対面営業・商談
打ち合わせで聞くこと|初回に限らず、毎回外さない順番
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
打ち合わせで聞くことが出てこないのは、口下手だからではない
結論から言うと、聞くことは5つです。①きっかけ②困りごと③ゴール④条件⑤次の一手、この順番を毎回守るだけで、話がうまくなくても打ち合わせは進みます。
打ち合わせが「説明会」で終わった日
初回の打ち合わせで、自分の実績とできることを20分かけて話したことはないでしょうか。相手はうなずきながら聞いてくれます。話し終えて「で、ご希望はありますか」と聞くと、返ってくるのは「まあ、いい感じにしてもらえれば」という一言です。「本日はありがとうございました」で締めくくって解散しますが、帰り道になって、何も決まっていないことに気づきます。次に何を送ればいいのかも分からないまま、打ち合わせだけが終わっています。
しゃべりすぎ型かもしれません
これはしゃべりすぎ型かもしれません。沈黙が怖くて自分の説明で埋め、相手の話を取ってしまう型です。打ち合わせが毎回ふわっと終わるのは、自分が口下手で場を回せない人間だからだ、と思っている人が多いのですが、口下手だからではありません。聞く順番を決めずに打ち合わせに入っているからです。
話がうまい必要はない。順番があればいい
話がうまい必要はありません。聞くことは暗記するリストではなく、毎回同じ5つの順番で進めるだけです。次に何を聞くかが決まっていると、沈黙が怖くなくなります。黙っている数秒は、相手が考えている時間だと分かるからです。この「聞く」は、知り合う→聞く→お金の話→返事をもらうという営業全体の流れの中の一工程にすぎません。工程ごとに型があると知っておくと、いま自分がどこでつまずいているかが見えてきます。
打ち合わせで聞くこと5つ|毎回この順番
5つの順番(一覧表)
| 順番 | 聞くこと | そのまま使える聞き方 | 聞けたら分かること |
|---|---|---|---|
| ① | きっかけ | 今日、話そうと思ったのは何があってですか | 相手が動いた理由 |
| ② | 困りごと | それで、いま一番困っているのは | 本当に困っていること |
| ③ | ゴール | どうなったら、うまくいったと言えますか | 完成の姿 |
| ④ | 条件 | いつまでに、目安の予算は | 動かせない制約 |
| ⑤ | 次の一手 | 次に、誰が何をいつまでにやるか | 次回までの約束 |
なぜこの順番か
相手が答えやすい順番は、すでに起きたこと(過去)→いま困っていること(現在)→こうなりたい(未来)→条件→次の約束、という流れです。過去に起きた出来事は誰でも答えられますが、いきなり「ご要望は」と未来を聞かれると言葉に詰まります。たとえば「今後どうされたいですか」といきなり聞かれると、多くの人は「そうですね……」と言葉を探して止まってしまいます。一方「今日、話そうと思ったのは何があってですか」と聞けば、具体的な出来事はすぐに出てきます。だから①のきっかけから入ります。
NGの順番2つ
順番を間違えると、聞けるはずの話が聞けなくなります。ひとつは、自分のできることや実績から話し始めることです。相手は聞き役に回り、本音を話す場面がありません。もうひとつは、予算や納期の条件から聞くことです。値踏みされたような感じになり、以降の答えが固くなります。どちらも聞き方が下手なのではなく、順番が逆なだけです。
①きっかけ:「今日、話そうと思ったのは何があってですか」から入る
最初の一問は毎回固定する
毎回何を聞くか考えずに済むように、入口の一文を固定します。自己紹介は1分で切り上げ、雑談から本題に切り替えるときは「では、さっそくですが」と一言添えて、この一問に入ります。
出てきた言葉をそのまま書き取る
