対面営業・商談

手書きの手紙を営業に使う|書く中身と、出すタイミング

このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

手書きの手紙が営業に効くのは「丁寧だから」ではない

先に答えを書きます。手紙に書く中身は、相手との場面・自分の近況1つ・返事のいらない締めの3つです。出すタイミングは、気が向いたときではなく、出来事から日数を決めておきます。仕事の依頼や値段は書きません。この記事では、この3つの中身、5行の見本文、出しどきの目安を順に書きます。

紹介が細ったのは腕が落ちたからではないかもしれない

去年まで毎月のように声をかけてくれた取引先から、半年連絡がない。こちらから連絡するほどの用事もなく、かといって他に当てがあるわけでもない。

こういうとき、「腕が落ちたのかもしれない」「飽きられたのかもしれない」と考える人が多いです。ただ、私は、仕事の質が変わったのではなく、相手の頭の中から自分の名前が遠くなっただけ、というケースも多いと見ています。

紹介待ち型かもしれません

紹介待ち型は、いい仕事をすれば紹介は出ると思っていて、思い出してもらうための働きかけをしていない状態を指します。

仕事が減ったのではなく、思い出してもらえなくなったのかもしれません。相手が忙しい毎日の中で、自分を思い出すきっかけが無いだけ、ということがあります。まず「腕が足りないからだ」という自己判断を、一度脇に置いてください。

手紙は頼むためではなく、思い出してもらうために出す

営業で出す手書きの手紙の役目は、仕事を頼むことではありません。相手の机に、自分の名前がもう一度載ること。それだけです。

だから、手紙に仕事の話は書かなくていいです。「手書きは効果がある」と言い切れる数字は、この記事では示しません。確認した根拠がないからです。ここから先は、私自身の考えと実務の順番として読んでください。

営業の全体の順番を先に知りたい方は、営業の全体の順番はこちらから読めます。この記事は、その中の「また頼まれる」「仕事を切らさない」あたりを、手紙という一つの手段で具体的に書いたものです。

手紙に書く中身は3つだけ|相手との場面・自分の近況・返事のいらない締め

書く中身は3つに絞ります。多く書くほど、読む人の負担が増えるからです。

1行目は相手と一緒にいた場面を1つ書く

最初の1行は、相手と一緒にいた場面です。

  • 「先月の打ち合わせで、店の入口の話をされていたのが印象に残っています」
  • 「納品の日に、棚の並べ替えを手伝ってくださったこと、ありがたかったです」

場面は小さくて構いません。相手が口にした一言、その場の天気、出されたお茶でもいいです。大事なのは、相手だけに当てはまる内容であることです。

NG例は、「いつも大変お世話になっております」だけで始めること。誰に出しても同じ文になるので、手書きでも読み飛ばされやすいです。この一文を書くなら、その後ろに場面を一つ足してください。

自分の近況は1つだけ、仕事の宣伝にしない

2つ目は自分の近況です。1つだけにします。

  • 「最近は飲食店のメニュー表を作る仕事が増えました」
  • 「先月から、事務所を駅の反対側に移しました」

あくまで近況報告です。「こういう仕事ができます」という売り込みの形にしないでください。読む人が「へえ、そうなんだ」と思えば十分です。

NG例は、実績を3つ以上並べることや、料金表やチラシを同封すること。読む人が自分を重ねる場面がなくなります。

締めは返事を求めない

3つ目は締めです。返事がいらない終わり方にします。

  • 「またお近くに伺うことがあれば、お茶でも」
  • 「お店の写真、楽しみにしています」
  • 「寒くなってきましたので、お体に気をつけて」

NG例は「何かあればお気軽にお声がけください」。親切に見えて、相手に「声をかけるかどうか」の判断を渡してしまいます。返事を考える負担を、相手に背負わせない締めにします。

5行の見本文(一筆箋サイズ)

