対面営業・商談

値引きの断り方|「安くして」と言われたときの返し方と例文

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このシリーズの全体像 お金の話の伝え方|値段・値上げ・値引きを、関係を壊さずに伝える

値引きを断れないのはどうしてか

見積を出した直後、相手が「もう少し安くなりませんか」と言う。その瞬間、頭に浮かぶのは金額の計算ではなく、「高いと思われた」という判定だと思います。何をどう答えるかより先に、その判定のほうが先に頭を占めてしまいます。

断り方の言葉を知らないから困っているわけではありません。値引きを断ることは「この仕事はこの金額の価値がある」と自分で言い切ることになります。困っているのは、それを言い切る自信がまだない、という人が多いからです。

値引き交渉は、自分の値打ちの査定ではありません。条件のすり合わせです。相手は価値を疑っているとは限らず、予算や決裁の都合をそのまま口にしているだけのことが多いです。対面で重ねてきたやり取りがあるからこそ、金額の話も条件のすり合わせとして受け止めてもらえます。日頃の対面営業の振る舞い方は対面営業の作法・人脈術 完全ガイドにまとめています。

安くしとく型かもしれません。下げることが誠実さだと思っていて、聞かれる前に安い金額や無料対応で応じてしまう型です。高いと思われたから下げるのではありません。言われる前に、下げる金額をすでに考えてしまっているからです。

値引きに応じ続けると、いずれ「この人はいくらでも下げてくれる」という扱いに変わっていくかもしれません。それを恐れて身構えるほど、断る言葉はかえって出しにくくなります。

NG例を1つ挙げます。「すみません、これが精一杯でして…」。ここで謝ってしまうと、値段そのものが悪いものだったと自分で認めた形になります。金額を下げる下げないの前に、謝罪から入らないことが最初の分岐点です。押し切れずに謝ってしまう癖の背景はあまりクロージングをしないでも扱っています。

値段を下げないことは、冷たいことではありません。相手の予算の相談に付き合う余地は、金額以外のところにまだ残っています。

この記事で渡す方法は1つだけです。断る前に「何が高いのか」を1問だけ聞く。断り文句を先に覚えるより、この順番を体に入れることのほうが効きます。順番さえ守れば、言葉自体はそこまで巧みでなくても伝わります。

値引きを断る前に何を聞くべきか

聞き方はそのまま使えます。

「安くして」の裏にある4つの事情を分岐で示した分類図

  • 「ご予算はどのあたりで見ていらっしゃいましたか」
  • 「総額が問題ですか、それとも今期の枠の話でしょうか」

なぜ聞くかというと、「安くして」の中身は一つではないからです。少なくとも4種類あります。

相手の事情中身
予算枠が足りない決まっている枠に収まらない
他社と比べた比較対象より高く見える
中身が分からない何にいくらかかっているか見えず高く感じる
とりあえず言ってみた下がるなら下げてほしい、程度の要望

この4つは手当てがそれぞれ違います。

予算枠が足りない場合は、金額そのものより配分の問題です。「今期の枠でまとめて発注いただく形と、今期・来期で分割する形、どちらが動かしやすいでしょうか」と、分割や段階発注の案を出すと話が進みます。一括で通らない金額も、区切って発注する形なら通ることがあります。

他社と比べた場合は、同じ範囲で比べているかを確認します。「他社さんのお見積りには、どの工程まで含まれていましたか」と一言聞くだけで、範囲の違いが見えてきます。

中身が分からない場合は、内訳を見せます。「作業項目ごとに分けた表をお送りします」と伝えるだけで、総額への抵抗が下がることがあります。

とりあえず言ってみた場合は、金額を動かす必要はありません。「金額はこちらで積算した結果です」と伝え、そのまま据え置いて構いません。

理由を聞かずに「では5%だけ」と返すと、理由が分からないまま下げたことになり、次の見積でも同じ幅だけ下げられる前提ができてしまいます。

その場で即答しないための一言も用意しておきます。「金額のところ、持ち帰って整理してご連絡します」。これだけで、その場の空気に押されて下げる事態を避けられます。持ち帰った後は、次の章の4つの返し方に当てはめて、下げずに応じる案を組み立てます。持ち帰った返事や、相手から「検討します」と返されたときの返信の作り方は「検討します」への返信例文|次の一手を決めてから返すにまとめています。

金額を下げずにどう返せばいいか

金額をそのまま下げると、次からその金額が基準になります。下げずに応じる方法を先に持っておくと、値引きの話を「削る」ではなく「動かす」話に変えられます。金額を動かさずに応じる方法は4つあります。

