対面営業・商談

安売りしないで仕事を取る|値段を下げる代わりに、何を足すか

このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

「安売りしない」とは値段を守ることではなく、値段だけを動かさないこと

見積書を送る直前、金額欄をもう一度見て「これは高いかもしれない」と思い、送る前に自分で一段下げて書き直した夜はないでしょうか。あるいは「予算がちょっと厳しくて」と言われた瞬間、考える間もなく「じゃあ○万円で」と口が動いた場面。どちらも、その場では感じがいい対応に見えます。ただ、あとから振り返ると、自分から値段を差し出していた場面だったと気づきます。

安くしとく型かもしれません

下げることが誠実さだと思っていて、聞かれる前に安い金額や無料対応で応じてしまう——安くしとく型かもしれません。人格の話ではなく、いまその型にハマっているだけです。

安くするのは、相手のためを思ってのことではありません。値段のほかに選ばれる理由を、自分の口で言えないからです。値段以外に比べる材料を渡していないので、相手も値段でしか比べられず、自分も値段でしか勝負できないと思い込んでしまいます。

相手を思う気持ちが強い人ほど、先に下げてしまいます。思いやりと値段は、別の場所に置いたほうが、結果的に相手にも喜ばれます。

安売りとは、値段だけを単独で下げること

「安売りしない」と聞くと、値段を絶対に下げないことだと思われがちです。そうではありません。値段を下げても、中身もそれに合わせて減らすなら、それは安売りではなく取引です。逆に、サービスを足しているのに値段はそのままにするのも、形を変えた安売りです。

値段と中身は、いつもセットで動かす。下げるなら減らす、足すなら上げる。この一点だけ決めておけば、安売りは起きません。「値段を守れ」という話ではないので、身構える必要はありません。

値段を下げないことは、冷たいことではない

値段を下げないまま中身を一緒に決めるほうが、相手はむしろ安心して頼めます。何にいくら払っているかが分かるからです。これは性格を変える話ではなく、順番と型の話です。性格はそのままでいい。

聞かれる前に下げるのが、いちばんの安売り

見積を送る前に、自分で一段下げている

頭の中である金額と出た仕事を、送る前にそれより低い金額と書き直す。よくある動きですが、実際には相手のためになっていません。相手は元の金額を見ていないので、値引きした事実は伝わらず、下げたあとの金額が最初からの値段として届くだけです。誠実さのつもりが、相手には届いていません。(数字は説明のための例で、実績や相場ではありません)

「無料でいいですよ」も安売り

初回相談無料、修正回数無制限、ちょっとした追加を無料で受ける。これを聞かれる前に自分から言ってしまう場面はよくあります。相手は頼んでいないのに、自分が先に下げているだけです。

駆け出しの頃、サービスのつもりで先に無料をつけていたことがあります。感謝されることはあっても、次の仕事の値段には反映されませんでした。無料にした分は、ただ消えていっただけです。無料にする代わりに、「最初の30分だけ無料で、その先は正式に見積もります」のように範囲を区切って伝えると、同じ無料でも安売りにならずに済みます。

相手は値引きを頼んでいない

先に値段を下げられた側は、最初の値段が何だったのか、何が減っているのかが分かりません。分からないままだと、かえって決めにくくなります。値段を下げられるより、値段の理由を言ってもらうほうが、頼む側としては動きやすいものです。

今日やれる形

見積は、自分が妥当だと思う値段でまず出します。下げるかどうかは、相手の返事を見てから決める。この順番を守るだけで、聞かれる前の安売りは止まります。

「予算が厳しくて」と言われたときの受け答え(順番と言い回し)

すぐ「じゃあ」と言わない

「予算がちょっと厳しくて」「じゃあある金額でどうでしょう」。相手の予算も中身も聞かずに、値段だけを動かしています。(数字は説明のための例です)

まず一拍置いて、「どのくらいで考えていますか」と額を聞きます。すぐ「じゃあある金額で」と返すのと、一拍置いて聞き返すのとでは、その後の話の進み方がまったく変わります。(数字は説明のための例です)前者は値段の話で終わり、後者は中身の話に進めます。

