対面営業・商談
打ち合わせで何を話すか|自分の説明から始めない進め方
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
打ち合わせで何を話すか——答えは「自分の説明」ではなく「聞く順番」
説明から入る型かもしれません

打ち合わせのあと、いつも同じ感触が残る。悪い雰囲気ではなかったのに、次につながる手応えもなかった。説明から入る型かもしれません。自分の商品説明から打ち合わせを始めてしまい、何をどの順で聞けばいいかを習っていない型です。
打ち合わせで手応えがないのは、自分の説明が下手だからだ——そう思われがちです。でも、説明が下手だからではなく、聞く順番を習っていないだけです。話し方の練習を重ねても、この構造は変わりません。初めての相手でも、すでに付き合いのある取引先でも、この記事で扱う進め方は同じ考え方の上にあります。
説明から始めると何が起きるか
打ち合わせの冒頭10分で、会社紹介・サービス説明・実績紹介を一気に話す。よくある進め方です。「弊社はこういう考えで仕事をしていて、こんな実績があります」と流れるように話せると、準備した甲斐があった気になります。相手は「なるほど」「そうなんですね」と聞き役に回ります。感じは悪くありません。
ただ、この10分の間、相手の困りごとは一度も言葉になっていません。説明が終わって「何かお困りのことはありますか」と聞いても、相手はまだ頭の中を整理できていないので、当たり障りのない答えが返ってきます。そのまま資料の説明に移り、「では持ち帰って検討します」で時間が来ます。
説明が長いほど、相手が自分の状況を重ねて話す場面が減ります。打ち合わせの主役が、いつの間にか自分の説明になっているからです。
順番を変えるだけで、話すことは自動で決まる
先に相手の困りごとを聞くと、話す内容は「聞いたことへの返事」になります。事前に説明を用意しておく必要がなくなります。相手が「今こういうことで困っている」と言えば、こちらは「それでしたらこういうやり方があります」と返すだけです。
話がうまくなくていい、聞く順番があればいい、ということです。性格はそのままでいい。口下手でも、聞く順番さえ守れば打ち合わせは進みます。
打ち合わせの進め方——60分を4つに区切る時間配分
最初の5分:今日のゴールと終わり方を決める

開口一番、こう言います。
「今日は◯◯の件で、困っている点を伺って、次にお見積の形を決めるところまで進められればと思いますが、よろしいですか」
この一言で、相手は「聞かれる側」になります。こちらは自己紹介や会社説明を長く話す必要がなくなります。ゴールを先に言っておくと、最後の5分で「次の一手」に話を戻しやすくなるという効果もあります。
中盤35分:聞く→残り15分:聞いたことに返す
60分の打ち合わせなら、こう区切ります。
| 時間 | やること |
|---|---|
| 最初の5分 | ゴールの確認 |
| 中盤35分 | 聞く |
| 次の15分 | 聞いたことに返す・提案・確認 |
| 最後の5分 | 次を決める |
自分の説明は15分の枠の中で初めて出します。35分が先で15分があと、という順番を崩さないことが、この時間配分の一番の要点です。説明を先に出すと、聞く時間がそのぶん削られていきます。話しながら時計をちらっと見て、聞く時間が25分を過ぎたあたりで一言挟みます。「そろそろ次に進めても大丈夫そうですか」と聞くと、35分の枠を守りやすくなります。
最後の5分:次の一手と日付を決める
打ち合わせの終わり方も、話す内容の一部です。
NG:「では、ご検討ください」 OK:「では、今日伺った内容で来週◯日までにお見積をお送りします。届いたら◯日ごろに一度お電話してもいいですか」
日付・誰が・何をの3点を口に出してから終える。ここを曖昧にすると、せっかく35分かけて聞いた内容が、次につながらないまま止まります。
聞く順番——「困りごと→今のやり方→ゴール→条件」の4段
1段目:何に困っているか、なぜ今なのか

「今回お声がけいただいたきっかけは何でしたか」 「一番手間になっているのはどこですか」
「なぜ今か」を聞くと、相手の温度が分かります。急いでいるのか、まだ様子見なのか。ここを最初に聞かずに条件の話に入ると、温度を知らないまま話を進めることになります。