「集客がイマイチで」と言われたら、「集客がイマイチ」とそのままメモします。「売上が伸びていない」のように自分の言葉に言い換えないことが大事です。相手の言葉は、あとで見積や提案の見出しにそのまま使います。相手が読んだときに「自分の話だ」と感じるからです。
NG:「ご要望を教えてください」
「ご要望を教えてください」は抽象的すぎて、相手を固まらせます。要望は相手の頭の中でもまだ言葉になっていないことが多いからです。きっかけ、つまり実際に起きた出来事を聞けば、要望はあとから自然に出てきます。相手が固まったときは「例えば最近、何か困ったことがありましたか」と助け舟を出します。
②困りごと:「それで、いま一番困っているのは」で3回掘る
困りごとは3回聞く
困りごとは1回聞いただけでは、表面の言葉しか出てきません。1回目は「いま一番困っているのは」、2回目は「具体的には」「例えば」、3回目は「それで、どうなりましたか」と掘ります。3回目でようやく出てくる言葉が、本当の困りごとであることが多いです。例えば「集客」→「ホームページから問い合わせが来ない」→「知り合いの紹介が減って、来月の予定が空いている」というように、掘るほど話は具体的になります。
誰が困っているかを分ける
困っているのが本人なのか、お客さんなのか、家族や社内の誰かなのかを分けます。「それは、どなたが一番困っていますか」と聞くだけです。困っている人が違えば、提案する相手も、文面の書き方も変わります。
NG:聞いた瞬間に解決策を話し始める
「それなら○○すれば」と言った時点で、相手は話すのをやめてしまいます。「ホームページの反応が良くなくて」と聞いた瞬間に「それならSNS広告を回しましょう」と提案してしまうと、相手は「あ、はい」で会話が止まり、2回目・3回目を掘る機会を自分でつぶすことになります。解決策は③のゴールを聞き終えるまで口に出さず、思いついたら「→あとで」とメモに書いて先送りします。
③ゴール:「どうなったら、うまくいったと言えますか」
完成の姿を相手の言葉で一文にしてもらう
「ホームページから月に2〜3件、問い合わせが来る状態」のように、相手が口にした形をそのまま復唱してメモします。「つまり、○○になっていたら成功、ということですね」と復唱すると、ずれていればこの場で相手が直してくれます。
「なんとなく良くしたい」への返し方
具体的な言葉が出てこないときは、時間を置いて聞きます。「例えば半年後、何が変わっていたら嬉しいですか」。それでも出ないときは、比べる聞き方に変えます。「いまと比べて、何が一番変わってほしいですか」。この2つの言い方を持っておくと、返しに困りません。
自分にできること・できないことは、ここで初めて言う
①②③を聞き終えて、初めて自分の話をします。「それなら私は○○ができます。△△は専門外なので、他の方が向いています」。ここまで待つと、説明は短くて済みます。相手の困りごとに合う部分だけを話せばいいからです。順番を守る意味が、ここでようやく分かります。
④条件:期限とお金は「先に軽く、後で正確に」
期限は「いつまでに」と「なぜその日か」をセットで
「いつ頃までにと考えていますか」と聞いたら、続けて「その日には何かあるんですか」と理由を聞きます。イベントや決算、繁忙期など相手の事情が出てくれば、本当に動かせない日と、なんとなくの希望日を分けられます。理由が出てこないときは、希望日のほうが動かせる可能性が高いと考えて、こちらの都合も合わせて相談してよい日です。
お金は「目安」を一度だけ聞く
「ご予算の目安はありますか。あれば、その範囲で組みます」と一度だけ聞きます。答えづらそうなときは、幅を自分から出します。「例えば、抑えめの金額か、余裕を持った金額か、で全然違う作りになります」。ここで挙げる幅はあくまで例であり、相場を示すものではありません。相手が答えた幅が広いときは、「その幅の差は、何によって変わりますか」と一言添えると、あとの提案がぶれません。お金の詰めは見積の工程で行うので、この場では深追いしません。
NG:条件を聞かずに帰る