全文を載せます。そのまま、自分の場面に置き換えて使えます。

山田様 先月の打ち合わせで、お店の入口の話をされていたのが印象に残っています。 その後、棚の配置は変わりましたか。 私は最近、飲食店のメニュー表を作る仕事が増えました。 またお近くに伺うときは、お茶でも。 田中

仕事の依頼も値段もありません。それでも、相手には「あの人はあの日のことを覚えていた」と伝わりやすいと私は考えています。思い出してもらう役目は、これで足ります。

出すタイミングは「出来事から何日以内」で決めておく

出しどきの4場面

出すタイミングは、気が向いたときではなく、出来事から決めます。日数はあくまで私の目安です。

場面出す目安書くこと
初めて会ったあと3日以内その日の会話で印象に残った場面と、会えたお礼
納品して一区切りついたあと1週間以内仕事の途中の場面と、一緒に作れたことへの一言
季節の区切り(年賀・暑中見舞いの時期)その時期の中相手との場面と、自分の近況1つ
相手の節目(開店・移転・周年を知ったとき)知ってから早めに節目へのひと言。近況は書かなくてもいい

初めて会ったあとは、相手の記憶が新しいうちに出せると自然です。節目は、相手のSNSやお知らせで知ることが多いので、見かけたらその日のうちに一筆箋を用意しておくと続きます。

「そのうち出そう」で切れる理由と、その場で日付を決めるやり方

手紙を出すつもりはあるのに出さないまま終わるのは、気持ちが足りないからとは限りません。出す日を決めていないだけ、ということが多いと私は見ています。

決め方は簡単です。

  1. 納品した日に、カレンダーを開く
  2. 納品の1週間後に「○日:△△さんに一筆」と入れる
  3. ついでに3か月後の暑中見舞いか年賀の時期にも、同じ予定を入れる

日付がカレンダーにあれば、「そのうち」が「その日」になります。気分が乗る日を待たないでください。

間が空いてしまったときの書き出し

半年、1年空いても出してかまいません。空いているからこそ出す意味がある、と私は考えています。

書き出しの例です。

  • 「ご無沙汰しています。先日、○○さんのお店の前を通って、思い出しました」
  • 「ご無沙汰しています。今年も暑い日が続きますね。お変わりありませんか」

思い出したきっかけを、そのまま書きます。NG例は、長い言い訳から入ること。「ご連絡が遅れて申し訳なく……」が3行続くと、相手は読むほど気を使います。空いた期間の説明は要りません。

受け取る側から見た手紙|読まれる長さと紙の選び方

受け手は30秒で読めるものなら最後まで読む

受け取る側の立場で考えます。ポストから取り出した封書を、その場でゆっくり読む人は多くないと私は見ています。立ったまま、あるいは机の上で、さっと開いて読む場面を想像してください。30秒で読める長さなら、最後まで読んでもらえる、というのが私の見方です。データではなく、受け取る側の感覚から決めた目安です。

長い手紙は、ありがたい反面「ちゃんと返さないと」という負担になります。営業の手紙で渡したいのは、負担ではなく「思い出すきっかけ」です。だから、短く、返事の重さを相手に背負わせない形にします。

一筆箋・はがき・封書の使い分け表

種類向いている場面書く量相手の負担
一筆箋納品物や資料に添える3〜5行とても軽い
はがき季節のあいさつ、近況5〜8行軽い
封書お詫び、改まった挨拶便箋1枚程度やや重い

営業目的なら、まず一筆箋かはがきで足ります。封書は、改まった場面のために取っておきます。軽い連絡のつもりで封書を使うと、相手が構えてしまいます。

字がきれいでなくても出す理由

字に自信がないから出さない、という人もいます。ただ、読み手が見ているのは字のうまさではなく、「自分のために手を動かしてくれた」ということだと私は見ています。読みやすく書くことは大切ですが、きれいに書く必要はありません。