予算の額より先に、優先順位を聞く

順番は次の通りです。

  1. 受け止める:「分かりました、一緒に考えましょう」
  2. 予算の額を聞く
  3. 「この中で外せないものはどれですか」と優先順位を聞く
  4. 外せるものを減らした見積を出し直す

値段を下げる相談ではなく、中身を減らす相談に変える。それだけで、値段の話が中身の話になります。予算を先に聞くと、こちらが下げなくても、相手が自分で「ここまでなら」と線を引いてくれることがあります。値段を決めるのは相手であって、こちらが先回りして決める必要はありません。

そのまま使える言い回し3つ

  • 「その予算に収めるなら、修正回数を1回にして○○は今回外す形になります。それで進めますか」
  • 「値段だけ下げるのは難しいのですが、中身を分けて必要なところからやる形にはできます」
  • 「今回はここまでにして、残りは次の段階で、という分け方もできます」

どれも「下げない」ではなく、「分ける」「減らす」で応じています。

言わないこと

「今回だけ特別に」「勉強させてもらいます」。理由のない値引きは、次回の定価になります。

値段を下げる代わりに足すもの——分ける・選ばせる・範囲を書く

内訳を分ける

総額だけ出すと、相手は値段しか比べられません。「何にいくらか」を3〜5行に分けて出すと、相手は「これは要る、これは要らない」と中身で考え始めます。

内訳の例として、制作にいくらか・打ち合わせ2回でいくらか・修正対応にいくらか・納品後1か月の相談期間にいくらか、のように分けます。(数字は説明のための例です)合計は変わらなくても、内訳があるだけで相手の受け取り方は変わります。内訳を見せると、相手から「ここは削れますか」と聞かれることが増えます。これは値切られているのではなく、中身について相談されている状態です。

選べる形にする(3案)

本命の案を真ん中に置いた3案(最小限・標準・手厚い)を出します。たとえば本来ある金額で出すつもりの仕事なら、最小限は低めの金額・標準はそのままの金額・手厚いは高めの金額のように幅を作ります。(数字は説明のための例です)真ん中の案が、最初に出そうとしていた値段になるように組むのがコツです。

相手は「頼むか頼まないか」ではなく、「どれにするか」を考えるようになります。上の案があると、標準の値段が「高い」と見えにくくなります。提示するときは「最小限だとここまで、標準だとここまで、手厚いだとここまでできます。どれが近いですか」のように、相手に選んでもらう言い方にします。

1案だけ出して「高いですか?」と自分から聞くのは避けたい形です。比べる相手がいないと、相手は値段そのものと向き合うしかなくなります。

引き受ける範囲を書く

やることより、「やらないこと」を書くほうが値段の根拠になります。修正回数、対応期間、含まない作業。範囲が書いてあると、追加は追加として頼まれます。範囲がないと、追加も同じ値段に吸い込まれ、結果的に安売りになります。

足すのは「おまけ」ではなく「比べる材料」です。サービスを足して値段はそのまま、というのは形を変えた安売りです。足すなら値段も上げる。これが原則です。

それでも下げるなら、中身も一緒に減らす

下げる前に、減らせるものを探す

ある金額を、それより低い金額にするなら、修正2回を1回に、納品形式を1つに、打ち合わせを対面1回とオンラインにする。(数字は説明のための例です)「同じ中身で安く」ではなく、「中身を減らして安く」にする。減らした項目は見積に明記します。見積書に「今回は修正1回、納品はPDFのみ」のように書いておくと、次回同じ相手から依頼が来たときも、範囲を思い出してもらえます。

減らせないなら、相手に足してもらう

中身を減らせない仕事なら、値段の代わりに条件を動かします。値段は動かさなくても、条件なら動かせることがあります。次の4つはよく使われる条件です。

  • 着手金を先にもらう(資金繰りが楽になり、値下げの負担を相殺できます)
  • 納期を長くしてもらう(スケジュールに余裕ができ、他の仕事と重ねやすくなります)
  • 制作物を実績として紹介させてもらう(次の営業に使える材料になります)
  • 次の仕事の話をもらう(値引きした分を、次の受注で回収できます)

