対面営業・商談
SNSが苦手な人の集客|発信しなくても、仕事が来る道は残っている
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
SNSが苦手でも仕事は来る。発信できないからではなく、「見せる集客」しか知らないから
同業者の投稿を見て、何も書けずにアプリを閉じる夜があります。「今日はこんな案件をやらせてもらいました」「〇〇の知見をまとめました」。そういう投稿を横目に、自分のアカウントを開いてはまた閉じます。下書きを3行書いて消します。それを何度か繰り返して、結局何も投稿しないまま日をまたぎます。
「発信しないと仕事来ないよ」と言われるたびに、分かっているのに指が動きません。頭では理解しているのに体が動かないのは、能力の問題ではなく、そもそも「何を投稿すればいいか」の答えを持っていないからです。
仕事が来ないのは、SNSが苦手だからではありません。集客を「自分を見せ続けること」だと思っていて、それ以外の道を習っていないだけです。発信が得意か苦手かという話にすり替わっていますが、本当の論点はそこではありません。
実績並べ型かもしれません。分かってもらおうと実績や情報を足し続け、読む人が自分を重ねる場面がない型のことです。この型はSNSに限った話ではありません。名刺交換のあとの自己紹介で経歴を長々と話してしまう人も、見積書に過去の実績を何件も並べる人も、根っこは同じ構造をしています。
SNSで手が止まるのも同じで、「何を見せればいいか」から考え始めた時点で、相手の話が一つも入っていません。だから投稿が書けませんし、無理に書いても誰にも届きません。
SNSが苦手なのは弱点ではありません。「見せる集客」という特定のやり方に向いていないだけです。人と一対一で会って話すことは得意でも、不特定多数に向けて自分を発信し続けることは苦手、というのはよくある組み合わせです。「会う集客」は見せる集客とは別の技術で、性格を変えずに身につきます。この記事では、発信をしなくても仕事が来る道を、そのまま使える形で渡します。
発信しなくても仕事が来る道は4つある。「見せる集客」と「会う集客」の違い
集客は大きく分けて二つの方向があります。SNS・広告・ブログのように、不特定多数に情報を出して向こうから来てもらう「見せる集客」と、すでに接点のある人・これから会う人に直接働きかける「会う集客」です。
| 見せる集客(SNS・広告・ブログ) | 会う集客(近況連絡・紹介・少人数の場・取引先の周り) | |
|---|---|---|
| 相手が動く理由 | 投稿・情報を見て興味を持つ | 顔を知っている・話したことがある人を思い出す |
| 向いている人 | 発信を続けられる、見せることに抵抗がない | 一人と話す方が力を発揮できる |
| 時間の使い方 | 毎日〜週数回の更新が前提 | 週1回、数人と連絡を取るだけで回る |
| 結果が出るまで | 更新を続けて数か月〜 | 既に信頼のある相手なら数週間で動くこともある |
| 苦手な人が続くか | 続かない。3日で止まりやすい | 話す相手が決まっているので続けやすい |
発信しなくても仕事が来る道は、主に四つあります。
①過去の依頼主に近況を伝える。②仕事をした相手に紹介を頼む。③依頼主になりうる人が集まる少人数の場に出る。④取引先の隣、つまり同じ客を持つ別業種の人とつながる。四つとも、すでに顔を知っている人か、これから一対一で顔を合わせられる範囲の人が相手になります。不特定多数に向けて自分を発信する必要はありません。
元の依頼主が「あの人まだやってるかな」と思った瞬間に連絡が届いていれば、それだけで次の仕事になります。相手はSNSを見ていません。見ているのは、去年頼んだ相手のことをふと思い出した自分の記憶だけです。思い出してもらえるタイミングに連絡が重なるかどうかが勝負で、そこにSNSの得意不得意は関係がありません。
「SNSをやらないなら広告を出す」は、一見すると発信を避けているようで、実は同じ土俵に乗っているだけです。お金で目立つのも「見せる集客」の一種で、実績並べ型のまま金額だけ増えます。苦手なことを克服する代わりに、苦手なことにお金を払う形に変わっただけになります。目立つための工夫を重ねる前に、すでに知っている人に連絡できているかを先に確かめたほうが早いです。
この記事で扱うのは「知り合う」工程のうち、SNSを使わない道だけです。話の聞き方や値段の伝え方、断られたあとの動き方まで含めた仕事の取り方全体の流れは対面営業の基本の型にまとめています。
一番早いのは「もう知っている人」。連絡先を3つに分けて数える
新しい人に会う前に、もう知っている人を数えるところから始めます。新規開拓は一番時間がかかる道で、しかも見せる集客の技術を要求されやすいものです。すでに接点のある人のほうが、圧倒的に早く動きます。
スマホの連絡先、名刺、メールの送信履歴を開いて、次の3つに分けます。
