対面営業・商談
パーソナルトレーナーの集客|体験に来た人と、その場で続きを決める
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
パーソナルトレーナーの集客は「体験に来た人を、その場で決める」から始める
体験に来る人を増やす前に、いま体験に来ている人が続くかどうかを見直すほうが早いことが多いです。仮に、月10人が体験に来て3人が続く教室と、同じ月10人で5人が続く教室があるとします。広告費も紹介数も同じでも、月の売上は何倍か変わります(※あくまで仮定の計算例です)。新しい人を集める工夫より先に、いま目の前にいる人との最後の10分を見直すほうが、費用をかけずに数字が動きます。
体験で決まらないのは、押しが弱いからでも、話が下手だからでもありません。「続けませんか」を売り込みだと思っていて、切り出す順番を用意していないからです。誤解のないように言うと、新しい集客の工夫をやめたほうがいいという話ではありません。順番として、まず目の前の体験を仕上げるほうが早いという話です。
まだ仕事をしたことのない相手に、仕事の話を切り出せない——そんな**「切り出せない型」**かもしれません。体験までは先生でいられるのに、続きの話をした瞬間に売る人に変わる気がして、最後の一言が出ない型です。指導中は言葉が出るのに、料金の話になった途端に声が小さくなる、という形で表れることもあります。
でも体験の目的を思い出してください。体験は、続けるかどうかを相手が判断するための材料を渡す場です。続きの道筋を言わないまま終わるのは、丁寧なのではなく、材料が足りないまま相手を帰していることになります。相手からすれば、良い体験だったのに「この後どうすればいいのか」が分からず、聞いていいものかどうかも判断できないまま帰ることになります。
60分しっかり指導したのに、最後は「よかったら検討してみてください」で終わり、次の連絡先も日付も決まらない。これはよくある終わり方ですが、丁寧に見えて実は決める場面を作れていません。指導の中身がどれだけ良くても、最後の10分が空白だと、相手は「良い体験だった」という感想だけを持って帰り、続ける・続けないを考える材料を持たずに終わります。
仕事の取り方を習わずに独立した人に共通する順番は、知り合ってから仕事になるまでの流れでも触れています。パーソナルトレーナーの体験も、この流れの中の「お金の話」と「返事をもらう」がつながった場面です。
体験に来る人は、押されるのを警戒しながら来ている
都内の消費生活センターに寄せられるパーソナルトレーニングに関する相談は年々増加傾向にあり、2025年度は前年度比約1.7倍に急増しています。

相談の中には、無料体験をきっかけに「入会金無料」などの特典で契約をすすめられ、定期コースを契約したあと、解約しようとしたら想定外の差額金を請求されたというケースがあります。体験に来る人の中には、こうした流れをどこかで聞いたり見たりしていて、「最後に押されるのでは」と身構えて来る人が一定数います。
だから、押さないことが、そのまま選ばれる理由になります。ここでいう「押さない」は、続きの話を一切しないことではありません。期限や特典で急がせず、判断材料を全部渡した上で本人に決めてもらうことです。
押し込む決め方と、決めてもらう決め方を並べます。
| 押し込む決め方 | 決めてもらう決め方 |
|---|---|
| 本日中なら入会金無料 | 決めなくていいと先に言う |
| 解約条件を聞かれるまで言わない | やめる時の条件を自分から説明する |
| 料金は最後に一気に出す | 料金は目的・期間とセットで出す |
左の列は、短期的には成約率が上がって見えます。ですが、相手が納得して決めたのではなく、期限に急かされて決めただけなので、解約の申し出やクレームにつながりやすくなります。右の列は決まるまでに少し時間がかかっても、決めたあとに揺り戻しが起きにくいという違いがあります。
「今なら入会金がかかりません、今日だけです」と迫れば、その場は決まるかもしれません。ですが、相談件数が急増している状況では、解約時のトラブルと悪い評判が広がり、次の体験そのものが減っていきます。目の前の1件を決めることと、半年後も体験の予約が入り続けることは、別の問題として考える必要があります。
続きの話は最後に出すのではなく、最初に予告する
切り出せない型の抜け道は、切り出す度胸をつけることではありません。予告しておくことです。体験の冒頭で「最後に続きの話をします」と一言伝えておけば、最後の一言は思い切った売り込みではなく、約束を実行するだけの時間になります。
そのまま使える冒頭の言葉です。
「今日の最後に5分だけ、続ける場合の話をします。決めなくて大丈夫です。合わないと思ったら断ってください。それでも今日の体験は持ち帰れるように組みます」