「下げる代わりに何をもらうか」を1つ決めてから返事します。

理由のない値引きをしない

「今回だけ特別に」「お付き合いなので」。理由がない値引きは、相手にとって「言えば下がる値段」になります。減らす理由、条件の理由を一緒に伝えるのが、値段を下げても安売りにならない線です。たとえば「修正を1回にする代わりに、その分をいくらか下げます」のように、減らした部分と値段をセットで伝えると、理由のある値引きになります。(数字は説明のための例です)

判断の順番は、①減らせるか、②条件を足せるか、③どちらも無理なら断る、の3段階です。最後の選択は、それぞれの状況で決めることになります。

一度下げた値段は、その相手の「定価」になる

次の見積も同じ値段から始まる

値段は一度出すと、相手の記憶に残ります。次に会うときも、その数字が基準になります。2回目の見積で元の値段に戻すには、値上げの説明が要ります。最初に下げないほうが、あとの説明の手間がありません。

紹介先にも同じ値段で伝わる

「○○さんはある金額でやってくれる」と紹介されると、紹介先も同じ金額が前提になります。(数字は説明のための例です)安売りは1件で終わらず、紹介の輪ごと値段が決まっていきます。紹介してもらうときは、「今回はこの範囲でこの値段でした」と範囲も一緒に伝えてもらうよう頼んでおくと、値段だけが独り歩きするのを防げます。たとえば「今回は基本のプランである金額でした」のように範囲の言葉を添えてもらうだけで、紹介先の受け取り方は変わります。(数字は説明のための例です)

安い仕事は追加が増えやすい

範囲を決めずに下げた仕事は、「これもお願い」が同じ値段に吸い込まれていきます。これは値段の問題ではなく、範囲を書いていないことの問題です。相手のせいでも、自分の腕のせいでもありません。

だから、最初の1回だけ、下げないで中身を分ける。それだけで、この連鎖は止まります。

見積を送る前に見る「値段の場面」チェック表

相手の言葉やること言わないこと言い回し
予算が厳しい額と優先順位を聞く「じゃあ○万で」「どこを外せば収まりますか」
他はもっと安い内訳を出して中身で比べてもらう「うちも合わせます」「うちはここまで含めてこの値段です」
ちょっと高いですね3案の下の案を示す「下げます」「最小限の形ならこの金額です」
(何も言われていない)そのまま出す―自分から下げない

迷ったときは、この表の「言い回し」だけを声に出して練習しておくと、その場で慌てずに使えます。送る前の5つの確認です。

  • 自分で先に下げていないか
  • 内訳が3行以上あるか
  • やらないことが書いてあるか
  • 下げるなら何を減らすか決めてあるか
  • 「今回だけ」と書いていないか

今日やることは1つです。次の見積を「内訳付き・範囲付き」で出す。値段は自分が妥当だと思う額のまま。

返事が来てから動きます。値段の話になるたびに緊張するなら、それは性格の問題ではなく、内訳と範囲という材料が手元にないだけです。

見積の先にある、案件全体の営業の順番は独立後の営業の型にまとめてあります。

安くしとく型から抜ける最小行動は、「聞かれる前に下げない」。性格はそのままでいい。

よくある質問

安売りしないと、個人事業主は仕事が取れないのでは?

値段だけで選ばれる状態が続くのは、値段以外の比べる材料を出していないからです。内訳・3案・範囲を出すと、値段以外の基準で比べてもらえます。仕事が取れないのではなく、比べ方を渡していないだけです。

「予算がない」と言われたら、断るしかないですか?

断る前に、予算の額と外せないものを聞き、中身を減らした見積を出し直します。それでも合わなければ、断るという選択もあります。一番避けたいのは、値段だけを下げてそのまま受けることです。

無料で相談に乗るのも安売りですか?

聞かれる前に、自分から無料にするなら安売りに近い形です。やるとしても、時間や回数といった範囲を先に決めて、その先の提案につなげる形にします。

一度安く受けた相手に、次から値段を上げてもいいですか?

値段を上げてもかまいません。ただし説明が要ります。「前回はこの範囲でこの値段だった」と範囲の違いで説明すると通りやすくなります。最初から範囲を書いておくと、この説明が楽になります。

相手の予算より高い見積を出すのは失礼ですか?

失礼ではありません。内訳と範囲という根拠が書いてあれば、相手は比べて選べます。困るのは、根拠のない高い値段だけです。

本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。

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