対面営業・商談
セミナー後のアンケート|個別相談につながる項目の入れ方
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
セミナー後のアンケートは、感想を集める紙ではなく「次の一歩を選んでもらう紙」
セミナーは和やかに終わりました。アンケートには「わかりやすかった」「勉強になりました」が並んでいます。読み返すと嬉しいのに、そのあと相談の連絡は一件も来ません。
ここで「喜ばれたのに頼まれないのは、自分の話にお金を払うほどの価値がないからだ」と受け取ってしまう人もいます。腕に自信があって、人前で話すところまで準備した人ほど、この結論を自分に出しやすいように見えます。
ただ、アンケートを読み返すと、別の見方ができます。参加者のなかには、相談したい気持ちがあっても書く欄がなかった人がいるかもしれません。アンケートが感想を聞いたところで終わっていて、「次に何をすればいいか」を選ぶ場所がなかったのです。話の価値とは別の、紙の作りの問題です。
個別相談につながるアンケートに入れる項目は、次の3種類です。
- 感想(1問)
- 困りごと(一言で書いてもらう)
- 次の一歩(軽い順に選んでもらう)
この記事では、この順に設問例を出します。そのあと、「はい・いいえ」で聞くと手が挙がらない理由、渡すタイミング、回収したあとの返信までを続けて扱います。
「よかった」が集まったのに相談が来ないとき、起きていること
起きているのは、参加者が「聞いて、満足して、帰った」ところで止まっていることです。満足と相談は別の行動で、間をつなぐ橋がアンケートに無ければ、気持ちはそのまま家に持ち帰られます。
参加者は相談したくないのではなく、手を挙げる場所がない
仕事の悩みは、人前では言いにくいものです。紙の上にも「ここに書いていい」という場所がなければ、書かれにくくなります。
入れる項目は3種類だけ
多く聞くほど、書く側が疲れます。感想・困りごと・次の一歩の3つに絞ります。
個別相談につながるアンケート項目の例(そのまま使える設問)
感想を聞く項目は1問でいい
感想は1問にしぼります。例はこうです。
①今日の話で、いちばん持ち帰りたいと思ったことは何ですか。
5段階の満足度を何問も並べる形は避けます。たとえば「内容」「話し方」「資料」「時間配分」を5段階で聞くと、参加者はそれだけで疲れます。肝心の困りごと欄と次の一歩の欄に着く前に、書く手が止まります。しかも満足度の点数からは、次に何を渡せば相手が動くのかが見えません。
「いちばん持ち帰りたいこと」を書いてもらうと、相手が何に反応したかが本人の言葉で残ります。これは、のちの返信でそのまま使えます。
困りごとは「質問」ではなく「一言」で聞く
2問目は、困りごとを本人の言葉で書いてもらいます。
②今日の内容に関して、いま一番困っていることを一言で教えてください。
「ご質問があればどうぞ」と聞くと、空欄になりやすいです。質問を思いつくには、話を整理して、言葉にする作業が要ります。一方、困りごとは、聞かれれば一つは書ける人が多いはずです。「見積を出したあと、返事が来ない」「値段を聞かれると下げてしまう」のように、短くてかまいません。
書き手の見立てとして言うと、この欄に書かれた一言が、アンケートでいちばん価値のある情報です。感想は読んで嬉しいだけですが、困りごとは、次に何を話せば役に立つかを教えてくれます。
次の一歩は3段階の選択肢にする
3問目が本丸です。軽い順に並べて、選んでもらいます。
③この先、どうしますか(あてはまるものに丸をつけてください)
- 今日の資料がほしい
- 自分の場合どうなるか、15分ほど話を聞いてみたい
- 今は特にない
お名前とご連絡先は、②③を書いた人だけが書く任意欄にします。全員に必須で書かせると、それだけで回答が減りやすくなります。
紙1枚に収める見本
そのままコピーして使える形にすると、こうなります。
| 欄 | 設問 | 書き方 |
|---|---|---|
| ① | 今日の話で、いちばん持ち帰りたいと思ったことは何ですか | 自由記述(一言でも可) |
| ② | 今日の内容に関して、いま一番困っていることを一言で教えてください | 自由記述(一言でも可) |
| ③ | この先、どうしますか | 資料がほしい/15分ほど話を聞いてみたい/今は特にない |