2段目:今どうしているか/3段目:どうなったらいいか
「今はどなたが、どのくらいの時間をかけてやっていますか」 「それが片づいたら、次に何をしたいですか」
2段目で手間の大きさが分かります。3段目で、相手が本当に欲しいものが出てきます。この2つが、あとの提案の材料になります。順番を飛ばして先に提案を始めると、相手の状況に合わない話をしてしまいます。
4段目:時期・予算・決める人は最後に
「いつごろまでに形になっていると助かりますか」 「ご予算の目安はありますか。なければこちらから2案出します」 「最終的に決められるのはどなたですか」
聞く順番を一覧にすると、こうなります。
| 順番 | 聞くこと | 質問例 |
|---|---|---|
| 1段目 | 困りごと・きっかけ | 一番手間になっているのはどこですか |
| 2段目 | 今のやり方 | 今はどのくらいの時間をかけていますか |
| 3段目 | ゴール | それが片づいたら次に何をしたいですか |
| 4段目 | 時期・予算・決裁者 | いつごろまでに形になっていると助かりますか |
1段目より前に予算を聞くと、尋問のようになります。相手はまだ困りごとも話していないのに金額の話をされると、身構えてしまいます。条件は最後、が順番の要点です。予算を聞かれてはぐらかされたときは「分かりました。それでは3段階でご提案しますので、その中から選んでいただく形でもいいですか」と切り返すと、相手も答えやすくなります。
自分の説明はいつ、どのくらい話すか
聞いたことに返す形で、1回30秒〜1分
「先ほどの◯◯でしたら、こういうやり方があります。似た状況で△△をしたことがあります」
相手の言葉を頭に付けてから話す。この形にすると、一方通行の会社紹介は不要になります。説明は長くても1分。1分で言い切れないなら、それは説明が長すぎるということです。話しながら「ここまでで気になる点はありますか」と一言挟むと、また聞く側に戻れます。
実績は聞かれてから。一覧を配らない
NG:実績一覧を最初に配って、上から順に読み上げる。 OK:相手の困りごとに一番近い1件だけ、経緯と結果を話す。
実績を多く並べるほど、相手は自分の状況をどれに重ねればいいか分からなくなります。1件に絞ると、相手は「それ、うちと似ている」と思える瞬間が生まれます。
できないこと・向かないことを先に言う
「そこは私の専門ではないので、別の方をご紹介できます」 「その予算だと、この部分は今回外した方がいいと思います」
断る場面が、そのあとの信頼の残り方を決めます。全部できますと言うより、できないことを先に言う方が、次に呼ばれやすくなります。無理をして受けて後から調整が難しくなるより、最初に線を引いておく方が、結果として長い付き合いになります。
取引先(すでに付き合いがある相手)との打ち合わせは進め方が変わる
順番は『近況→前回の続き→今回の要件→次』
初対面の打ち合わせと違い、ゴール確認より前に「前回の◯◯はその後どうなりましたか」を置きます。前回の結果を聞くと、今回の要件が自然に出てきます。近況の雑談は3分以内で切り上げます。
定例で『特にありません』を防ぐ、持ち込み3点
定例の打ち合わせで議題が出ないのは、相手から出るのを待っているからです。次の3点をメモにして持ち込みます。
- 前回やったことの結果(数字がなくても「◯件届きました」程度でよい)
- 気づいたこと1つ
- こちらからの提案1つ
この3点があれば、聞くことがない打ち合わせはなくなります。相手から議題が出るのを待たないことが要点です。
相手が複数人(担当者と上司)のとき、誰に向けて話すか
質問は担当者に、まとめと次の一手は上司に向けて言います。担当者が答えやすいように「◯◯さんが普段見ておられる範囲で結構です」と前置きします。
上司の前で担当者の手間を代弁すると、担当者が味方になります。「◯◯さんが今、これだけの手間をかけてくださっています」と一言添えるだけで、その後の打ち合わせの空気が変わります。打ち合わせが終わったあとも、担当者宛ての連絡には上司をCCに入れておくと、担当者が社内で説明する手間が減ります。
