対面営業・商談

初回相談で何を聞くか|順番を決めておくと商談が尋問にならない

初回相談で何を聞くか|順番を決めておくと商談が尋問にならないのイメージイラスト

このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

初回の相談で、予算はいくらですか、納期はいつですか、今はどちらに頼んでいますか、と用意した質問を立て続けに聞いてしまう。真面目に情報を集めているつもりでも、相手の返事はひとことずつ短くなっていく。

初回相談の質問は「いま→困りごと→放っておくと→どうなったら」の4段階で聞く

初回相談で聞く順番は、次の4段階です。まずはここだけ持ち帰ってもらえれば十分です。

初回相談で聞く4段階の順番を示す矢印フロー図

段階聞くこと
①いま今はどうしているか
②困りごと何に困っているか
③放っておくとそれで何が起きているか、続くとどうなるか
④どうなったらどんな状態になれば助かるか

この並びの考え方そのものと調査の裏付けは、「営業ヒアリングの質問順番|課題を引き出す7ステップ」にまとめてあります。本記事はその考え方を土台にした、初対面・初回相談だけに絞った実践編です。ここから先は、これまで会ったことのない相手に初めて会う場面に限った話をします。

初対面が難しいのは、口下手だからではなく事前情報も信頼もゼロだから

何度もやり取りしている相手と、初めて会う相手は間合いが違う

情報も信頼もゼロな状態が尋問に見える原因を示す因果図

すでに取引がある相手や、何度か連絡を取り合っている相手なら、①〜④を多少詰めて聞いても、それまでの関係が緩衝材になります。初めて会う相手にはその緩衝材がありません。名乗った直後に①〜④を立て続けに聞くと、事前情報がない分だけ質問の間隔が詰まって聞こえ、査定に来た人のように映ります。

沈黙が怖くて自分の説明で埋めてしまう癖は、しゃべりすぎ型と呼ばれます。この癖の直し方は前掲の記事に譲り、ここでは初対面だからこそ必要な間の置き方に絞ります。

①に入る前に、30秒だけ雑談を挟む

名乗ったらすぐ①に入らず、30秒だけ雑談を挟みます。紹介者の名前を出す、来る道で見た景色の話をする、といった内容で十分です。この30秒が、相手にとって「質問される時間」から「話をする時間」に切り替わる合図になります。省略すると、名乗った直後に質問が始まり、初対面の相手には調査に来た人のように映ります。

紹介経由なら、紹介者の言葉を①の代わりに使う

紹介で会う場合は、紹介者から聞いた一言を①の代わりに使えます。「〇〇さんから、最近人手が足りないと伺ったのですが」のように、紹介者の言葉を借りて聞くと、①を質問1つ分減らせます。ゼロから聞き出す量を減らせるのは、紹介で初めて会うときならではの近道です。問い合わせ経由で紹介者がいない場合は、②から素直に聞き始めます。

自己紹介は1分で切り上げる

初対面では、まだ何も信頼されていない状態で相手の前に座っています。この状態で自分の実績や進め方を長く話すと、話せば話すほど「売り込みに来た人」に見えてしまいます。信頼は、これから相手の話を聞く中でしか積み上がりません。

自己紹介は次の3つだけで1分にまとめます。

  • 名乗り(会社名・名前)
  • 紹介元への一言(「〇〇さんにはいつもお世話になっています」など)
  • 何をしている人か、一言(肩書きではなく役割で)

NG例:実績、対応できる業務の範囲、料金体系の全体像までを冒頭で10分話す。 OK例:上の3つを1分で終え、「今日は先に、今の状況を聞かせてください」で①に渡す。

実績を話すタイミングは、②で困りごとが出たあとです。困りごとに関係するものを1つだけ添えれば十分で、冒頭で並べる必要はありません。

段階ごとの聞き方|そのまま口に出せる言い回し

2段目「困りごと」は、相手の言葉をそのまま返して深める

相手が「時間がなくて」と言ったら、「時間、ですか」とそのまま繰り返して待ちます。「つまり効率化したいということですね」と自分の言葉に置き換えません。置き換えた瞬間、相手はこちらの都合に合わせた答えを返すようになります。相手の言葉で言い直させると、本当の困りごとが出てきます。

