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このシリーズの全体像 対面営業のコツ完全ガイド — 会って、信頼で売る技術の全体像

商談で言葉に詰まるのは、口下手だからではない

沈黙が怖くて、自分の説明で埋めた日

見積を出したあと、数秒の沈黙が続いた。それを埋めようと、頼まれてもいない実績やサービスの説明を10分近く続けてしまった。あとで振り返ると、相手が何を考えていたかは結局分からないままだった――という商談は珍しくありません。

結局その商談は、次のアポイントに繋がりませんでした。あとから思えば、10分間しゃべり続けた自分に対して、相手が発した言葉は相槌だけだったのです。

話が下手なのではなく、何を聞けばいいか習ってないだけ

しゃべりすぎ型に近いかもしれません。沈黙が怖くて自分の説明で埋め、相手の話を取ってしまう型です。口下手だから商談で相手の心を動かせない、と思っている人ほどこの型にはまりやすいのですが、話がうまい必要はありません。習っていないのは聞く順番だけです。

SPINは話術ではなく、質問の並べ方

SPIN話法は、英国の心理学者ニール・ラッカム氏が提唱した、4タイプの質問で相手の潜在ニーズを引き出す聞き方の型です。35,000件を超える商談の調査から作られています。うまく話す技術ではなく、何を先に聞くかをあらかじめ決めておく技術です。商談全体の型を先に知っておきたい人は、対面営業の極意も合わせてどうぞ。

この記事で渡す方法は1つだけです。次の商談で使う質問を、状況・問題・示唆・解決の4種類から1本ずつ、合計4本だけ紙に書いて持っていく。それだけです。

SPIN話法の4つの質問は、それぞれ何を聞くものか

SPIN話法は次の4段階で構成されています。

状況→問題→示唆→解決の4段階を矢印でつなぐ順序図

  • Situation(状況質問) 相手の事業環境や体制、いま使っている道具や使用頻度など、事実を確認する質問です
  • Problem(問題質問) 相手が抱えている困りごと・不満・うまくいっていないことを聞き出す質問です
  • Implication(示唆質問) その問題を放置すると何にどう響くかを、相手自身に考えてもらう質問です
  • Need-payoff(解決質問) 解決した後の状態を思い描いてもらい、必要性を相手自身の言葉にしてもらう質問です

4つを整理すると、こうなります。

質問の種類聞くこと商談のどのあたりかやりがちなNG
状況質問相手の現状・体制・使っている道具序盤調べれば分かることを本人に聞く
問題質問困りごと・不満・うまくいっていないこと序盤〜中盤いきなり「課題は何ですか」と聞く
示唆質問放置した場合の影響中盤〜終盤「このままだと大変ですよね」と脅す
解決質問解決後の状態・必要性の言語化終盤相手より先に自分が効果を語る

対面の商談には、電話やオンライン会議にはない間合いがあります。相手の表情や相槌の変化を見ながら、次にどの質問を出すかを調整できるのは、顔を合わせているときだけの強みです。

SPINはもともと大型商談の研究から生まれた型です。一人で受けるような小さな仕事で、4種類を全部フルにやる必要はありません。順番――状況→問題→示唆→解決――だけを借りれば十分に機能します。

状況質問は、商談が始まる前に半分終わらせておく

調べれば分かることを聞くと、信用が減る

状況質問は相手の現状を正しく理解するための質問です。ですが聞き方を間違えると尋問になります。相手にとっては、サイトに書いてあることをもう一度説明させられるだけの時間になります。

事前調査で欄を埋め、当日は確認だけにする流れ図

事前に埋める欄/その場で聞く欄を分ける

手順は3つです。

  1. 会社サイト・SNS・求人票で、人数・拠点・扱っている商材・いま力を入れていることを書き出す
  2. 書けなかった欄だけを、当日の質問リストに残す
  3. すでに埋まっている欄は「質問」ではなく「確認」の形に変える