打ち合わせでよくある失敗と、その場での立て直し方
話すことがなくなって沈黙になった
「いま伺った中で、一番困っておられるのはどれですか」
沈黙は失敗ではなく、相手が考えている時間です。自分の説明で埋めたくなりますが、5秒待ってから聞き直す方がうまくいきます。沈黙のたびに説明を足していると、聞く時間がどんどん削られ、結局35分の枠が守れなくなります。
雑談で終わりそうになった
「あと10分ほどなので、今日の本題を確認させてください」
雑談を否定せず、時間を理由にして区切ります。最初の5分でゴールを言っていれば、この一言は出しやすくなります。
質問攻めになって相手が疲れた
質問を続けると、相手の答えがだんだん短くなります。そのサインが出たら、質問の間に「なるほど、それは◯◯が大変ですね」と受け止めを1回挟みます。メモを相手に見える向きで取り、「ここまでで合っていますか」と途中で確認すると、聞かれている側の疲れが減ります。
前日と当日と翌日——準備の3つと、コピーで使える進行メモ
前日にやる3つ(合計30分以内)

- 相手のサイト・SNS・求人を15分見る(新着情報や求人票の内容から、困りごとの当たりをつける)
- 聞く質問を3つだけメモする(多く用意しない)
- 終わり方(次の一手と候補日)を決めておく
NG:説明資料を前日に作り込むこと。説明は聞いたあとに出すものなので、前日に固めすぎると、当日その通りに話したくなってしまいます。
当日の持ち物:質問メモ・料金の目安・次回候補日
料金は総額ではなく、松竹梅の3案か内訳で、口頭で言える状態にしておきます。その場で聞かれて「持ち帰ります」にしない。候補日は2つ持っておくと、最後の5分で日程がすぐ決まります。
終わったあと、当日中に3行で送る
「本日はありがとうございました。伺った内容は①◯◯②△△③□□と理解しています。◯日までにお見積をお送りします」
この3行があると、相手は上司に伝えやすくなります。長い御礼メールを考える必要はなく、3行で十分です。ここまでの内容を、コピーして使える1枚にまとめます。
打ち合わせ進行メモ
- 時間配分:5分ゴール確認/35分聞く/15分返す/5分次を決める
- 聞く順番:①困りごと・きっかけ ②今のやり方 ③ゴール ④時期・予算・決裁者
- 最初の一言:「今日は◯◯の件で、困っている点を伺って、次に◯◯を決めるところまで進められればと思いますが、よろしいですか」
- 最後の一言:「今日伺った内容で◯日までに◯◯をお送りします。届いたら◯日ごろに一度ご連絡してもいいですか」
- 翌日の3行:「本日はありがとうございました。伺った内容は①◯◯②△△③□□と理解しています。◯日までに◯◯をお送りします」
これを毎回同じ形で使えば、打ち合わせのたびに一から考える必要がなくなります。独立して案件を取っていく中で、打ち合わせも含めた営業のやり方を型として持っておくと、腕そのものは変えなくても、次につながる打ち合わせが増えていきます。
よくある質問
初めての打ち合わせで何を話せばいいですか?
自分の説明ではなく、最初の5分で今日のゴールを一言で確認し、あとは「困りごと→今のやり方→ゴール→条件」の順に聞く。説明は聞いたことに返す形で最後に1分で足りる
打ち合わせで話すことがなくなったらどうすればいいですか?
沈黙を自分の説明で埋めず、「いま伺った中で一番困っているのはどれですか」と聞き直す。話すことがなくなるのは、聞く順番が途中で切れたサインなので、4段のどこまで聞けたかを確認する
打ち合わせで自分の実績はいつ話すべきですか?
聞かれてから、相手の困りごとに一番近い1件だけを話す。最初に一覧を配ると相手が聞き役になり、相手の話が出なくなる
取引先との定例打ち合わせで話すことがないときは?
前回やったことの結果・気づいたこと1つ・こちらからの提案1つの3点をメモにして持ち込む。相手から議題が出るのを待たない
打ち合わせの時間はどのくらいが目安ですか?
初回は60分を目安に、5分ゴール確認・35分聞く・15分返す・5分次を決めるの4区切りにする。時間より、最後の5分で次の一手と日付を口に出せたかが大事
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