金額を据え置いたまま応じる4つの調整策を並べた比較図

  1. 範囲を減らす 「金額を合わせるなら、この工程を外す形になります」。①だけは総額が動きます。ただし単価は据え置いたまま、外す工程の分だけ引く形です。同じ中身のまま金額だけ削られる交渉を防ぎます。
  2. 量・期間で調整する 「単発だとこの金額ですが、3回まとめてなら1回あたりはこの金額です」。
  3. 支払い条件で調整する 「金額はこのままで、着手金と納品後の分割払いにできます」。締め日の相談も含め、金額は据え置いたまま、相手の資金繰りだけを助けます。
  4. 時期をずらす 「来期の予算で動かせるなら、着手を4月にできます」。

相手の事情別に使い分けます。

相手の事情有効な打ち手
予算枠③支払い条件/④時期
比較①範囲を減らす
不明内訳を出す(第2章参照)
様子見据え置いたまま返答を待つ

理由が複数重なっているときは、相手が最初に口にした事情を優先して当てはめます。あとから他の事情が出てきたら、そのつど別の案に切り替えれば構いません。

共通しているのは、「下げられません」で終わらせないことです。「この金額のままなら、こうできます」。断る文ではなく、選べる形にして返します。相手にとっても、断られただけで終わるより、選べる案が残っているほうが次の話を進めやすくなります。

対面・電話・メールで何と言えばいいか

対面でその場で言われたときです。「ありがとうございます。金額は下げられないのですが、範囲なら調整できます。どちらがご都合よいですか」

電話では、結論→理由1文→代案の3文で終えます。長く説明するほど、下げてもらえるかもしれないという期待を相手に残してしまいます。「今回の金額は据え置きでお願いしたいです。作業項目を積み上げた金額のためです。その代わり、お支払いのタイミングはご相談できます」。この3文で一度区切り、相手の反応を待ちます。

メール本文の型は次の順番です。

  • 件名(例:「お見積りについて(株式会社◯◯ 御中)」)
  • お礼
  • 結論(金額は据え置き)
  • 理由は1文(積算の根拠)
  • 代案2つ
  • 返事の期限

既存取引先向けの例文です。

いつもお世話になっております。お見積りにつきましてご相談いただき、ありがとうございます。 大変恐縮ですが、今回の金額については据え置きとさせていただければと思います。作業項目と工数を積み上げた金額のため、これ以上の調整が難しい状況です。 その代わり、着手時期を来月にずらす形、またはお支払いを2回に分ける形でしたらご相談可能です。 恐れ入りますが、来週中にご意向をいただけますと助かります。

新規の問い合わせ向けの例文です。

お問い合わせいただきありがとうございます。ご提示いただいた金額については、内容を精査したうえでの金額のため、据え置きとさせてください。 範囲を絞る形であれば、金額を抑えたプランもご用意できます。よろしければ次のお打ち合わせで内容を比べていただければと思います。

紹介・知り合い経由で言われたときの一文です。

ご紹介いただいた分、できる限りのことはしたいのですが、金額については他の案件と同じ基準で出させていただいています。その分、進め方はご都合に合わせますので、遠慮なくおっしゃってください。

紹介者を通した相手には、金額を特別扱いしないことを先に伝えておくと、あとで紹介者との関係にも響きません。

入れてはいけない語もあります。「申し訳ございませんが」の連発、「社内規定で」(実際にない規定なら嘘になります)、「特別に」(次から特別が基準になります)。

どこまで断ってどこから応じるべきか

案件が来る前に、これ以下では受けないという下限を1つ決めておきます。材料費や外注費などの原価に、1時間あたりの単価×想定時間を足すと下限額になります。案件ごとに考えると相場やその場の空気に流されやすいので、金額を決める前に計算式だけ先に決めておきます。

下限額の計算構造と5項目チェックの流れを示した図

下げてよい条件の例です。量が増える、期間が延びる、制作物を実績として出せる、こちらの都合で日程を動かせる。見返りが1つもない値下げはしない、これが基準です。

下げてよい条件が揃ったときの言い方も決めておきます。「今回の分は数量が多めなので、単価を少し調整させていただきます」。下げる理由とセットで伝えれば、次回の見積が下がったままになる心配もありません。

下げてはいけない場面もあります。初回の取引でいきなり言われたとき、理由を言わない相手、「他社はもっと安い」だけを根拠にする相手です。こういう場面で下げてしまうと、次の案件でも同じやり取りが繰り返され、こちらから条件を出す機会がないまま金額だけ削られていきます。

持ち帰って判断するときのチェックリストです。返事を出す前に、この5つを順に見るだけで判断できます。

  1. 下限額を下回っていないか(下回るなら、範囲を減らす案に切り替えます)
  2. 見返りが1つでもあるか(量・期間・実績・日程のどれかがあるか)
  3. 初回の取引ではないか(初回でいきなりの値引き要求は、次回以降も続きやすいです)
  4. 相手が理由を言っているか(言っていなければ、まず理由を聞き直します)
  5. 次の接点を残せているか(断って終わりにせず、次に話す予定を残します)