たとえば「最近反応が薄くて」に対しては「反応が薄い、というのは」と返します。「担当がいなくて」に対しては「担当がいない、というと」と返します。

3段目「放っておくと」は一番言いにくいが、一番効く

一番聞きにくい段階ですが、初対面ではなおさら聞きにくく感じます。「差し支えなければ」「もし、の話ですが」を前に置いてから聞きます。

「差し支えなければ、それが続くと来月あたりどうなりそうですか」 「もし、の話ですが、今のやり方のまま半年たったら、何が一番困りますか」

たとえば、こういうやり取りになります。

問い:「差し支えなければ、それが続くと来月あたりどうなりそうですか」 答え:「正直、今のペースだと締切に間に合わない月が出てくると思います」 受け止め:「間に合わない月が出てくる、というのは大きいですね」

ここまで届くと、相手が自分から④(どうなったらいいか)を話し始めることもあります。責めている調子に聞こえないよう、前置きを外しません。4段目は「どうなったら助かりますか」の一問でいい。ここまでで初回は十分です。

尋問に聞こえるかどうかの分かれ目|質問の前に「なぜ聞くか」をひと言添える

同じ質問でも、理由を添えると相談になる

質問から受け止めまで繰り返す4ステップの循環図

聞く内容は同じでも、前置きの有無で受け取られ方が変わります。初対面では特に効きます。

前置きなし前置きあり
ご予算はいくらですか作り方を2通り考えたいので、目安の予算を教えてもらえますか
納期はいつですか間に合わせ方を逆算したいので、いつまでに要りますか
今はどこに頼んでいますかいま困っていることを外したくないので、今のやり方を教えてもらえますか

聞いていることは同じでも、右側は「なぜ聞くか」がひと言入っている分、相談に聞こえます。

答えを受け止めてから次に行く。ここを飛ばすと尋問になる

質問→答え→受け止め→次の質問、この4拍子を崩しません。答えを聞いた瞬間に次の質問に移ると、リストを消化しているように見えます。

具体的にはこうなります。

質問:「今はどなたが担当されているんですか」 答え:「担当は特に決めていなくて、その都度誰かが対応しています」 受け止め:「都度誰かが対応、というのは大変そうですね」 次の質問:「その中で、一番困っていることはどんなことですか」

この4行の流れを崩さなければ、質問を重ねても尋問には聞こえません。受け止めの一言は、相手が使った言葉をそのまま使うと短くて済みます。

「メモ取りますね」と最初に言う

最初に「メモ取りますね」と宣言しておきます。書いている間の沈黙が気まずくなくなり、相手も「ちゃんと聞いてくれている」と受け取ります。しゃべりすぎを止める、一番簡単な道具です。

初回で決めること、次回に回すこと

初対面の相談は、①〜④を一巡させて次回の約束を取ることが役割です。金額の総額を確定させることや、契約条件をすり合わせることは、初回の役割ではありません。

初回で決めることと次回に回すことを2列で対比する図

初回で決めること次回以降に回すこと
①〜④の一巡金額の内訳・総額の確定
次に会う日契約条件のすり合わせ
次回までに自分が用意するもの社内での決裁の詳細

初対面で全部を決めようとすると、聞くことも決めることも増え、相談が重くなります。相手も初めて会った日にそこまで決める心づもりはできていないことが多く、その重さが伝わって次に進みにくくなります。初回は④まで届いて、次の約束が決まれば十分です。

金額をその場で聞かれたときも、この線引きが効きます。急かされているように感じて、つい口が滑ることもありますが、その場の一言が後々の値下げ交渉の起点になってしまうこともあります。「持ち帰って、やり方を2通り出します」「今日聞いたことを整理して、◯日までにお送りします」と、初回で決めない前提を先に言葉にしておきます。

初回相談の前に用意するもの|順番メモ1枚と、調べておくこと3つ

A5一枚の順番メモを手元に置く

4段階を縦に書き、各段に自分の仕事向けの質問を1〜2個書いた紙を机に置きます。見ながら聞いていい。「見ながら聞くと準備不足に見える」は思い込みで、相手からは丁寧に見えます。

