連さんが、2回目に来てくれたきっかけを思い出してみてください。声をかけたときの一言だったのか、渡したショップカードだったのか、たまたま入荷連絡をしたことだったのか。
そのきっかけを書き出してみると、自分の店に合った「次に来る理由」の型が見えてきます。他の店のやり方を真似るより、自分の店で実際にうまくいった一言のほうが再現しやすいです。常連さんが3人思い浮かんだら、3人分のきっかけを紙に並べてみてください。
声をかけたのか、紙を渡したのか、連絡をしたのか。共通点が見つかることがあります。
週に1回だけ振り返る
週末に、渡した一言の数、渡した紙の数、控えた連絡先の数を振り返ります。多い少ないを気にする必要はありません。どの一言がうまくいったかだけを見て、残していきます。
うまくいかなかった一言は削り、うまくいった一言だけを次の週に残す。これを繰り返すだけで、自分の店の型ができていきます。特別な集計表は要りません。
メモ帳の隅にひと言書いておく程度で十分続けられます。半年もすれば、自分の店で使える一言が数パターン手元に残っているはずです。
今日から始める「もう一度来てもらう」チェックリスト
店の中でやること
- 入荷予定を1つ書き出す
- 手書きPOPに次の入荷日を入れる
- ショップカードの裏に取り置き案内を書く
- 商品を手に取って戻した人に、一言だけ伝える
- 今日来た人と買った人を正の字で数える
この5つは、どれも今日の営業時間中に始められます。全部を一度にやる必要はなく、1つずつ増やしていくだけでも変わります。まずはPOPを1枚書くところから始めても構いません。
1週間後に見直すこと
取り置きや入荷連絡を頼まれた数、2回目に来てくれた人の顔ぶれを見直します。数が少なくても、そこで手を止めずに一言を変えて続けてみてください。うまくいかなかった週があっても、それは店のせいでも品揃えのせいでもなく、まだ自分の店に合う一言が見つかっていないだけです。
同じ悩みは店の外の仕事でも起きる
一度会った相手に、もう一度思い出してもらう。この考え方は、雑貨屋に限らず、仕事を取るための営業全般に共通しています。
腕や品揃えを磨くことと、思い出してもらう働きかけをすることは、別の作業です。どちらも欠けると、次には繋がりません。仕事の場面が変わっても、思い出してもらうための一言を渡すという考え方は同じです。
見るだけで帰った人を「今日は縁がなかった」で終わらせず、次に来る理由を1つ渡す。そこから始めてみてください。
よくある質問
雑貨屋で見るだけのお客さんに声をかけると迷惑ですか?
商品を勧める声かけは身構えられやすい。入荷予定や入れ替え時期など、相手に何も決めさせない情報を1つ渡すだけなら売り込みに聞こえにくい
話しかけるのが苦手でも雑貨屋の集客はできますか?
できる。手書きPOPに次の入荷日を書く、ショップカードの裏に取り置き案内を書くなど、声を出さずに次に来る理由を渡す方法がある
雑貨屋のリピーターを増やすには何から始めればいいですか?
まず今の常連さんが2回目に来たきっかけを書き出す。それが自分の店に合った『次に来る理由』の型になる
雑貨屋の集客にSNSは必要ですか?
使うのはかまわないが、先に店の中で見るだけの人に次の来店理由を渡せているかを見直す。SNSは思い出してもらう手段の1つであり、店での一言の代わりにはならない
取り置きや入荷連絡の連絡先を聞くのは失礼になりませんか?
『次に入ったらご連絡しましょうか』と相手の得になる形で聞けば押し付けにならない。連絡はセール告知ではなく、頼まれた内容だけを短く送る
本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。