NG例は、字に自信がなくて、印刷した文章に署名だけ手書きで入れること。それだと手書きの意味が消えてしまいます。短くていいので、本文は自分の字で書いてください。

営業の手紙で外しやすい失敗5つ

手書きなのに中身が定型文

時候の挨拶と「今後ともよろしくお願いいたします」だけの手紙です。誰に出しても同じ文は、手書きでも読み飛ばされやすいです。

直し方は一つです。相手の名前と、相手との場面を1つ入れる。それだけで、その人だけに宛てた手紙になります。

手紙の中で仕事を頼む・値段の話をする

「新しいプランを始めました、いかがでしょうか」と書いた瞬間に、お礼の手紙は売り込みの手紙に変わります。受け取る側は、そこで構えます。

頼みたいことがあるなら、手紙とは別の連絡でしてください。手紙は思い出してもらうため、依頼は別の機会に。この切り分けが、手紙の役目を守ります。

お礼で区切りがついて、次が続かない

お礼の手紙を出して満足してしまい、次のひと言を出さないまま1年が過ぎる失敗です。お礼のやりとりで区切りがつくと、自分から次を切り出すのが難しくなります。

対策は、お礼を出した日に、次に出す季節(たとえば3か月後の暑中見舞い)をカレンダーに入れておくことです。次の予定があれば、お礼が最後の1通になりません。

そのほかの外しやすい失敗

  • チラシや料金表を同封する(手紙が広告に見えてしまう)
  • 返信用はがきを同封して返事を迫る(相手に宿題を渡してしまう)

どちらも、相手の負担を増やします。手紙の中身は、読んで終わりにできる形にしてください。

今日1通出すまでの手順|15分でできるチェックリスト

出す相手を3人書き出す

条件は3つです。

  • 過去に仕事をした、または一度会って話が弾んだ
  • 半年以上、連絡していない
  • 住所が分かる

この条件に合う人を、紙に3人書き出します。その中から、1人だけ選びます。最初から全員に出そうとしないでください。まず1通出せれば、次が楽になります。

5行で書く順番

書く順番は次のとおりです。

  1. 相手との場面
  2. その後どうしているかへのひと言
  3. 自分の近況を1つ
  4. 返事のいらない締め
  5. 署名

書く前に、一筆箋かはがき、切手、相手の住所を机に出しておきます。書いている途中で探し物を始めると、そこで止まります。先に全部そろえてから書き始めてください。

持ち帰り用チェックリスト

出す前に、次の5項目を確認します。

  • □ 相手の名前と、場面が1つ入っている
  • □ 仕事の依頼・値段・チラシが入っていない
  • □ 返事を求める一文がない
  • □ 30秒で読める長さになっている
  • □ 次に出す日を、カレンダーに入れた

5つにチェックが入ったら、ポストに入れてください。

営業が苦手でも、口下手でも、手紙は書けます。性格はそのままでいいです。変えるのは性格ではなく、思い出してもらうための順番です。

よくある質問

営業の手紙は手書きとメールのどちらがいいですか?

役目で分けるのがおすすめです。急ぎの連絡や見積はメールが向いています。思い出してもらうための近況やお礼は、手書きが向くと私は考えています。手書きのほうが成果が上がる、という数字は示しません。

字が汚くても手書きの手紙を出していいですか?

出して大丈夫です。読み手が受け取るのは、字のうまさよりも手間をかけてくれたことだと私は見ています。印刷した文章に署名だけ入れるほうが、手書きの意味が薄れます。短くてもいいので、本文は自分の字で書いてください。

営業の手紙には何を書けばいいですか?

相手と一緒にいた場面を1つ、自分の近況を1つ、返事を求めない締めの3つです。仕事の依頼・値段・チラシは入れません。5行ほどの一筆箋で足ります。

しばらく連絡していない取引先に手紙を出すのは失礼ですか?

失礼ではないと私は考えています。「ご無沙汰しています。○○の前を通って思い出しました」と、思い出したきっかけから書けば自然です。長い言い訳は要りません。

手紙を出しても返事が来ません。意味はありますか?

返事がなくても成り立つ前提で出します。目的は返事ではなく、相手の机に自分の名前がもう一度載ることです。季節ごとに続けることが大事だと考えています。

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