NG例とOK例

NGOK
何人でやられてるんですかサイトに3名と書かれていましたが、いまも同じ体制ですか
どんなお仕事ですか求人を出されていたので、人を増やす前提で考えていいですか

その場で聞く価値がある状況質問は、多くて3本にとどめます。いま使っている道具とその使用頻度のように、外から見えないことに絞ります。事前に調べた内容と答えが食い違うこともあります。指摘するのではなく「念のため、いまの状況を教えてください」とだけ聞き直せば十分です。

問題質問は「課題」ではなく「面倒なこと」を聞く

「課題は何ですか」と聞かれて答えられる人は少ない

問題質問は、相手の悩みや問題を把握するための質問です。ただし「課題は何ですか」のような抽象語で聞くと、「特にないですね」で終わってしまいます。

抽象的な課題から具体的な作業へ掘り下げる階層図

作業の単位まで下ろす

聞く対象を「事業の課題」ではなく「先週やった作業」まで下げます。

  • いま一番手間がかかっているのはどの作業ですか
  • それは月に何回くらい発生しますか
  • 前回それで一番困ったのはいつでしたか

否定に聞こえない前置きを付ける

NG「そのやり方だと非効率じゃないですか」 OK「差し支えなければ、うまくいっていない側の話も聞かせてください」 相手のやり方を評価しない、と先に伝えるだけで答えやすさが変わります。

問題質問で出てきた言葉は、相手が使った表現のまま書き留めます。あとの示唆質問と解決質問で、その言葉をそのまま使うためです。一つの困りごとが出てきても、そこで止めません。「それが起きると、次に何が起きますか」と一段掘り下げておくと、あとの示唆質問にそのままつながります。

示唆質問は、不安を煽る質問ではない(一番外しやすい)

「このままだと大変ですよね」は質問ではなく脅し

示唆質問は、現状を放置するとどんな影響が出るかを扱う段階です。ここを「怖がらせる場面」だと解釈すると、売り込みが嫌で独立した人ほど自分の言葉が気持ち悪くなり、この質問そのものを飛ばすようになります。

計算するのは自分ではなく相手

影響を自分で断定せず、相手に数えてもらう形にします。

  • その手戻りが起きると、だいたい何日ずれますか
  • それは誰の手が止まりますか
  • 今期のうちに直すとしたら、いつまでに決める必要がありますか

NG/OK対比

NGOK
放っておくと売上が落ちますよその状態が半年続くと、どのあたりに響きそうですか
みなさん困ってますよ同じことは他の月にも起きていますか

示唆質問は多くて2本です。3本以上続けると詰問になります。相手が黙ったら、次を足さずに待ちます。沈黙を埋めないことが、ここでは一番の技術です。

相手が黙っている数秒は、説明不足のサインではありません。頭の中で影響を計算している時間です。焦って言葉を足すと、その計算を止めてしまいます。

解決質問は、相手に言ってもらう。自分が言ったら提案になる

解決後の景色を相手の口から出す

解決質問は、課題が解決された後の理想の状態を思い描いてもらう質問です。必要性を感じた相手に、解決策を相手自身の言葉で明確にしてもらう最終段階です。

  • もしその作業がなくなったら、その時間は何に回しますか
  • どうなっていれば、これは片付いたと言えますか

順番を逆にすると実績並べ型になる

相手が言う前に自分から「こうすれば解決します、うちは実績が」と始めると、相手が自分を重ねる場面がなくなります。分かってもらおうとして説明を足すほど、かえって遠くなります。

自分の話を出していい合図

相手が「それができたら助かる」と口にした瞬間が合図です。そこで初めて、相手が使った言葉に合わせて自分の仕事を1つだけ出します。合図が出ないうちに説明に入らないことが大事です。合図が出たら、たとえば「いまお話に出た作業でしたら、こういう形でお手伝いできます」のように、相手が使った言葉をそのまま借りて短く伝えます。