予告があると、相手は「最後に何が来るか」をあらかじめ知っているので、警戒が下がり、体験そのものに集中できます。逆に予告なしで最後に続きの話を出すと、「やっぱり来た」と身構えられてしまいます。
手順は3つだけです。
- 目的を聞く前に予告する
- 体験中は続きの話を一切しない
- 予告した通り、最後に5分で出す
この3つを守るだけで、切り出す瞬間の緊張はかなり減ります。逆に、体験中に何度も「続けるとこうなりますよ」を挟んでしまうのは、予告ではなく小出しの売り込みです。相手が一番警戒する形なので避けます。
予告を先に済ませておく一番の効果は、体験中の自分自身が楽になることです。「最後にちゃんと話す」と決めてしまえば、途中で無理に売り込みの言葉を挟む必要がなくなり、指導そのものに集中できます。切り出せない型の人ほど、体験の後半になるにつれて「そろそろ言わないと」と焦りが強くなりがちですが、予告を済ませておけばその焦りごと最初に片付いています。
体験60分の組み立て(時間配分表)
60分を3つに区切ります。最初10分、真ん中40分、最後10分です。

| 時間 | やること | 言うこと | NG |
|---|---|---|---|
| 最初10分 | 聞く | 何のために・いつまでに・過去に何を試してやめたか、の3つを順番に聞く。ここで予告もする | いきなり体組成の説明や自分の経歴から入る |
| 真ん中40分 | 体感させる | 相手の目的に直結する1つだけを体感させる | メニューを詰め込み、最後の10分に体力も集中力も残さない |
| 最後10分 | 決める | 今日分かったこと→続けた場合の道筋→料金と条件→返事のもらい方、の順で話す | 順番を変える(料金を先に言うと料金の話しかできなくなる) |
最初の10分で聞くのは、何のために体を動かしたいか(結婚式・健康診断・腰痛など)、いつまでに、過去に何を試してやめたか、の3つです。この順番を守るだけで、真ん中の40分で何を体感させればいいかが決まります。
真ん中の40分は、全部を見せる時間ではありません。「腰痛が心配」という相手なら、腰ではなく股関節の動きを1種目だけ変化させ、本人の口から「動きやすい」という言葉を引き出します。「結婚式までに二の腕を見せたい」という相手なら、二の腕の種目を何種類も見せるのではなく、姿勢が変わって写真映りが変わる種目を1つだけ体感させます。目的が違えば見せる種目も変わりますが、共通するのは「1つに絞る」という点です。
詰め込んだメニューで疲れさせてしまうと、一番大事な最後の10分に体力も判断力も残りません。呼吸が整わないまま料金の話を聞かされても、相手は内容を覚えていられません。最後の10分は、体力にも余裕がある状態で迎える必要があります。
最後の10分の言い方(そのまま使える台本)
最後の10分は、順番を変えずに4つを話します。

①今日分かったことを、本人の言葉で返す
「さっき『股関節が動くと腰が軽い』と言われましたよね。今日の一番の収穫はそこです」
トレーナー側の評価ではなく、体験中に本人が口にした言葉をそのまま使います。自分の言葉を返されると、相手は「ちゃんと見てもらえた」と感じやすくなります。
②続けた場合の道筋を「目的→期間→回数」で伝える
「健康診断が11月なら、週1回×8回で十分です。目的はそこまでです」
期間の終わりを先に言うことで、終わりの見えない契約のように見えなくなります。
③料金は総額だけでなく、道筋とセットで出す
「週1回×8回でこの金額です。途中でやめたくなった場合は、◯回目までなら残り回数分をお返しします」
やめる時の条件を、聞かれる前に自分から言います。料金を言う瞬間だけを見ると値段の話に見えますが、条件までセットで話すと、相手が安心して考えられる材料になります。
④返事のもらい方
「続けるか、今日は持ち帰るか、どちらでも大丈夫です。持ち帰るなら、いつまでに決めるか一緒に決めましょう」
二択を出すことで、どちらを選んでも次の日付が決まる形になります。「続けるか持ち帰るか」の二択は、相手に「入るか入らないか」を迫っているのではなく、「今日決めるか、日を分けて決めるか」というスケジュールの選択に見えます。この見え方の違いが、圧を感じさせるかどうかを分けます。
避けたいNG例が3つあります。「考えておいてください」で終わる。値引きで釣る(「今日決めるなら1回分無料」)。料金を言ったあと、沈黙が怖くて自分でしゃべり続け、相手が考える時間を奪う。どれも、相手から判断する時間を奪ってしまう点が共通しています。
その場で決まらなかった人への手当て
持ち帰る人には、「いつまでに」「何を確認して」決めるかを一緒に決めます。「家族に相談する」であれば、「木曜までに、続けるかどうかだけ返事をください。返事がなければ金曜に私から一度だけ連絡します」というところまで話しておきます。
3日後の連絡は、体験で本人が言った言葉の復習だけにします。
「先日の『股関節が動くと腰が軽い』、自宅でも1日1回やると保てます。やり方はこれです」