| 任意 | お名前・ご連絡先(③で上の2つを選んだ方のみ) | 連絡方法は下の欄で選択 |
| 注記 | いただいた連絡先は、今回のお返事のためだけに使います | 用紙の末尾に印刷 |
設問は5つ以内、紙は1枚に収まります。この軽さが、最後の欄まで書いてもらいやすくなる理由になります。
「個別相談を希望しますか(はい・いいえ)」で手が挙がらない理由
はい・いいえの二択は身構えさせる
参加者の側から見ると、「はい」に丸をつけることは、売り込まれる側に入ることと同じに見えます。まだ値段も内容も知らない相手に、「はい」とは言いにくいものです。だから、気になっていても「いいえ」に丸をつけます。
聞き方を変えるだけで、手の挙がり方は変わります。NG例と言い換え例を並べます。
| NG例 | 言い換え例 |
|---|---|
| 個別相談を希望しますか はい/いいえ | 自分の場合どうなるか、15分ほど聞いてみたい |
| 無料相談受付中 | 今日の内容を、ご自身の仕事に当てはめて一緒に考える時間 |
| お気軽にご相談ください | 困りごと欄に書いてくださった件について、お返事します |
言い換え例は、相手の仕事の話から始まっています。「相談を受けたい自分」ではなく、「相手が自分の場合を知りたい気持ち」に合わせた言葉です。
「相談」より軽い選択肢をあいだに置く
「相談」か「不要」かの二つだけだと、間にいる人の居場所がありません。資料だけほしい人、メールで一つだけ聞きたい人が、実はいちばん多いかもしれません。
3段階にもう一つ足すなら、こう置きます。
- 今日の資料がほしい
- メールで一つだけ聞いてみたい
- 15分ほど話を聞いてみたい
- 今は特にない
このように置くと、軽い選択肢を選んだ人も、あとで連絡する理由が手に入ります。資料を送る、一問に答える。それも次の接点です。
連絡方法と時期を相手に選んでもらう
連絡の方法と時期も、選べるようにします。
- 連絡は:メール/電話
- 時期は:今月中/来月以降でいい
急かされない安心があると、手が挙がりやすい。これは書き手の見立てです。数字で確かめたわけではありませんが、「来月以降でいい」の欄があるだけで、「いいえ」を選ぶ理由が一つ減ると考えています。
アンケートを渡すタイミングと、書いてもらう時間の取り方
終わってから配ると書かれない
よくあるのは、締めのあいさつのあとに「お帰りの際にご記入ください」と配る形です。参加者は帰り支度の最中で、気持ちはもう次の予定に向いています。書かれないまま、持ち帰られます。
手順を変えます。本編の最後、まとめの前に数分の記入時間を取ります。講師が黙って待つ時間ごと、予定に入れておきます。黙って待つのは気まずいので、つい話し続けたくなりますが、その数分が、アンケートの質を決めます。
オンラインはリンクを2か所に出して、その場で書く時間を取る
オンライン開催なら、フォームのリンクをチャット欄に貼り、画面にも出します。2か所に出すのは、チャットが流れてしまった人のためです。そのうえで、その場で書いてもらう時間を取ります。「後ほどお送りします」と言うと、書かれないままになりやすいです。
書く前のひと言で、3つ目の欄の意味を伝えておく
3つ目の欄は、見た人が一瞬身構えます。書いてもらう前に、こう添えます。
「3つ目の欄は、今日の話をご自身の仕事に当てはめてみたい方だけで大丈夫です。こちらから無理に勧めることはしません」
この一言で、欄が「勧誘の入口」ではなく「選べる場所」に変わります。
回収したあとが本番:返事を待つだけにしない
回答を読んで安心し、相手からの連絡を待ってしまう
回答を読んで「みんな喜んでくれた」と安心します。「相談したい人は向こうから連絡してくるはず」と待ちます。そのまま1週間が過ぎます。
出したあとに何をすればいいかを習っていないので、相手の番で止まってしまう。この状態を、ここでは「相手の番型」と呼びます。
連絡が来ないのは、話の中身を否定されたからとは限りません。相手も、何から聞けばいいか決められずにいるだけかもしれません。アンケートに丸をつけた人は、すでに一歩出しています。その一歩に、こちらが先に返すと、止まっていた間が動きます。
回答を3つに分けて、当日か翌日に送る
回答を『話したい』『資料だけ』『今は不要』の3つに分けます。それぞれに、当日か翌日のうちに、お礼と一緒に送ります。文面は次の3通りです。
話したい人へ