- ①仕事をしたことがある人
- ②話したことはあるが仕事はしていない人
- ③名刺だけの人
①の人数を数えます。10人いれば十分に始められます。数えてみると、思っていたより多いと気づくことがほとんどです。過去に一度だけ手伝った相手、単発で頼まれた相手、今は連絡が途絶えている相手も①に入ります。「もう何年も連絡していないから今さら」と気後れするかもしれませんが、数年空いていること自体は相手にとって大きな問題ではありません。むしろ「久しぶりに思い出してもらえた」という受け取り方をされることのほうが多いです。
①が10人に満たない場合は、②(話したことはあるが仕事はしていない人)から同じ文面で始めても構いません。仕事の実績が1件もなくても、「最近どうですか」の一文は成立します。無理に①だけにこだわる必要はありません。
近況連絡はこの一文で足ります。
「ご無沙汰しています。最近は〇〇(業種)の△△を直す仕事をしていました。〇〇さんのところは最近どうですか」
頼みません。実績は1件だけ。相手の近況を聞く一文で終えます。仕事の依頼を匂わせず、ただ「まだやっている」ことと「相手を気にかけている」ことだけを伝えます。この二つが伝われば十分で、それ以上は要りません。
NG例は二つあります。「お仕事があればぜひお願いします」で締める連絡と、実績を10個並べた挨拶メールです。前者は相手に判断を丸投げしていて、読んだ側は「今は特にない」と思えばそのまま返信しなくなります。後者は情報量が多いほど、読む側が自分の状況と結びつけられる場面が減ります。どちらも読む側が自分を重ねる場面がありません。
返事が来なくても失敗ではありません。相手の頭の中に「まだやっている」と残れば、それで目的は済んでいます。返事を求めて出す連絡ではなく、記憶を更新するために出す連絡だと考えると、気持ちが軽くなります。
紹介は待っていると来ない。頼み方を一文で決めておく
紹介が細るのは腕が落ちたからではありません。相手が忘れているだけです。いい仕事をしたことと、思い出してもらえることは別のことです。この二つを混同していると、「いい仕事をしているのに紹介が来ない」という状態で止まってしまいます。
頼み方は一文で決めておきます。
「〇〇で困っている会社さんがいたら、名前だけ教えてもらえますか」
相手像を一つに絞ります。「誰かいたら紹介して」は相手が思い浮かべられないので出てきません。人は漠然とした依頼を渡されると、具体的な誰かを思い浮かべる前に考えるのをやめてしまいます。「従業員5人くらいで、ホームページを3年以上直していない会社」のように、相手が「あ、あそこだ」と一人思い浮かべられる粒度にします。粒度が細かいほど、相手の負担は軽くなります。
紹介が出たら、結果を短く報告します。
「先日教えていただいた〇〇さん、来月からお手伝いすることになりました」
これが相手にとっての「紹介してよかった」になり、次の紹介の理由になります。逆に、紹介してもらったあと報告しないと、相手は「どうなったんだろう」で止まり、二度目は出さなくなります。結果が良くても悪くても、一言だけ返す習慣を持っておくと、紹介の入口は開いたままになります。
少人数の場では実績を語らない。聞く側に回ると次につながる
場を選ぶときの判断基準は三つです。
①同業ではなく、依頼主になりうる人がいるか。②何人か以下で一人ひとりと話せるか。③同じ人と2回以上会える場か。商工会の部会、取引先の業界の勉強会、地域の異業種の集まりなどが当てはまります。一回きりの大人数イベントは外します。名刺を100枚集めても、そのあとの接点が作れなければ名刺止まりで終わります。
自己紹介は「誰の、何を、どうしたか」を1件だけにします。
「〇〇の会社さんの見積書のつくりを直して、返事が早く来るようになりました」
実績の数も年数も言いません。1件だけ話すと、聞いた相手は「うちも似たようなことで困っている」と自分の状況に重ねやすくなります。10件並べられると、どの話が自分に関係あるのか分からなくなり、結局どれも記憶に残りません。
聞く側に回る一問はこれで足ります。
「今いちばん手が回っていないのはどこですか」
相手が話し始めたら、自分の説明はしません。しゃべりすぎる必要はなく、相づちと短い質問だけで会話は続きます。話を聞いた相手の顔と困りごとを、帰りにメモしておきます。この一行のメモが、あとで連絡を出すときの材料になります。
別れる前にもう一言添えます。
「今の話、参考になりそうな資料を送っていいですか」
名刺止まりにしない一言を、その場で言います。この一言があるかないかで、その日の出会いが「また会う理由のある関係」になるか「名刺入れに残るだけの関係」になるかが分かれます。
会場では、話が弾んでもその場で仕事の話を切り出す必要はありません。その場は「また会う理由を作る」ところまでで十分で、金額や依頼の話は次に会ったときで大丈夫です。焦って話を進めようとするほど、相手は営業されている感覚を持ち、次の接点が遠のきます。
