対面営業・商談

トリマーの独立|開業したあと、指名で来てくれる飼い主さんを増やすまで

トリマーの独立|開業したあと、指名で来てくれる飼い主さんを増やすまでのイメージイラスト

このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

トリマーの独立で最初に要るのは、腕よりも「次にまた呼ばれる流れ」

開業して3か月。勤めていた店で指名してくれていた飼い主さんが、独立後も一度は来てくれました。うれしくて、いつも以上に丁寧にカットしました。でも、2回目の予約が入りません。予約表の空いた枠を見るたびに、気持ちが沈みます。

紹介待ち型が予約減につながる悪循環を示す因果ループ図

前の店ほどカットがうまくないから来ないわけではありません。店が変わって、思い出してもらうきっかけがなくなっただけです。

紹介待ち型かもしれません。いい仕事をすれば紹介は自然に出ると思っていて、思い出してもらう働きかけをしていない型です。仕事が減ったのではなく、思い出してもらえなくなった、ということが多いようです。

独立するには何が要るか(3行で答える)

  • 資格と経験(次の章で詳しく)
  • 店や預かりの形に応じた届け出の確認
  • 次回の予約と紹介につながる流れ

検索でここに来た人が知りたいのは、たぶんこの3つです。上の2つは制度の話で、調べれば分かります。3つ目だけは、誰も教えてくれません。求人票にも資格スクールの案内にも書いていない部分です。この記事はここを書きます。

勤めていた頃は店が代わりにやってくれていたこと

勤務時代独立後
予約のお知らせ店の予約システムが自動送信自分で送るか、何もしない
次回の案内受付スタッフが声をかける自分がその場で言うしかない
店の看板店の名前で思い出してもらえる自分の名前で思い出してもらう必要がある

独立すると、この3つが丸ごと自分の仕事になります。勤めていたときは「気づいたら次の予約が入っていた」状態でも、独立後は誰も声をかけてくれません。

腕が足りないという思い込みのNG例

集客が止まった時期に、技術講習だけを増やしてしまうことがあります。飼い主さんへの連絡はゼロのまま、というパターンです。半年後、講習は増えたのに予約は増えていない、という結果になりがちです。腕を磨くこと自体は悪いことではありません。ただ、今足りないのは技術ではなく、連絡の順番です。

腕は本物です。足りないのは、順番と型だけです。この順番と型は、独立後の営業のやり方の基本の一つでもあります。

開業前に確かめること:資格・届け出・前の店との関係

民間資格の例

開業前に確認すべき3項目を並べた構造図

JKC(ジャパンケネルクラブ)公認のトリマー資格には、C級・B級・A級・教士・師範の5種類があります。取得には満18歳以上で、2年以上の本会会員歴が必要です。取ったあとも、毎年開催される義務研修会かトリミング競技会への参加が求められます。トリミング業に国家資格が必須かどうかは、確認できるソースがないため、ここでは断定しません。民間資格は、技術を証明する免許というより、技術を示す材料のひとつとして考えるのが実務的です。

動物取扱業の登録に当たるかどうかの確認

動物の販売・保管・貸出し・訓練・展示などを営利目的で行う場合、営業を始める前に登録が必要です。登録せずに営業すると、100万円以下の罰金に処せられます。ペットホテルのような預かりを伴うかどうかで、対象になるかが変わる可能性があります。トリミングだけの営業がどちらに当たるかは、開業前に都道府県等の窓口で確認し、判断に迷う場合は専門家にも相談してください。

前の店の飼い主さんとの関係

独立を伝えるときは、まず勤めていた店への挨拶を先にします。無理に引き抜くような動き方は、あとあと自分の信用を削ります。雇用契約の内容によっては、顧客への接触に制限がある場合もあります。個別の判断は専門家に相談してください。

確認項目チェックリスト

  • 資格(民間資格を含む)の有無と更新状況
  • 動物取扱業の登録要否を窓口で確認したか
  • 雇用契約に競業や顧客接触の制限がないか
  • 前の店への開業の挨拶を済ませたか

お渡しの3分が営業になる:やって終わりにしない引き渡し

仕上がったワンちゃんを抱いて渡し、お会計をして「ありがとうございました」で終わる。ここで区切りがついてしまうと、次につながる話が一つも出ていないまま、お客さんは帰ってしまいます。忙しい日でも、このお渡しの3分だけは削らないほうがいい時間です。

お渡し時に行う3つの行動を順に示す手順図

3分で渡す3つのもの

  1. 今日の状態を一言で伝える。「耳の中が少し赤かったので、様子を見てください」
  2. 仕上がりの写真をその場で送る
  3. 次に来てほしい時期の目安を、理由と一緒に伝える

NG例とOK例

NG「またお願いします」 OK「この長さだと4〜6週間で目にかかってくるので、〇月の頭あたりがちょうどいいです」

NG「かわいく仕上がりましたよ」 OK「かわいく仕上がりました。次は夏毛に入る前の6月頭くらいがおすすめです」

週数は例です。犬種や毛の状態で変わります。目安を具体的な言葉で伝えると、飼い主さんは次の予定を立てやすくなります。

写真は自分の記録にもなる

前回のカット写真と長さのメモを残しておくと、次回の相談が早く進みます。飼い主さんも「覚えていてくれた」と感じやすくなります。

次回予約をその場で取る言い方:押しつけにならない順番

次回の予約をすすめると、売り込みっぽく感じることがあると思います。ただ、次回の予約は、飼い主さんが予定を考える手間を減らす手伝いです。押し売りではありません。順番を守れば、急かしている印象にはなりません。