本日はありがとうございました。アンケートで「15分ほど話を聞いてみたい」を選んでくださり、嬉しく思います。次の日程のうち、ご都合のよいものはありますか。 ・〇月〇日(〇)午前 ・〇月〇日(〇)午後 ・〇月〇日(〇)夕方 どれも難しければ、ご希望の時間帯を返信ください。
資料だけの人へ
本日はありがとうございました。ご希望の資料を添付します。もし一つだけ聞いてみたいことがあれば、このメールへの返信でお気軽にどうぞ。
今は不要の人へ
本日はありがとうございました。今回は見送りとのこと、承知しました。次回のセミナーの案内を、またお送りしてもよいでしょうか。「お願いします」とだけ返信いただければ大丈夫です。
困りごと欄の言葉を、そのまま返信に使う
返信の冒頭に、困りごと欄に書かれた言葉をそのまま引用します。
アンケートに「見積を出したあと、返事が来ない」と書いてくださっていた件ですが、
定型文との違いは、読んだ相手が「自分の書いたものを読んでくれた」と分かることです。「アンケートへのご協力ありがとうございました」だけの文面は、全員に同じものが届くので、読まれずに終わりやすくなります。
「今は不要」の人にも、次に連絡してよいかだけは聞いておく
不要と答えた人は、今のタイミングが合わないだけかもしれません。次の連絡を送ってよいかだけ聞いておけば、次のセミナーの案内を堂々と送れます。
よくある失敗と、次のセミナー前の見直しチェックリスト
書かれないアンケートによくある3つの失敗
- 設問が多すぎて、困りごと欄と次の一歩の欄が空欄のまま戻ってくる。
- 連絡先を必須にしたので、全体の回答が減った。連絡先は、次の一歩を選んだ人だけに書いてもらいます。
- 回答を読んで満足し、誰にも連絡しないまま1週間が過ぎる。
3つ目は、前の章で書いた止まり方そのものです。
次のセミナー前に確かめる7項目
はい・いいえで確かめてください。
- 感想は1問か
- 困りごとを一言で書ける欄があるか
- 次の一歩に3段階の選択肢があるか
- 「はい・いいえ」だけの相談希望欄になっていないか
- 記入時間を本編の中に取ったか
- 集めた連絡先を何に使うか書いてあるか
- 回収した翌日までに返信する予定を入れたか
集めた連絡先の使い道は、用紙に書いておく
「今回のお返事のためだけに使います」「次回のご案内を送ることがあります」のように、使い道を用紙に書いておきます。個人情報の扱いは、ここでは一般的な考え方の説明にとどめます。扱い方で迷う場合、個別の判断は専門家に相談を。
セミナーは仕事の取り方の一部にすぎない
アンケートを作り直しても、セミナーだけで仕事が入り続けるわけではありません。セミナーは、仕事の取り方の一部です。全体の中での位置づけは、フリーランスの営業の仕方でまとめています。
まずは、次のセミナーの用紙に、困りごとの一言欄と、3段階の選択肢だけ足してください。そこから、止まっていた間が動き出します。
よくある質問
セミナー後のアンケートの項目はいくつくらいがいいですか?
数より中身が大事です。感想1問・困りごと1問・次の一歩の選択肢1問の3種類に絞れば、紙1枚に収まり、最後の欄まで書いてもらいやすくなります。
アンケートで個別相談を勧めるのは、売り込みっぽくて失礼になりませんか?
「希望しますか はい・いいえ」と聞くと身構えられやすいです。「資料だけほしい」「15分ほど話を聞いてみたい」「今は不要」のように軽い順に選択肢を並べ、無理に勧めないことを一言添えれば、選ぶのは相手に任せられます。
アンケートは匿名にしたほうがいいですか?
感想と困りごとは名前なしでも書けるようにし、名前と連絡先は次の一歩を選んだ人だけが書く任意欄にします。集めた連絡先の使い道は用紙に書いておきます。個人情報の扱いで迷う場合、個別の判断は専門家に相談を。
アンケートの回答が少ないときはどうすればいいですか?
終わったあとに配っていないかを先に確かめます。本編の中に記入時間を取り、オンラインならリンクをチャット欄と画面の両方に出して、その場で書いてもらいます。
アンケートで「相談したい」と書いてくれた人には、いつ連絡すればいいですか?
相手の気持ちが冷めないうちに、当日か翌日にお礼と一緒に送ります。困りごと欄に書かれた言葉をそのまま引用し、日時の候補を2〜3つ添えると返事をもらいやすくなります。
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