「続けませんか」とは書きません。売り込みが入っていないので出しやすく、受け取る側も返事がしやすくなります。
返事が来ない場合は、予告した1回の連絡で反応がなければ追いません。代わりに、月1回「体験に来た人向け」の情報(自宅でできる1種目など)を送ってよいか、体験の時点で許可をもらっておきます。
体験の申込を待つだけでは、月に何人来るか読めません。「月に何人体験に来れば回るか」を先に逆算し、既存のお客さんに「体験を1人紹介してほしい」と月1回頼む、SNSで体験募集を週1回出す、のどちらか1つを決めて続けます。
既存のお客さんに紹介を頼むときの言葉も、身構える必要はありません。「いつも来てくれてありがとうございます。もしまわりで体を動かしたい人がいたら、ひと声かけてもらえると嬉しいです」。お願いというより、日頃の指導の延長として伝えるだけで十分です。入口を作る動きは、体験に来た人をその場で決める動きとは別の話として、自分で持っておく必要があります。
契約前に自分から説明すること(トラブルを起こさないチェックリスト)
トラブルは、無料体験→特典で背中を押す→定期コースの契約→解約時に想定外の請求、という順で起きるケースがあります。都内の消費生活センターへの相談件数も前年度比約1.7倍に急増しています。だからこそ、この4か所を自分から先に説明しておけば、その場で決めてもらっても信頼は崩れません。

契約前に、口頭と紙の両方で渡せるチェックリストです。
- 総額と回数と有効期限
- 途中でやめる時の返金の計算方法
- 特典(入会金無料など)が解約時にどう扱われるか
- 自動更新の有無
- 連絡先とやめる時の連絡方法
言い方の例です。「やめる時の話を先にしておきます。途中でやめたくなったら、残りの回数分から手数料を引いてお返しします。ここは契約書のこの行です」。やめる話を自分からすることで、相手は逆に安心して決めやすくなります。
このチェックリストは、口頭で話すだけでなく、紙にして手渡すところまでがセットです。口頭だけだと「言った・言わない」になりかねませんが、紙に残しておけば、相手はあとから見返せますし、こちら側も毎回同じ説明を漏れなく伝えられます。契約書とは別に、この5項目だけをまとめた1枚を用意しておくと、体験のたびに使い回せます。
ここで書いているのは一般的な考え方の範囲です。契約書の書き方や返金の条件は個別の状況で変わるため、実際に定める際は消費生活センターや行政書士などの専門家に相談してください。
特典で決めさせておいて、解約条件は聞かれるまで言わない。その場では決まっても、相談件数が急増している今、悪い評判が次の体験を減らしていきます。
よくある質問
パーソナルトレーナーの体験は無料と有料、どちらがいいですか?
どちらでも成り立ちますが、無料にする場合は冒頭で「最後に続きの話をします。決めなくて大丈夫です」と予告しておくと安心です。都内の消費生活センターへの相談件数は前年度比約1.7倍に急増しており、無料体験をきっかけにしたトラブルの相談も含まれています。無料であるほど相手は「あとで押されるのでは」と身構えて来ます。予告と、やめる時の条件を先に説明しておくことで、この警戒はかなり解けます。
体験のあと「考えます」と言われたらどうすればいいですか?
追いかけず、いつまでに何を確認して決めるかを一緒に決めます。3日後に、体験で本人が言った言葉の復習(自宅でできる1種目など)だけを送ります。「続けませんか」とは書きません。返事がなければ、予告した1回だけ連絡し、それ以上は追いません。
体験で料金を言うタイミングはいつがいいですか?
最後の10分、「今日分かったこと」と「続けた場合の道筋(目的→期間→回数)」を伝えたあとです。料金を先に言うと、そのあとは料金の話しかできなくなります。総額だけでなく、途中でやめる時の返金条件も同時に自分から伝えます。
その場で決めてもらうと、しつこいと思われませんか?
しつこく感じさせるのは、「本日中なら入会金無料」のように期限や特典で急がせることです。冒頭で予告し、「決めなくていい」と伝え、やめる時の条件を先に説明した上で「続けるか持ち帰るか」の二択を出すのは、判断材料を渡しているだけで、急かしてはいません。
体験に来る人自体を増やすには、何をすればいいですか?
まず「月に何人体験に来れば予定が回るか」を逆算します。そのうえで、既存のお客さんに月1回「体験を1人紹介してほしい」と頼む、SNSで体験募集を週1回出す、のどちらか1つを決めて続けます。申込を待つだけでは、月に何人来るか読めません。
参照した情報源
- 東京都消費者被害救済委員会付託「無料体験を契機としたパーソナルトレーニングの定期コース契約に係る紛争」の解決を付託しました(東京都(生活文化スポーツ局))・確認日 2026-09-15
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