予約をすすめる4ステップの順番を示すフロー図

言う順番

  1. 今日の仕上がりを伝える
  2. 次の目安と理由を伝える
  3. 「今決めておくと、土日の枠が取りやすいです」と添える
  4. 断られても「近くなったらご連絡しますね」で終える

この順番だと、いきなり予約の話から入らないので、押しつけられている感じになりません。

断られたときの受け方

「また連絡します」と言われたら、こちらから連絡してよいかを聞いて了承をもらいます。「〇週後くらいにLINEでお知らせしてもいいですか」という聞き方が一例です。ここで了承をもらっておくと、あとで連絡するときに気まずさが減ります。

予約表に残すもの

  • 次回目安日
  • 連絡してよいかの了承
  • 前回のカットの長さ

この3つの列を作るだけでいいです。

思い出してもらう連絡の作り方:紹介待ちで止まらないために

もう一度、紹介待ち型の構造を書きます。いい仕事をしても、飼い主さんの頭の中で店の名前がいつも一番にあるわけではありません。連絡するのは売り込みではなく、思い出すきっかけを渡すことです。

いつ何を送るか

タイミング内容文例
来店翌日お礼と仕上がり写真「昨日はありがとうございました。とても可愛く仕上がりました」
次回目安の1週間前空き枠のお知らせ「そろそろ気になる時期かと思います。今週、土日に空きがあります」
季節の変わり目毛の手入れのひと言「暑くなってきたので、抜け毛が増えやすい時期です」
誕生日(聞けている場合)一言「お誕生日おめでとうございます」

送りすぎのNG例

毎週キャンペーン情報を送る、全員に同じ文面を送る、というのは避けたほうがいいです。読み流されるだけでなく、通知をオフにされてしまうこともあります。名前と、その子のことを一行入れるだけで、読まれ方が変わります。

連絡しづらいときの最小行動

今日、前回の来店から2か月以上空いている飼い主さんを3人選びます。写真を添えて、近況を聞く一文だけを送ってみてください。

紹介をお願いする一言:頼むのが気まずいなら、渡しやすくする

「お友達にも紹介してください」と言うのは図々しい気がして、結局一度も言えていない、ということがあると思います。お願いする形だと、相手に負担をかけている気がしてしまいます。

頼むのではなく、渡しやすくする

ショップカードを2枚渡し、「お散歩仲間で気になる方がいたら」と添えます。お願いするのではなく、紹介しやすい道具を渡すという考え方です。カードを受け取った飼い主さんは、自分の判断で渡すかどうかを決められます。

言うタイミング

飼い主さんが仕上がりを喜んだ瞬間に、一度だけ言います。毎回は言いません。毎回言うと、お願いされている感じが強くなってしまいます。

紹介してもらったあと

紹介してくれた人へのお礼の連絡を、当日中に送ります。紹介の特典を付けるかどうかは、店の方針次第です。

来店1回ごとの確認表:これだけ回せば指名の流れができる

タイミングやること一言の例記録すること
来店時前回の長さとメモを確認「前回と同じ長さでいいですか」今回の要望
お渡し時状態・写真・次回目安を伝える「〇月頭くらいが目安です」次回目安日
翌日お礼と写真を送る「ありがとうございました」送信済みかどうか
次回目安の1週間前空き枠を知らせる「今週空きがあります」返信の有無
来店が空いたとき近況を聞く一文を送る「その後お変わりないですか」送った日

毎回同じやり方でいい理由

毎回いちから考えると、疲れて止まります。決まった手順にしておくと、忙しい週でも抜けません。この表をそのまま予約表の横に貼っておくくらいでちょうどいいです。

週に1回見る場所

予約表の「次回目安日を過ぎているのに予約がない人」だけを確認します。15分で済む範囲にとどめておけば十分です。

腕のせいで来なくなったのではありません。思い出してもらう流れを置けば、腕はちゃんと届きます。今日やるのは、次に来る飼い主さんに次回の目安を伝えることだけでいいです。

よくある質問

トリマーが独立するのに資格は必要ですか?

JKC公認資格にはC級・B級・A級・教士・師範の5種類があり、取得には満18歳以上・2年以上の会員歴が必要です。取得後も毎年の研修参加が求められます。国家資格が必須かどうかはここでは断定しません。民間資格は技術を示す材料のひとつとして考えてください。

トリミングサロンを開くとき、動物取扱業の登録は必要ですか?

動物の販売・保管などを営利目的で行う場合は事前の登録が必要で、登録せずに営業すると100万円以下の罰金に処せられます。預かりを伴うかどうかで対象になるかが変わる可能性があるため、都道府県等の窓口で確認し、判断に迷う場合は専門家にも相談してください。

独立後、前の店のお客さんに連絡してもいいですか?

無理に引き抜かず、前の店への挨拶を優先してください。雇用契約の内容によっては制限がある場合もあるため、個別の判断は専門家に相談してください。

指名のお客さんを増やすには何から始めればいいですか?

技術講習を増やす前に、お渡しの時に次回の目安と理由を伝え、その場で予約の相談をすることから始めてください。来店後の写真送付と、目安の1週間前の連絡までを1セットにすると流れができます。

リピートのお知らせLINEはどれくらいの頻度で送ればいいですか?

来店翌日、次回目安の1週間前、季節の変わり目くらいが目安です。全員に同じ文面を毎週送るのは避け、その子の名前と一言を添えてください。

参照した情報源

  1. トリマーとは(一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC))・確認日 2026-09-30
  2. 第一種動物取扱業者の規制(環境省)・確認日 2026-09-30

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