解決質問で出た相手の言葉は、そのまま見積書や提案書の1行目に使います。

60分の商談に4つをどう並べるか

時間配分の目安です(統計ではなく段取りの目安です)。

60分の商談時間を項目ごとの帯グラフで示す配分図

  • あいさつと雑談 5分
  • 状況の確認 5分(事前に調べた分の答え合わせ)
  • 問題 20分
  • 示唆 10分
  • 解決 10分
  • 次にやることの確認 10分

本題に入る前の雑談にどれだけ時間をかけるかは、SPINの原著でも扱われている論点です。長く話すほど親しくなるとは限らないので、雑談は短く切り上げて問題質問に時間を残します。商談が30分しか取れない場合は、状況確認3分・問題12分・示唆5分・解決5分・次回確認5分に圧縮します。削るとすれば、まず雑談からです。

順番は一方通行ではありません。問題→示唆と進んで相手が具体的な話を出してきたら、状況質問に戻って事実を確かめてかまいません。行ったり来たりしていい、ということです。

1回の商談で4つ全部を終える必要もありません。初回は状況と問題まで、示唆と解決は次回、という分け方でいいです。分けるときは「次に何を話すか」を口頭で決めて、その場で日程を押さえます。

やりがちな失敗は3つです。

  1. 状況質問だけで30分使い切る
  2. 示唆質問を飛ばして値段の話に行く
  3. 解決質問の答えを自分で言ってしまう

明日の商談に持っていく質問6本

そのまま書き写して使える形にしました。状況2本・問題2本・示唆1本・解決1本です。

  • 状況「サイトで◯◯と拝見しましたが、いまも同じ体制ですか」
  • 状況「その作業はいま何で管理していますか」
  • 問題「いま一番手間がかかっているのはどの作業ですか」
  • 問題「前回それで困ったのはいつでしたか」
  • 示唆「その状態が続くと、どのあたりに響きそうですか」
  • 解決「どうなっていれば、これは片付いたと言えますか」

最後に1つだけ。全部を覚えようとせず、次の商談では示唆の1本だけを必ず口に出してください。使ったかどうかを、商談後に○×で記録します。

記録は3回分で十分です。3回続けると、自分が毎回どこで止まっているかが見えてきます。

よくある質問

SPIN話法は小さな商談や個人の仕事でも使えますか

使えます。ただしSPINは大型商談の研究から生まれた型なので、4種類を全部フルでやる必要はありません。順番(状況→問題→示唆→解決)だけ借りて、質問は各1本に絞れば十分機能します。

SPIN話法の4つの質問は、順番を変えてもいいですか

戻るのは問題ありません。問題質問で具体的な話が出てきたら状況質問に戻って事実を確認していいです。避けたいのは飛ばすこと、特に示唆を飛ばして解決や金額の話に行くことです。

状況質問ばかりで時間が終わってしまいます

調べれば分かることを本人に聞いているのが原因です。人数・拠点・扱いは事前に調べて「確認」の形に変え、その場で聞くのは外から見えない3本(いま使っている道具と使用頻度など)に絞ります。

示唆質問がわざとらしくなって、うまく言えません

影響を自分で断定しようとしているからです。「放っておくと売上が落ちますよ」ではなく「その状態が半年続くと、どのあたりに響きそうですか」と、計算を相手に渡す形にします。多くて2本までです。

SPIN話法を提唱したのは誰ですか

英国のニール・ラッカム氏です。35,000件を超える商談の調査をもとに作られた型で、日本語版の書籍も出ています。

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参照した情報源

  1. The SPIN Methodology(Huthwaite International)・確認日 2026-09-05
  2. 営業で役立つSPIN話法とは?具体的な質問例でわかりやすく解説(Salesforce Japan(企業公式ブログ))・確認日 2026-09-05
  3. SPIN話法とは?営業力を高める「問題質問」「示唆質問」「状況質問」(Zoho Japan(企業公式CRMアカデミー))・確認日 2026-09-05
  4. 大型商談を成約に導く「SPIN」営業術(書誌情報)(紀伊國屋書店(原著者:ニール・ラッカム、訳:岩木貴子、出版:海と月社、2009年12月))・確認日 2026-09-05

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