NG例は、場で配る資料に実績一覧を載せることです。持ち帰った相手はどれが自分の話か分からず、机の端に積まれます。資料を配るなら、その日話した相手一人にだけ向けた一言を添えるほうが記憶に残ります。
SNSは「やらない」と決めるか「置いておく」か。判断基準を先に持つ
SNSとの付き合い方は、「やらない」と決めるか「置いておく」かのどちらかでいいです。中途半端に「そのうちやろう」で止めておくのが一番良くありません。
置いておくだけなら、プロフィールに「何をしている人か」「どこの人か」「連絡先」の3点だけ書きます。投稿はしません。紹介された相手が名前で検索したとき、「実在する、連絡できる」と確かめられればそれで足ります。紹介を受けた相手が検索するのは、その人が信用できるかどうかを確かめるためで、投稿の更新頻度を見るためではありません。
やらないと決めていい条件もあります。週に1回、過去の依頼主か知り合いに近況連絡を出す動きが回っているなら、SNSがなくても接点は増えています。会う集客が回っている間は、無理に発信を足しません。二つの集客を同時に頑張ろうとすると、どちらも中途半端になりやすいです。
紹介された相手が名前で検索したとき何も出ないのは、たしかに不安材料になります。だからプロフィールだけは整えておきます。逆に、投稿が3年前で止まっているより、投稿欄が空のほうが印象は悪くありません。止まった投稿は「今は活動していないのでは」という疑いを生みますが、空のプロフィールはただの「発信していない人」で終わります。
一番損なのは、苦手なまま「毎日投稿」を自分に課すことです。3日で止まり、止まった事実が「やっぱり自分はできない」の証拠に変わります。できなかった経験が積み重なるほど、次に挑戦するハードルも上がってしまいます。だったら最初から、置いておくかやらないかを決めてしまったほうが気持ちは楽になります。
今日やる1つは「3人に近況を送る」。性格はそのままでいい
今日やることは一つだけです。さっき分けた①(仕事をしたことがある人)から3人選び、近況連絡の文面をそのまま使って送ります。書くのに10分以上かけません。文面を考え込むほど、送るタイミングが遅くなります。
週1の型にします。毎週同じ曜日に3人。1か月で何人かになります。送った日・相手・返事の有無を1行ずつ残しておきます。メモは表計算でもノートでも構いません。「送った・返事あり・返事なし」の3列だけで十分です。返事が来た相手には、次の月にもう一度送ります。
3人送って返事が1人なら普通のことです。返事がなかった2人にも「まだやっている」ことは伝わっているので、3か月後にもう一度送ればいいです。一度で結果を求めず、何か月かかけて接点を積み重ねていく前提に立つと、続けやすくなります。
①の10人を1か月で送り終えたら、②(話したことはあるが仕事はしていない人)、③(名刺だけの人)へと順番に広げていきます。焦って一度に全員へ送る必要はありません。週3人という決まったペースを守ることのほうが、送る人数を増やすことより効いてきます。
SNSで自分を出せないことと、仕事を取れないことは別のことです。発信は集客の一つの道であって、道そのものではありません。性格を変える必要はなく、会う集客の順番を覚えればいいだけです。実績を並べなくても、相手が「あ、あの人だ」と思い出せる連絡を一つ出します。それだけで、見せる集客とは別の道が動き出します。
よくある質問
SNSをまったくやらなくても集客できますか?
できます。過去の依頼主への近況連絡、紹介の頼み方、少人数の場の3つが回っていれば、発信がなくても接点は増えます。SNSは集客の一つの道であって、道そのものではありません
SNSが苦手でも、最低限これだけはやっておくべきことはありますか?
プロフィールだけは整えます。何をしている人か・どこの人か・連絡先の3点を書き、投稿はしません。紹介された相手が名前で検索したとき「実在して連絡できる」と分かれば、それで十分です
紹介をお願いするのは図々しくないですか?
「誰かいたら紹介して」は相手が困ります。「〇〇で困っている会社さんがいたら名前だけ教えてください」と相手像を一つに絞れば、相手は思い浮かべるだけで済み、負担になりません。紹介が出たら結果を報告しましょう
知り合いが少ない場合、どこから始めればいいですか?
まず連絡先・名刺・メール履歴を3つに分けて数えます。仕事をしたことがある人が数人でもいれば、そこから週3人の近況連絡を始めます。並行して、依頼主になりうる人が20人以下で集まる場を1つ選んでください
投稿しないSNSアカウントは、かえって印象が悪くなりませんか?
3年前で投稿が止まっているより、投稿欄が空でプロフィールが整っているほうが印象は悪くありません。苦手なまま毎日投稿を課して3日で止まるほうが、印象を損ないます
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