値引き幅の考え方も添えておきます。一度下げた額は、次の見積の基準になります。小さな値下げでも、その相手との今後すべてに効いてきます。

受け手はどう聞いているか——担当者の立場で考えてみる

担当者の立場で考えてみると、断られたこと自体を「感じが悪い」と受け取るとは限りません。むしろ困りやすいのは、下げてもらえたのに、なぜ下がったのか社内で説明できないときかもしれません。「なぜこの金額でお願いするのか」を上司に聞かれたとき、理由も併せて聞いていれば、そのまま答えられます。理由がなければ、担当者自身が想像で埋めるしかなくなります。

理由を言って断られた見積のほうが、社内の稟議では通しやすいと考えられます。金額の根拠が言葉になっていれば、担当者は上司に「積算の根拠があるので妥当です」と説明しやすくなります。理由のない値引きは、担当者が自分の言葉で説明を作らなければならず、かえって話が止まることもあります。

逆に不信を招きやすい返し方もあります。即座に大きく下げることです。最初の見積は何だったのかという話になり、他の項目の金額まで疑われかねません。積算そのものの信用が落ちると、次に出す見積も同じ目で見られてしまいます。

断ったあとに関係が切れるとすれば、断ったこと自体より、断ったあと連絡が止まることが原因になりやすいです。断った翌週に、一言送っておきます

先日はご相談ありがとうございました。またタイミングが合うときがあれば、ぜひお声がけください。

こうした一通の書き方は失注メールの例文|取引先に送る、次の機会を残す一通でも詳しく扱っています。「今回は予算が合いませんでした」で終わった相手にも、次の接点は作れます。次の案件はいつ頃になりそうか、その場で一言聞いておくだけで十分です。

こう考えると、値引きを断ることは関係を切る行為というより、相手の社内稟議を通しやすくする行為だと言えるかもしれません。金額を据え置いたまま理由を添えて返すことは、相手にとっても都合のいい返し方になっている可能性があります。

値引きを言われにくい見積はどう作るか

総額1行の見積は、値切られやすくなります。中身を分けずに出すと、相手が話せる材料が金額しか残らないからです。

総額1行の見積と項目分けした見積を比べる2カラム比較図

総額だけの見積は「一式 ◯◯円」としか書かれておらず、相手は金額の大小でしか話せません。分けて書くのは3つです。作業の項目、回数・量、含まれないもの。たとえば「企画・構成」「制作」「修正2回まで」を項目ごとに分け、「公開後の追加修正は含まない」まで書くと、同じ合計でも相手はどの項目を削るかを話せるようになり、総額の意味が初めて伝わります。

金額の隣には、効果ではなく手数を書きます。「打ち合わせ3回」「提案2パターン」など、相手が量として理解できる単位にします。効果は結果が出るまで分からないものですが、手数は見積の時点で誰でも確認できます。

松竹梅で出すときは、安い案を「手抜き」に見せないことが大事です。減らすのは品質ではなく範囲だと分かるように書きます。「梅プランは打ち合わせを1回に絞った分」というように、削った理由を添えると、安い案を選んでも品質が落ちる不安を持たれません。

見積を渡すときに、口頭で一言添えておきます。「金額のご相談があれば、範囲を調整する形で伺います」。値引きではなく範囲調整に、話す土俵をあらかじめ移しておきます。この一言を先に置いておくだけで、見積を出したあとに「安くして」と切り出されにくくなります。相手にとっても、値引きを頼むより範囲を相談するほうが言い出しやすいからです。

よくある質問

値引きを断るとき、メールでは何と書けばいいですか

お礼→結論(金額は据え置き)→理由1文→代案2つ→返事の期限、の順で書きます。謝罪を重ねず、断る文ではなく選べる形にして返します。

値引きを断ったら仕事がなくなりませんか

関係が切れる原因は、断ったこと自体より、断ったあと連絡が止まることです。断った翌週に一言送り、次の案件の時期を聞いておきます。

どこまでなら値引きに応じていいですか

量が増える、期間が延びる、実績として出せる、日程をこちらで動かせる、のいずれか見返りがある場合だけです。見返りがない値下げはしません。

「他社はもっと安い」と言われたらどう返しますか

金額ではなく、含まれる範囲の違いを分けて示します。同じ範囲で比べているかを確認する一言から入ります。

長い付き合いの取引先から値引きを頼まれたときは

金額は据え置いたまま、支払い条件や着手時期で相手の都合を助ける形を先に出します。金額を下げると次回以降の基準になります。

本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。

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