  • ①いま:質問を書く
  • ②困りごと:質問を書く
  • ③放っておくと:質問を書く
  • ④どうなったら:質問を書く

会う前に調べる3つ

会う前に、次の3つを調べておきます。

  1. HP・SNSでいま何を出しているか
  2. 会社の人数・業態
  3. 最近の動き(新店・新サービス・投稿の変化)

これだけで①の質問を減らせます。「HP拝見しました。◯◯を始められたんですね」と一言添えると、それ自体が相談の入口になります。

終わり方を先に決めておく

相談の最後に言う一文を、会う前に決めておきます。「今日聞いたことをまとめて、◯日までにお送りします」。その場で考えると、余計な一言を足してしまいがちです。先に決めておけば、最後まで崩れません。ここで次の接点が決まります。

初回相談は、案件が進む一連の流れの入口にすぎません。営業の流れ全体の話は、営業のやり方にまとめています。

今日やること|次の初回相談までに、順番メモを1枚だけ作る

4段階に、自分の仕事に合わせた質問を1つずつ書く

職種によって聞くことは変わるので、自分の仕事に合わせて埋めます。

段階デザイナーエンジニア士業
いま今の名刺やチラシはどなたが作っていますか今のシステムはどなたが保守していますか今はどなたに相談されていますか
困りごと反応で気になることはありますか動きで気になることはありますか手続きで気になることはありますか
放っておくとこのまま次の繁忙期を迎えるとどうなりそうですかこのまま使い続けるとどうなりそうですかこのまま進めるとどうなりそうですか
どうなったらどんな反応が来たら成功ですかどんな状態になれば助かりますかどうなれば安心できますか

1回使って、詰まった段階だけ直す

初回から完璧を狙わなくていい。使ったあとは「どの段階で自分がしゃべり始めたか」だけ振り返ります。たいてい③の手前で、自分の説明に逃げています。そこだけ言い回しを足せばいい。4段階すべてを一度に直そうとすると、結局メモを使わなくなってしまいます。直すのは、詰まった1か所だけで十分です。

話がうまい必要はない

順番メモを持って座り、相手の言葉を繰り返し、③まで一度届けばそれで十分です。性格はそのままでいい。あとは、次の相談で1回試してみてください。

よくある質問

初回相談で最初に何を聞けばいいですか?

「今はどうしているか」から。紹介がある場合は、紹介者から聞いた一言をそのまま使うと質問を1つ減らせます。いきなり①〜④を立て続けに聞かず、名乗ったあと30秒だけ雑談を挟んでから入ります

初回の打ち合わせで予算を聞いてもいいですか?

聞いていい。ただし「なぜ聞くか」を前に置く。「作り方を2通り考えたいので、目安の予算を教えてもらえますか」。理由なしに聞くと、初対面ではなおさら尋問に聞こえる

質問が思いつかず、沈黙が怖くて自分の話をしてしまいます

口下手のせいではなく、初対面の間合いをつかめていないだけ。4段階の順番メモを手元に置き、「メモ取りますね」と宣言して書く時間を作ると、沈黙が気まずくなくなる

初回相談で自分の実績はどのくらい話すべきですか?

自己紹介は1分で切り上げる。実績は相手の困りごとが出たあとに、それに関係するものを1つだけ。冒頭で長く話すと「売り込みに来た人」に見える

初回相談はどこまで聞けば終わりにしていいですか?

①〜④が一巡し、次に会う約束が決まれば終えていい。金額の総額確定や契約条件のすり合わせは次回以降でいい。全部を初回で決めようとすると、相談が重くなる

何度もやり取りしている相手にも、同じ順番を使えますか?

考え方は同じですが、初対面は事前情報も信頼もゼロなので間の置き方が変わります。すでに関係がある相手向けの型は別記事にまとめているので、初めて会う相手にはまず本記事の型で十分です

参照した情報源

  1. What Is SPIN Selling? A Way to Build Trust With Your Customers(Salesforce)・確認日 2026-09-12

本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。

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