「予算を聞くのは失礼な気がして」と聞かずに帰り、見積の段階で条件が外れてしまうことがあります。聞かないほうが、結果的に相手の時間を奪います。作り直しになるからです。条件は相手の値踏みではなく、合う提案を作るための材料だと考えると、聞きやすくなります。
⑤次の一手:帰る前の3分で「誰が・何を・いつまでに」を決める
最後の3分で決める3つ
帰る前の3分で、3つを決めます。ひとつ目は次回の日程です。その場でカレンダーを開いて決めます。ふたつ目はこちらの宿題です。「では私は○日までに見積と案を送ります」。みっつ目は相手の宿題です。「○○の資料だけ、お手すきで送っていただけますか」。この3つを口に出して確認し、メモの最後に書き残します。
「返事は、どなたと相談して決まりますか」
決める人が本人なのか、家族や共同経営者、上の人なのかを自然に聞く一文です。もし別の人がいるなら、「その方に見せやすい形はありますか。紙1枚か、メールか」まで聞いておくと、次の提案を届く形で作れます。
NG:「ではまた連絡します」で終わる
「ではまた連絡します」で終わると、誰が・いつが抜けているので、双方とも動けません。数日空くほど、こちらから連絡しづらくなります。「では私から、○日までにメールでお送りします。ご確認は○日頃までにお願いできますか」と言い換えるだけで、次が動き出します。
2回目以降も同じ順番で聞き直す|初回に限らず、の意味
2回目は①が「前回から変わったこと」になる
2回目以降も、同じ5つの順番を使います。①だけ「前回お会いしてから、何か動きはありましたか」に差し替えます。②と③も「前回○○とおっしゃっていましたが、いまも同じですか」と聞き直します。相手の状況は短い期間でも変わります。初回に「とにかく安く抑えたい」とおっしゃっていた相手が、2回目には「多少高くても品質を優先したい」に変わっていることがあります。初回のメモをそのまま提案に使うと、金額だけを気にした案になり、的が外れます。
打ち合わせの前に3つだけ書いて行く
打ち合わせの前に、3つだけ書いておきます。ひとつ、前回の相手の言葉をメモから3行。ふたつ、今回は5つのうちどこを深く聞くか。みっつ、今日決めたいことを1つ。5分もあれば書けます。その場の会話だけで乗り切ろうとするより、この3行があるほうが沈黙が怖くなくなります。
毎回使えるチェックリスト(A5一枚)
持ち帰って使えるように、5行にまとめます。①きっかけ。②困りごと(3回掘ったか)。③ゴール(相手の言葉で一文になっているか)。④期限と理由、予算の目安。⑤次に誰が何をいつまでにやるか。打ち合わせ中にこの5行の横に書き込むだけで、聞き漏れが分かります。今日1つだけやるなら、最初の一問を固定することです。
よくある質問
打ち合わせで聞くことは、初回と2回目で変えるべきですか
順番は変えない。①きっかけを「前回から変わったこと」に差し替え、②③は「前回こうおっしゃっていましたが、いまも同じですか」と聞き直す。相手の状況は短い期間で変わるので、初回の答えを固定しない
打ち合わせで聞くことリストは何項目くらいが適切ですか
5つで足りる。きっかけ・困りごと・ゴール・条件(期限と予算の目安)・次の一手。項目を増やすより、この順番を守って②を3回掘るほうが必要な情報は集まる
打ち合わせで予算を聞くのは失礼ですか
失礼ではない。聞かずに見積を外すほうが相手の時間を奪う。「ご予算の目安はありますか」と一度だけ聞き、答えづらそうなら幅を自分から出す。詰めるのは見積の工程で
打ち合わせで相手が話してくれないときはどうすればいいですか
「ご要望は?」のような未来の質問で固まっていることが多い。すでに起きたこと(「最近、何か困ったことはありましたか」)に戻すと答えが出やすい。自分の説明で埋めない
打ち合わせの最後に確認すべきことは何ですか
次回の日程・こちらの宿題・相手の宿題の3つを、期限つきで口に出して確認する。「またご連絡します」で終わると誰も動けなくなる
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